メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

notes and movies(1995.4~ part1)

2013-04-01 21:31:14 | notes and movies
過去のノートにある映画感想メモシリーズ。
今回はディランの切り抜きが貼られた黄色いノートからご紹介。
まだまだコメディブームは続いて、クラシックにも波及していった。

  

photo1:図書館で借りたビデオの解説書をコピーして貼ってる
    これはチャップリンだけど、私はキートンが好き。この年にキートンや、ダニー・ケイを知ったらしい/祝
photo2:フレンチ・オープンの記録。この年はグラフ、トマス・ムスターが優勝。
photo3:北海道旅行。おたる水族館、大通り公園、植物園などを見た。

若かりし頃のメモなので、不適切な表現、勘違い等はお詫び申し上げます/謝罪
なお、あらすじはなるべく省略しています。


『正義一直線』(1987)
監督:トム・マンキウィッツ 出演:ダン・エンクロイド、トム・ハンクス、クリストファ・プラマー ほか
SNLの同窓生2人が共演する刑事コメディ。元ネタはコミックシリーズらしいけど、
とにかくオールドファッションでお堅い刑事ジョーと、元ヒッピーで軽いノリのペップの
対照的なコンビが組んでペガンなる犯罪者集団を追う。
宗教がらみに毒ガス・・・ちょっと待って、最近世間を騒がせている大事件によく似てるじゃないか?
エンクロイドは超お堅いジョー役、早口の得意技が生きてる。トムは最近はドラマ志向、
『フォレストガンプ』で2度目のオスカー受賞で立派に俳優の仲間入り。
でも、やっぱり隣りのお兄ちゃん風の親しみやすさで、エルム街の悪夢のフレディ演技は笑える。


『ルートヴィヒ 神々の黄昏』(1972)
監督:ルキノ・ビスコンティ 出演:ヘルムート・バーガー、ロミー・シュナイダー ほか
ちょっと記憶が薄れてきた。ヴィスコンティ作品は、文学的で映像美は古典画のよう。
ちょっと肩が凝るハイレベルな会話、おまけに政治関連ときて、ついていけない感じ。
たぶん実在した王の歴史に基づいてると思うけど、同じ貴族でもある監督の視点もあって、
欺瞞に満ち、はてしなく孤独な王が愛されることもなく、疑心暗鬼の陰に追い詰められ、
近親相姦による精神異常の血筋である恐怖にも怯え、狂気、倒錯のはてに謎の死を遂げるまでをじっくり描いている。

ルートヴィヒ役の俳優のほか、美しい男優が目白押し。まあ、『ヴェニスの商人』の少年には敵わないけど。
特に主人公は希望と理想に燃える若き王から、次第に変わりゆく様子を熱演。
シェイクスピア悲劇ばりの品格ある作品。

ストーリーは現在進行形と、後々の側近らの証言とで成り立っている。
傀儡としての王族制ならやめちゃえばいいのにって思うけど、シンボルとして必要なのかしらね。
それにしても舞台はドイツ、役者は英語を喋っている上にイタリア語の吹き替えをかぶせてあるからなんとも妙な違和感。
イタリア語はあんまり文学的超大作向きじゃないなと思うのは偏見かしら?
ロミーも妙にあだっぽい声になっちゃってるからイメージへの影響が大きいと思うんだけど


『アルジャーノに花束を』(1968)
原作:ダニエル・キイス 監督:ラルフ・ネルソン
出演:クリフ・ロバートソン、クレア・ブルーム、リリア・スカラ ほか
今や世界的な人気作家原作の映画化。日本でもキイスの作品は未だに書店の棚を埋めるベストセラーで
「多重人格」という言葉が話題となったのもこれらの影響。
この初期作品の主人公チャーリーは、精神薄弱、知的障害者であって、多重人格とは異なるけれども、
ニンゲンの脳の仕組みのフシギという視点、そしてこのような人々に世間の理解が薄く、
社会的にも人間的にもさげすまれている事実を描いていることは一貫したテーマだ。

自分の幻から逃れて走るシーンを迷路のネズミとだぶらせるあたりは上手い。
音のない静かな終わり方はむしろ心を動かし、仏映のようなエスプリを感じる。
『シルベールの日曜』のように、途中ワイルドになったチャーリーの妙な踊りとバイクシーンは
一気にブッ飛んだアメリカ・ニュー・シネマの世界だけど。

チャーリーは知力を持って幸せになれたかしら?
たしかに知力が人間とほかの動物との分岐点で、NOと言える意志と自由、物事をあるがままに捉え、人を愛することもできる。
でも、同時に不安と恐怖、現代社会が抱えるあらゆる悪とストレスも見えてしまう。
ラストシーンの子どもと一緒に遊ぶ彼の笑顔には、純粋な満足、楽しい気持ちがあふれている。
そんな彼らを笑う者こそ、捻じ曲がった心を抱える不幸な者なんだ。この邦題は美しい響きをもっていてイイ。


『ライアンの娘』(1970)

監督:デビッド・リーン 出演:ロバート・ミッチャム、クリストファ・ジョーンズ、レオ・マッカーン、バリー・フォスター ほか
ひと昔前の小説にある政治状況を背景とした女性の貞節の話。『緋文字』みたいな。
文学的にどうかなんて批評は恐れ多くてとてもできそうにないから、90年代の女性としてシンプルな感想を記録することにしよう。
女は妻として家にいるのが当たり前って考えで凝り固まった町。
「他になにかあるはず、夫、金、健康の他に」てセリフに、私は「楽しみ」があると思うな。
ストーリーを和ませる道化・マイケルが、戦争を続けざるを得ない兵士らの狂った世の中すべてを代弁している。

(この映画のミッチャムはセクシーだったなあ そっかヒロインのサラ・マイルズは『白い炎の女』の彼女だったのか!驚


『拝啓、検察官閣下殿』(1949)

監督:ヘンリー・コスタ 出演:ダニー・ケイ、ウォルター・スレザク、バーバラ・ベイツ ほか
作詞・作曲・製作協力:シルヴィア・ファイン(ダニー・ケイ夫人)
ダニー・ケイは天才だ 芸人中の芸人。輝くブロンドに、青い瞳、スラリと高い背丈、高い鼻、
ルックスはバツグンで、真面目に歌えばオペラ歌手並なのに、ひとたび歌い出せばおもちゃ箱をひっくり返したように
次から次へと出てくる出てくるびっくり、可愛くて、可笑しな芸ばかり。

それほど出演作は多くないけど、1作品ごとに詰まってるパフォーマンスは、これ以上ないほど人々を楽しませる
これぞワン&オンリー。話によれば普段からしょっちゅう周りを笑わせている人だったとか。天性の賜物ってわけね。
夫人が作ったこれまたなんとも楽しい曲の数々が今作にも盛りだくさん
公私共に良きパートナー、まったくパーフェクトなカップルで羨ましい!

オーケストラのハデハデしい演奏はまさに'50年代ハリウッド。双子の郵便屋はイイね!
アザで見分けるのに自分たちもこんがらがって、やっとどっちか分かって「そうだったのか」なんて納得したりw
ダニー・ケイの情報をもっと集めなきゃ。ちなみに今作はあの楽しい『虹を掴む男』に続いて出演したものだそうな。


『ウッドストック'94』
出演:DEL AMITRI, LIVE, COLLECTIVE SOUL, VIOLENT FEMMES, JOE COCKER, JAMES BLIND MELON, SHERYL CROW, CRANBERRIES, ZUCCHERO,
CYPRESS HILL, ROLLINS BAND, TRAFFIC, GREEN DAY, NINE INCH NAILS, SALTN' PEPA, METALLICA, AEROSMITH,
PORNO FOR PYROS, NEVILLE BROTHERS, BOB DYLAN, RED HOT CHILI PEPERS, PETER GABRIEL ほか

1日目はともかく、2日目はいにしえのウッドストックのスター、コッカー殿から始まる。
ずっと老けちゃってるのに驚いたけど、♪I'm feeling all right のブラックな音はなかなかイイ。
次のクランベリーズとやらは裏声の女の子。その次がまたすごいメロンとかいう人。
聴いてるほうも、ステージの連中もブッ飛んだショーだね。戦争を知らないラブ&ピース、ロックンロール・チルドレン。
ヒッピーでもない現代のMTV世代による、過去のウッドストックの焼き直し。というかトップチャートの連中を集めたフェスの1つ。

