「武道家評伝シリーズ」沖縄においてすら忘れ去られつつある『手(ティー)』の歴史を綴った一連の作品『義珍の拳』『武士猿(ブサーザールー)』『チャンミーグヮー』に続く四作目。自らも空手道場を主宰する著者の沖縄空手1829年、沖縄の泊村で生まれた松茂良興作(まちむらこうさく)の一代記。
主人公である松茂良興作が生きた時代は沖縄に生きる人々にとっても苦難の歴史そのものだった。琉球処分と廃藩置県による琉球王国の消滅、というウチナーの危機の時代に、武道家としていかに生きるべきか。「この時代に手が何の役にたつのか?」興作は繰り返し自らに問い、弟子からもまた同じ問いを投げかけられる。沖縄の存立の危機は、そのまま沖縄人としてのアイデンティティーが問われることでもあった。時代の行く末の見えぬ不安と苦難の時代に、武士(ブサー)として「手」に生きる意味とは何なのかを追及した空手の真髄と沖縄のあるべき姿を追い求めた男の波瀾の生涯は感動の物語でした。2017年9月集英社刊
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