山奥の小部屋より

山奥の司法書士が感じたこと

裁判手続等のIT化検討会第1回議事要旨

2017-12-20 19:37:56 | 各省庁の動き
標記が公開されました。

裁判手続等のIT化検討会- 日本経済再生本部

【最高裁判所事務総局民事局】
・個人情報を始めとするプライバシー性の高い情報もある程度含まれている
・期日では口頭での議論を活性化させ、審理の見通しについて認識を共有するなどして、迅速な審理を進めるような工夫をしている
・一定程度ではあるが、現にIT技術の活用が行われている
→電話会議システム、TV会議システム
・TV会議システムは、セキュリティ確保の要請から、裁判所間での閉域網で使用しているので、Skypeのようにインターネットを使っていない
→弁護士事務所と裁判所の間をつなぐことはできないというのが現状
・IT機器を利用した申立て
→督促オンライン 平成28年には、督促手続全体は約27万5,000件あり、そのうちの約3分の1に相当する9万件余がオンラインで行われた
・現行法では、他の民事訴訟手続でもオンライン申立てが可能とされているが、オンラインで申し立てられたものを裁判所でプリントアウトして紙ベースで保管することが前提
・札幌地裁で期日変更の申立て等、一部の申立て等をオンラインで可能にするシステムを運用
→この期間内での利用件数は、わずか2件
・諸外国の裁判手続のIT化の状況なども考慮すると、裁判所としても、利用者の利便性の向上と民事訴訟の効率的な進行に向けて、IT技術の更なる活用は積極的に取り組むべき重要課題と考えている
・TV会議もインターネットを利用して弁護士事務所と裁判所の間をつなぐことができるようになったりすれば、口頭議論の活性化等の運用上の工夫とも相まって、高い効果が期待できると考えている
・真に望ましい迅速かつ効率的な民事訴訟を実現することにあると考えている
→IT化はそのような目標達成のための手段であるとの視点で検討していく必要がある
・一定数の本人訴訟があり、その中にはIT技術を使いこなせない方もいる
→裁判を受ける権利を侵害するようなことがあってはならないので、手続保障に配慮していく必要がある
・来年度には、ITの規模や費用対効果等をはかるための前提となるコンサルティング調査を実施することを予定

【企業・消費者の意見】
・いつでもどこでも通常業務が可能なインフラを利用することで、所定勤務日の半分程度までを目安とした在宅勤務制度が利用可能
・法務部の働き方改革としては、今後5年間で法務人材の20%程度が定年退職をするという大量退職を控えた中で、秘密保持契約だけで年間4,000件程度に上る法務審査を行っている状況
・法務部内部からは、運用面でも遠隔裁判ではTV会議の活用が、いわば当たり前になると、代理人の先生方にも安心いただいて、出頭にかえていただけるのではないかという声が上がっている
・裁判手続等の関係で気になるのは書面
・PDFで保存というと、サーバーの容量も占有するということになる為、電子図書館の訴訟記録版のようなものを作っていいただき、進行中の事件も含め、いつでも社内から訴訟記録が参照できるようになると大変便利
・日々大量に小口訴訟の発生・終結を繰り返すようなビジネス形態においては、裁判所に対する書面書証の提出が日常的に多数発生していて、交通費、郵送料、印刷代などのコストが小さくない
・民事保全・民事執行手続(差押、仮差押、仮処分、不動産競売手続)のe-Filingが実現すれば、ますます利便性が向上するのではないか
・昨今、多くの企業において、交渉記録、社内稟議書類、帳簿等を電子的に作成して保存することが定着してきている
→電子的資料の真正性や訴訟における証拠能力が論点になることが、少なからず訴訟においては起きている
・e-Filingが定着して、訴訟等の申立が簡易になることにより、安易な訴訟提起を惹起する懸念がある
・e-Courtが導入されれば、遠隔地法廷であったとしても実際に傍聴することにより、より正確な訴訟管理が期待できる

【公益社団法人全国消費生活相談員協会】
・裁判手続き等がIT化された場合、消費者にとっては手続が簡易になって利便性が高くなるという点はあると思う
・日常的にIT機器を利用しない人もまだまだたくさんいる
・消費者にとって不安な材料は、IT化された場合のセキュリティの問題
・悪質な事業者が安易に裁判を起こしやすくなってしまい、消費生活センターに相談する間もなく結論が出されてしまうというような危険性も私どもは危惧しているところ
・裁判所からの通知がメールで来るということになると、架空請求という悪用が考えられる
・IT化に対してお願いしたいことは、消費者にとってまだ裁判制度は遠い存在で、消費者教育の必要性、法律に対する教育の必要性が大きい

