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バイオ・微生物実験好きな管理人による、研究仕事、日常、実験技術や理科系ネタのブログ

菌とインフルエンザウイルスの共通点とは

2005-01-05 23:19:46 | 様々な微生物

一種の菌とインフルエンザウイルスにはある共通点があります。
それは、細胞に乗っかるときの機構です。

その機構の主役は、レクチンというタンパク質です。

レクチンとは、特定の糖を見分けてくっつくという性質を持ちます。
一種の菌やインフルエンザウイルスは、このレクチンを表面にアンテナのようにして張り巡らせています。
一方、動物の細胞の表面には糖が付いています。
あまり予想できないことかもしれませんが、細胞には糖が連なった糖鎖がフサフサと生えたようになっています。
レクチンはこの糖鎖のなかでくっつくことのできるものを見分け、くっつきます。

レクチンには色々な種類があって、AレクチンはA糖を、BレクチンはB糖を見分けるという性質があるのですが、ここでインフルエンザウイルスの種類を考えて見ましょう。

インフルエンザウイルスには、
ヒトに感染するウイルス、鳥に感染するウイルスなど種類があります。
なぜ感染する対象が違っているのか、といえば、正体はレクチンです。
ヒトインフルエンザウイルス、鳥インフルエンザウイルスは、それぞれヒト細胞の糖、鳥細胞の糖を見分けることができるんです。

すごーい。
↑私がこの事実を知ったときの感想

こういう現象が起きているとわかった時って、すごく生命活動の神秘を感じますよね。
生物って面白い。

そう思っていただきたいなーという気持ちもあってこのブログを書いています。
社会人、大学生はもとより、中学生とか高校生の方にも興味を持っていただけたら凄く嬉しいです。


30年物のなれ寿司

2004-12-05 22:34:34 | 様々な微生物

なれ寿司という料理がありますが、ご存知ですか?
サンマやサバを酢飯と一緒に漬けた発酵食品です。
乳酸菌が増えて発酵し、大体5日から2週間くらいで食べます。

それがですね。先週だったかな、トリビアをご覧になった方もいるかと思いますが、
「30年物」のなれ寿司があると。びっくりです。
実物は、なんだか…米の影も魚の陰もない、ドロドロした物体…。
食していた歴代の食いしん坊万歳の方々も微妙な表情…。
それもそのはず、そのなれ寿司の(確か)1g中には109の乳酸菌。

109=1,000,000,000=10億

1g中にですよ。小さじ1が5gですよ。
(10g中だったかも知れないけど、それでも1gにすれば1億)

それが食べ物として機能しているのが凄い、
30年経ってもそんなに大量に乳酸菌が生きてるのが凄い。
スバラシイ。色んな意味で。

…私は遠慮しときます(エへ

菌の胞子は強いんだぞ。

2004-12-01 12:40:45 | 様々な微生物

細菌の胞子があるっていう話を前にしました。
細菌の胞子は一般に「芽胞(がほう)」と呼ばれることがあります。また、芽胞を作る菌を「芽胞菌」と詠んだりもします。
私の職場ではこの呼び方が普通になっているので芽胞と呼ばせてもらいます。

芽胞は熱や乾燥に強い、という話を前にしたのですが、実は芽胞の強さはそれ以外にもあるのです。
それは、アルコール消毒が効かないこと。
簡単に何かを消毒できる消毒用アルコール。あれは実際には60~70%エタノールが基本です。100%エタノールよりは濃度が低い方が効果があります。
大抵の微生物(細菌・カビ・酵母など)に対して殺傷能力がありますが、芽胞に対してはほとんど効果がありません。
なぜアルコールが効かないのでしょう?

それは、「面の皮が厚い」ふてぶてしいヤツからです。

芽胞は硬い殻をもった種と一緒です。アルコールは芽胞の殻の中に浸透することができないのです。


私は学生の頃、植物組織培養をやっていたことがありましたが、植物の培養には細菌汚染は厳禁でした。
そして、教授によく言われていたのが、「納豆は絶対食べるな」でした。
「納豆菌はすごく強いから」
食べるとしばらく保菌者とみなされて、研究室に入ることすらだめでした。
当時は強いんだー、へぇー。くらいのものでしたが、仕事を始めて芽胞のことを知ったときに、あー、教授ってば正しいわ。と思いました。

培養実験をやっている方がいらっしゃいましたら、納豆は食べるのを止した方が良いです…。
手についたら、アルコールでも消毒できませんから、コンタミ覚悟ですよ…。