今、自衛隊の在り方を問う!

急ピッチで進行する南西シフト態勢、巡航ミサイルなどの導入、際限なく拡大する軍事費、そして、隊内で吹き荒れるパワハラ……

8月29日(水)のつぶやき

2018年08月30日 | 主張
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新刊『自衛隊の南西シフト―戦慄の対中国・日米共同作戦の実態』のプロローグから

2018年08月29日 | 主張

『自衛隊の南西シフト―戦慄の対中国・日米共同作戦の実態』のプロローグから
  ――急ピッチで進む先島―南西諸島の要塞化

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 忖度か、政府による報道規制か

 今、この日本で、戦慄する状況が進行している。
 それは、本書で筆者がリポートする、先島―南西諸島への自衛隊の新基地建設、新配備に関するマスメディアの沈黙だ。
 2016年6月の奄美大島、2017年10月からの宮古島駐屯地(仮)工事の着工、そして今、急ピッチで進む石垣島への自衛隊基地建設、沖縄本島での自衛隊の増強・新配備という、一連の自衛隊の南西シフト態勢に関して、マスメディアは、事実さえもほとんど報道しない。

 マスメディアだけではない。従来、このような日本の軍拡や平和問題で発言してきた知識人らも、驚くべきほどの沈黙を守っている。
 彼らは、この急速に進んでいる先島―南西諸島への基地建設について全く知らないというのか? そうではない。マスメディアは、日本記者クラブでの現地調査も行っており(後述)、平和問題で発言してきた知識人らも、幾人かが現地を訪れたことを筆者は確認している。

 しかし、彼らのほとんどは依然として発言しないのだ。何故なのか? 筆者は、2016年夏から2017年にかけて、幾度か与那国島・石垣島・宮古島、そして奄美大島を訪ねて、その基地建設の現場を見てきた。

 拡大し続ける 駐屯地と隊員

 そこには与那国島を始め、防衛省・自衛隊当局が、地元に説明している事実とは全く異なる実態が隠されていた。
 例えば、後述する2016年3月に開設された与那国駐屯地。
 左頁の写真に写っているのは、かなりの広大な敷地を有する駐屯地だ。これが、160人規模の沿岸監視隊だと言えるのか。

 読売新聞の元記者は、与那国駐屯地へミサイル部隊の配備が予定されていることを記述しているが(『自衛隊、動く』勝俣秀通著・ウェッジ)、この駐屯地の敷地面積の広さや、与那国島の地理的位置からして不可避的に、ミサイル部隊の配備は必至といえるかもしれない。
 最新の防衛省の発表では、「兵站基地」とされている与那国駐屯地の巨大弾薬庫も、それを表している。つまり、現在、先島―南西諸島で進んでいる基地建設は、沖縄世論を恐れて規模を縮小して行われているが、「宣撫工作」が成功すればするほど、拡大していくということだ。

 ミサイル部隊の配備、そして琉球列島弧の要塞化

 これを示しているのが、最近明らかになった先島諸島などへのミサイル部隊の配備問題だ。
 2018年4月、国会で暴露された自衛隊の南西シフトの策定文書「『日米の『動的防衛協力』について」(統合幕僚監部)は、民主党政権下の2012年に作成されたが、この最初の南西シフト策定文書では、先島―南西諸島へのミサイル部隊配備は、明記されていないし、予定もされていない。つまり、この時期では沖縄世論を恐れて、ミサイル部隊配備は「有事展開」だったことが分かる。実際、この前後から自衛隊は、ミサイル部隊の「緊急展開訓練」を行っていたのだ(西部方面隊の「鎮西」演習など)。ところがどうだ。住民への宣撫工作成功とみるや否や、自衛隊は先島、奄美ばかりか、沖縄本島への地対艦ミサイル部隊の配備まで打ち出したのだ(2018年2月)。

 そればかりではない。先島をはじめ、南西諸島の民間空港へF35B戦闘機を配備するという、凄まじい事実までが発表された。
 それは、与那国島・石垣島・宮古島・南北大東島などの民間空港を軍事化し、F35Bの基地に使用するという計画だ。
 マスメディアでは、このF35Bの運用については、ヘリ空母「いずも」などの改修による本格空母の導入が注目されているが、短期的に採用されるのは、南西諸島の民間空港の軍事化である。

 つまり、先島―南西諸島は、対艦・対空ミサイル部隊などの基地として要塞化されるだけでなく、琉球列島弧に沿ったほとんどの島が、文字通りの要塞――不沈空母として造られていくということだ。

 一大要塞島と化す奄美大島

 左の写真を見てほしい。これは、2018年6月中旬の奄美大島・大熊地区の駐屯地工事現場だ。この地点を防衛省は、陸自・地対空ミサイル部隊・警備部隊350人規模の配備と発表しているが、誰の目にもそれをしのぐ巨大さは明らかだ(敷地面積30ヘクタール)。

 奄美大島にはまた、陸自の地対艦ミサイル部隊・警備部隊の駐屯地が、瀬戸内町節子地区へ建設されている(写真下)。この規模も防衛省は、200人規模と発表しているが、駐屯地敷地の巨大さ(28ヘクタール)からして、配備部隊の大幅な増強は必至だ。節子地区には、防衛省自身が「大規模火薬庫」と明記している、弾薬庫も造られつつある(写真下の左上部分)。

 これだけでも、奄美大島の基地建設が凄まじいことが分かるが、この島には、空自の移動警戒隊の配備が発表されているばかりか、空自の通信所建設までもが発表されている。
 要するに、奄美大島は、琉球列島弧の北の拠点として島全体が要塞化されるということだ。しかも、本文で叙述するように、種子島・馬毛島の「事前集積基地」と相まって、南西諸島への機動展開・中継拠点としても確保されようとしているのだ。

 一行も報道されない奄美の基地建設

 おそらく、読者は宮古島を始めとする先島諸島の基地建設の現場もそうだが、とりわけ、この奄美大島の自衛隊駐屯地の工事現場を、初めて知ったのではないだろうか。
 率直に言えば、ここまで大規模に進行している奄美大島の基地建設について、全てのマスメディアは、一行・一秒も報道していない。リベラルと言われる朝日新聞を始めとしてそうである。信じられないだろうが、これは事実だ。最近、『週刊金曜日』(2018年4月13日付)などが少しだけ報じ始めたが、未だにマスメディアの報道は皆目ない。

 残念ながら、奄美大島の自衛隊基地建設に関する限り、あるいは、先島―南西諸島への自衛隊基地建設と言ってもいいが、マスメディアは、ほぼ完璧に政府・自衛隊への「翼賛勢力」に転化した。
 もちろん、奄美大島の地元の新聞は、正確に報道しているが、これが全く本土へは伝わらない。 