観客のウェイブならぬ大玉競争もあり。相変わらず泥んこの連中もいるし、一応35$も払っているらしい。
一緒に歌っている人もいるけど、みんな聴いてるのかな?て感じ。
ドラッグ解禁の場所。WSもヤッピーやアーティストの街に変わっちゃったんだね。
ミック・ジャガーと称するあのおやじさんは一体誰だったんだ?
観客は見る限りみんな白人。突然、そこにジャマイカ音楽。こうゆう個性も欲しいよね
ギターやドラムをコンピュータサウンドとすり変えても誰も気づかないかも。
これだけ大勢の観客を1つにまとめるには、攻撃性と扇動的になるしかない。2日目は雨
あの世からこの様子を見ているミュージシャンはどう思うかな。ジャニスや、ジミヘンは。同窓会じゃないもんね。
古顔のディランや、エアロスミスでさえWSのメンバじゃなかったし。

3日目のブルースはイイ。火を吹くお姉さんの大道芸まである。
ネヴィルbrosによる♪カム・トゥゲザー のハードロックver.にはビックリ!
きっとこれをジョンが聴いたら気に入ったと思うな。♪ハイウェイ61 までハードロック!!!
エレクトリックのディランには参った! 彼はこれがやりたかったんじゃない? でも最近また「アンプラグド」出したけど。

規模的には前回と同じか、それ以上の大祭典となったわけだけど、ラブ&ピースと言いつつ、
世界平和へのメッセージより、個人を解放する主旨のほうが強いみたい。25年経って音楽シーンも変わっていった。
次なんかもまたあるのかな? その時は誰が残って、どんな新しいムーブメントが起こっているのか?
今回もチケなしでもぐりこんだ人もかなりいたみたい。今回は採算合ったのか?
前回のビデオは、ステージとオフステージのドラマが半々だったのに比べて、
今回はライトがギンギンに当たったステージとその他大勢って感じ。
これを観て、俺も音楽やるぞー!て奴もまた出てきて、WS'94世代ってのも活躍する時代もくるんだろうね。
こうして何度も再生し、受け継がれていってる。どんなに形が変わろうと、ロックバンザイ!ってお祭り。


『アンディ・ウォーホルのフランケンシュタイン』(1973)

監督:ポール・モリセイ 出演:ジョー・ダレッサンドロ、ウド・ギアー ほか
ウォーホルがこんなスタンダードホラー映画のリメイクに関係していたのは意外。
こんな企画をわざわざ取り上げてくれたBSに感謝。でもアンディがどこまで製作にタッチしてたかは不明。
モリセイが監督だから彼独自の作品として観たほうが正解かも。
しかし見事にスプラッタしてるね。内臓づくしってとこ
で、姉弟が夫婦だったり、姉が色情魔で、男ゾンビがどことなくゲイ風なのは、いかにもファクトリー色がにじみ出てる。
出ている俳優がこれまた美形、長髪ぞろい。子役までもが妖しい魅力でアングラホラーって感じ。

イタリア・フランフ映画? 確かに訛りはキツいけど立派にアメリカ映画だ。
美しい肉体を自ら作り上げて自分の命令どおりに動かすってゆうのは、そんなに人を惹きつけるものかね。
しかし考えてみると、脳や体の各パーツは別人の組み合わせだから、その子どもは必ずしも完璧じゃないんじゃないか?
医学のプロにしてはおかしな推論だ。どんなにキスしても反応しなくて、何度もキスさせるシーンなんかユーモアもあるけど、
やっぱこんなにはらわたを出さなくてもいいのではないかい? 退廃的でアートな雰囲気はやっぱある。


『アンディ・ウォーホルのドラキュラ』(1974)
監督:ポール・モリセイ 出演:ジョー・ダレッサンドロ、ウド・ギアー ほか
前と同じスタッフ、キャスティング、したがってほとんど同じトーンのスプラッタなんだな
この2本立てを劇場の大スクリーンで続けざまに観せられた日にゃたまんない!
気が滅入るほど血どろどろなんだ。ここまでくると笑っちゃうしかない。

なんといってもちょっとジョン・ローンを思わせる異色の魅力を放つギアと、その助手役のコンビが実に危ない。
完全にキレてる。普段からこうだったら絶対近付きになりたくない。
あくまで処女にこだわって4姉妹の館に行き、次々と試していくんだけど、ことごとく外れ。
そのはず唯一の雇い人がウォーホル畑の美青年で彼が全部手をつけてたんだもの!お気の毒さま。
“純潔の愛”を高らかに歌い上げたコッポラがこれを観たらさぞかし怒ることだろう。

太陽の下も案外平気だし、十字架もつまめる!、祭壇も避けながら、結構大丈夫な吸血鬼じゃん。
ま、最初の始まり方、ドラキュラが完璧メイクしても鏡に自分が映らないってゆうのはスゴイ。
自分がどんな顔か一度も見たことないことになるよね。でも、そこは作り話、彼らはみなこの上なく美しい容姿。


『クロウ 飛翔伝説』(1994)
監督:アレックス・プロヤス 出演:ブランドン・リー ほか
なるほどかつてないヒーローの誕生だ。なんとも哀しく、なんとも美しい。
闇を飛び、不死身でありながら、復讐のためだけに蘇ったロックスターの魂。
これほど人間味にあふれたキャラをもつヒーローは今までにない。

今作は撮影中に亡くなったブランドンとエルザに捧げられている。エルザとは母だろうか?
またハリウッド映画はスターを失ったわけだ。興行的には大成功。
他の作品と同じく、ラストシーンまでリーが演じているがどのシーンで亡くなったのだろうか?
どのシーンでもおかしくないほどリアルな撃ち合いのシーンは何度もあり。
最近はスタントも使わず俳優本人が演じて絶賛される傾向にある。
過激なバイオレンスシーンはますます過激に、リアルになる一方で、これからも起こり得る事故だ。

アクションだけでなく、道に炎で浮かび上がる鳥の絵のシーンなど見とれてしまう演出の数々も見どころ。
夜の街でエレキギターを弾く超人ヒーローなどなかなかいない。
この若さで、これからメジャーで活躍する可能性が開けた主演第1作で亡くなるなんてなにかの呪いとしか思えないリー一家。
「ビルは焼け灰となるが本当に愛し続けるなら真実の愛は永遠に続く」
もうひとつ屋上を高速で駆け抜けるシーンもスゴイ。


『ブローン・アウェイ 復讐の序曲』(1994)
監督:スティーブン・ホプキンス 出演:トミー・リー・ジョーンズ ほか
今ノリノリのハリウッドドル箱スター、ジョーンズと『フィアレス』で熱演を魅せたジェフ・ブリッジスの演技対決と、
『バックドラフト』を超える芸術作品ともいえる爆弾仕掛けの数々
都市の夜に突如現れる真っ赤なキノコ型の炎は、恐怖をこえて美しささえ感じる。
ラストのテロップに亡くなった3人と巻き添えになった千人余りの追悼が捧げられているが、実話に基づいた話なんだろうか?

ジョーンズが特に怪演で大活躍。U2にのって踊るシーンまである。
アイリッシュ訛りで家族に近付くあたりは『ケープフィア』のデ・ニーロを思わせる。
ビデオの中ではいろんなマスクでいろんな変装を楽しんで、こんな柔らかい演技もイイ。
最後はなんとジョー・コッカーが力強いこぶしを聴かせてくれる。
新人の男が聞いていたのはアレサ・フランクリンだったし音楽の使い方も粋

コメント

notes and movies(1995.4~ part2)

2013-04-01 21:31:13 | notes and movies
過去のノートにある映画感想メモシリーズ。
part1からのつづき。
若かりし頃のメモなので、不適切な表現、勘違い等はお詫び申し上げます/謝罪
なお、あらすじはなるべく省略しています。


『トリコロール/白の愛』(1994)

監督:クシシュトフ・キェシロフスキ 出演:ジュリー・デルピー ほか
白の愛=結婚として異国人であるばかりに好きな人と愛を交わすことも、
人間として生きていくことすら苦しいある男を焦点にして究極の愛を描き上げる。
デルピーの陶器のように白いクールな美しさは作品のテーマを象徴しているけれども、2作目は男のブルースが中心。
最初に現れた時は冴えなくても、話が進むごとに磨かれる俳優の魅力、それを引き出す監督の腕も光る。

ひどい復讐としか言いようがない。異国で理解されず、愛も届かない地獄の苦しみ。
恨みのこもった2ペンス硬貨に誓ったのはこんな残酷な結末だったのか。命と引き換えにした愛。
途中『青の愛』の1シーンがあったそうだが分からなかったのが残念。
青い電話ボックスのことじゃないよね? ヒロインがそれぞれすれ違うらしいけど分からない。
ラスト3作目は『赤の愛』。ヒロインはあの『2人のベロニカ』の女優なので楽しみ。
フランス映画の3連作といい、色に例えた男女の愛のストーリーといい、このコンセプトは本当に画期的。


