名寄まで最後尾の車両に座っていましたが、名寄に着くと巡回してきた駅員から「この列車は名寄で切り離します、先頭車両へお移り下さい」と告げられました。
一両編成となった気動車は、車体に一本の赤い線が入る、軽快な印象のデザインでした。
もしかすると、長距離運行機能を持っ車体かもしれません。
列車は7時52分に名寄駅を発車しました。
後方の窓から見ると、切り離された車両が次第に遠ざかってゆきます。
一両編成の気動車は昇降口の横以外、シートが全てがボックス席で、車両先頭の昇降口の横にトイレが付いていました。
車内は明るく、快適な旅を約束してくれそうです。
列車は名寄を出てすぐに名寄川を渡りました。
名寄川は名寄市内で天塩川と合流しますが、名寄という名はアイヌ語で川の合流点を意味するナヨロフトに由来するとされます。
運転席の横に運賃箱が設けられ、運転席周囲の全てがガラス張りで、乗客は前方の景色を存分に楽しむことができます。
運転席の後ろに「運転手へのはなしかけは停車してからお願いします」の一文が表示されていました。
ということは、停車中であれば話しかけてもいいと判断し、
停車中の運転手に「稚内まで運転するの」と問いかけてみました。
「ええ、そうです」の答えを頂きました。
「それは大変だ、今日は稚内泊まりですか?」
「いいえ、稚内から特急列車を運転して今日中に帰ります」
「おお、そうなんだ! 冬は大変でしょ?」
「ええ、でも冬より夏は、時々鹿が線路へ飛び出て、ぶつかるんです」
「えっ! ぶつかったことあるの?」
「ええ何度かあって、鹿を退ける作業が大変でした」
などと、興味の尽きないお話を聞くことができました。
30歳前後ぐらいの、誠実温厚な人柄が滲み出るような運転手さんでした。
列車は日進駅を出て、防雪林が整備された鉄路を進み、すぐに車窓左手に天塩川が見えましたが、線路脇の木立が邪魔で、シャッターチャンスを狙っているうちに川を写し損ないました。
川と線路の狭間に牧草地が続きます。
下の写真には写っていませんが、牧草地の奥に天塩川が流れ、その後ろに迫る丘陵地を、広大なヒマワリ畑が黄色く染めているはずです。
2010年の夏に北海道のヒマワリを訪ねましたが、そのときに見た広大なヒマワリ畑が記憶に蘇りました。
牧草地の横でハンゴンソウが黄色い花を咲かせています。
十年以上も前に、全国のヒマワリの名所をリスト化し、全国にヒマワリを訪ねる旅を初めて以降、私の中の晩夏は、陽を浴びた黄色のイメージに染まっています。
列車は8時18分に美深に到着しました。
宗谷線は単線ですが、この駅で対向列車とすれ違いました。
美深という地名はアイヌ語で「石の多い場所」を意味するピウカに由来するそうです。
列車が美深駅を出ると、オオイタドリの白い花に飾られた線路が北へ伸びていました。
灌木のようにも見えるオオイタドリが線路を包む光景なんて、北海道以外に見たことがありません。
澄んだ空に浮かぶ雲の下、オオイタドリがおおらかに枝を広げ、白い花を咲かせる光景は、北海道であればこそのものです。
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