side by side:湘南夫婦のあしあと

二人が好きな地元湘南、スポーツ観戦、旅行、食べ歩き,音楽・美術鑑賞など、日々のあれこれを綴ります

ヒポクラテスの試練 中山七里

2020年09月07日 | 書籍・雑誌

*****ご注意 一部ネタバレを含む可能性があります ***** 


中山七里先生 作家10周年、12か月連続刊行企画の第6弾

偏屈者の浦和医大・法医学教室の光崎藤次郎教授のもとで、研修医 栂野真琴が解剖を通じて死因を究明していくヒポクラテスシリーズの第3作
このシリーズは埼玉県警の古手川と渡瀬も登場し、事件との関連を追及
海外での解剖への視点を披露してくれる准教授・キャシーも重要な登場人物
遺体が汚れると解剖に拒絶反応を示す日本人への説得が一番の障害であるし


今回はエキノコックスという動物の糞を介して広がる感染症の変異体に気づき、感染拡大を阻止しようと発生源の特定に奔走するする話

肝臓がんと判断された死亡例に疑問を抱いた光崎教授の友人の相談を受け、解剖を実施し、エキノコックス感染症が死因と特定する。
都の米国視察団が感染に関与したことは突き止めたが、感染源に繋がる情報は頑として口を割らない。
主人公真琴はキャシーとともに、視察団が滞在したニューヨークへ

新型コロナ禍からインスピレーションを得たようなテーマだが、2017年に小説NONに連載された作品(1月号~10月号)

パンデミックが予想される中、パニックを起こさないと同時に注意喚起をしないといけない舵取りの難しさを改めて思う。
埼玉県警・古手川を巻き込もうとするが事件ではないので警察の介入は難しい。
政治・医療界・感染経路特定に立ちはだかるプライバシーなど、現時点で私達が経験した事に通じる内容もある

コロナ禍の渦中にいる私達は小説内でどうパンデミック阻止をしたかに興味があったが、小説内では感染源、視察団が頑なに口を閉じた背景に社会問題(貧困、差別、性虐待、利益追求の衛生概念)を絡めてのストーリー展開となっていて、ある意味後味の悪い事実と向き合うことになっている。

とにかく今は新型コロナの対応が優先されるが、果たして武漢ウィルスと呼ばれるこのウィルスも元は現社会のひずみが遠因になっているのだろうか。

2020年6月20日初版第1刷発行
2017年小説NON 連載


装丁 高柳雅人
装画 遠藤拓人


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