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バイオ・微生物実験好きな管理人による、研究仕事、日常、実験技術や理科系ネタのブログ

洗顔後の菌変化からクオラムセンシングまで

2005-07-20 20:16:55 | 様々な微生物
「防菌防黴(ぼうきんぼうばい)」という学会雑誌のバックナンバーを1991年から眺め直す機会がありました。
そしたら、洗顔後の菌相(菌の種類構成や菌の量などの状態)についての文献があったので、チラッと斜め読みしたデータですが、紹介しておきます。
しっかりすっきり洗顔を行うと、実は皮膚には洗顔前の0.3%の菌しか残らないそうです。
その0.3%は24時間後には100%になる。
0.3%は、皮膚の奥底に残っている善玉さん。
善玉さんはしっかり共生してくれているのですね。

さて、善玉さんとして一番多いらしい、スタフィロコッカス エピデルミディスですが、実は医薬品製造現場や、医療現場(手術室など)で検出されることの多い困ったさんでもあります。
しょうがないですよね、しっかり皮膚にくっついてるんですから。
他に検出されやすいのは、緑膿菌(シュードモナス アエルギノーザ)だったりします。
緑膿菌は、バイオフィルムという自分たちを守る多糖類物質(ネバネバしてる)を出していて、配水パイプで繁殖していたりするんです。
このバイオフィルムがあると、薄い殺菌料を流すだけだとバイオフィルムの内部まで浸透しにくく、結果的に菌は死滅しないでそのままそこで増えてしまうということになります。
配水パイプというのは、ゴシゴシこすったり、物理的な力ではがし取るのは難しいので、なかなか除去できない困ったさんです。

と、ここまで書いてきて、そういえば「菌の会話=クオラムセンシング」についての話を書いていないな、と反省。
実はバイオフィルムの形成には、菌同士の会話がきっかけになって行われているのです。
次はちょこっと緑膿菌のクオラムセンシングについて書いてみようかと思います。

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白癬菌=水虫

2005-05-23 22:20:28 | 様々な微生物
今日も空けてしまうと4日連続になってしまうので、ネタ切れの中から搾り出すことにしました。

最近、白癬菌の実験をやるかどうか検討しています。
白癬菌というのは、いわゆる水虫菌。
白癬菌はカビ(真菌)で、学名で言うと、トリコフィートン。
水虫は真菌感染症にあたります。

動物の死骸というのは、爪や皮膚などの角質は分解されにくいものなのですが、ある種のカビはその角質を分解するという、生態系のお掃除やさんでもあります。
その角質分解するカビは、いつしか生きている動物に感染することを覚えたわけです。
それが水虫などの真菌感染症。
白癬菌は、生きている細胞ではなく、死んで角質化した細胞に入り込みます。
角質の中で増える時に、分解酵素などを出しますが、それが角質の下にある生きている細胞に届いた時、生きている細胞が異物だと認識して炎症を起すわけです。
実は自然界には白癬菌はたくさんいて、結構皮膚には付いてきたりしているのですが、大抵24時間以内にきれいに洗い流せば、感染しない確立が高いそうです。
(湿度が高いと24時間で菌糸が入り込みます)

今まで角膜真菌症の原因菌を扱ったり、ハウスダスト菌などは扱ったことはありますが、
白癬菌ばかりはちょっとやりたくない・・・。
すぐ洗い流せば感染しないとわかっていても・・・。
神経質になってしまって、仕事中でも足を洗ったり髪をアルコールで拭いたりしちゃいそうで。
家族に感染させてもいやですし、職場で蔓延なんかいやだし。。。
というわけで二の足踏んでます。
医真菌(感染症を起すカビ)はコワイなぁ・・。

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プロバイオティクスとプレバイオティクス

2005-04-25 20:50:38 | 様々な微生物

大分日数が空いてしまいました。
それと言うのもgooのブログシステムの不具合さに嫌気が差していたからで、(というのは言い訳)