【自由討議】
・裁判手続等のIT化にはe-Filing、e-Court、e-Case Managementという3つの要素があると言われているが、弁護士はそれぞれについて、かなり強い期待を持っている
・将来的には、なるべく訴訟のデータを、一つ一つの情報、データとして扱って、より高度な作業に集中できるようなシステムができるといいと期待している
・e-Courtになれば、短い時間で、移動時間なく期日を入れられますから、訴訟の迅速化になるのではないか
・e-Case Managementの中で、裁判所がつくる情報、端的にいうと、判例、裁判例についても扱っていって、公開することで、予測可能性が高くなるという意味では非常に期待がある
・裁判所の立場、弁護士の立場、企業、市民の立場も考えつつ、調和のあるシステムをつくらないと、人気のない使われないシステムになると思っている
・最近、あらゆる文書を全部電子化のままやりとりするという電子契約あるいは電子取引が非常に普及してきている
・電子署名は非常に安全なもので、世界最高速のコンピューターを1年間専用に使って回しても偽造ができないぐらいの、少なくともそれだけの安全性は保障されている
・デジタル・デバイドの話が少しあったかと思うが、これについては1つのモデルケースが特許庁のやり方だと思っている
・適切に紙と電子を使い分けていくことによって、いわゆるデジタル・デバイドについても結構対応できるのではないかと考えている
・利用者の利便性をIT化によって高めて、裁判手続を利用しやすくするというのは必須の社会的な要請だと考えている
・利用者目線が重要
→訴訟の当事者だけではなくて、代理人-主として弁護士-、裁判所、証人など個別の訴訟案件に協力をする方、それから、個別の事件に直接かかわっていない、一般の公衆の観点もあわせて考慮すべき
・ITリテラシーの低い利用者の裁判を受ける権利をどのように保障するのか、セキュリティをどのように確保するのかということは当然重要
・情報が紙に記載されていることをベースとするIT化ではなくて、記録媒体のいかんを問わずに情報をそのまま利用するIT化を目指すべきではないか
・送達とか、証拠調べ、あるいは通常の弁論の手続の中で、口頭主義とか、直接主義という原則もあるが、そのあり方を再検証する、あるいは裁判の公開原則においては、記録の閲覧謄写や期日の公開のあり方も、もう一度見直してみる価値はあるのではないか
・今回、20年ずっと使ってきたOA化からIT化に変わることによって、新しい、国民に利用しやすく、わかりやすい民事訴訟が実現できることを希望している
・裁判手続のIT化を実現するには、消費者の方からの御意見が非常に参考になると思われる。既に裁判手続のIT化が実現しているような諸外国においても、本人訴訟をどのようにIT化に反映するかについてこれまでに議論されてきたようであり、そういった国の議論も参考になるのではないか。
・閲覧謄写を含めた裁判記録の情報公開をどのようにIT化していくのかという点も重要な観点になる
・紙の書類と電子的な記録が混在する状況はできるだけ生じないようにして、やるのであれば全般的に電子化をして、裁判所から紙をできるだけなくしていくといった方向も考えるべき
・被告への訴状送達については、書面によらざるを得ない場合があるし、判決の送達等についても工夫が必要だと思うが、書面をできるだけ使わない方向を目指すのがいいのではないか
・個人情報の漏えいインシデントを公開されている範囲で拾い上げて、毎年レポートを出しておられますが、この数年は年間件数が900件前後で推移しております。大体1日につき2、3件起きているという計算
・高齢者とか、ITに詳しくない、リテラシーの低い消費者がついていけずに取り残させてしまうような制度にはしていただきたくないということと、むしろIT化によって、利便性が高まり、遠くまで行かなくても、難しいことをしなくてもよくなったということになるような方向で進めていただけるとうれしい
・裁判は公開されるべきものとはいえ、プライバシーや、あるいは企業の立場からすると営業秘密など、裁判記録の公開にあたっては議論されるべき論点があるので、裁判記録の公開はまた別の議論として検討していただきたい



手形・小切手機能の電子化に関する検討会

2017-12-20 17:23:41 | つぶやき
全銀協ウェブページより

平成29年12月18日付で標記検討会が設置されたとのことです。

手形・小切手機能の電子化に関する検討会 - 全国銀行協会

法的論点として

・銀行が国内で利用されている手形・小切手の取扱いを停止した場合(手形交換所を廃止し、手形・小切手の発行を取りやめる場合)、手形・小切手法上問題は無いか(小切手法3条等)
・ジュネーブ条約に関し、留意点はあるか
・手形を電子記録債権に移行するにあたり、法的な差分について、留意点はあるか
・電子記録債権について商事留置権は成立しないと解されるか

等が挙げられています。