『ザ・クライアント 依頼人』(1994)
監督:ジョエル・シュマッチャー 出演:スーザン・サランドン、トミー・リー・ジョーンズ ほか
次から次へとエキサイティングなヒット作を生み出し続けるアメリカ映画のパワーには本当頭が上がらない。
今作もこのストーリーにして2人のベテラン俳優、そしてすばらしいデビューを飾った新人ブラッド君の起用で決まり。
なんでも弁護士がつくアメリカならでは。少年がテレビで見て、まるでゲーム感覚で勇敢にFBIに食ってかかり、
殺し屋の追っ手から逃げ出して、自分の権利を堂々と主張する。
個人主義の中で育つアメリカの子どもはやっぱり日本とだいぶ違うね、感覚が。
弟におどけてみせる時は子どもだけど、レジに向かって「友達だろ。助けが必要なんだ」と訴える表情には
大人になる手前のドキっとさせられるイイ表情が出ている。

マスコミ合戦に、盗聴合戦、まさに現代犯罪に対するテレビで日々目にする、どこかで実際起こっていそうな事件。
そして貧困問題も重なっている。若くして子どもをもつ母子家庭、保険もなく、弁護士料は高すぎて雇えず、
安い給料、悪条件で働かされている。こんな状況も決して映画だけの話じゃない。
「夢はいつかかなうもの」鼻っ柱の強い弁護士役はサランドンにハマり役。
子を持つ母の情も素直に表現している。色っぽいシーンが全くないのはハリウッド映画では珍しいが、
ジョーンズとのスリリングな駆け引きはデキる男と女同士の魅力がある。
ジョーンズは今やハリウッドで引っ張りだこ。いるだけでセクシーだし、作品がひきしまる。悪も善も演じきれる名優だ。


『エスケープ』(1994)
監督:マーク・L・レスター 出演:アンドリュー・マッカーシー ほか
人生投げて腐った生活をしているタクシードライバーがカジノで横領された100万ドルを拾ってプロの殺し屋に追われる。
ターミネーターみたいに的確、かつ迅速に追ってくる殺し屋と、逃げて逃げて逃げまくるうちに命拾いしてツイてくる男。
邦題通りの追跡劇でみせる1本。この金額なら命を賭けても逃げ切る元気も出るわけだ。
物価が上がって100万円やそこらじゃ盗む気にもならないもんね

『羊たちの沈黙』で渋い警部を演じて一気に顔が売れたS.グレンがクールで完全無欠の殺し屋役にハマってる。
場合によっては警官にもなるし、気の弱いゲイのフリまでする徹底さ。でも、やっぱ性格はおもてに表れるのか、
誰が見てもテックスはワル顔で、マッカーシー演じるジェリーは善人面。
今までもそういうイメージの役が多かったし、ヒゲをはやしても、やっぱりマッカーシーは甘いマスク。
どんなに追い詰められてもそこには必ず救ってくれ、味方になり、愛を与える女の存在がある。
余計なおせっかいでひどい目に遭って巻き込まれるクリスも、ダムに落とされちゃうウェイトレスも、
ま、逆に陥れる情報屋もたくさんいたけど、実際もああゆう組織とボランティアが存在しているんだろうね、きっと。
身を滅ぼすも助けるもちょっとしたツキってことか? でもこればっかりはコントロールできないもの。


『アニマルハウス』(1978)
監督:ジョン・ランディス 出演:ジョン・ベルーシ、ティム・マティスン、ブルース・マッギル ほか
これが噂の作品。対立する優等生ヤッピー組と、落ちこぼれアホ集団それぞれの友愛会同士の戦いっていう学園コメディの本家みたい。
ベルーシが主役扱いで確かに有名なキャンバス食堂での大食いほか怪演シーンはあるけど
セリフのないパントマイムが多いし、出番はそう多くない。とっても若いT.ハルスや、K.ベーコンが初々しい。
友人付き合いは容姿から? 貧弱そうだったり、チビ、デブは文句なくバカにされちゃうのはキツいなあ。
アメリカじゃ肥満は、不摂生や、自己管理能力がないイメージとして扱われるのね。

ソウルフルな黒人バンドといいルイ・ルイ はじめ、新入会員の歓迎会でのロックといい、ベルーシ好みのノリのいい音楽がいっぱい!
彼は7年留学のベテラン大学生で、頭で缶を潰すわ、瓶は割るわ、体当たりのギャグでハイテンションぶりを見せている。
D.サザランドも生徒にマリファナを勧めるし、女子学生と寝ちゃうってやり放題の
アナーキーな教授役は『MASH』を思わせるハマり役。
アメリカ映画で学園コメディってほんと人気がある分野のひとつに定着してるね。
日本と違ってこの解放感。大人になる前の必須段階なんだ。


『プレイグ』(1992)

監督:ルイス・プエンソ 出演:ウィリアム・ハート ほか
“ペストは家具にハンカチに潜み、再び人に思い出させるため戻ってくる。ネズミを送り、幸せな町を死滅させるために”カミュ『ペスト』
完全に世紀末一色の作品。時代も20世紀末、町の名はオルク。でも、これはどこにでも、いつ何時訪れるか分からない。
そしてペストは単に疫病でなく、この恐怖と死の影はどこにでも潜んでいる。生と常に隣り合わせの逃れられないものだ。

「平凡な生活とは何だ? 敵に取り囲まれているのがオレの日常生活だ」その敵とは?
ラウル・ジュリアはこれが遺作か?「死」にとりつかれた男の狂気漂う演技が残る。
「苦しみは幸せのありがたさを教えてくれる」まさにその通り。
苦しみや死を恐れて暮らすより、わずかでも幸せを楽しんで生きていきたい。

ベテランより抜き俳優陣の中でボネールとジャンらフランス勢が熱演。そして隠れたヒーローがR.デュヴァル
「私は町から出たことがないから分からないが、ノスタルジアという言葉は好きだ」
彼のあたたかい笑みは唯一黒雲にさしこむ一筋の光だ。
「病原菌も生きようとする自然の産物だ」
人間だけが生き延びようとすることは自然が許さないってこと。神は生も死も、苦しみも幸せも超えたところにいるんだと私は思う。


『カウガール・ブルース』(1994)
監督:ガス・ヴァン・サント 出演:ユマ・サーマン ほか
'70代の色濃いフェミニズム運動が盛り上がったアメリカの話。原作本が書店に並んでて実話かと思ったらフィクションか。
でも、こんな女の子がいても面白い。生まれもった特大の親指を生かしてヒッチハイカーのプロになり、人生が移動そのもの。
そこから芸術論、しまいには聖域(State of Grace)まで達したと豪語するシシー。
奇形を個性として利用して、成功したって話。

題材も変わっているが語り口も一風変わったポップなシーンがいくつもはさまっている。
切った親指がまだ小躍りしていたり、ヒッチハイクで飛行機や流れ星まで操れたり。
でも、一番ポップだったのは、自称伯爵夫人なるJ.ハートのオカマ演技。
まさにオカマってやつを的確に演じ切れてるものだから、違和感より、妙に感心してしまうからなお怖い。
「for River」とのことだが妹がどの人なのか分からない。K.リーブスがちょっと顔を出しているのもその関係からか。
「人が作ったもので唯一自然に近いのは茶袋だ」っていうのも面白い。
いつもなにかにとりつかれた放心状態って雰囲気のサーマンが、言葉少ないヒロインで
ラスト、焚き火にラブレターを焼くシーンはなんともいえない。
シシーはその後もずっと片親指のパフォーマンスでヒッチハイクを続けているだろうか。


『コンスタンス』(1984)
監督・脚本:ブルース・モリソン 出演:ドノフ・リーズ、シェーン・ブライアント、グラハム・ハーヴェイ ほか
スター女優を夢見る女の野心的に登りつめてゆく波乱万丈サクセスストーリーかと思いきや、
失敗して墜ちてゆく重苦しい最後。鏡の中の美しい自分に惚れるナルシシズム、父親に溺愛され、
母の嫉妬を見て育つといったフロイト的コンプレックスもあって、現実と白日夢の間をさまよい、
結果、すべて失い、神経衰弱に陥っていまう。
繰り返し流れるデートリッヒの歌同様、退廃ムードが漂う。
メイク、宝石、ドレス、どれだけ着飾っても自然な自分に戻った姿が一番美しく見える。

死んだはずの両親が部屋に出るシーンは怖い。彼女は親、家、そのしきたりに縛られ、離れることができない。
夢は幻となって、それに向かって翔ぶことは叶わなかった。
映画スターのようになれたら、と、鏡の中の自分を飽きずに眺める少女は、大人になっても成長していないようだ。
ひとつひとつの仕草にそれがよく出ている。今の時代なら特に女優の世界は自らの性と引き換えに
スターダムにのしあがるのもありだってイメージがあるけど、'40代ニュージーランドは違っている。
美しいだけでも、才能だけでもない、チャンスを作って、運を味方につける。
女優としての成功は難しいアンフェアな世界だね。
アメリカ映画とはやっぱりちょっと異質なニュージーランド映画の世界。
大輪の女優ドノフ・リーズが着こなすファッションも見物。