 抵抗の砦・石垣島のたたかい

 与那国島の基地建設が完了し、宮古島、奄美大島の基地建設工事が、着々と進んでいる中で、石垣島は現在、唯一つ基地建設を食い止めている島だ。
 しかし、その石垣島にも、防衛省の魔の手は迫ってきている。今年5月からは、「防衛は国の専権事項」などとうそぶき、基地誘致について言葉を濁していた中山石垣市長が、駐屯地予定地である平得大俣地区、そして、全石垣市民を対象とした「自衛隊配備の説明会」を開催・強行した。

 この中山市長の豹変ぶりからすれば、相当の政府・防衛省の建設推進への圧力がかけられていると言えよう。奄美大島、宮古島への自衛隊配備は、2018年度末と予定されているが、石垣島では、未だに用地確保のメドさえ立っていないからだ。
 駐屯地の予定地は、全体として市有地(ゴルフ場)であるが、予定地内には農地もある。木方さんの「ダハズ農園」(次頁の防衛省図面)は、防衛省が何の前触れもなく、いきなり駐屯地用地に組み入れた。この図面の発表後、沖縄防衛局が二度ほど「挨拶」に来たというが、常軌を逸した行為だ。

 駐屯地予定地とされる 平得大俣地区の四つの自治公民館は、全地区あげて自衛隊駐屯地の建設に反対だ。先の石垣市長の説明会にも、全地区あげてボイコットし、強く抗議行動を行っている(写真下、開南・於茂登地区への説明会に抗議)。
 
 石垣島最大の農業地帯の基地化
 
 開南・於茂登・川原・嵩田の4地区自治公民館でつくられている平得大俣地区は、石垣島でも最大の農村地帯であり、景勝地だ。戦後、沖縄本島の米軍基地建設で追い出された開拓農民たちが創り上げたという集落は、沖縄最高峰の於茂登岳の南に広がる豊かな農村地帯だ。

 この緑豊かな地域に、46ヘクタールもの敷地を占有し、対艦・対空ミサイル部隊、警備部隊などを配備するというのだから、農民らをはじめ、石垣住民らが反対するのは当然である。
 しかも、石垣島は、戦中の一時期、1944年からおよそ1年余りしか、「軍隊」が駐屯したことはないという、非武装の島なのだ。もちろん、戦後は米軍も自衛隊も、一兵さえも駐留したことはない。戦後73年、軍隊がいなかった島に、「防衛の空白地帯」などと口実をつけて軍隊が来ることを、石垣島島民は決して許さないだろう。

 日本記者クラブ取材団は先島で何を見てきたのか?

 下の記事は、2016年11月30日から12月1日まで、与那国島・石垣島を取材したとされる「日本記者クラブ」16人の、石垣市長への取材を報じる記事だ(八重山毎日新聞、同年12月2日付)。

 取材団には、沖縄2紙をはじめ、新聞・テレビのマスメディアが参加していたと言われる。
 ところで、沖縄本島の2紙は、翌2017年初めから、特集を組んで、自衛隊の先島―南西諸島問題をようやく本格的に報じ始めた。ところが、残りのマスメディアはどう報じたのか? なんと、ほとんどが沈黙を守ったのだ!

 下の左の資料は、ウェブサイトに貼られていたNHKの深夜の解説記事である(17年1月31日)。この解説委員は、自らがこの取材団に参加していたことを話し、若干の自衛隊の南西シフトに関する解説を行っている。しかし、報道は深夜なのだ。

 朝日新聞は、どのように報じたのか? 同紙は、17年3月1日、夕刊で与那国島に関する記事を掲載。だが、驚くべきことにこの記事は、自衛隊配備問題にはほとんど触れず、マンガ家・かわぐちかいじの『沈黙の艦隊』に関する、与那国駐屯地司令との「漫談」を書いているのみだ。以後、今日に至るまで、朝日を始め、マスメディアは、自衛隊の南西諸島への配備にほとんど沈黙している。
 

版元から一言
自衛隊の南西シフト態勢による、急ピッチで始まっている与那国島・石垣島・宮古島・奄美大島などへの新基地建設の現状のリポート。
これを約220枚の写真と現地調査、そして自衛隊内部の資料で描く。そこには国民が全く知らない、知らされていない、恐るべき実態が隠されている。始まっているのは、「島嶼防衛戦」=日米共同の東シナ海戦争態勢づくりという、戦慄する事態である。

*写真は造成工事が進み、建物建築が始まった宮古島駐屯地(仮)

著者プロフィール
小西 誠 (コニシマコト) (著)
1949年、宮崎県生まれ。航空自衛隊生徒隊第10期生。軍事ジャーナリト・社会批評社代表。2004年から「自衛官人権ホットライン」を主宰し事務局長。
著書に『反戦自衛官』(社会批評社・復刻版)、『自衛隊の対テロ作戦』『ネコでもわかる? 有事法制』『現代革命と軍隊』『自衛隊 そのトランスフォーメーション』『日米安保再編と沖縄』『自衛隊 この国営ブラック企業』『オキナワ島嶼戦争』『標的の島』『自衛隊の島嶼戦争―資料集・陸自「教範」で読むその作戦』(以上、社会批評社)などの軍事関係書多数。
また、『サイパン&テニアン戦跡完全ガイド』『グアム戦跡完全ガイド』『本土決戦 戦跡ガイド(part1)』『シンガポール戦跡ガイド』『フィリピン戦跡ガイド』(以上、社会批評社)の戦跡シリーズ他。

https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784907127251

8月27日(月)のつぶやき

2018年08月28日 | 主張

あなたは、この恐るべき事実を知っていますか?――115枚の写真・図で見る自衛隊の先島ー南西諸島配備の実態!

2018年08月27日 | 自衛隊南西シフト
あなたは、この恐るべき事実を知っていますか?――115枚の写真・図で見る自衛隊の先島ー南西諸島配備の実態!

#種子島 #自衛隊 #南西シフト #沖縄

●今、与那国島・石垣島・宮古島・沖縄本島・奄美大島・馬毛島、そして九州への自衛隊の新配備・新基地建設が、急ピッチで進んでいる。
●これは、自衛隊の「南西シフト」による「島嶼防衛戦」=「東シナ海戦争」への準備態勢であり、日米の中国脅威論に基づく対中抑止戦略の発動であり、新冷戦の始まりだ。
●この自衛隊の先島ー南西諸島配備により、アジア太平洋地域では恐るべき軍拡競争が始まろうとしている。――この始まろうとしている本当の「戦争の危機」を、「冷戦後の自衛隊のリストラ対策」と言って軽視する一部のジャーナリストやメディア関係者を厳しく批判しなければならない。
●2016年与那国駐屯地開設に続き、2017年には奄美駐屯地の工事が着工され、宮古島でも本年8月の駐屯地工事着工が報じられた。そして、石垣島では本年5月、駐屯地の建設予定地が発表された。

*今、先島諸島ー沖縄本島ー奄美ー九州の、この新基地に反対し平和を求める人々は、全国からの支援を求めている。この現地の実態を知っていただき、全国から力強い連帯・支援の声をあげよう!!

