まさやす日記

長野県議会議員。
宮田村の議員(議長も)していました。
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信州おもてなしカレッジ⑦

2010-01-14 | 観光

信州おもてなしカレッジ 第七回『クレームをチャンスに』というお題で、㈱五千尺 専務取締役 藤澤高穂 氏のお話を拝聴。

とても面白い話でしたので、メモより詳細を書き込みます。

藤澤さんは、、、松本大学観光ホスピタリティ学科などで講義をしていて、H10.7の参議院選挙まで代議士秘書をしていたそうです。

?これからの観光、信州の観光について
・現状は、、、クレームを言われる…それどころかお客が来ない!

☆当時の状況①

クレーム対応
・スピードと責任の所在が曖昧
・「報告しろ!」・・・と言ってもなかな出てこない
←クレームの持つネガティブさが問題

クレームの日常化
・「できない!」サービスの日常化
・“断る”このと日常化
例えば・・・
「フルボトルは飲みきれないので、グラスワインが欲しい」
⇒高いワインでは対応ができない →断る
「朝、お風呂に入りたい」
⇒山のホテルなのでお風呂は不自由なのが当たり前 →断る
⇒『私どもの時間でお客様をしばることは多々ある』 → 日常化
 ・・・結果的にお客様にサービスを強いている!!

〇価値観の共有が必要
例えば…
ホテルの食事と言えば、 マグロや甘エビの刺身、
フレンチのフルコースなど →どこでも食べれるものを提供
「違うのではないか!?」という価値観の共有が必要

☆当時の状況②
接客方針の変更
・東京にいた当時、居酒屋ブーム → 元気でハキハキ!といった風潮
  ⇒ これをやったら、、、お客様から 「朝からうるさい!」「一見のお客じゃないんだから!」など、クレームがあった。

☆何をしたか
 ⇒ 経営理念と方針の具体化 ←みんなで共有を
 ・お客様に喜んでいただく経営理念
 ・方針の具現化

①お客様の要望を最大限に考える【売側都合の排除】
・アンケートの実施
・ラッキーオピニオン制度(以下LO)
当社では、お客様からのクレーム、またスタッフから頂いた提案を大変貴重なご意見と考え、ラッキーオピニオンと言います。クレームとは、ファンをつくるチャンスと捉えます。また、スタッフからの意見は、今後のサービス向上に役立つと考えます。ホテル事務所内の休日届けの場所などに、投函箱をおき、お客様から言われたり、耳に入った話(評価されたり、要望されたことも含む)を記入して貰う。
アルバイトも同様に扱ったため、他の施設などとの比較もできた。
・・・“ラッキー”としたことで、ネガティブさが薄らぎ、意見が出やすくなった。

【改善例 1】自動販売機のジュースなど、物販の値段について
当時缶ジュース一本160円で売っていた。(山だから当たり前?)
あまり売れなかった。「高い」という意見。
市場適正化プロジェクトと銘打ち、実態の調査をした。他ホテルも同じ値段だった。
多くのお客さんが上高地へ来る前にコンビニなどで購入していた。
周りとの関係もあるので、段階的に数年をかけて市場(コンビニ価格)にした。
今、売り上げは135%増となっている。
タクシーの運転手やガイドさんがお客さんに対して「途中のコンビニに寄らなくて良い」と言ってくれている。

【改善例 2】客室飲み物について
昔はチェックアウト時に客室飲み物を飲んだかを聞き、会計していた。
「チェックアウトに時間がかかる」とLO。
客室の冷蔵庫の飲み物は無料とした。「全部飲まれたら?持って行かれるのでは?」という意見もあったが、そこは逆に手提げ袋を置いておくぐらいの気持ちで、無料とした。
効果として、食事などでワインなどの飲み物を気軽に頼んでくれるようになった。10年前と比較すると、客単価は25,000円⇒33,000円。

【改善例 3】ポンチョの貸し出し
雨の日対策で、昔は各ホテルでホテル名の入った大きな傘を貸し出すのが一般だった。大きさなどがホテル側の見栄という部分もあった。
リュックが背負えて手が空くポンチョをお客様が要望。
貸し出すのなら、安っぽいものではなく、きちんとした物をということでブランド品を用意。

【改善例 4】NPG開設
ナショナルパークガイドというネイチャーガイドを設置。『訪れた人みんなに上高地を大好きになってもらいたい』を合言葉に上高地を案内している。
宿泊客価格はあるが、他の施設の宿泊客も利用可能。

【改善例 5】ワンウェイトランスポートサービス
ある一定日前から予約してくれた方には、上高地などの資料と一緒にホテル着払いの宅急便伝票を送っている。
 
【改善例 6】宅配料金
宅急便業者と交渉をして、一律料金とした。
 ⇒ 荷物の気兼ねなくお土産を買ってくれるようになった。

【改善例 7】禁煙
客室のリニューアルに伴い、禁煙室を二部屋設けた。
 ⇒ 平成21年は稼働率が91%を超えた。
ダイニングも禁煙にした。

【改善例 8】ワイン
グラスワインを充実させた。
ソムリエが食前酒、食事間酒、食後酒それぞれ3本のワインを事前にセレクトしておき、お客様がそれぞれ選んで飲めるようにした。
 ⇒ 3,500円で様々なワインを味わえるということで、好評。