でも今日はメンテナンスのおかげですごく軽い!動作もすごい!
やる気が出てきました。
今日は先日読んでブログのネタにしようと思っていた記事を紹介。

HIVを封じ込めるバクテリア、ヒトの体内から発見(HotWired 2005年4月20日付け記事)

「封じ込める」バクテリアという言い方はどうかと思うけど、乳酸菌をたくさん体内で育てれば「感染の割合が減る」ことはありえる。
最近は空前のプロバイオティクスブーム。
プロバイオティクスの定義は
「消化管内の細菌叢を改善し、宿主に有益な作用をもたらしうる有用な微生物と、それらの増殖促進物質」
ですが、ということはこのプロバイオティクスと言うのは、消化管内に菌を直接送り込み、一緒に増殖促進のための何かを摂取しなければならないということです。
積極的に既知の微生物と既知の促進物質を摂取するということですね。

さて、最近では「プレバイオティクス」という言葉も使われてきています。
プレだかプロだか良くわからん、とにかく健康にいいんだろうなー、といった方も多いのでは?
プレバイオティクスというのは、腸内にいる細菌を育てるための物質のことを言います。
たとえばオリゴ糖などですね。
ということは菌そのものを摂取するわけではないのです。

細菌の研究ではプロバイオティクスによって花粉症の症状が改善したりする知見がでています。
花粉症の症状はアレルギー反応ですが、アレルギー反応は複数の抗体のバランスが正常時と反対に傾いてしまった時に顕著になります。
俗に言う「体内バランスが崩れる」。
そのバランスをアレルギーが治まる方向に傾かせてくれる。
それは腸内環境が悪玉菌よりも善玉菌が増えているからであって、総体的な問題なのです。
ですからプロバイオティクスであろうがプレバイオティクスであろうが善玉菌を増やすことで何らかの健康促進作用が見込めるのは間違いないことです。
食品を扱うものにとっては商品にならないから困る細菌も、「賢く使って上手にやりくり」が重要です。

でも、なぜかドレッシングにみその酵母とか乳酸菌が入って濁ったりすると嫌がるんですよね、私たち消費者。
何者かわからない微生物が繁殖しているせいでしょうか。

・・・私としてはプロバイオティクスも結構気持ち悪いです。

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細菌の栄養取り込み作業

2005-04-19 23:32:58 | 様々な微生物
ようやく咳も少なくなってきました。

今日は細菌の栄養取り込み作業についての話です。
細菌が生きていくためには、細胞内に栄養分(糖やアミノ酸)がなければいけません。
細菌(厳密に言えば従属性の細菌)は糖やアミノ酸を自ら合成することは出来ません。
栄養は外から細胞内に取り込んでいなければいけないのですね。
外から取り込むには、細胞膜にある孔(パーミアーゼといいます)を使って取り込んでいるのですが、このパーミアーゼ、大きな分子は通すことが出来ません。
栄養分というのは通常大きな分子で周囲に現れるので、そのまま取り込めないわけです。
そこで細菌はどうしているかと言うと、細胞外に消化酵素を分泌し、小さな分子に分解しています。

ところで、細菌の膜の種類には大まかに2種類あります。
この種類は細菌の分類の時に良く使われるグラム染色法という方法で区別することが出来ます。
簡単に言うと、グラム染色で青く染まる細菌はグラム陽性、青く染まらない細菌はグラム陰性となります。
この染色性の差は膜構造の違いから来るものです。

 ①グラム陽性菌の膜構造


            細胞外
    ____________________________________
    /_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ ペプチドグリカン膜
        ぺリプラズム(間隙)
    ===================================== 細胞質膜
            細胞内

このように、グラム陽性菌では2つの膜構造で成り立っています。

 ①グラム陰性菌の膜構造


            細胞外
    _|_|_|__|_|_|_|__|_|_|_|__|_|_|_|__|_ リポ多糖体+リン脂質膜─┐
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~             │
    _____________________________________             ├ペリプラズム
    /_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ ペプチドグリカン膜   │ 
    ===================================== 細胞質膜       ─┘ 
            細胞内