*A5判53頁、写真・図115枚で見る、自衛隊の南西シフトの実態
http://www.maroon.dti.ne.jp/shakai/media-nansei.pdf

「日米豪英」間の一連のACSA(物品役務相互提供協定)の締結の意味するものは?――次は「日仏印ACSA」か

2018年08月27日 | 自衛隊南西シフト
「日米豪英」間の一連のACSA(物品役務相互提供協定)の締結の意味するものは?――次は「日仏ACSA」か?

しばらくぶりに、最新の自衛隊法をチェックして驚いた。日米・日豪間のACSAだけでなく、日英間のACSAまで締結され、しかも自衛隊法改定まで行われていたからだ(2017年1月締結、同6月、自衛隊法改定、下にその自衛隊法の全文)。

物品役務相互提供協定(ACSA)とは?

ACSAとは、物品役務相互提供協定といい、平時・有事の「同盟国」間の兵站支援を行うことだ。例えば、日米物品役務相互提供協定では、協定に基づいて提供される後方支援、物品又は役務は「食料、水、宿泊、輸送(空輸を含む。)、燃料・油脂・潤滑油、被服、通信業務、衛生業務、基地活動支援(基地活動支援に付随する建設を含む。)、保管業務、施設の利用、訓練業務、部品・構成品、 修理・整備業務(校正業務を含む。)、空港・港湾業務及び弾薬 」(日米物品役務相互提供協定第1条)と多岐にわたっている(日米間では、武力攻撃事態・武力攻撃予測事態の場合のみ弾薬を提供)。                                                                         

これは、1996年にすでに日米安保に基づき日米ACSAとして締結されていたが、この背景は80年代から急ピッチで推し進められた日米共同作戦ー日米の軍事的一体化の一環であった。この「軍事同盟」間の、軍事一体化の象徴とも言えるACSA締結が、2010年5月には「日豪ACSA」として締結された。そして、2017年1月、日英ACSAとして締結されたのだ。


日豪安保態勢のスタート

さて、その日豪ACSA締結の元になったのが、早くも 2007年の安倍首相(当時)とオーストラリア首相との間で署名された「日豪安保共同宣言」である。全文は、http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/australia/visit/0703_ks.html であるが、この2007年という時期に安倍は、事実上のオーストラリアとの「淮軍事同盟」づくりに入ったということだ(直後に安倍は病気のため首相を辞任)。しかも、この重大な政治的決定は、国会でも論議されず、メディアもまったく報じないで進行した事態である。その結果が、2017年における日英ACSAの締結へと至ったということだ。しかも、すでに先行するように2016年から日本とイギリスの共同訓練まで行われている(2016年9月)。https://www.gov.uk/government/news/announcement-raf-typhoon-aircraft-to-visit-japan.ja  
                                      
安倍政権の「インド太平洋戦略」の提起  

ところで、この日米・日豪・日英と続くACSA態勢が、安倍晋三が2012年に国際NPO団体PROJECT SYNDICATEに発表した英語論文『Asia's Democratic Security Diamond』での安保戦略を背景として進んできたことは明らかだ。ここでは、 オーストラリア、インド、アメリカ・ハワイの2国1地域と日本を四角形に結ぶことで、中国の東シナ海、南シナ海進出を抑止することを狙いとする「セキュリティダイヤモンド構想」として打ち出された。つまり、日米態勢を軸に、インド・オーストラリアなどを、対中抑止戦略のもとに動員しようとする対中包囲網の形成である。全文は https://iwj.co.jp/wj/open/archives/251637 


この安倍の打ち出した対中抑止戦略である「インド太平洋戦略」は、2010年代にはアメリカの安全保障関係者の中ではすでに提示されていたのだが、安倍は姑息にもその戦略を取り入れ、自らの対中包囲網形成に利用しようとしたということだ。2017年、トランプ政権は、ASEAN首脳会議で安倍に追随するかのようにこの「インド太平洋戦略」を打ち出したのだが、安保マフィアのアーミテージは、トランプ政権の「爆買い主義」(安保戦略の欠如)を嘆いている始末だ(2018/1/22読売新聞のインタビュ)。 http://toyokeizai.net/articles/-/197307 
  
アメリカの「国家防衛戦略」の発表

しかし、2018年1月19日、米国防長官マティスは、2018年度の「国家防衛戦略」を発表し、この「インド太平洋戦略」を具体化する、トランプ政権としては初めての軍事戦略が提起された。この内容は、中国をアメリカの覇権に挑戦する最大の脅威と見なし、「対テロ」から中国とロシアを対象とする長期的な戦略的競争に備える態勢に転換するという戦略だ。つまり、アメリカの本格的な対中抑止戦略、新冷戦態勢が発動されようとしているのである。
この対中抑止戦略態勢を日米同盟をもとに、この同盟に先んじて軍事体制作りに勤しんでいるのが安倍政権であり、自衛隊制服組である。現在、急ピッチで進行しつつある自衛隊の南西シフトー南西諸島への新配備態勢―新基地建設づくりは、まさしくこの「インド太平洋戦略」という、日米の「新冷戦態勢」の強力な推進力となっているのだ。                              

したがって、この自衛隊の南西シフトへの、一部評論家たちのいささかの「軽視」も許されないのであり、この始まっている恐るべき「新冷戦態勢」との対峙が、重大な段階にきているということである。(なお、最近では、日本はフランスとの「安保協議」にはいることが一部で報道されている。おそらくこれは日仏ACSAの締結に行き着く。つまり、安倍政権は、アジア太平洋地域の「旧宗主国」を総動員して対中包囲網づくりを行うとしているということだ。)
(注 日仏ACSAは年内の締結決定。また、日印ACSAについても締結が準備されつつある)