『バッジ373』(1973)
監督:ハワード・W・コッホ 出演:ロバート・デュヴァル、ヴェルナ・ブルーム ほか
デュヴァルが『ゴッドファーザー』の翌年に出演したハードボイルドな刑事アクション。
当時42歳の彼の魅力がたっぷり。吹き替えだから本人の声とあの乾いた笑いが聞けないのは残念。
もうすでにお腹が少し出てるけどスーツを着るとスマートだし。
真犯人をクレイジーな人にしちゃうラストは安易だなあ。
「警官は一番買収しやすい」ってセリフはキツイ。その辺が今作のテーマみたい。
あとは人種差別と、デュヴァルがGGの相棒の家の豪勢さを見て
「警官にこんなものが買えるわけがない。スイートの甘い汁を吸っていたんだろう」というセリフ通り、
警官の働きに対する賃金の低さ、待遇の悪さも原因みたい。
奥さんも警察稼業に付き合いきれずに別れちゃうし、事件に巻き込まれて命まで脅かされたら怖いものね。因果な仕事。
でもせめて法を守る警官は悪にさらされる市民の安全を守る壁であってほしい。
警官役が多いデュヴァルのいろんな表情が見れてファンには嬉しい。初期作品ももっと観たい。
冒頭のプエルトルコ人の変装にはドギモを抜かれたけど。どーしたのって感じですごい怪しい。


『ローズヒルの女』(1989)
監督:アラン・タネール 出演:マリー・ガイデュ、ジャン・フィリップ・エコフェ ほか
「観る者の心を切なく打つ、スイス映画を世界的レベルに引き上げた名作」て宣伝文句だけど、
ブツブツ切れの撮り方はストーリーのあらすじだけをピックアップしている感じで抽象的。
せめて女が経済的な貧困からか、子どもを失った悲しみからか、島国を出てきた背景が語られれば、
後々の環境変化、異国人と結婚して滞在許可をとるしか方法がなかったツラさにも共感が持てるのだけど。
これでは単に無計画でワガママ、離婚すれば不法滞在となることも予想できないバカな女のようで、キャラクターに深みが感じられない。
マリーは確かにモデル系の美しさで、ヌードもみせてヒロインを演じているが、もうちょっとドラマ性が欲しかったな。
スイスもフラン語圏? ローズヒル(バラの山)はどこなのか知らないけど有色の妻を迎えるのはやはり珍しいことなのかな。
どうしてここまでこんがらがらなきゃならないのか、むりやり悲劇になった感じ。


『ビリー・ホリデーの真実』(1991)

監督:マシュー・セイグ 出演:ルビー・ディ、バック・クレイトン ほか
貴重なドキュメンタリー短編映画。ビリーだけでなく、巨大な暗闇のごときベッシー・スミスの歌っている映像、
それと対照的に周囲を楽しませずにはいられないサッチモのおどけたパフォーマンス、レスター・ヤングのブルージィな演奏、
やはり映像の与えるインパクトは強烈。文章で読むより、生き生きと動き、聴かせてくれる。

ビリーの声と半生に触れるのは今回が初めて。ティーンエイジャーの父母から生まれ、
スターとなってもなお私生活では闇の部分が多いようだ。ドラッグ、アルコール、何度かの結婚生活の破綻、
タフなロード生活、黒人女性としてのアンフェアな状況、そして麻薬所持で捕まり、獄中生活まで体験し、
それもステージ出演のネックになった。

「1人で何千人分の人生を生きている」周りがみなハッピーなのに、彼女は不幸だった。
蓄えもなく、病院で心臓発作でこの世を去るまで、彼女の特異な才能と不幸な私生活にスポットを当て、アウトラインだけまとめてある。
彼女のまたの名“レディ・デイ”は最初、母親に付けられたものを後からとったなどのエピソードを友人らが語るとともに、
南部に住む黒人に対する信じ難いリンチをモチーフとした奇妙な果実 ラバー・マン
ほか数多くのヒットナンバーも入っている。生で歌う姿、バックバンドの演奏に酔いながら、
両腕を腰のあたりにそえる独特のスタイルで、口を歪めて、透き通る高音、深みのある低音を使い分ける声、
豊かな髪を後ろでひとつに束ねたヘアスタイル、端整な顔立ち、スタイルの良い美しいレディ・デイ。
なんだか美空ひばりさんを思い出す。彼女にだってきっと幸福な時期があったんじゃないかしら?もっとよく知りたい。

コメント

notes and movies(1995.4~ part3)

2013-04-01 21:31:12 | notes and movies
過去のノートにある映画感想メモシリーズ。
part2からのつづき。
若かりし頃のメモなので、不適切な表現、勘違い等はお詫び申し上げます/謝罪
なお、あらすじはなるべく省略しています。


『遠い夜明け』(1987)
監督:リチャード・アッテンボロー 出演:ケヴィン・クライン、デンゼル・ワシントン ほか
アパルトヘイト=特に南アフリカ共和国における黒人に対する民族隔離、人種差別(政策)
元俳優でもあり、その後『コーラスライン』『ガンジー』ほか多くの戦争と平和に関する題材で監督をしたアッテンボロー作品。
ドナルド・ウッズ原作の『ビコ』を基に実際起きた事件を映画化。アパルトヘイトについては分からないまま観たが、
同じ地球のどこかで同じ人間同士が肌の色ひとつでここまで心底憎しみ合い続けているという事実は理解し難い。

政府だけでなく警察までも守ってやらず、裁判でさえ歪んだ法で裁くとしたら、一体誰が彼らの権利を守るんだろう?
その後の暴動でも700人の学生らが死亡、4000人が負傷。白人と黒人がともに生活する時代にはまだ遠く、闘いは続くだろう。
バックに流れるゴスペルとアフリカン・ミュージックが胸を打つ
「彼らが自意識をもって、独自の文化をもって、白人に頼ることを止めるべきだ」
これらはふと男女の地位の関係も思い起こさせる。


『昨日、今日、明日』(1963)
監督:ビットリオ・デ・シーカ 出演:ソフィア・ローレン、マルチェロ・マストロヤンニ ほか
PART1 ADELINA
ソフィアのコケティッシュさと、マストロヤンニのピエロ的おどけた夫のコンビはサイコー。
とにかく陽気で楽しい夫婦のおのろけ話。

PART2 ANNA
あれ、この豪華キャストは3話ともひき続いて使っているわけね。ガラリと変わって、
ソフィアは富豪で、マストロヤンニのしがなさがまた渋くてカッコいいんだな。
金の亡者の夫を愚痴りながら、結局その金に埋もれてる本性を見て苦笑い。
でもまあ、ソフィアの美しさはたとえ心が醜くても、それを超えてしまう!
キッチリ化粧をしているとなおのこと野性味ある妖艶さで誰もかれも凍りついちゃうよね

PART3 MARA
マストロヤンニがやっぱりイタリア1の名優だね。小躍りしたり、吠えたり、すねたり、仕方なく力を貸したり、
ソフィアには彼でさえ勝てないってわけ。イタリアの街のあちこちを切り取ったエピソードを2大俳優を使って
コミカル、エネルギッシュ、ハイテンポに撮った楽しい作品。


『名探偵登場』(1976)

監督:ロバート・ムーア 出演:トルーマン・カポーティ、ピーター・フォーク、デヴィッド・ニーヴン、ピーター・セラーズ ほか
世界中の有名な、といっても架空の名探偵5人がそろって殺人犯人探しの週末に招待される。
なんとも嬉しい企画だけど、本人が演じているキャラなのに名前も違えば全然別人。雰囲気が漂っているのもいる。
なんだか不思議な設定に招待した主人もかなり推理サスペンスのカルト王。
二転三転四転の犯人探しにunusualなカルトの世界。俳優らもカルトな役が楽しかっただろうけど、
それぞれのキャラを期待していたのは外れるし、大物スターの共演は味がぶつかり合うだけに難しかっただろうね。
ナンセンスユーモアとブラックきつい加減が楽しい。
だからどーしたといわれても、これはサスペンスものの好きな方へのほんのエンタテインメント。
やっぱり一番妙なのはセラーズの中国系スタイル+ケイトーそっくりの日本人養子?
出っ歯で中国訛り、本当に変わった人だよね、この人w


『エース・ベンチュラ』(1994)
監督:トム・シャドヤック 出演:ジム・キャリー、ショーン・ヤング ほか
『アーネスト』シリーズのジムもゴム人間みたいな妙なキャラだったけど、またとてつもないみょーーな奴が現れた。
これまた全身ゴム人間みたいで、いちいちの動きが'50代のエルヴィスをアニメ化したようなオーバーアクション。
一人で自分の動きに酔っているわりに周囲は冷たいんだけど、撮影時には爆笑もので大変だったみたい。
普段からこうなのかな? 次回作『マスク』も大好評。コメディ界に新星登場。ジムって名には変なのが多いのか?w

