ゆらゆら荘にて

このごろ読んだ面白い本

「塞王の楯」 成長小説+仕事小説の時代小説

2022-04-18 | 読書日記
「塞王(さいおう)の楯」(今村翔吾著 2021年10月 集英社刊)を読みました。
直木賞受賞作です。



主人公の匡介は
幼い頃に戦に巻き込まれて父と母と妹をなくし
石垣を積む技能者穴太衆(あのうしゅう)の飛田屋の頭領・源斎に助けられた。
石を見る目を持つ匡介を
源斎は後継に決めている。
誰も破れないような石垣を築いたならば
この世から戦は無くなる
と信じて
匡介は修業に励んでいる。

時は関ヶ原の合戦の少し前。
戦、また戦で
石垣づくりの需要が絶えなかった時代は終わろうとしている。
強度のある野面積みよりも
これからは
表面が滑らかで見栄えのする石垣が求められるようになるのかもしれないのだ。
「切込接(きりこみつぎ)に代表されるような見せる石垣を造り
絵師や塗師のようになるのか
田の畔の石垣を造るような小さな仕事をするようになるのか
穴太衆も変わる時が来たのかもしれない」
と源斎は言う。
ここまでちょうど半分。

さて、後半は…
攻撃されて崩れた石垣を補修しながら城を守る「懸」
(ライバルで
鉄砲造り職人集団国友衆の彦九郎との
鉄砲対石垣の
手に汗握る戦い)が描かれる。
舞台となる城は琵琶湖岸の大津城
城主は京極高次、奥方は初(淀殿の妹)。
(この2人のキャラクターが面白い)

まあ、後半の「懸」が読みどころ
だというのは分かる
けれど
「穴太衆も変わる時が来たのかもしれない」
が課題提示だと思ったので
(個人的には)
その解が読みたかったという気がします。
(暗示はされているのですが)

前半で一冊
後半で一冊
別の本にしたらよかったのではないか
と思います。






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