参考資料、自衛隊法によるACSA                             
(合衆国軍隊に対する物品又は役務の提供)
第百条の六 防衛大臣又はその委任を受けた者は、次に掲げる合衆国軍隊(アメリカ合衆国の軍隊をいう。以下この条及び次条において同じ。)から要請があつた場合には、自衛隊の任務遂行に支障を生じない限度において、当該合衆国軍隊に対し、自衛隊に属する物品の提供を実施することができる。
一 自衛隊及び合衆国軍隊の双方の参加を得て行われる訓練に参加する合衆国軍隊(重要影響事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律第三条第一項第一号に規定する合衆国軍隊等に該当する合衆国軍隊、武力攻撃事態等及び存立危機事態におけるアメリカ合衆国等の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律第二条第六号に規定する特定合衆国軍隊、同条第七号に規定する外国軍隊に該当する合衆国軍隊及び国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律第三条第一項第一号に規定する諸外国の軍隊等に該当する合衆国軍隊を除く。次号から第四号まで及び第六号から第十一号までにおいて同じ。)
二 部隊等が第八十一条の二第一項第二号に掲げる施設及び区域に係る同項の警護を行う場合において、当該部隊等と共に当該施設及び区域内に所在して当該施設及び区域の警護を行う合衆国軍隊
三 自衛隊の部隊が第八十二条の二に規定する海賊対処行動を行う場合において、当該部隊と共に現場に所在して当該海賊対処行動と同種の活動を行う合衆国軍隊
四 自衛隊の部隊が第八十二条の三第一項又は第三項の規定により弾道ミサイル等を破壊する措置をとるため必要な行動をとる場合において、当該部隊と共に現場に所在して当該行動と同種の活動を行う合衆国軍隊
五 天災地変その他の災害に際して、政府の要請に基づき災害応急対策のための活動を行う合衆国軍隊であつて、第八十三条第二項又は第八十三条の三の規定により派遣された部隊等と共に現場に所在するもの
六 自衛隊の部隊が第八十四条の二に規定する機雷その他の爆発性の危険物の除去及びこれらの処理を行う場合において、当該部隊と共に現場に所在してこれらの活動と同種の活動を行う合衆国軍隊
七 部隊等が第八十四条の三第一項に規定する外国における緊急事態に際して同項の保護措置を行う場合又は第八十四条の四第一項に規定する外国における緊急事態に際して同項の邦人の輸送を行う場合において、当該部隊等と共に現場に所在して当該保護措置又は当該輸送と同種の活動を行う合衆国軍隊
八 部隊等が第八十四条の五第二項第三号に規定する国際緊急援助活動又は当該活動を行う人員若しくは当該活動に必要な物資の輸送を行う場合において、同一の災害に対処するために当該部隊等と共に現場に所在してこれらの活動と同種の活動を行う合衆国軍隊
九 自衛隊の部隊が船舶又は航空機により外国の軍隊の動向に関する情報その他の我が国の防衛に資する情報の収集のための活動を行う場合において、当該部隊と共に現場に所在して当該活動と同種の活動を行う合衆国軍隊
十 前各号に掲げるもののほか、訓練、連絡調整その他の日常的な活動のため、航空機、船舶又は車両により本邦内にある自衛隊の施設に到着して一時的に滞在する合衆国軍隊
十一 第一号から第九号までに掲げるもののほか、訓練、連絡調整その他の日常的な活動のため、航空機、船舶又は車両により合衆国軍隊の施設に到着して一時的に滞在する部隊等と共に現場に所在し、訓練、連絡調整その他の日常的な活動を行う合衆国軍隊
2 防衛大臣は、前項各号に掲げる合衆国軍隊から要請があつた場合には、自衛隊の任務遂行に支障を生じない限度において、防衛省の機関又は部隊等に、当該合衆国軍隊に対する役務の提供を行わせることができる。
3 前二項の規定による自衛隊に属する物品の提供及び防衛省の機関又は部隊等による役務の提供として行う業務は、次の各号に掲げる合衆国軍隊の区分に応じ、当該各号に定めるものとする。
一 第一項第一号、第十号及び第十一号に掲げる合衆国軍隊 補給、輸送、修理若しくは整備、医療、通信、空港若しくは港湾に関する業務、基地に関する業務、宿泊、保管、施設の利用又は訓練に関する業務(これらの業務にそれぞれ附帯する業務を含む。)
二 第一項第二号から第九号までに掲げる合衆国軍隊 補給、輸送、修理若しくは整備、医療、通信、空港若しくは港湾に関する業務、基地に関する業務、宿泊、保管又は施設の利用(これらの業務にそれぞれ附帯する業務を含む。)
4 第一項に規定する物品の提供には、武器の提供は含まないものとする。
(合衆国軍隊に対する物品又は役務の提供に伴う手続)
第百条の七 この法律又は他の法律の規定により、合衆国軍隊に対し、防衛大臣又はその委任を受けた者が自衛隊に属する物品の提供を実施する場合及び防衛省の機関又は部隊等が役務の提供を実施する場合における決済その他の手続については、法律に別段の定めがある場合を除き、日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の定めるところによる。
(オーストラリア軍隊に対する物品又は役務の提供)
第百条の八 防衛大臣又はその委任を受けた者は、次に掲げるオーストラリア軍隊(オーストラリアの軍隊をいう。以下この条及び次条において同じ。)から要請があつた場合には、自衛隊の任務遂行に支障を生じない限度において、当該オーストラリア軍隊に対し、自衛隊に属する物品の提供を実施することができる。
一 自衛隊及びオーストラリア軍隊の双方の参加を得て行われる訓練に参加するオーストラリア軍隊(重要影響事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律第三条第一項第一号に規定する合衆国軍隊等に該当するオーストラリア軍隊、武力攻撃事態等及び存立危機事態におけるアメリカ合衆国等の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律第二条第七号に規定する外国軍隊に該当するオーストラリア軍隊及び国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律第三条第一項第一号に規定する諸外国の軍隊等に該当するオーストラリア軍隊を除く。次号及び第四号から第九号までにおいて同じ。)
二 自衛隊の部隊が第八十二条の二に規定する海賊対処行動を行う場合において、当該部隊と共に現場に所在して当該海賊対処行動と同種の活動を行うオーストラリア軍隊
三 天災地変その他の災害に際して、政府の要請に基づき災害応急対策のための活動を行うオーストラリア軍隊であつて、第八十三条第二項又は第八十三条の三の規定により派遣された部隊等と共に現場に所在するもの
四 自衛隊の部隊が第八十四条の二に規定する機雷その他の爆発性の危険物の除去及びこれらの処理を行う場合において、当該部隊と共に現場に所在してこれらの活動と同種の活動を行うオーストラリア軍隊
五 部隊等が第八十四条の三第一項に規定する外国における緊急事態に際して同項の保護措置を行う場合又は第八十四条の四第一項に規定する外国における緊急事態に際して同項の邦人の輸送を行う場合において、当該部隊等と共に現場に所在して当該保護措置又は当該輸送と同種の活動を行うオーストラリア軍隊
