d-マガジンでこんな記事を見つけました。
週プレ 2023年4月3日号
話題のコオロギ食品を食べると5Gで操られる?
昆虫食だけじゃない! 「サステナブル疲れ」 でトンデモデマが拡大中!!
SDGs(持続可能な開発目標) VS 陰謀論
将来の食糧危機問題に対する解決策のひとつとして注目される昆虫食。だが、コオロギパウダー入り食品を開発・販売する企業や、試験的に給食で提供した学校が今、誹謗中傷や陰謀論の嵐にさらされている。
昆虫食に限らず、SDGsは陰謀論者のターゲットになりがちだという。
その理由は何か?
(つづき)
SDGsには
18番目の目標もある
あまりにも荒唐無稽な陰謀論は論外としても、「虫なんか食いたくねーよ」というのはごく普通の感覚だろう。
しかし、2050年には世界の人口が90億人に達するとされ、貧しい国々を中心に深刻な食糧難に陥ることが危惧されている。食糧危機の解決策のひとつとして昆虫食の研究は各国で進んでおり、国連の食糧農業機関(FAO)も昆虫を新たな栄養源として検討すべきだと指摘。
昆虫の多くは高タンパクで低脂肪、カルシウム、鉄分、ミネラル、ビタミン、不飽和脂肪酸などを備えた「健康食」といわれている。
こうした昆虫食の研究開発は人口増加による世界的な食糧難という「未来の課題」を解決する手段のひとつとして行なわれているだけであって、「今すぐ虫を食べろ」という話ではないはずだ。
しかし、それがなぜ陰謀論者のみならず一般の人々を巻き込む形で、反コオロギ食感情の高まりにつながっている のか?
雨宮氏は「メディアの責任もある」と指摘する。
「今回のコオロギ食以前から、メディアは持続可能な社会を実現するというSDGsの美しい話に飛びつき、『バズる話題』として無批判に紹介し続けてきました。多くの人が抱く昆虫食への生理的な嫌悪感に加え、『意識高い系のリベラルな価値観やSDGsの押しつけ』に対する反感もその下地にあったと思います」「サステナブル疲れ」ともいえる空気が醸成されてきたタイミングで、不運にもコオロギ食が炎上の憂き目に遭ったということか。
「そこに、前述したコロナワクチン陰謀論や三浦春馬陰謀論(俳優・三浦春馬さんの死は自殺ではなく真相はほかにあるとする説)など、さまざまな陰謀論者が参入したことで、空前のコオロギ食陰謀論ブームにつながったのだと思います」
現在、酪農家を窮地に追い込んでいる牛乳廃棄問題も、反コオロギ食感情に火をつけた。コロナ禍による乳製品の消費低迷を受けて生産抑制が行なわれているが、牛の搾乳は止められないため大量の生乳が廃棄されている。
「陰謀論界隈のみならず、著名なインフルエンサーたちが『コオロギ食わせるくらいなら牛乳守れ!』との主張に賛同したことで、反コオロギ食感情はさらに高まりました。
しかし、牛乳廃棄は現在の問題で、コオロギ食は将来の課題の話ですから、このふたつは同列に語るべきではないはずです。
また、「コオロギ食の研究に政府が6兆円の補助金を出している」という事実無根のデマもあります。こうした説は、『表向きはSDGsを推進している政府やグローバル企業が、実は人々に昆虫を食べさせながら巨大な利権を独占しようとしている』という陰謀論へと発展しています」
雨宮氏が続ける。
「SDGsにまつわる陰謀論は党派性を問わないという特徴もあります。
右派からすれば『意識高いリベラルがきれいごとを言っていて許せない』となり、一方の左派は前述のように『グローバル企業が持続可能性を訴えながら、それをビジネスの種にしている』と憤る。コオロギ食陰謀論はその典型だといえるかもしれません」
SDGs関連の陰謀論はほかにもこんなものがある。
「SDGsは17の目標を掲げていますが、目標14『海の豊かさを守ろう』と目標15『陸の豊かさを守ろう』に秘められた本当のメッセージは、『代替食をありがたく食べなさい』という意味であるという陰謀論があります。
実は18番目の目標もあり、それは『生まれる権利と死ぬ権利』を定めているとされています。近い将来、遺伝子を操作されたデザイナーベイビーがつくられて、不完全な赤ちゃんは捨てられるから『生まれる権利』が必要になってくるのだと。
また、医療技術の進歩により100歳まではざらに生きられるようになるので、『死ぬ権利』も必要だとされます。死を選択した人の肉体はカプセルに詰められ、樹木の下に埋められて緑化に貢献する。死後も精神はデジタル技術によりクラウド化され、そのバーチャル空間を用意するのはAmazonということになっています」
やっぱりそこでもグローバル企業の利権が絡むわけね!
