山奥の小部屋より

山奥の司法書士が感じたこと

第9回裁判手続等のIT化検討会議事要旨

2019-07-31 18:00:38 | 裁判関係
裁判手続等のIT化検討会- 日本経済再生本部

公表されています。

・メールでの送達というのは早々と切り捨てられてしまっているが、メールは利用しやすいので、それを早くから諦めるのはどうかと思っている(1頁)
➢ ドイツではDe-mailがありますね。今後は、電子私書箱の利用が多くなるものと思われます。

・中国では過去の裁判例情報や統計データをもとに裁判所の判決業務を補助するシステムを開発された(5頁)
➢ 中国・海南省の裁判所に「AI裁判官」登場 裁判官不足解消に一役 写真1枚 国際ニュース:AFPBB Newsこのあたりでしょうか。

・プライバシーの関係等もあると思うが、それはより広く企業とか一般国民に公開されていき、それが法的安定性と予測可能性を基礎づけるような礎になっていくと良い(5頁)
➢ 市民と法112号「裁判手続等のIT化への期待と懸念──IT化によって司法は国民の身近なものとなるか──」に同旨を記載してみました。

・ある程度トライ・アンド・エラーをしていきながらやっていく。そういう中で、いわゆるAPIを公開してインターフェースの部分は民間等に競争させ、つくらせるということが大事になってくる(5頁)
➢ APIの公開については、登記申請に係る手続でも議論されていますね。

・ファクシミリにもリスクはあった。間違い電話は幾らでもあったわけだから、間違いファクスが怖い。それでも、ファクシミリで訴訟書類を送付することをやめるという選択はしなかった。今、ファクシミリは、間違いがあるからやめますかといったら、誰もやめろとは言わないと思う(8頁)
➢ 自動車は便利だけど、事故が発生するから自動車は廃止しましょうという話にはならないと思われます。

・メリハリのあるセキュリティー 文書による和解の承認だとか認諾だとか、そういう意思表示として決まってしまうようなものはやはり少し高いレベルのセキュリティーを持ってやらなければならないと思っている(10頁)
➢ どのように本人確認を行うのか、どの段階で本人確認を行うのか、訴訟終結効をもたらす手続について特別の措置が必要なのか等、検討が必要だと思われます。

・CLOUDSIGNさんは電子署名法とはまた違ったスキームでサービスを展開されて、そのことによって電子契約というのが爆発的に普及したという経緯が企業法務の特に契約実務ではある(10頁)
➢ クラウド上で締結した電子データに対して、CLOUDSIGNの電子署名を付すというスキームですね。電子署名法にいう推定効は働かないと思われますが、当該データの存在(いつ、何を)を証明することは可能です。また、契約締結に至るまでのやり取りが可視化されることにより、証拠力が高まることも考えられます。

・公的な役所みたいなところで、例えば今、区役所で住民票をとるというようなことと同様に、500円出したらPDFにして送ってもらえるような、小さいお金でできる仕組みが必要だと思う(12頁)
➢ アメリカ:裁判所で書面をスキャン、シンガポール:サービスビューロにてPDF化可能(有料)、CJCのサポート、ドイツ:区裁判所では「できる」扱い、地裁以上は強制的(2022年~)、安全な通信方法(De-mail、beA等)、韓国:片面的電子訴訟、法務士による支援等…

・若い人たちはPCを持っていない方が非常に多くて、これからこの普及率はどんどん下がると思っている(12頁)
➢ 市民と法112号「裁判手続等のIT化への期待と懸念──IT化によって司法は国民の身近なものとなるか──」にて、「いずれITツールの主役はパソコンからスマートフォンやタブレットに代わっていくと思われる」旨記しています。

・本人サポートのあり方については、法制度の検討の上でもやはり必要なことなので、同時並行的に考えていくことが必要になってくるのではないかと感じた(16頁)
➢ ITを望む方が等しくそのメリットを享受できることは、とても重要だと思います。デジタル手続法に関する国会答弁では、「年齢、身体的条件に基づく格差や地理的な制約に基づく格差だけではなく、経済的な理由によりスマートフォンやパソコンなどを購入することができない方に対する施策なども含まれます」「この法案の一番重要なところは、全ての国民にデジタル化の恩恵を要するに届ける、はっきり言って、これで格差が開いたり誰かを取り残していくということでは困ると思っています。ですから、このデジタル・デバイド対策というのも、デジタル化の進展に伴って新たな問題が出てきたときには柔軟に対応しながら、全てのデバイドを解消する方向で検討すべきだと考えております。」 とされています。

テレビ会議の方法による尋問等(民訴法204条)