六 部隊等が第八十四条の五第二項第三号に規定する国際緊急援助活動又は当該活動を行う人員若しくは当該活動に必要な物資の輸送を行う場合において、同一の災害に対処するために当該部隊等と共に現場に所在してこれらの活動と同種の活動を行うオーストラリア軍隊
七 自衛隊の部隊が船舶又は航空機により外国の軍隊の動向に関する情報その他の我が国の防衛に資する情報の収集のための活動を行う場合において、当該部隊と共に現場に所在して当該活動と同種の活動を行うオーストラリア軍隊
八 連絡調整その他の日常的な活動(訓練を除く。次号において同じ。)のため、航空機、船舶又は車両により本邦内にある自衛隊の施設に到着して一時的に滞在するオーストラリア軍隊
九 連絡調整その他の日常的な活動のため、航空機、船舶又は車両によりオーストラリア内にあるオーストラリア軍隊の施設に到着して一時的に滞在する部隊等と共に現場に所在し、連絡調整その他の日常的な活動を行うオーストラリア軍隊
2 防衛大臣は、前項各号に掲げるオーストラリア軍隊から要請があつた場合には、自衛隊の任務遂行に支障を生じない限度において、防衛省の機関又は部隊等に、当該オーストラリア軍隊に対する役務の提供を行わせることができる。
3 前二項の規定による自衛隊に属する物品の提供及び防衛省の機関又は部隊等による役務の提供として行う業務は、次の各号に掲げるオーストラリア軍隊の区分に応じ、当該各号に定めるものとする。
一 第一項第一号に掲げるオーストラリア軍隊 補給、輸送、修理若しくは整備、医療、通信、空港若しくは港湾に関する業務、基地に関する業務、宿泊、保管、施設の利用又は訓練に関する業務(これらの業務にそれぞれ附帯する業務を含む。)
二 第一項第二号から第九号までに掲げるオーストラリア軍隊 補給、輸送、修理若しくは整備、医療、通信、空港若しくは港湾に関する業務、基地に関する業務、宿泊、保管又は施設の利用(これらの業務にそれぞれ附帯する業務を含む。)
4 第一項に規定する物品の提供には、武器の提供は含まないものとする。
(オーストラリア軍隊に対する物品又は役務の提供に伴う手続)
第百条の九 この法律又は他の法律の規定により、オーストラリア軍隊に対し、防衛大臣又はその委任を受けた者が自衛隊に属する物品の提供を実施する場合及び防衛省の機関又は部隊等が役務の提供を実施する場合における決済その他の手続については、法律に別段の定めがある場合を除き、日本国の自衛隊とオーストラリア国防軍との間における物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とオーストラリア政府との間の協定の定めるところによる。
(英国軍隊に対する物品又は役務の提供)
第百条の十 防衛大臣又はその委任を受けた者は、次に掲げる英国軍隊(英国の軍隊をいう。以下この条及び次条において同じ。)から要請があつた場合には、自衛隊の任務遂行に支障を生じない限度において、当該英国軍隊に対し、自衛隊に属する物品の提供を実施することができる。
一 自衛隊及び英国軍隊の双方の参加を得て行われる訓練に参加する英国軍隊(重要影響事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律第三条第一項第一号に規定する合衆国軍隊等に該当する英国軍隊、武力攻撃事態等及び存立危機事態におけるアメリカ合衆国等の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律第二条第七号に規定する外国軍隊に該当する英国軍隊及び国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律第三条第一項第一号に規定する諸外国の軍隊等に該当する英国軍隊を除く。次号及び第四号から第九号までにおいて同じ。)
二 自衛隊の部隊が第八十二条の二に規定する海賊対処行動を行う場合において、当該部隊と共に現場に所在して当該海賊対処行動と同種の活動を行う英国軍隊
三 天災地変その他の災害に際して、政府の要請に基づき災害応急対策のための活動を行う英国軍隊であつて、第八十三条第二項又は第八十三条の三の規定により派遣された部隊等と共に現場に所在するもの
四 自衛隊の部隊が第八十四条の二に規定する機雷その他の爆発性の危険物の除去及びこれらの処理を行う場合において、当該部隊と共に現場に所在してこれらの活動と同種の活動を行う英国軍隊
五 部隊等が第八十四条の三第一項に規定する外国における緊急事態に際して同項の保護措置を行う場合又は第八十四条の四第一項に規定する外国における緊急事態に際して同項の邦人の輸送を行う場合において、当該部隊等と共に現場に所在して当該保護措置又は当該輸送と同種の活動を行う英国軍隊
六 部隊等が第八十四条の五第二項第三号に規定する国際緊急援助活動又は当該活動を行う人員若しくは当該活動に必要な物資の輸送を行う場合において、同一の災害に対処するために当該部隊等と共に現場に所在してこれらの活動と同種の活動を行う英国軍隊
七 自衛隊の部隊が船舶又は航空機により外国の軍隊の動向に関する情報その他の我が国の防衛に資する情報の収集のための活動を行う場合において、当該部隊と共に現場に所在して当該活動と同種の活動を行う英国軍隊
八 連絡調整その他の日常的な活動(訓練を除く。次号において同じ。)のため、航空機、船舶又は車両により本邦内にある自衛隊の施設に到着して一時的に滞在する英国軍隊
九 連絡調整その他の日常的な活動のため、航空機、船舶又は車両により英国内にある英国軍隊の施設に到着して一時的に滞在する部隊等と共に現場に所在し、連絡調整その他の日常的な活動を行う英国軍隊
2 防衛大臣は、前項各号に掲げる英国軍隊から要請があつた場合には、自衛隊の任務遂行に支障を生じない限度において、防衛省の機関又は部隊等に、当該英国軍隊に対する役務の提供を行わせることができる。
3 前二項の規定による自衛隊に属する物品の提供及び防衛省の機関又は部隊等による役務の提供として行う業務は、次の各号に掲げる英国軍隊の区分に応じ、当該各号に定めるものとする。
一 第一項第一号に掲げる英国軍隊 補給、輸送、修理若しくは整備、医療、通信、空港若しくは港湾に関する業務、基地に関する業務、宿泊、保管、施設の利用又は訓練に関する業務(これらの業務にそれぞれ附帯する業務を含む。)
二 第一項第二号から第九号までに掲げる英国軍隊 補給、輸送、修理若しくは整備、医療、通信、空港若しくは港湾に関する業務、基地に関する業務、宿泊、保管又は施設の利用(これらの業務にそれぞれ附帯する業務を含む。)
4 第一項に規定する物品の提供には、武器の提供は含まないものとする。
(英国軍隊に対する物品又は役務の提供に伴う手続)
第百条の十一 この法律又は他の法律の規定により、英国軍隊に対し、防衛大臣又はその委任を受けた者が自衛隊に属する物品の提供を実施する場合及び防衛省の機関又は部隊等が役務の提供を実施する場合における決済その他の手続については、法律に別段の定めがある場合を除き、日本国の自衛隊とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国の軍隊との間における物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国政府との間の協定の定めるところによる。

