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獅子風蓮のつぶやきブログ

日記風に、日々感じたこと、思ったことを不定期につぶやいていきます。

佐藤優『国家の罠』その62

2025-04-21 01:24:07 | 佐藤優

佐藤優氏を知るために、初期の著作を読んでみました。

まずは、この本です。

佐藤優『国家の罠 ―外務省のラスプーチンと呼ばれて』

ロシア外交、北方領土をめぐるスキャンダルとして政官界を震撼させた「鈴木宗男事件」。その“断罪”の背後では、国家の大規模な路線転換が絶対矛盾を抱えながら進んでいた―。外務省きっての情報のプロとして対ロ交渉の最前線を支えていた著者が、逮捕後の検察との息詰まる応酬を再現して「国策捜査」の真相を明かす。執筆活動を続けることの新たな決意を記す文庫版あとがきを加え刊行。

国家の罠 ―外務省のラスプーチンと呼ばれて
□序 章 「わが家」にて
□第1章 逮捕前夜
□第2章 田中眞紀子と鈴木宗男の闘い
□第3章 作られた疑惑
■第4章 「国策捜査」開始
 □収監
 □シベリア・ネコの顔
 □前哨戦
 □週末の攻防
 □クオーター化の原則
 □「奇妙な取り調べ」の始まり
 □二つのシナリオ
 □真剣勝負
 □守られなかった情報源
 □条約課とのいざこざ
 □「迎合」という落とし所
 □チームリーダーとして
 □「起訴」と自ら申し出た「勾留延長」
 ■東郷氏の供述
 □袴田氏の二元外交批判
 □鈴木宗男氏の逮捕
 □奇妙な共同作業
 □外務省に突きつけた「面会拒否宣言」
□第5章 「時代のけじめ」としての「国策捜査」
□第6章 獄中から保釈、そして裁判闘争へ
□あとがき
□文庫版あとがき――国内亡命者として
※文中に登場する人物の肩書きは、特に説明のないかぎり当時のものです。


第4章 「国策捜査」開始

東郷氏の供述

6月4日の起訴で、ゴロデツキー教授夫妻招聘、国際学会派遣両案件に関する捜査には一応のケリがついたが、情報屋としての私には、どうしても知りたい点が二つ残った。
一つ目は東郷和彦氏が本件についてどのような供述をしているかだ。
二つ目は、学者たち、特に支援委員会の仕組みについても熟知し、北方領土交渉について日本外務省のブレインとなっている袴田茂樹青山学院大学教授が検察庁に対してどのような対応をとったかである。私は西村検事との雑談で、ときおりこれらの話を混ぜて情報収集につとめた。

検察庁は、ロンドンに検察官を派遣して、東郷氏から事情聴取を行った。
「東郷さんから話は聞けたの」
「ロンドンに検事を派遣したよ」
「どこで会ったの」
「日本大使館で話を聞きたいと言ったのだけれど、東郷が嫌がったので、結局こっちから東郷の指定したホテルに出向いたよ。君が言ったようにアイルランドにいるみたいなんだけど、東郷は『相手に迷惑をかけたくない』と言って居所については教えてくれなかった。ただ、連絡がつく電話番号はもらっているよ」
「イギリスは外国の公権力行使にとても敏感な国なんだけど、イギリス政府には黙っていたの」
「いや、許可を得たよ。確かにイギリスはうるさい国だと聞いていたんだけれど、別に特に問題もなかった」
「内容はどうだい」
「しょうもない支離滅裂な内容だ」
「西村さんが『しょうもない』というのは僕には有利だということかな」
「そうでもないぜ。東郷は部下を守るという発想の全くない人だよ。君が思っているような人じゃないよ」
「守りに弱いからなぁ。壊れちゃったかな」
「そうだな。東郷を捕まえておけば、前島以上にフニャフニャになっていたと思うと本当に残念だな」
「健康状態はどうかい」
「本人はこれから精神病院に行くと言っていたけどね。事情聴取の途中で何度も休憩をとったよ。でも、うちじゃ詐病じゃないかと疑ってるんだ」
「ふうん」

その後も東郷氏について、西村氏から言及してきたことがある。
「僕たちは外務省が東郷を逃がしたのはけしからんと思っている。検察官でも法務省勤務の経験のある連中は、外務省との人事交流があるので遠慮があるが、僕たち特捜の現場検事にはそういう遠慮はない。東郷が逃げていった経緯を供述調書にしないか。これが組織幹部の責任の取り方かということを訴えておいた方がいい。公判でこの部分を朗読してもよい。裁判官の心証もあなたにとってよくなるぜ」
「竹内事務次官がテルアビブ国際学会派遣は協定違反ではないと言っていたことを含めてならば応じるよ」
「これは国策捜査だから、そんなこと書けないのはあなたにはよくわかっているじゃない。調書のことは一晩考えてみて」
しかし、翌日以降、西村氏がこの問題に立ち還ることはなく、私からも言及しなかったので、調書化の話は立ち消えになった。

 


解説
「僕たちは外務省が東郷を逃がしたのはけしからんと思っている。……東郷が逃げていった経緯を供述調書にしないか。これが組織幹部の責任の取り方かということを訴えておいた方がいい。公判でこの部分を朗読してもよい。裁判官の心証もあなたにとってよくなるぜ」

東郷和彦『北方領土交渉秘録 失われた五度の機会』を読むと、佐藤氏が逮捕される直前に東郷氏の留守宅に電話を入れ、妻に「状況は、東郷さんにとって非常に危険です。絶対に日本には帰らないでください。自分はまもなく逮捕されます」と伝言したという。
佐藤氏自身も中東か中南米の国に異動希望を出したがすでに遅かったと述べています。
佐藤優『国家の罠』その25(2025-02-08)
この時点では佐藤氏も「海外に逃げる」ことを考えていたのですね。
やはり、お二人とも「背任罪に問われるかもしれない」とやましい気持ちがあったのかもしれません。

 

獅子風蓮



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