ヤングも最近はこうゆう飛んでる役、コメディ系でいろんな活躍してる。
特に個性的じゃないけど、いろんな役に化けられるいい役者だよね。
♪クライング・ゲーム の曲が流れてきたり、フィンクルの部屋が『羊たちの沈黙』に例えられたり、
映画ファン向けのジョークがチラホラ出てくるのも嬉しい。それにしても精神病院でのサイコの演技は笑える。
1人スローモーションとその倍速巻き戻し、バレリーナの格好ですっかりおかしくなってるし。
一人で遊んでいても楽しいだろうねw


『ショート・カッツ』(1993)
監督:ロバート・アルトマン 出演:アンディ・マクドウェル ほか
誰でもちょっとは興味がある他人のプライベートライフ。何組かのカップルの日常生活とそこにおきたちょっとした転機
(転機でさえ繰り返されるものだけど)をちょこっとずつ切り取って合わせたのが今作。
リアリズム、人々の普段着の姿と心情を描くのに徹底したようで、最初豪華キャストの名が現れ、消えてゆくさまは爽快。
ジャック・レモンジェニファー・ジェイソン・リー、マシュー・モディーン、R.D.ジュニア、ティム・ロビンス、
クリストファー・ペン、ロリー・シンガー、マデリン・ストーほかまだまだ登場。
でも一番の見どころはしがないタクシー運転手役のトム・ウェイツかな。
労働者階級のブルースをしょってる彼自身のルーツも漂わせる渋さ、酔って歌うシーンなんかもまんま。


『マニカの不思議な旅』(1989)
監督:フランソワ・ヴィリエ 出演:ジュリアン・サンズ ほか
リインカネーションとそれを巡るキリスト教とヒンドゥー教という教義の異なる2つの宗教の出会い、
そして階級と貧富の差に苦しむ人々の間で何が真理か、自分の信念を問いただす牧師。
実話を基にしたという不思議な話。インドは本当にミステリアスな国だ。
自分の前世を何十人もそらで言える男の子の話もインドじゃなかったろうか?
何か強い思いを残してこの世を去った者の魂が他の人にのりうつったとかも考えられるけど、
他人の記憶を持つなんて信じられないようなことには違いない。

なんでも起こり得る神秘の国インド。広大な自然とそこに生きる人々の姿が生き生きと描かれる。
いまだに守られる厳しいカースト制度と政治に組み込まれた宗教の戒律。
「宗教も真理もひとつだけのものではない」と、あくまでも自分の正しいと思う道を信じて小さな戦いを挑む牧師。
西洋人が異国に惹かれ溶け込んでいこうとする、物質文明から自然主義へ、現代でも魅了される人が多いのも興味深い。


『シャドー』(1994)
監督:ラッセル・マルケイ 出演:アレック・ボールドウィン ほか
なにしろ『スーパーマン』『バットマン』等々のアメコミの元祖がこれだっていうから、
次々と世界的ヒットした映画に肩を並べようっていう気負いが感じられる。
'40~'50代を思わせるレトロな時代に「影」の性質をうまく使ったヒーローが活躍する。
自由自在に動き、人々の心をコントロールし、姿を消したりすることもできるけど、
尻尾をつかまえられると生身の体と同じという弱点もある。
アレックは実際のヒーローより垂れ目だけど、そのスタンダードな魅力をフルに生かしているし、
久々スクリーンに顔を見せたジョン・ローンは、ジョーイの野望と『ラストエンペラー』の衣装でジンギスカンの末裔役。
発達したCGは映画上でアメコミヒーローを生き生きと蘇らせた。

2人ともなぜか現れる合図はMPで言うところの「悪魔的笑い」をしているのが歴史を感じる。
もうひとりの博士役には、なんとティム・カーリーが登場。臆病で美女に弱く、悪の力にへつらうような奴なんだけど、
2大スターを食っちゃうような存在感はさすが。ちょっとまた太ったんじゃない?
舞台だけでなくスクリーンにも登場してくれるのはファンにとっては嬉しい限り。


『キートンの恋愛三代記』(1923)

監督:バスター・キートン、エディ・クライン 出演:バスター・キートン、ウォーレス・ビアリー ほか
クラシックフィルムコレクション 映画生誕100年記念特別企画「世界クラシック名画100撰集」
1895~第一期黄金期時代として、総監修に淀川長治さん、推薦・監修協力に水野晴郎さんでシリーズ化されているこのキートンのコメディ映画ビデオシリーズ。
名前はチャップリンとともに聞いてはいたけど、こうして観るのは今回が初めて。確かこの2人、トーキーで晩年共演したんだよね。
グリフィス監督の大作『イントレランス』やセシル・B・デミル監督らパラマウントの娯楽大作ムードを皮肉ったという今作。
原始時代とローマ繁栄期、現代の3時代を舞台に「愛はいつどこでもあんまり変わらんものだった」ってゆうのをテーマに
女の子を見つけて、ライバルと張り合って、危機一髪、そしてハッピーエンドに至るまでのプロセスにそれぞれ分けて見せている。
石器時代には石と棒でゴルフをしてたり、ローマ時代に日時計の腕時計をしてたりってギャグが笑える。

追っかけっこをそつなくこなしているけどすごいアクロバットの連続 彼も骨折が絶えない体を張った本物の芸人なんだよね。
ハッピーに結ばれて子だくさん。愛の物語りはこうして永遠不変なもの。
石に顔が書いてある名刺?、遺言を石に刻んでたり、乗ってる車が凹凸でバラバラに壊れちゃったり、細かい芸がもりだくさん。
それぞれの時代によってバックのピアノ伴奏のテンポも変えてる。無声映画だもんねえ!
笑わない喜劇王キートン。他の作品も興味津々。


『THE CAMERAMAN』(1928)

監督:エドワード・セジウィック 出演:バスター・キートン、マーセリン・デイ、ハロルド・グットウィン、ハリー・グリボン ほか
ユナイト社から2年ぶり古巣MGM社に戻って主演したキートンの成功した秀作のひとつ。前の「クラシック」シリーズ第2弾。
いやあこれは大傑作! 涙が出るほど大笑いして、クスクス笑って、そしてほろ苦いロマンス
ラストは美しいハッピーエンディング

着がえ室にもう1人の男と入って互いにスペースを奪い合うシーンは涙が出て腹がよじれるほど久々笑った
お猿さんがまた演技の達人でビックリ仰天!
紙ふぶきのようにまかれるビラ。夢心地で手をひかれ、ビラが舞う中を歩いてゆく2人のラストはなんともいえない。

ピーター・セラーズも敵わない、今日までの素晴らしいボケ演技の数々のルーツはバスターからきているのではないだろうか?
そこはかとない大きな瞳のアンビバランスが魅力。こけおどしの人形みたいな動きは曲芸の猿に近い。
あのお猿さん、一応カメラから外れた目線でいるシーンがあったところを見ると調教師がそばで指示して何度も撮ったのかもしれないけど、
セーラーズファッションでまるで人間みたいな演技は不気味ですらある。
体を張った大スタントがキートン作品には必ず入っている。それもすましたままで1カットくらいで、すぐに済んじゃう使い方だけど、
そこが彼の偉大なところ。マフィア抗争のメチャメチャシーンも音が入っていたらどんなだろうと思ってしまう迫力あふれるシーン。

カメラマンとタイトルもズバリ、以前はあんな脚立のついた重いカメラを担いでいたんだね。
この素材を200%フルに生かして、考え付く限りのギャグ、小道具に効果バツグンに使っている。
劇場でこれを観た幸運な観客は男女ともみさかいなくゲラゲラ笑ったことだろう。
そして時にしんみりとして、ラストは幻想的。まさに大成功な逸品。

短編からしだいに長編へ。内容も伴って充実してくる。映画そのものの歩みも同時に体験できる
あくまで無声映画にこだわって、トーキーではヒトラーを皮肉ったチャップリン、
キートンはその後トーキーという大変革をどう受け止めたのだろう?
彼の伝記はないかな? 以前に「知ってるつもり?」でとりあげたのは見たんだけど、ビデオにとればよかったな。

コメント

notes and movies(1995.4~ part4)

2013-04-01 21:31:11 | notes and movies
過去のノートにある映画感想メモシリーズ。
part3からのつづき。
若かりし頃のメモなので、不適切な表現、勘違い等はお詫び申し上げます/謝罪
なお、あらすじはなるべく省略しています。