グラム陰性菌では、細胞内に至るまで3膜で成り立っています。

この2つの細胞膜の構造により、栄養の分解の仕方も違います。
①の陽性菌では、細胞外に分泌した酵素で分解されたものがそのまま取り込まれます。
②の陰性菌では、細胞外に分泌した酵素である程度分解され、そのある程度分解された物質がリポ多糖+リン脂質膜を比較的大きな孔(ポーリン)を通ってペリプラズム内に入ります。
ペリプラズム内には酵素は高濃度に存在しているため、そこで速やかに小さな分子に分解され、細胞内に取り込まれます。

取り込むときには、化学的に酸化したりし(しない物質もあります)膜チャンネルを通して行います。


目に見えない小さな細菌も、簡単であれど巧妙なシステムを利用しているんだなー、と思っていただけたら幸いです。

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PET分解の微生物

2005-04-02 16:37:35 | 様々な微生物

今日はPETを分解するバイオレメディエーションの紹介です。
助教授 平井浩文さんのところで紹介されていました。
京都工芸繊維大の小田耕平教授、木村良晴教授らのチームが農芸化学会で発表していた成果だそうです。
ゴミ処理場やゴミ置き場と言うのはかなりの確立で、すごい分解能力を持った細菌やらカビやらがいるものなのですよね。
それにしてもバイオレメディエーション(微生物による環境浄化)、ファイトレメディエーション(植物による環境浄化)の分野では、近頃かなりの成果が出てきています。
私はバイオレメディエーションの研究を一時行っていたのですが、細菌って能力が限りなく思えてくるような、そんな事を常に感じる研究でした。
現在は殺すことしか考えていない研究(衛生なので)ですが、生きているものを探求したい私は、バイオレメディエーションの方が合っている気がします。
そろそろ転職か?(笑)
また学校に通おうかとも考えたり。

それにしても、農芸化学会、行きたかった・・・。
何せ分野も違うから、仕事では行けないし、札幌で遠い上に、開催の全日程を見たくなるので有給じゃいけないし…ということで泣く泣く諦めていました。
仕事をしていると自分の好奇心を満たせない部分が多くなって困ります。

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細胞性粘菌~単細胞と多細胞のはざまで

2005-03-15 21:33:17 | 様々な微生物

以前から気になっていて、でも暇が無くて詳しくは勉強しなかった「細胞性粘菌」について調べてました。

いやー・・・・すごいっすよ。
細胞性粘菌というのは、単細胞で生活をしているアメーバ状の生物。
栄養が乏しくなったり、過酷な条件では細胞が集まり、それぞれが胞子を作ったり、胞子を支える柄(え)となったりと、分化をします。

アメーバの時には、細菌や酵母を食作用(細胞内にとりこむ作用)で捕獲し、内部で消化します。
アメーバなのでネバネバと移動し、近くの細菌を貪欲に食べていきます。

そして周りに食べるものがなくなったとき、

アメーバ集合
 ↓
大きな細胞
 ↓
柄を形成して倒立
 ↓
胞子を格納した子実体を先端に形成
 ↓
(至適条件で)胞子が発芽してアメーバでてくる

ということをやっています。

アメーバの時には細胞膜しかもっていなかったものが、胞子になると細胞壁をもっています。
うーん、初歩的なことしか知らないので、ただただ感嘆&驚愕。
アメーバの時にはどうみても動物なのに、子実体を作る頃には、もうカビにしか見えない。
もっともっと詳しく知りたい微生物の一つ。

参考にしたのは、弘前大学農学生命科学部 応用生命工学科 細胞工学講座/弘前大学総合情報処理センターのサイトで、「粘菌生活」。
アメーバの状態で食事をしている映像から、子実体を形成している映像まで、動画で詳しく観察することが出来ます。
リンクする時には連絡が必要とのこと。
メールの返事を待って、リンクしたいと思いますので、見てみたい方はGoogleで検索をお願いします。

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ビール酵母

2005-03-08 19:43:42 | 様々な微生物

今週は、毎日平板培地100枚以上に菌液を塗り塗りしています、spirillumです、どもども。
明日は展示会で売り子をしなければなりません。
いつもは立って仕事をすることのない私には、展示会に行く仕事はかなり辛いです。
往復3時間かかるし・・・あぁ。