急ピッチで進行する、自衛隊の南西シフト態勢!

2018年08月26日 | 自衛隊南西シフト
*一旦基地が造られていくと、「基地は増殖」することが明らかとなった。しかも、住民はもとより、自治体へも説明なしだ。
 #南西諸島 #沖縄 #自衛隊

①与那国駐屯地――当初は100人配備と言っていたが、現在160人(陸)になり、空自移動警戒隊(約50人以上)配備も決まり、下記の防衛省発表によると、「兵站施設」「情報保全隊」(旧調査隊)、警務隊まで配備されている。
――与那国島の住民には、全く知らされていないが、情報保全隊は、もっぱら「住民監視」の情報機関である。200人規模の部隊に情報保全隊や警務隊の配備は、「本土」ではあり得ない。連隊規模でもなく、これらは方面隊規模の部隊への配備だ!つまり、与那国駐屯地の拡大は必至!

②宮古島・石垣島とも、防衛省の説明では、対艦・対空ミサイル部隊・警備部隊だけと住民にも、自治体にも説明されてきたが、下記の防衛省サイトには、いつの間にか「兵站施設」の配置が決定されている。これは、言うまでもなく、「最前線」の事前集積拠点である。
千代田配備案では、「倉庫」とだけあるが、大福案の「貯蔵庫」が、この倉庫=兵站施設であることは明らかだ

ーー防衛省・自衛隊は、これだけでも住民を騙したのである。兵站施設は、それ自身が新たな部隊配備であり、一定の人員を伴った独自の部隊だ。

③奄美大島には、大熊地区・瀬戸内地区の合計58ヘクタールという巨大駐屯地が作られつつあるが(プラス空自の早移動警戒隊+通信施設)、これは南西シフト態勢の、機動展開拠点として位置付けられたことが明らかとなった。

④種子島・馬毛島が米軍のFCLP(空母艦載機着陸訓練)だけでなく、自衛隊の事前集積拠点・上陸演習拠点として位置付けられただけでなく、F-15・F35、海自の対潜哨戒機(P-3C)の航空基地として打ち出された。
種子島では、10月に水陸機動団と米海兵隊との共同訓練が打ち出されたが、種子島ー奄美大島の「薩南地域」が、南西シフトの機動展開基地+「島嶼防衛戦」訓練基地として位置付けられた(防衛省文書)。


進行している事態は、琉球列島弧の全ての島々の要塞化だ。この戦慄する実態に、警鐘を鳴らさなければならない。

自衛隊統合幕僚監部の「南西シフト策定」文書の改竄と隠匿の目的について―「日米の『動的防衛協力』について」の原本と開示文書を対照する!

2018年08月26日 | 自衛隊南西シフト

「統合幕僚監部文書」の改竄問題は、イラク日報の隠蔽文書以上の重要問題!

2018年3月30日、日本共産党の穀田恵二衆院議員の国会質問において明らかになった、「日米の『動的防衛協力』について」という自衛隊統合幕僚監部の防衛政策(南西諸島防衛)に関する公文書の改竄は、決定的に重要である。メディアでは、この後、防衛省のイラク日報の隠蔽問題に全ての報道が占有されているが、イラク日報の隠蔽の「歴史的解明」が重要だとしても、この南西諸島の防衛政策文書の改竄・隠匿は、それ以上に重大な問題だ。なぜなら、この国策文書の改竄と隠匿は、今現在の南西諸島を初めとする国民全体の生死を決する問題である。多くの人々が、この問題の正確な認識のもとに、この歴史的公文書改竄問題(森友問題を含む)に対する、防衛省・自衛隊ー安倍内閣の責任の徹底追及に起ち上がることを希望する。

統合幕僚監部発行「日米の『動的防衛協力』について」文書は、全体が「改竄」された! 
       
報道では、改竄がわずか1頁だけのようになされているが、統合幕僚監部文書は、全体が改竄されている。日本共産党・穀田氏の提出の原本と、情報公開された改竄文書を以下、比較対照する(以下、穀田氏文書を「原本」、情報公開文書を「開示文書」という。統合幕僚監部文書を「統幕文書」という)。  
                  
①削除された文書は、まず、統幕文書別紙1の「日米の動的防衛協力の検討状況・報告」と冒頭に記された、統合幕僚監部内の日米の防衛政策の検討状況のプラン一覧(1頁)だ。また、統幕文書別紙2の、「日米の『動的防衛協力』の取組」という沖縄本島における水陸機動団などの配備に係わる文書(1頁)も、頁丸ごと削除されている。

②この削除に加えて、統幕文書の別紙2には、原本には全くない頁の、「日米の『動的防衛協力』の取組」―「日米の『動的防衛協力』の方向性」が追加されている。中身は黒塗りであるが、これは間違いなく改竄しているうちに、担当者が混乱し慌てて頁自体を捏造してしまったことがうかがえる。この「幽霊頁」ともいえる文書の追加は、開示文書全体が「完全な作り直し」として行われたこと、完全な改竄・捏造であることを明らかにしている。

③統幕文書は、頁番号まで改竄された。原本の2頁を削除、原本に別紙2の1頁を加えた結果、統幕文書では、全て頁番号がずれてしまった。つまり、この頁番号のずれは、統幕文書全体が、「新たに改竄して作成された」という、重大な結論に至るということだ。

④このように、全体を改竄した結果、例えば、冒頭の表紙の「日米の『動的防衛協力』について」という頁のレイアウトや原本1頁、統幕文書1頁の「日米の『動的防衛協力』の全体像」のレイアウトまで変更されてしまっている。慌てて改竄し情報公開請求に対したと思われる。

統合幕僚監部の「日米の『動的防衛協力』について」の公文書改竄は、重大な犯罪である!


森友問題の公文書の改竄を見るように、防衛省・統合幕僚監部の公文書改竄問題は、重大な犯罪だ。事は、国の防衛政策に係わる問題であり、とりわけ、自衛隊の南西シフトー南西諸島への新配備、そして日米のその南西シフトを媒介とする対中抑止戦略全体に関わる問題である。この現在的に重大な問題に、統合幕僚監部という制服組のトップの組織が公文書の改竄に手を貸していたという、恐るべき事態である。もし、これをイラクPKO隠蔽文書の追及だけに「限定」してなしたとするなら、これは南西諸島の住民への裏切りであり、切り捨てである。国会も、メディアも、徹底して追及すべきである。

*統幕文書・原本全文 

https://lookaside.fbsbx.com/file/201207-%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E5%8B%95%E7%9A%84%E9%98%B2%E8%A1%9B%E5%8D%94%E5%8A%9B%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%20%281%29.pdf?token=AWzyYDfGvpatd_NH2X4jZst1U5vsf2u0rTWQW_5HjSWp_KMGy4zVzmU4in2PRqpgXyk3XcJYkvQNEcW-_olThs3g_wPGzGewVVkCxxdHxXNAon1V6CZr9Uqa-kibRN9Sca3pZyR2W5txlD760t5u6U_cFJmMKHsWFlvYnKuztrRqew

*統幕文書・開示文書全文  https://lookaside.fbsbx.com/file/%E7%B5%B1%E5%90%88%E5%B9%95%E5%83%9A%E7%9B%A3%E9%83%A8%E3%80%8C%E6%97%A5%E7%B1%B3%E3%81%AE%E3%80%8E%E5%8B%95%E7%9A%84%E9%98%B2%E8%A1%9B%E5%8D%94%E5%8A%9B%E3%80%8F%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%E3%80%8D.pdf?token=AWyEGziHpS33G3jOX_YPGKBXtJj2MGdMbcxvylH9ZeHcd4RdnDQNMr7D5cH5NbnNqZZrKpiyTPG-4L6B25X2takekNGmj8wYeYLxzYMFApj-UKOnx_V0NIA7HZx14ipBA-Murd07qs7TD_hkpHCtMkLvtjLOqQhSeAn2DlynJGIK8Q 