『ゴッド・アーミー 悪の天使』(1994)
監督:グレゴリー・ワイデン 出演:クリストファー・ウォーケン ほか
なぜか突然届いたニュース「アメリカで天使ブーム」。たくさんの天使を扱った映画も撮られているみたい。
でも今作は天使もののヒット作『ゴースト』なんかとは全く異なるかなり観念的なスタイル。
現実と宗教が密接していて、一見するとジャンキーの妄想ともいえないこともない生々しい強迫観念や恐怖が描かれている。
特定の宗教を持たない日本人には不得意なテーマ。
宗教はつまり信仰、信じることとすると、愛と平和を信じる者、恐怖と不安に囚われている者、それぞれだと理解できる。

なんとも奇怪な作品だけど、ウォーケンファンにとっては久々彼らしさをふんだんに満喫できるキャラと主演に満足。
黒くタイトなスーツに身を包んで、青白い不吉な影が漂う風貌はピッタリ。ガブリエルはホーンを吹くみたいだけど、
トランペットを持つ姿は元ショーマンの面影もチラリ。
ちょこんと墓の上にとまっている姿も絵になる現実離れした彼の魅力が十分出ている。
他にも流行りの豪華キャストで味のある役者ばかり。
世紀末のアメリカ、若者は信仰を失いかけている。それはきっと神と人間をねたんだ天使が反乱を起こしているから。
こんな究極的テーマで作られた今作。すべては1人1人の善悪を見極める心の中にある。


『恋に生きた女ピアフ』(1983)

監督:クロード・ルルーシュ 出演:エブリン・ブウイ ほか
世界にはたくさんの音楽があふれているけれど、愛を一筋に歌い上げるシャンソンの哀愁漂うロマンティシズムはまさにフランスの香りがする。
この間読んだ「墜ちたスター」の中の一人ピアフが数々の恋愛をした中で、運命の出会い、フランス中をわかせた恋でもあるボクサー、
マルセルとの短い恋愛を時代背景と同世代の男女の愛をも織り込んで壮大に描いた大作。
ルルーシュ監督作品はこれが初めてだが、ほかに『愛と哀しみのボレロ』等、音楽と歴史的瞬間が見事に重なった題材を
好んで取り上げて、そのままの興奮と緊張感、大舞台でのドラマをリアルに撮っている。

本で読んだ記憶では、この死から立ち直って、力強くも新たな恋を見つけたんだよね。
48歳の若さで亡くなる時も若い恋人がいて。でもやっぱり最愛の人はセルダンだったんだろう。
飛行機、車などの事故で多くのスターたちが命を落としている。あまりにあっけなく。
その瞬間ピアフは原因不明の胸の痛みを感じるシーンがある。
ボクサーも歌手でも縁起を担いだり、未知なる力を信じたりする人が多いけど、今作でもそんな不思議なシーンがあったのが印象的。
これが単にドラマでなく実際1人の女性に起こった事実だと考えると、とても重い意味を感じずにはいられない。

数々のBGMに使われている歌が自身のものなのは嬉しいが、彼女の絶世期を体現したブウイも素晴らしい。
小柄でくせっ毛、大きな瞳、よくぞここまで条件のそろった役者を見つけたものだと感心。
歌手として、女性としてのピアフを支えたマネージャー、ルルの力もさぞかし大きかったに違いない。
例のモモーヌという女の子の存在はあまり触れられてはいなかった。最大の恋愛劇の部分のみのストーリーで、
事実からの題材ということで、セルダンの妻子への配慮からか、おおっぴらな逢引の様子よりも、
「2人は大きな友情で結ばれていた」と強調されている。
愛は決して結婚という契約だけじゃ縛っておけないものなんだなということが分かる。

なんとブウイはピアフとマルゴの2役! そしてセルダン役は実息のジュニアが演じていた


『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』(1994)
監督:ニール・ジョーダン 出演:トム・クルーズ、ブラッド・ピット、クリスチャン・スレイター ほか
そのタイトル通り、吸血鬼にインタビューするシーンから始まる奇抜なアイデア。
吸血鬼という題材は先のコッポラの『ドラキュラ』で極められたと思っていたら、
「ドラキュラや十字架に杭なんてナンセンスな迷言だ」と一蹴してしまう大胆さ。
それによくぞここまで集めた現代の美形スター、監督は『クライングゲーム』の監督と聞いて納得。
彼はイギリス人じゃなかったの? 英国は美形のゲイ映画を美しく撮るのが得意だもんね。
毎昨イメージをガラリと変えて挑戦することを楽しんでいるクルーズに、人気急増中ブラピ、スレーターといえば
本国のみならず日本のファンだって黙っちゃおけない。たくさんの女性が映画館に駆けつけ話題となったのもついこの間の話。

N.Y.のきらびやかな夜景とガンズのエキサイティングなシャウトが爽快。
十字架や杭が古いといいながら、相変わらず太陽光と棺からは逃れられないところは
部分的にスタンダードを守っていて、なんだかほのぼのしている。
「吸血鬼は強く、美しく、後悔しないこと」とはかなり面食いな発言。映画に感動しちゃう現代の映画フリークヴァンパイアなど、
ところどころコミカルな要素が散りばめられていてシュールでタイトでポップな作品に仕上がっている。
どうせ血を吸って殺すなら悪い奴らにしてくれればいいのに。でも、彼らにも好みがあるのね。それもレベルの高い。
女の子の吸血鬼の哀愁が心に残る。彼女の美しさは歳に関わらず人を惹き付ける強い吸引力がある。


『バード』(1988)
監督:クリント・イーストウッド 出演:フォレスト・ウィテカー、ダイアン・ベノラ ほか
イーストウッドがジャズ・ピアニストをやっていたってのは初耳でビックリしたけど、
その思い入れがひしひしと1カットごとに滲み出てる渋いジャズメンの物語り。
『クライングゲーム』の好脇役で一躍注目を集めたウィテカーがチャーリー・パーカーの壮絶な半生を蘇らせた。
パーカー自身の演奏に他のビッグネームらが共演して撮ったという数々のナンバーも効果的に使われ、いちいち心に染みる。

問題のない子ども時代、コンテストで失敗して恥をかいたことをバネに磨きをかけ、有名になったのに、
始終彼につきまとっていた影は一体何だったのだろう?
アル中と麻薬の常用、肝硬変と胃潰瘍が心臓を圧迫、医者の代わりにこれらを服用し、更に悪化させていった。
心の奥底は純粋で平穏を求め、ステージで拍手を浴びている時以外は打ちのめされていた哀しい男。
彼はどこか映画『RAIN PEOPLE』を思い出させる。何度も出てくるシンバルが飛ぶシーンがイイ。

海岸で親友と語るシーン「殉教者が尊敬される。おまえが死んだら、今よりもっと有名になる。俺が殺されてもそれっきりだ」
パーカーは早いうちから長く生きられないことを悟っていたようなセリフが多い。
「40まで生きられないだろう」それでも中毒と病の悪循環で逃れる術はなかった。
最初に流れるフリップ「アメリカ人の人生に第2幕はない」とはどんな意味だろう?
ラスト、静かな葬儀と、雨にぬれた街並み、ブルースが美しい。

♪主なナンバー
Martland my Martland, Lestre leaps in, Young Bird, Why do I love you, Moonlight becomes you,
Moose tee Moose, Lover Man, April in Paris, All of me, Cool Blues, Laura, Be my love, Parker's Mood, So So...


『トリコロール/赤の愛』(1994)

監督:クシシュトフ・キェシロフスキ 出演:イレーヌ・ジャコブ ほか

「私を愛してる?」「愛しているよ」「本当に?」「本当だ」「いいえ違うわ」

3部作の最終章。待ちかねたこの3作目は『2人のベロニカ』で好演したジャコブが主演。
信号の赤、赤いシャツにタイトスカート、ポスターに舞台の赤、あらゆる場面でこの情熱の色が使われるが物語りは繊細そのもの。
フランスだとチューインガムのポスターですら芸術だね。
こうして見事に揃った3人のヒロインたち。1作、2作とも船で終わってたかな?
通して流れるクラシックがロマンティックに盛り上げる
たくさんの愛の形。10人いれば10通りある。長距離恋愛より、身近な出会いのほうが有利みたい。
犬がうまく使われている。無常観を持つ男もつい抱きしめる子犬の可愛らしさといったら
なんだかこの男優、ヴァン・モリソンに似ている。なんてことない初老の男が特別な存在に見えてくるから仏映って本当に不思議。
「君が存在しているということで充分だ」彼の思い出のシーンと現在のシーンがまるで同時進行のように描かれるのも面白い。


『BUSTER KEATON COLLEGE』(1927)

監督:ジェイムズ・W・ホーン 出演:バスター・キートン、アン・コーンウォール ほか
「卒業式の日は嬉しくて、母親は雨など気にならない」
バスターが好んで取り上げたという「大学生」。今作はなにかとマジで痛そうなシーンが多い。
笑うよりも痛そう。全然そんなこと顔に出さないでいるけど
高飛びの棒を脚に挟じゃったりした時の痛さっていったら、知ってるだけになかなかわざわざ突っ込んでいくのは難しいもんだよね。
2階から太った女性と一緒に下に落ちるシーンも危険極まりない。コメディを超えて、これはまさにスタントなしの大アクションだ。
首から落ちたり、砂にハマったり、いくら下が砂地とはいえ、体は大丈夫だったのかしら???
映画の主人公のモヤシ君とは正反対にバスターは自身の運動神経にかなり自信があったみたい。