2019-07-24 23:43:07 | 裁判関係
現在、裁判手続等のIT化について議論されています。

裁判手続等のIT化検討会- 日本経済再生本部

公益社団法人 商事法務研究会 民事裁判手続等IT化研究会

成長戦略フォローアップ(令和元年6月21日決定)では次のように述べられています。

「オンライン申立て、訴訟記録の電子化、手数料等の電子納付、ウェブ会議等を用いた関係者の出頭を要しない期日の実現等を目指し、2019 年度中に法制審議会に諮問を行い、2022 年中の民事訴訟法改正を視野に入れて取り組む。裁判手続等の IT 化により、特に IT に習熟しない者の裁判を受ける権利を害することがないよう、司法府の協力を得つつ、総合的な対策を検討する。司法府には新たな制度の実現を目指した迅速な取組を期待し,行政府は必要な措置を講ずる。」

また、裁判手続等のIT化検討会取りまとめでは、フェーズ1~3とし、法改正を必要としない部分については直ちに、法改正を必要とする部分及び設備の整備が必要な部分については法改正後といった区分けをし、IT化を推し進める方向性を示しています。

そこで興味を持ったのが、タイトルの件数です。

現在も実施可能である民訴法204条に基づく尋問は何件利用されているのであろうか…

cf 民事訴訟法204条
「第二百四条 裁判所は、次に掲げる場合には、最高裁判所規則で定めるところにより、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によって、証人の尋問をすることができる。
一 証人が遠隔の地に居住するとき。
二 事案の性質、証人の年齢又は心身の状態、証人と当事者本人又はその法定代理人との関係その他の事情により、証人が裁判長及び当事者が証人を尋問するために在席する場所において陳述するときは圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認める場合であって、相当と認めるとき。」

答えは…

平成29年 139件(証人19件 当事者本人等117件 専門委員その他3件)
平成28年 199件(証人21件 当事者本人等161件 専門委員その他17件)
平成27年 128件(証人11件 当事者本人等104件 鑑定人1件 専門委員その他12件)
(平成31年1月10日付最高裁秘書第5364号)

この件数をどう見るか、何とも言えませんが、これから先、IT化を推進していくためには、当事者等にとって、より使いやすい制度を求める必要がありそうです。

なお、テレビ会議システムを利用することのできる裁判所は、平成28年1月末時点で106だったのに対し、平成30年6月時点では317になっています(数が違ったらスミマセン)。

そのため、平成30年の件数を求めれば、件数が大きく増加している可能性もあります。

遠くない将来、裁判手続はIT化されます。
IT化のメリットを十分に享受するためには、現在利用できるITツールを活用することも重要だなぁ等と感じた本日でした。

行政書士法に関するグレーゾーン解消制度

2019-07-23 08:29:41 | つぶやき
外国籍社員のビザ申請・管理が簡単にできるクラウド型サービスの提供(METI/経済産業省)

「行政書士法第1条の2は、「行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下この条及び次条において同じ。)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。」と規定している。
 本件において、事業者が新たに提供しようとするサービスは、利用者が入力した内容をオンライン上で申請書類の様式に反映させるものであるところ、一般的に、事業者が、Web上に一定の入力フォームを用意し、利用者が自己の判断に基づき、その入力フォームに用意された項目に一定の事項を入力し、当該利用者自身が申請書類を作成する行為(これらの行為を可能とするために提供される役務を含む。)は、行政書士法第1条の2第1項に規定する事務を業として取り扱ったとの評価まではされないものと考えられる。」

士業法に関してグレーゾーン解消制度が用いられた例は次の通りだと思われます。

建物滅失登記申請を補助するサービスに係る土地家屋調査士法の取扱いが明確になりました~産業競争力強化法の「グレーゾーン解消制度」の活用~(METI/経済産業省)

グレーゾーン解消制度に係る事業者からの照会に対し回答しました‐本件事業が弁理士法第75条の「鑑定」に該当するか(METI/経済産業省)

グレーゾーン解消制度に係る事業者からの照会に対し回答がありました‐ 利用者が自己の判断に基づいて自ら商標登録出願書類等を作成することを支援するソフトウェアの提供(METI/経済産業省)

グレーゾーン解消制度に係る事業者からの照会に対し回答がありました‐ 利用者に本店移転登記手続に必要な書類を洗い出すための質問に対し、利用者の判断で回答させ、一義的な結果を表示し、利用者が入力した情報を自動的に本店移転登記の書類として生成すること(METI/経済産業省)

グレーゾーン解消制度に係る事業者からの照会に対し回答がありました~終活支援サービスの提供~ (METI/経済産業省)

NISA口座の開設に伴う住民票の写しの代行取得サービスの提供が明確になりました【PDF】