情報公開請求による開示文書の意義と経過は、下記の書籍で読めます。同書の「解説」の「試し読み」も出来ます。この開示文書のほか、南西諸島配備問題の、自衛隊の教範類が収録されています。  
                              
*参考文献 『自衛隊の島嶼戦争ー資料集・陸自「教範」で読むその作戦』(小西誠編著・社会批評社) http://www.maroon.dti.ne.jp/shakai/jsdf-tachiyomi.pdf

自衛官の人権をめぐる闘いの歴史と現在

2018年08月26日 | 主張

*本稿は、2018年3月12日発行(約50年ぶりの復刊)の拙著『反戦自衛官』の解説文です。朝日新聞掲載の小熊英二氏の「自衛官の人権状況」論の批判ために、事前に公開します。

*『反戦自衛官―権力をゆるがす青年空曹の造反』(復刻増補版)(本体1800円・社会批評社)は、今週発売です。 http://www.maroon.dti.ne.jp/shakai/24-4.htm

*同書の「立ち読み・試し読み」ができます。写真が多数あります(はじめに、第1章の一部、解説が読めます)。 http://hanmoto.tameshiyo.me/9784907127244 
(写真は、自衛隊に「沖縄派兵中止」「自衛官の言論活動の自由」などの「10項目要求」を求める6人の自衛官ら。1972年4月27日、防衛庁近くで記者会見)。

解説 二度の無罪判決と小西以後の闘い
 ほぼ半世紀前の、稚拙な自分の文章を再読すると恥ずかしい思いがするが、読者にはこれもあの時代の激しい闘いの息吹の中で執筆したものとして了解していただきたい。
 本稿は、校閲・校正箇所を除いて初稿の原文をそのまま掲載している。ただし、初稿にはなかったが、本文中に当時の状況が理解しやすいように写真を多く掲載するようにした(このため、原文の最首悟氏との対談は、原稿文量を超えるので割愛した)。

 第一回裁判以後

 さて、本書は、一九七〇年七月の第一回裁判開始直前の記述で終えている。第一回裁判は――。
 「七〇年七月二三日、新潟の街は小西裁判一色に包まれた。 町並みの至るところにビラ、ステッカーがはられている。宣伝カーはボリューム一杯に一日中鳴り響いた。
 裁判所周辺の緊迫は一段と激しい。路地の至るところに完全武装した機動隊と私服刑事が潜んでいる。警察はこの裁判のため、新潟の機動隊だけでは足りず、関東管区からも機動隊の応援を求めたという。
 権力のこうした態勢と呼応して右翼もまた、大動員し市内を走り廻っている。『売国奴! 小西元三曹の裁判を厳重監視しよう』、こう書かれたステッカーが裁判支援のステッカー以上に街中に氾濫している。
 予想される右翼の妨害に対し、小西裁判支援のため全国から集まってきた人々は、現地新潟の人々と共に、すでに第一回公判の五日前から裁判所横の路上にテントを張って座り込んでいる。

 機動隊に包囲された裁判所。その構内に入ると「立入禁止」の看板が目につく。裁判所は、小西裁判に備えて、すべての法廷を閉廷した。この厳戒態勢の中を私は、四〇名の弁護団と一緒に法廷に入った。いよいよこれから裁判が始まる」(拙著『小西反軍裁判』三一書房)
 さて、足かけ一一年間にわたる刑事裁判は、第一審判決が一九七五年二月「検察側の証明不十分にして被告は無罪」、検察側の控訴による控訴審判決が、一九七七年一月「新潟地裁差し戻し」、そして、差し戻し後の新潟地裁では、一九八一年三月「小西の行為は言論の自由の範囲内」として再び無罪判決が下された。検察側が控訴を諦めたため、この無罪判決は確定した。

 自衛官の初めての人権裁判 

 ところで、七〇年代初頭のこの時代は、長沼自衛隊違憲訴訟、百里自衛隊違憲訴訟が同時に争われており、いわゆる小西裁判も、この自衛隊違憲訴訟の一つとして争われることで注目を集めていた。実際、裁判は「自衛隊法違反適用」事件として、被告・弁護団とも、裁判開始直後から自衛隊・自衛隊法の違憲性を正面から争うものとして展開された。このために、被告・弁護側は、公判当初から自衛隊関係の多数の証人・証拠の提出を求めるとともに、二度にわたる公訴棄却を申し立てた(自衛隊法は、全面的に憲法違反であるから「小西起訴」自体が違憲)。

 それにもまして、小西裁判がもう一つの自衛隊違憲訴訟として、正面から争われることになったのは、この時代の政府・自衛隊の政治判断であった。当時、防衛庁長官であった中曽根康弘は、「七五年までに長沼、小西裁判で憲法の再確認(自衛隊合憲)を求める」と発言していたが(七一年五月アジア調査会での講演)、この政治目的は、第四次防衛力整備計画で一挙に軍拡を推し進める自衛隊の、国民的認知を確定することにあった。
 しかし、このような自衛隊違憲訴訟とともに、いやそれ以上に重要な小西裁判の争点は、逮捕・起訴理由に挙げられている、自衛官の政治的行為、言論活動の自由――自衛官の人権をめぐる問題であった。

 本文の記述のように私は、佐渡基地内で、チラシ、ステッカーを大量に配布し、全隊員の前で「治安訓練拒否」を宣言した。検察側は、最終的にこれらの行為を自衛隊法第六四条違反の「怠業および怠業的行為の煽動罪」として処罰を求めてきたが(逮捕時の第六一条「政治的行為の禁止」は適用せず)、この「煽動罪適用」こそは、憲法第九条下の自衛官を巡る人権状況を見事に表していた。
 検察側の判断は、すでに現実的に国家公務員の政治的行為への刑事罰の適用ができなくなりつつある中、憲法下、とりわけ自衛隊の違憲性が問われる九条下では、「政治的行為禁止」条項では自衛官といえども刑事罰を求めることはできないということであった。後述するように、以後の自衛隊内での闘いの中で、自衛隊法の政治的行為の禁止という刑事罰の適用は事実上、無効化された。

 そして、小西裁判による二度の裁判所の判決で明らかになったのは、この政治的行為の禁止に代わって言論活動を封殺する煽動罪による刑事罰の適用問題であった。この「煽動罪」は、日本では破防法・爆発物取締法以外に法的規定がないことから、自衛官のみに適用される治安法とも言えよう。つまり、軍法会議がない自衛隊という軍隊における、唯一の「軍法」と言えるかもしれない。
 結論すれば、小西裁判で真っ向から問われ、闘われたものは、自衛官(兵士)の人権――言論の自由、政治活動の自由ということであり、憲法第九条下では自衛官(兵士)の言論活動について、一切の刑事罰を下すことはできないということである。
 この意味で日本の軍隊史上、初めて勝ちとられ、認められた兵士の人権である(なお、国家公務員の政治的行為の処罰については、猿払事件の最高裁判決を始め、最近の国家公務員の政治的行為を巡る判決においても刑事罰が下され始めている。つまり、憲法九条の改悪下では、このような自衛官の言論活動も再び刑事罰の対象になるということだ)。

