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水素水で、すー

2019年04月07日 | Weblog

またまた発見、極私的路上観察学会熊本支部
なんと街角に「水素水の給水機」がある。

日本初か?(調べようがない)しかも相当古い。

何しろあの水素水なのだ。
水素自動車の燃料スタンドとなるかもしれない。

僕には水素水について、後ろめたい経験がある。県南のある健康食品会社の社長から商品のラベルデザインを依頼されたのだが、その事務所に行くと、受付用の机の上に、握りこぶしくらいの大きさの白いかたまりがゴロンとある。何時ものように待たされている間に事務所の周りを見ると、弥勒菩薩の写真が壁のあちこちに貼ってあったり、「感謝」と筆書きされた短冊が四方の柱に張り付けてある。そんなお札に囲まれていつもこの会社の事務員数名は仕事をしているのだが、みんなとてもいい人ばかりで、奥から出てきたのが、これまた人のいい、日に焼けた小柄な田舎のじいさんで、もちろんその通販会社の社長なのだ。

「あ、それそれ、それ水素のかたまり」
「え、えーっ!水素ですか」
「そうそう、水素の原石」
「水素に原石?」
「それを細かく砕いてパウダーにして飲むとね」
「はぁ」

「体に、じわーっとくる」
「体の奥から、じわーっときて、すっと頭に抜ける」

こんな場合、質問をしても無駄だ。
すぐ仕事を断り帰るか、仕事が欲しけりゃ、ただうなずいておればいい。

「で、裏のラベルの成分表はどうするんですか?」
「もちろん水素パウダー」

僕を囲む弥勒菩薩が笑った。「感謝、感謝」と声が聞こえる。これが僕の後ろめたい(犯罪ではない)経験なのだが、会社にその話を持って帰り、デザイナーのイワサキ君に指示を出す。イワサキはフンと鼻で笑い、すでに身も心もデザインマシン化しているので、あらかたの説明で自動的に作業を始める。

「やはり、キャラクターいるんですか?」
「昔作った予備のキャラがあるだろから、それをアレンジしな」

「水素パウダーなんてありえんですね」
「体に、じわーっとくるんだよっ!」

そこそこのラベルデザインができ納品。もし、この商品が売れたらどうなる。日本中にイワサキが作った「水玉のスイソ君」が出回り、

老いも若きもそのパウダーをサッサッ、水に溶かして飲むと足の先から体に水素パワーが突き抜け、
つま先から、頭の先までじわーっとくるのだ。

「どうか売れませんように」と願いを込めたがその願いが効いたか、もちろん、次の印刷の注文は来なかった。

その県南の会社は今も健在で、その後もその社長から同じレベルの仕事がどんどん来たのだが、
うさんくさい思い付き商品ばかりで流石にうちも手を引いた。

その社長には更に強力なトンデモない宇宙からの電波連中がまとわりつき、地上との電波の張り合いとなった。

何にしても健康食品系、無農薬系の連中はつまり、健康食品「商法」系、無農薬系「商法」の権化であり、

僕らのような者は、本来関わらない方が、健康であり、幸せなのだ。
どっちみち、使い捨てられる運命なのだ。

もう一つ、水素水絡みで僕には恥ずかしい思い出がある。

これまた鹿児島の健康食品「商法」系、の会社の仕事である。
この会社は大手で、いまや●●販売日本一と謳う会社なのだが、

その会社の初代社長が水前寺駅前のマンションの一室で孤軍奮闘された時からのつきあいなのだが、

その会社が大成功を収めた時の忘年会で、熊本の代理店のHさんがステージ上で、
弾くギターに合わせて、「世界に一番美しい花」をみんなと一緒に合唱した
(いや…歌わされた)ことが
自分で自分を恥と思う、思い出なのだ。

仕事でお金を稼ぐとはこんなにも辛く嫌で、後味の悪いことなのか。

まさか俺が「世界で一番美しい花」なんて、京都の友人にばれたら、生きていけない。(猛省)

花屋の店先で、何を気が付く。それがどうしたい。
嫌なものはとにかく嫌なのだ。

結局その会社も水素水をボトリングする自社工場を数億円かけ、大失敗するのだが、

さすが●●販売日本一の会社であり、子分どもは慌てているだろうが、自業自得だからあきらめて次の嘘をついている。

久しぶりにHさんの事務所に行くと、その会社から送られてきた
賞味期限切れの水素水が山積みで、飲みきれないのともったいないので、
事務員さんは水素水で洗濯をされたそうである。
これは、僕も一度やってみたいのだが、キャップを開ける手間と労力で、手の関節が痛くなったそうだ。

そもそも水素水のデマの出所は某有名大学で、ラットの実験で
認知症のラットに純度の高い水素ガスを吸わせたら、認知症が改善されたとの研究にある。

今もってその大学の教授とその弟子はその実験の有効性を訴えているのだが、
デマそのもの、

だったら、認知症の老人1,000名に水素ガス吸わして実験してみなと思う。
効果があるにしても、毎日、高純度の水素ガスを吸うのは大変だろうなと、思う。

その話を聞きつけた、全国の健康食品「商法」の連中は水素を水に溶かして水素水として売り出した。
鹿児島の会社のホームページはさすがに「脳に効く!」とは言えないから、

イラストで「脳からジワーッ」と湯気の出るようなイラストをホームページに載せた。

(すぐ叱られて、そのページは即削除した)
薬務課から指摘を受けても懲りない面々でそれくらいのことで、めげてたら儲からんぜ。

だからこそ、この街角の水素水スタンドはすごいのだ。

自由自在、安価で水素水がごくごく飲めまっせ。
5リットル100円24時間営業

まず飲むべきは僕か。(苦笑)
「どうか手術した右の脳の傷が治りますように。」

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