さて、今日は巷で健康食品としてブームな(だった?)「ビール酵母」についてです。

ビール酵母という名前を聞くだけで拒否していた私。
どうしても酵母がシャーレ上でモコモコと盛り上がっている様を思い浮かべてしまうのです。
うーむ、実態を知らないまま嫌うのもどうかな、と思ってちょっと調べてみました。

・・・ビール酵母って・・・・生きてないのね・・・。

かなり拍子抜けでした・・・。
だってよく味噌のパッケージに「酵母が生きている!」とか書いてあるじゃないですか!!
酵母が生きているから健康にいいのかと思ったのに・・・。

なにやら詳しく見ていると、酵母と言うのはグルカン・マンナンなどの多糖類の繊維質を細胞壁に持っているらしく、生きているままだと細胞質のミネラルとか健康にいい色々が分解・吸収されずに丸のまま残ってしまうとか。
だから商品のビール酵母というのは熱をかけて細胞壁を破壊しているらしいです。

なぁんだ・・・生きてないと思えば・・・まぁ・・・。という私の感想。
味噌も生だと想像力豊かになってしまうので、
よーく煮てから食べている私です。

でも、細菌の培地を作製する時にですね、酵母エキスというのを使う場合があるのです。
Yeast extractなんですけれども、酵母抽出物なわけですね。
これがあると色々複雑な試薬を混ぜなくても十分足りちゃうような感じの試薬なんですが、
まぁ考えてみればそのまんまなわけですね、ビール酵母。

ちなみにインスタントのシチューや、ポタージュスープ系の匂いが私は駄目なんです。
理由はこれらの中にはかなりの確立で酵母エキスが配合されていて、
立ち上る湯気の中に培地の匂いを嗅ぎ取ってしまうからなんです。
職業病ってホントいやんなるよ・・・と悲しくなる瞬間。

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星の砂って実は生物

2005-02-07 20:31:29 | 様々な微生物
「星の砂」といえば南の島の真っ白なビーチにある真っ白でさらさらした砂。

今日asahiニュース サイエンス海底1万mに「生きた化石」 8~10億年前と同じ姿?という記事を見かけました。
有孔虫…へぇ~生きた化石ねぇ…え、星の砂なの?ってなわけで色々調べてみた。
中でもわかりやすかったのはこのページ
Gen-yu's Files 愛の星砂
佐々木玄祐さんという高校生物の先生のサイトの1ページです。
殻に穴がたくさんあいている様子がよくわかります。
種類によっては太陽の光のようにトゲトゲしているものもあるので、「太陽の砂」というとか。
ネットサーフィンしていたら全てひっくるめて単細胞のような記述もチラホラ。

今回見つかった有孔虫は星の砂のように石灰質の殻ではなく、やわらかいキチン質の殻だそうです。トゲトゲはしてません。
ツルツルの有孔虫がトゲトゲの有孔虫へ進化するとき、何が彼らをトゲトゲにさせたのだろう?
トゲトゲで固い殻を持てば食べた側が痛いだろう事は予想されますが、なぜ固くてトゲトゲしていれば有利になることがわかったのか?
ナゾ。

例えば犬の中から何千年もかけて何らかの進化をして、犬αになったと仮定した時。
そうですねぇ…、有孔虫のように、毛がやわらかい状態から鱗のように固くなって周りからの衝撃などに強くなったとしましょう。
極端な道を歩んでいくとします。

衝撃に強いものが生き残りやすい→数が多くなる→犬αのほうが数が多くなる

それはわかるけれども、ではなぜ毛は固くなった方が有利だって犬が認識できるの?