『男と女』(1966)

監督:クロード・ルルーシュ 出演:アヌーク・エーメ、ジャン=ルイ・トランティニャン ほか
これがかの有名な名作。♪ダバダバダ~ ってテーマ曲も映画に劣らずスタンダードな映画音楽として有名。
こないだ観たルルーシュ監督の初期作品。早速調べてみたら『パリのめぐり逢い』『白い恋人たち』他
正統派パリジャン&パリジェンヌの恋愛物語りをロマンティックに描くスタイルを極めている。
主演のヒロインは確か『What's new pussy cat?』でコケティッシュな演技をしていた女優。
ここではしっとりと色っぽい大人の女性で'60代のファッションが素敵。
茶の髪に黒い瞳の上の白いアイシャドーが涼しげ。コートひとつとってもパーフェクトな装い

主人公らの心情に合わせてモノクロとカラーを使い分け、それぞれの描写がみずみずしい感覚のまま。
'60代作品といえど鮮度はそのままって感じ。ラストの抱き合う2人のバックが白くカットされて、
2人だけがモノクロで浮かび上がるストップモーションも決まり。
それぞれ子どもに甘く、男女の間に2人の男の子と女の子を絡ませるところもイイ。
女は恋人の思い出をいつまでも美しいまま抱き続けるのに、男は自分のために死んだ女をいともたやすく忘れちゃうのね。
カーレースの暴走と自然の中のラクダの静かなシーンの対照的な組み合わせも印象的。
危険で自然破壊して、女が心配して待たされる。カーレースなんて、どこがいいのか!?

(この時は監督シリーズで、トランティニャンの魅力にハマる前だった。


『男と女2』(1986)

監督:クロード・ルルーシュ 出演:アヌーク・エーメ、ジャン=ルイ・トランティニャン ほか

「映画に作者はいない。ただ重労働と多少の奇跡があるだけ」

力強いパーカッションをテーマ曲に加えて三日月が空を昇ってゆく。
ラストも同じく締められて後にはすがすがしい感動と'60代への懐古、そして優しく素朴な口笛が残る。
20年前と同じメンバーをそろえて、その後を描いたというコンセプトは『ラストショー』が'70と'90だから今作のほうが先なんだね。
'66のハイライトシーンを織り交ぜて(映像はずっとクリア)2人の記憶、また観客の心の中にある思い出も蘇らせた。
まるで『バック・トゥ・ザ・フューチャー』。最初のテロップからも漂うように、恋愛物語りと並行して、
映画作りとはそもそも何ぞや?てゆうルルーシュの思いも描かれる。

事実に基づいて映画化しても大衆に受け入れられやすいように事実は歪められる。
その逆にもともとフィクションの恋愛であった前作が、今作ではまるで事実の映画化として描かれている二重構造が楽しい。
ルルーシュ監督が29歳と40歳の作品。年月を経てなお新鮮な感覚がいたるところに感じられる。

互いの子どもらがボートレーサーや、女優で一児の母へと成長しているのも2ならでは。娘役は「ピアフ」を演じた女優。
「彼らは愛し合っているのかな」「もう20年も待てないわ」
20年前に両手からすり抜けた恋と幸福を再び取り戻すなんてとてもロマンティックだ。
判事が怒って「映画なんて!嘘っぱちだ」と吐き捨てるシーンにはビックリしたけど、その通り。
映画はたくさんの嘘でできている物語なんだ。


『ウェディング・バンケット』(1993)
監督:アン・リー 出演:ウィンストン・チャオ、ミッチェル・リヒテンシュタイン ほか
なんとなしひきこまれて観てしまった台湾映画だけど、舞台がN.Y.のせいかハリウッド系に近い雰囲気。
テーマも現代なにかと多いゲイストーリーだけど、エイズ等の暗い部分は出さず、家族との関係、
新しい愛、生活の形を明るくほのぼの描いている。両親も比較的物分りのいいほうで丸く収まるハッピーエンド。
こううまくいく例は少ないと思うけど。

自由の国アメリカでもゲイは白い目で見られるのに、中国でのカルチャーショックはもっとキツいんじゃないかな?
理解しようとしても、自分の息子だとしたら、やっぱり「どうして?」って思うだろうね。
特に母親は息子に誇りや羨望の思いがあるから、自ら特権を捨てることに嫌悪を感じるんじゃないかな。
ゲイはニューハーフじゃないけど、やっぱり台所に立ってたりすると女性らしく見える。
家事が女性の役目である時代は終わりにしても、年老いた親が中心となっているあたりは中国らしい。
さすがにゲイのショッキングな性描写は避けてある。


『アンナ・パブロワ』(1984)
監督・脚本:エミーリ・ロチャヌー 出演:ガリーナ・ベリャーク、ジェームズ・フォックス、セルゲイ・シャクーロフ ほか
主な演目:コンソレーション、眠れる森の美女、ジゼル、コッペリア、溺死の白鳥、イーゴリ公、天国と地獄、リゴレット、
 白鳥の湖、ワルプルギスの夜、群がる道化師、美しきロスマリン、悲しいワルツ

不世出のロシア人プリマの一生をずっと初舞台から夫として、マネージャーとして支えてきた男が振り返り本を書くという設定。
9月に日本にもロシアバレエ団が来日するが、どこか堅苦しさや伝統を重んじた難しさばかりのイメージだったバレエの世界が
実は究極の美意識と肉体によるギリギリまでの感情表現、そしてダンサーらの心身を捧げる努力によって創られた
純粋にして前進しつづける芸術そのものだと知った。

そして、これは民衆のための芸術だ。ロシア母国を愛する一方、あらゆる場所と人々のために踊り続けたアンナ。
その屈強な精神の裏には、ダンサーとしての崇高なプライドと、素晴らしい感受性、映画等では語り尽くせない苦労があったに違いない。
横浜にも来たというのは驚き。ビデオが確か図書館にあった。劇場で観れない今とあっては貴重なフィルム。
ミーシェいわく「君のバレエの素晴らしさは劇場でしか分からない」確かにそうだけど、人の記憶は不確かで後世に伝えられないもの。
映像として残されているから、'30代の彼女の最高の演技が'90代にも蘇るんだ。

彼女はいくつで亡くなったのだろう。死因は肋膜炎というが究極まで肉体を酷使する上、
まるで少女のままのスタイルを保つために常にハードなダイエットをしているダンサーらは
自らのピークと引き際を考えないことには決して長生きはできなそうだ。
作品中にニジンスキーというもう1人のロシアを代表するダンサーがプレッシャーと過労のためか、
精神異常におちいるという話が入っている。

団長は「パリがダンサーを食ってしまう。食われた彼らは今どこだ? 下水道に流れて死んでいく」と言っている。
ダンサーは歓声のために踊り、歓声のために死んでゆく。それは芸術の正しい姿ではない気がする。
アンナの最期は悲劇だ。しかし彼女が母国に、そして世界中の人々に残した感動はいつまでも生き続けてゆくことだろう。
彼女の人生の詳細をもっと知りたい。「The Dying Swan」とはどんな話だろうか?
これほどまでに長い歴史を持ち、ロシアを拠点として世界中に愛され、
受け継がれてゆくバレエについてもう少し深く付き合ってみたい気がする。


コメント

notes and movies(1995.4~ part5)

2013-04-01 21:31:10 | notes and movies
過去のノートにある映画感想メモシリーズ。
part4からのつづきで、このノートのラスト。
若かりし頃のメモなので、不適切な表現、勘違い等はお詫び申し上げます/謝罪
なお、あらすじはなるべく省略しています。


『我輩はカモである』(1933)

監督:レオ・マッケリー 出演:マルクス兄弟
 ほか
'68N.Y.で再上映されて再評価のきっかけとなった作品。『オペラは踊る』とともに近代美術古典ライブラリー入りした1本なんだそうな。
多くの批評家が全コメディ映画のベスト10内に選ぶ傑作とか。他の9作には何があるのかぜひ知りたい。
先に観た1本とまた嗜好の違った、後のMPにも通じるイギリス的な風刺とスタンダップ、ナンセンストークの笑い満載。
1回観ただけじゃわからないほどギャグの嵐、何度も繰り返し観たほうが味が出て深い味わいが楽しめるというもの。
ゼッポは兄弟中で一番ノーマルでハンサムだけど、これが最後の出演作らしい。
グルーチョはセラーズをハイテンションにした感じで大活躍。それにしても芸名からして妙だ。あれ、本名じゃないよね?