【改善例 9】おむつの交換
絶対に断らないようにした。 Everytime!(「幼子連れは、おむつ替えできる場所をとても気にする。」とのLO。)
いくら混んでいても空いている部屋は必ずある。もし一杯なら、一言断ってバックヤードを使って貰っている。
(宿泊客以外でも利用して貰っている)

【改善例 10】目利き委員会
ホテルなどに置くお土産の商品を、従業員、その家族、旅行業者(添乗員なども)に選んで貰っている。
3月下旬~4月上旬に二日間、今シーズン私たちと取引をしたいという業者に商品を持って集まって貰い、みんなで置くお土産をチョイス。
 ⇒ 社員も一品一品に自信を持てる。
 ⇒ 社員の家族も一体感を持てる。
 ⇒ 業者も緊張感を持てる。

【改善例 11】食材
上高地キュイジーヌと銘打ち、新鮮な素材・旬の食材にこだわるため、半径90km以内のエリアを独自の食材圏とし、そこで採れた素材本来の味を活かしたメニューづくりに努めている。
“信州産”という食材の選び方もあるだろうが、お客様の視点では、「信州へ行く」ではなく、『上高地へ行く』、『軽井沢へ行く』である。また、“上高地から松本へ”というより、“高山へ”のほうが利便が良い。エリアとして考えた。

【改善点 12】お風呂の時間
昔は「上高地は山だから」と時間に制限をつけ、お客様をしばった。
朝風呂の要望が多かったにも関わらず。。。
 ⇒ 午後3時から翌朝午前10時を入浴時間とした。好評。

☆何をしたか?
メニューの料金設定は誰が決める?・・・誰が価値を決め、お金を払うか?

【ファイブホルン・パルコ店の例】
・部署スタッフ全員(アルバイトも含む)で試食会開催
 ⇒ 何円であれば注文するか?アンケート
   その平均を価格とした。
 ⇒ 原価率の設定に問題がある?という意見もあったが、
   適切な原価率になるようスタッフが努力をした。

☆問題点
・アンケートやラッキーオピニオン導入による弊害
⇒ 常に経営者としての姿勢を問われる。
(みんながいろいろな意見を目にする。それぞれに対してどう対応するか?も、みんながみている)
  提案書は掲示し、それの対応策や回答を、横に掲示している。
⇒ 幹部クラスも同様に見られる。
⇒ 良いことも悪いことも、忌憚のない意見が出てくる。
⇒ “減点しないサービス”に固執する傾向がでてくる。
(平均点を超えようとすると、当たり障りのないサービスをしようとする。)
⇒ “免責のサービス”に固執してしまう。・・・責任逃れ!!

(例)タクシーに乗って、運転手が「どのような道順で行ったら良いか?」と聞く。・・・時間に遅れても“お客さんが選んだ道だから”と言い逃れができる。

(例)料理の注文で、最後に聞きなおす。・・・オーダーミスをしても、“最後に確認した通りです”と言い逃れできる。
 →→→ 平均点以上(ちょっと上)を取ろうとする。

⇒ 味も平均点以上を狙う。
 信州はショッパイぐらいで良いのでは?

・人事異動による弊害
⇒ 適材適所とはいうが、観光にとって「人との出会い」も旅行の魅力の一つである。
 →→→ 今は最低で五年で異動としている。

☆今思うこと
・クレームとは、お客様に不便をかけること ⇒ 後手になってしまっても良い
・クレームが多いことは、良い印 ⇒ 隠されたことがない。それだけ多くの人が来てくれているということ。
・クレームとは、教育・研究の場 ⇒ 日々共有し、みんなでクレームを利用して研修する。
・クレームとは、最大の情報源 ⇒ 「他ではこうだったのに、ここではない」という話は、他の情報を貰える良い機会。アルバイトは特にいろいろ見て来ている。

① 免責のサービス
② 自己都合
③ 自己満足

☆最後に・・・
アンケートで「部屋の冷蔵庫に御当地ジュースなどが欲しい」とあった。スタッフ間では、『タダであげているのに、更に要求するなんて!!』という気持ちが生まれた。
これだけやってきてもそういう気持ちが生まれてしまう。

⇒⇒⇒ 永遠の課題である、、、と結ばれました。

講義を受けて・・・
 免責・・・誰もがミスをしたくない
 自己都合・・・今までこうだったから。ホテル側としては対応が大変だから。
 自己満足・・・他よりも一歩進んでいるから、良いだろう。

ではなく、
 一人ひとりが責任を持ってお客様に対応する
 こちらの都合ではなく、お客様本位の立場に立って
 お客様の目線でお客様が満足することを行う

といった姿勢を常に持ち続けていることに、とても感銘を受けました。
観光業だけでなく、我々のような立場でも、応用のきく講義でした。


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