ぐうぜん。

それしか答えが出ない。(笑)

…本当はこのあとも色々書いたのだけど、収まりが付かない上、進化論とかなんかそういう高尚なことにかかわりそうな感じだったので割愛。
生物って面白いことには間違いない。
それが偶然の産物だったとしても。

ウィルスレクチン2

2005-02-03 22:33:56 | 様々な微生物
1月5日のブログで書いたウィルスのレクチンの話で関連して。

徒然なるMicrobiologyさんでウィルスのお話が出ていました。
なぜウィルスの表面にはレクチンがあるのか?
それを考え始めると、私はとりとめもなく考えをめぐらせる傾向にあります。
なぜ細菌の表面にもレクチンがあるのか?
どうして植物にもレクチンがあるのか?
更に動物までもがレクチンを持っているのはなぜ?

レクチンを持っている=糖鎖に結合する能力があるタンパク質を生産している

ということなので、糖鎖に結合することで何かのアクションがそこで起きるわけで、
はたしてその機構を持つことはその生物にとってどれだけの価値があるのか?
ウィルスは簡単です。宿主に取り込まれやすくなる。

レクチンを持つ→宿主に取り込まれやすくなる→細胞で増殖できる→更に拡大する
レクチンを持たない→宿主に取り込まれにくい→増えにくい→廃れる

これまた私流進化論、たまたまレクチンをもつウィルスが誕生し、たまたま増殖しやすい環境になったからウィルスは繁栄してきた。

さて、ではなぜレクチンを表面に配置するような膜を構築したのか?
・・・・・・・わからん。
まさか、人間の細胞膜にはあの糖鎖があるからあの糖鎖にくっつくタンパク作ろうぜーってな具合には作っていたりはしないだろう。

やっぱり生き物の神秘。
卵が先か、鶏が先か。永遠の謎。

ノロウィルス

2005-01-10 22:40:39 | 様々な微生物
職員からもノロウイルス 7人死亡の特養ホーム (共同通信) - goo ニュース

コメントでは登場したノロウィルスですが、7日に食中毒かと疑われて報道された老人フォームでの集団感染ですが、食中毒感染ではないという結論に至りそうです。

私はこの報道を7日に見た時に、細菌性の食中毒とは違うのではないかな、と思っていました。
それは、流動食の方、普通食の方、職員の方、それぞれが発病していたからです。
通常、同じ食品を食べるものがなるのが食中毒ですが、まったく異なる食品である流動食と普通食が互いに汚染されるということがあまり考えられないと思ったからです。
また、食中毒であれば、29日から7日までに分散した発病が起こるのは余り考えられないことです。
細菌性食中毒は細菌の毒素が引き起こすものなので、細菌が出した毒素を食べたにせよ、細菌が腸内で増殖して毒素を生産したにせよ、同時期に食べた食品が元で起こる食中毒はそんなに長期間に分散しません。

ノロウィルスは元々Norwalk-like-virus(ノーウォーク様ウィルス・小型球形ウィルス)といわれ、もともと食中毒で問題視されているウィルスです。
通常は貝などの生ものの食品から食中毒に感染するケースで知られていました。
今回の感染は、食品以外のノロウィルスの飛散感染から起こったことですが、これは老人ホームという閉鎖的環境の影響のほか、寝たきりの方などの排泄物を職員がお世話をし、職員が施設内を自由に行き来するという環境も、感染を広げた原因ではないかなと思っています。

ノロウィルスは子供も感染しやすいのですが、子供の場合は軽い症状だけで済むことが多いです。
一般的に、白っぽい軟便~下痢便が症状として見られます。痛みはないことが多いようです。
反対に、大人が感染すると症状は重くなる傾向にあります。
小さいお子さんをもつお母さんは、オムツを換えるときなど、その後の手洗いをきちんとするようにしましょう。
手洗いは、普通の石鹸をつけて丁寧に洗うだけで十分効果があります。

ノロウィルス・ロタウィルスともに、急性胃腸炎としての度合いはかなりのものです。
私は何度もかかっていますが、一人で暮らしている人は特に注意してください。
痛みがくる場合は特に最悪です。本当に突然に痛みが来る上、貧血を起こす確率が高いです。
すぐに脱水症状にかかります。
近くに真夜中でも助けを呼べる人がいない場合は躊躇せず救急車を呼ぶようにしてください。