鏡のギャグは今じゃ古典だけど、兄弟だけにソックリでやっぱり笑える。帽子を落として逆に拾ってあげたりw
歌や、早口のギャグの連発、音の面白さ。やっぱりトーキーは強いね。これじゃさすがのバスターも自信を失ったのも分かる。
ハーポがどうして喋らないのか謎だけど、人の燕尾服の先を勝手に切ったり、体中に自己紹介の絵が描いてあったり、
楽器を使って電話応答は可笑しいw
裁判にかけられるチコにグルーチョが「バカみたいに喋り、バカみたいに見えるが、本当はバカなんだ」
なんてナンセンスさがなんともイイw


『マルクス兄弟の捕物帳』(1948)
 
監督:アーチー・L・メイヨ 出演:マルクス兄弟
 ほか
マルクス兄弟シリーズ第3弾。かの名画『カサブランカ』のパロディらしいけど4人兄弟のうちやっぱりゼッポがいない?
で、グルーチョ(3男だそうだが髪の後退具合は一番早いみたい)とチコとハーポが大活躍。
3人中、個人的にはグルーチョのスタイルが一番現代コメディスタイルに近くて好き
今作もグルーチョは話芸、チコとハーポは楽器演奏とスラップスティック系、サーカスの道化役にも似た
パントマイム風の芸に分かれる。後にグルーチョは他のパートナーと組んだ映画にも出演している。
今作ではチコの片手指弾きの軽快なピアノと、ハーポのロマンティックかつ後半ラグタイム風のハープが見物。
コメディアンを超える芸術的才能とセンスは彼らならではの貴重な一芸なんだよね。

グルーチョのナンセンストークとバカみたいな歩き方がなんともいえないw
チップ稼ぎにテーブルを増やしていくハーポに「ダンスフロアはいいが、フロアがないぞ」とか
「ピンナップガールといってもピンで留めておける女の子はいないんだ」とか、
クリクリの眼にぶっとい眉を上下に動かして、早口で屁理屈をこねてる、今作はその屁理屈がちょっと少なめなのが寂しい。


『キートンの蒸気船』(1928)
監督:チャールズ・F・ライズナー 出演:バスター・キートン、アーネスト・トレンス ほか



パッケージ解説メモ:キートン初期の短編全19作品集のひとつ。「バスター!(なんて奴)」
 両親との舞台で5才の少年“笑わない喜劇スター”誕生。ロスコー・アーバックルの勧めで映画界入り。
 ヴォードヴィルで鍛えた身のこなしで人気スターに。

無声映画でもこれだけ表現豊かにひとつのドラマが描けるなんて驚きだ!
かなりキツいスタントの多い今作。信じられない強風で次々家ごと飛んじゃって、バスターがどこに隠れてもダメ。
滑って転んで、それも首から転ぶからヒヤヒヤもの。これじゃ骨折するよ
彼女を助けて漂流する父を船で助けて、見張り台から4回もジャンプして駆けつけるシーンは曲芸みたいな身の軽さ!
そしてキング氏を助けに何メートルも上からの飛びこみ! 仲直りしてホッとするのも束の間、また飛び込んで牧師を助ける。
いつも終わり方にちょっとしたヒネリが加えてある。パンを差し入れた時、囚人が歌うシーンは声が聴きたかったなあ。
どんな声をしていたかは『モダンタイムス』他3作を観れば分かる。
動いている車から知らずに降りて歩き出したり、倒れまくる家からタイミングよく逃れるシーンなど計算やリハーサルをしてかしないでか
どんなスタントマンより危なっかしいシーンを平気でやっちゃう。本当になんて奴なんだろう、ここまで笑いに体を張るなんて


『ダリ 天才日記』(1990)
監督:アントニー・リバス 出演:ロレンツォ・クィン ほか
予想通り、ダリの発散させるエネルギーそのものの軽快なスピードと力強い音楽にのせて
現実とダリの眼から見た超現実とが交じり合った半生を描いた作品。今作よりもっと面白いのはやはりダリ自身だろう。
自らを不死身だと言った彼は、言葉通り90歳代まで長生きしたけど(訃報記事を私も偶然とっておいていた)
最期まで創造と好奇心のエネルギーで満ちていたことだろう。

「ダリが唯一のシュルレアリスムだ」「ダリはガラで、ガラはダリだ」ダリにガラあり、シャガールにベラあり。
でも天才の恋人としていることはさぞ困難だったろう。20世紀のアーティストの巨人らとの交流も多彩。
マスコミを利用し、大衆に芸術を還元した点は、アンディを思い出させる。
この2人と付き合っていたウルトラヴァイオレットはガラ亡き後に出逢ったんだっけ?
超現実で驚いた後は自然主義でちょっと休みたい。

「エロスこそ神に至る道だ」そうで、母の影響か宗教にもずっとこだわってきたのがなんだか不思議。
とにかくダリの驚きに満ち、話題性に富んだ芸術活動は書ききれないほど。
その誇張した喋り、突飛な変装の底には好奇心と斬新なアイデアとともに、平和と愛、ユーモアや友情があふれんばかりに流れている。


『ライムライト』(1952)
製作・監督・脚本・音楽:チャールズ・チャップリン
出演:チャールズ・チャップリン、クレア・ブルーム、シドニー・チャップリン、バスター・キートン ほか



「ライムライトの光に照らし出されたスターも年と共に、やがては若い新人のために、
 ライムライトの下を去らねばならない。あるバレリーナと、ある道化役者の物語」

これで私が買ったオルゴールの曲♪ライムライト と道化の人形の意味が分かった。
彼がこのような名曲を作曲までするとは知らなかった。クラシック映画、無声映画でのパントマイム、
山高帽にチョビヒゲでてっきりドイツ人かアメリカ人と思っていたけど、イギリス生まれとは驚き。
映画史上貴重なスターで英国人は多いんだね。でも、先に観た『チャーリー』といい、
今作の本物の演技といい、究めて人間的な根っからのコメディアンの姿が浮かび上がる。
当時63歳とはとても思えない身軽な動き、力強い喋り、おどけた歌も歌えば、
「生きるとはどんなものか」熱く訴える名俳優でもある。
アメリカ追放のまさに直前に撮り上げた作品。喜劇に一生を捧げた老道化師のその後は哀しくもあり、また力強く誇りに満ちてもいる。

楽しみにしていたバスターとの共演「昔のままだと誰かが言ったら窓から飛び降りるぞ」セリフはこれだけ。
それから脚の長さが変わるヴァイオリン弾きのチャプリンと、楽譜がズリ落ちたり、
自分がズリ落ちたりするピアノ弾きのバスターが、セリフのないスラップスティックのシーンは一瞬だけ。
バスターの無声映画全盛期に戻って、老いたなりのボケぶりがかえって老ピアニストとしてのユーモアが感じられて笑った。
眼鏡をかけて、かなり太って!、髪は科学博士みたいだけど、目は変わらずアンニュイなバスターそのもの。
ラスト、カルベロはプリマのバレエを見ずにこの世を去るが、拍手喝采の大成功でラストステージを飾れた思いを胸に
決して悲しみに沈む終わり方じゃない。喜劇役者は同情などより、人々を笑わせ楽しませることに生きている。
ここまで賭けるコメディアンは今はいないけどね。コメディを超えたドラマ性を持つ今作。
主人公カルベロと同じく新たなアイデアが常にチャップリンにあって、それが彼をここまでつき動かしていたのだろう。

テリーズの愛は本物だったろうか? 分からない。心の支えとして必要で、老いて消えゆけど頑張るカルデロに同情したのかもしれない。
でもラスト「テリーズはどこだ?」と叫ぶ彼とテリー「すぐに戻るわね」というシーンは
本当の本当は歳など関係なく愛することはできるという気もしてくるっていうロマンスの要素も楽しめる。
ネヴィル役の俳優がチャップリンの息子? とても体格がいいい2枚目役者に育ったのね。
彼は今どうしているのかしら? 娘はいろんなアートフィルムで活躍中だけど。
バスターのトーキー『サンセット大通り』もぜひ観たい!

"The glamour of limelight, from which age must pass as youth enters. A story of a ballerina and a clown..."




【読書感想メモ】
「墜ちたスター 13人の女性の栄光と悲惨」ロビン・アーチャー、ダイアナ・シモンズ著
マリー・ロイド、ベッシー・スミス、ヘレン・モーガン、ジェーン・フローマン、カーメン、
ミランダ、ビリー・ホリデイ、エディット・ピアフ、ジュディ・ホリデイ、ジュディ・ガーランド、
ダイナ・ワシントン、マリリン・モンロー、パッツィ・クライン、ジャニス・ジョップリン

「American Standards CD book」阿部克自/著


【歌詞をメモした曲】
♪My Back Pages/Bob Dylan
コメント