side by side:湘南夫婦のあしあと

二人が好きな地元湘南、スポーツ観戦、旅行、食べ歩き,音楽・美術鑑賞など、日々のあれこれを綴ります

クララとお日さま カズオ・イシグロ

2022年02月16日 | 書籍・雑誌

現英国籍でノーベル文学賞受賞の日本人作家 カズオ・イシグロの受賞後の新作


舞台は子供が能力向上処置を受け、AF(人工親友?)を与えられているという時代。
クララもそのAF
ジョジーという病気がちの少女の親友となりジョジーの成長を見守り・助ける

能力向上処置を受けないと大学進学のチャンスもほぼもらえないが、その向上処置は時に命を落とす危険もあり、ジョジーの姉も亡くなっていて、ジョジー自身も長く病弱な生活を送っていた

観察能力・洞察力の鋭いクララは、ジョジーへの献身はもちろん、ジョジーのためにと、時にはジョジーの彼氏のリックや両親にも様々な配慮をする心根の優しさを見せる。
AFの能力がそこまで及んだ場合の凄さにそれに対峙する人間の持ち合わせているものが果たして十分なのか、想像すると恐くもある。

本作品ではまだ人間に主導権があって、ジョジーはやがて病気を克服し、年齢なりの友人・交友関係もでき、クララは最後にはお払い箱となってしまう。
それでもクララはジョジーが大学のため家を出る際に敬意をもって感謝の挨拶を受けたが、AFでは途中から厄介扱いされた描写もあった。

カズオ・イシグロ作品 「わたしを離さないで」でも 医学・医療の進歩の光と陰を見せされた感じがしたが、本作品もAIの進歩で人間が求めるものの希望と残酷さを考えてしまった。
また子供の向上処置をはじめとするシステムに賛同しない人達(リックや父親)への格差社会であることも各所に見受けられ、何度も心に考えなくてはならない課題を提示された気持ちとなった




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