SDGs陰謀論は
ウソとも言い切れない
一方、実際に「持続可能な社会」の実現を目指して地道な努力を重ねている人たちは、SDGs陰謀論をどう感じているのか?
長年にわたり、市民運動の立場から環境問題や人権、貧困・格差の問題、行きすぎたグローバリズムの問題などに取り組んできたNPO「アジア太平洋資料センター」共同代表の内田聖子氏はこう語る。
「ある時期からSDGsについて発信すると、「おまえはSDGsを認めるのか?」といった批判がSNSなどで寄せられるようになりました」
しかし、そうした反感の背景には単なる陰謀論とも言い切れない、SDGs推進側の問題もあると指摘する。
「『大富豪が資金力で国連を裏で牛耳っている』とか、『多国籍企業がカネの力でSDGsのアジェンダを乗っ取っている』といった説はあながちウソではありません。
実際に地球温暖化について話し合うCOPのスポンサーにグローバル企業のコカ・コーラがつくといった、ブラックジョークみたいな現実もあります。
途上国からラジカルな問題提起が上がっても、先進国側にとって都合の悪いものは力の論理で排除される。ある意味、SDGsは強い者が 決めてきたキャンペーンだというのは事実で、その結果、表面的なスローガンに終わっている面は否めません」
それが特に顕著なのがSDGsの目標10だという。「人や国の不平等をなくそう」と定めているが、経済のグローバル化で誰が得をして、誰が損をしたかという分配の話にまったく触れていない。これはSDGsの根本的な欠陥を象徴しており、途上国側は冷ややかに見ていると内田氏は言う。
「一方、日本はこういった国際的なキャンペーンがどういう力関係で動いているのか理解していないので、経団連の偉い人たちは喜んでSDGsのバッジを着けている。政府などから助成金を受けられるプログラムがあるので、『SDGs推進でお金が回せる』という、安っぽい商業主義が広がっています。
そうしたSDGsの欺瞞的な部分が透けて見えてくる一方で、具体的な問題が紹介されないまま、いきなり目標だけが示されて、『アフリカで起きている問題はあなたの問題でもある』などと言われても、自分とアフリカのつながりが可視化されないので反発だけが残ってしまうことになる。
それがSDGsに関する根も葉もない陰謀論を生み、本当の意味で「持続可能な社会」を実現しようと努力している人たちの足を引っ張っているのは残念です。SDGsはまったく不完全ですが、国際社会が長年にわたり培ってきた成果ではあるので、持ち上げるのではなく、使えるものは使うくらいのスタンスで向き合えばいいと思います」
それにしても、人間の都合で食用にされた上に、陰謀論のネタにされたコオロギも気の毒だが、今後、この陰謀論 はどこまで広がりを見せるの か? その「持続可能性」にも注目だ。
【解説】
『SDGs推進でお金が回せる』という、安っぽい商業主義が広がっています。(中略)それがSDGsに関する根も葉もない陰謀論を生み、本当の意味で「持続可能な社会」を実現しようと努力している人たちの足を引っ張っているのは残念です。SDGsはまったく不完全ですが、国際社会が長年にわたり培ってきた成果ではあるので、持ち上げるのではなく、使えるものは使うくらいのスタンスで向き合えばいいと思います
なるほど、安易にSDGsに乗っかるのでもなく否定するのでもなく、SDGsのいいところは利用して、全ての人にとって住みよい社会を目指すのがいいのですね。
獅子風蓮