 自衛官の人権を求める「一〇項目要求」の提出

 この小西裁判による、自衛隊法第六一条の無効化を実践的に示したものこそ、一九七二年、反戦六自衛官による防衛庁長官への「一〇項目要求」である。 
 一九七二年四月二七日、現職の陸上自衛官・与那嶺均一士以下の陸空の自衛官たちは、防衛庁正門前で「自衛隊の沖縄派兵中止、自衛隊員の表現活動の自由」などの、下級兵士たちの一〇項目を防衛庁長官に「請願」した。そして翌日、東京芝公園の「沖縄デー」集会の壇上から制服を着用してその正当性を訴えたのだ(左、表紙カバー写真)。以下がその要求である。

 要求項目 
 一、われわれは、侵略のせん兵とならない。沖縄派兵を即時中止せよ。
 二、われわれは、労働者、農民に銃を向けない。立川基地への治安配備を直ちにやめよ。
 三、われわれに、生活、訓練、勤務の条件の決定に参加する権利、団結権を認めよ。 
 四、われわれに、集会、出版の自由など、あらゆる表現の自由を認めよ。
 五、われわれは、不当な命令には従わない。命令拒否権を確定せよ。
 六、幹部、曹、士の一切の差別をなくせ。
 七、勤務時間以外のあらゆる拘束を廃止せよ。
 八、私物点検、上官による貯金の管理などの一切の人権侵害をやめよ。
 九、小西三曹の懲戒免職を取り消し、直ちに原隊に復帰させよ。
 十、われわれは、自衛官であると同時に労働者、市民である。労働者、市民としてのすべての権   利を要求する。

 一九七二年四月二七日
 陸上自衛隊第三二普通科連隊第一中隊(市ヶ谷駐屯地)     一等陸士 与那嶺 均
 陸上自衛隊第四五普通科連隊第一中隊(京都大久保駐屯地)   一等陸士 福井 茂之
 陸上自衛隊富士学校偵察教導隊(富士駐屯地)         一等陸士 内藤 克久
 陸上自衛隊第二特科群第一一〇特科大隊本部中隊(仙台駐屯地) 一等陸士 河鰭 定男
航空自衛隊第二高射群第五高射隊射統小隊(芦屋基地)     一等空士 小多 基実夫
航空自衛隊第四六警戒群通信電子隊(佐渡基地)         三等空曹 小西 誠
                          (行政不服申し立て係争中)
 防衛庁長官 江崎真澄殿

 この彼らの行動に対して、自衛隊警務隊は、一応「逮捕態勢」に入ったが、集まった民衆の力でそれは阻止された。しかし、数日後、彼ら全員が「隊員としてふさわしくない行為」(自衛隊法第四六条)として懲戒免職処分に付された。
 ここで明らかになったのは、もはや、自衛隊はこのような公然たる制服着用による政治活動に対しても、第六一条違反での刑事罰を下せなくなったということだ。つまり、小西裁判で実証されたことが、この六自衛官の行動で確定したのだ。

 これらのことから言えることは、自衛隊創設以来、政府・自衛隊はもちろんのこと、この日本社会が想像もしていなかった自衛官の権利=軍隊内の兵士の権利が、確実にその兵士たちの手で勝ち取られつつある時代が始まったということである。
 卑劣な弾圧手段に乗り出す

 さて、自衛隊法による刑事的弾圧手段を裁判闘争や世論の力で封じ込められた自衛隊は、このあと、ますます卑劣な手段を駆使して隊内の「反戦兵士狩り」に乗り出す。
 この一つが、一九七五年の戸坂陸士長への集団リンチによる退職強要事件であり(陸自市ヶ谷駐とん地。東京地裁において「退職承認処分」取り消しの判決確定)、七八年の町田陸士長への再任用拒否事件である(同市ヶ谷駐とん地。東京高裁で原告の訴えは却下。 八七年には陸自練馬駐とん地においても、宮崎陸士長の再任拒否事件が起こった)。
 そして、任期制隊員ではない陸曹らに対しては、「配置転換」という労働争議で見られる手段を行使し始めた。
 一九七二年の六人の自衛官らの「一〇項目要求」以後、全国に広がった自衛隊の兵士運動は、特に首都東京のど真ん中、市ヶ谷駐とん地で深く広く浸透していった。 七五年には、駐とん地内に「不屈の旗」という自衛官自身による機関紙(写真参照)が発行され、 ついに八〇年には、 その中に「市ヶ谷兵士委員会」という自衛官たちの非公然の自立組織が誕生したのだ。

 この市ヶ谷兵士委員会は、一九八〇年代半ばに至ると、同駐とん地の第三二普通科連隊第四中隊を中心に、隊内に大きな影響力を持ち始めた。一時期当局は、第四中隊の「解隊」を目論んでいたぐらいである。そして、この当局による最終的弾圧手段が、同中隊の兵士委員会の中心メンバーと見做された、古参の陸曹ら(下士官)の配置転換だった。
 一九八九年、同連隊第四中隊の片岡顕二二曹は、突如として北海道へ、また同部隊所属の佐藤備三二曹もまた同様に、習志野部隊への配置転換を命ぜられた。これらの不当弾圧に対し、二人とも配置転換を拒否し「苦情処理申し立て」を始めとする、あらゆる法的手段を行使して闘ったが、当局は直ちに命令違反による懲戒免職処分を下した(原告らの処分取り消し訴訟は、東京高裁、札幌高裁で却下)。

 掃海艇派兵の中止要求

 一九九〇年代は、戦後自衛隊にとってエポックとなった年だ。戦後初めての海外派兵が、九一年四月に海自掃海艇のペルシャ湾への派兵として、また、九二年九月には陸自がカンボジアへ国連PKOとして派兵された。以後、自衛隊の海外派兵は、常態化していくことになる。
 この戦後自衛隊の歴史的大転換に対し、誰よりも先頭で闘ったのが、八九年から再び活性化した陸自・市ヶ谷駐屯地に結集する反戦自衛官たちであった。当時の多くの反戦運動が停滞する中で、彼らはこの困難な自衛隊の海外出動に隊内から対峙した。

 一九九一年四月二五日、前夜の掃海艇のペルシャ湾派兵の閣議決定、そして翌日の掃海艇部隊の出動という日を目前にして、陸自・市ヶ谷駐とん地に属する、片岡顕二二曹、吉本守人三曹、藤尾靖之陸士長は、その派兵に抗すべく六本木の防衛庁長官室(当時)の前に到着した。
 彼らは「掃海艇派兵の中止」を求める「意見具申書および請願書」を取り出し、長官室のドアをノックした。
 そのノックを終える間もなく、彼らは、長官のSP三人に取り押さえられ、その後逮捕された(以後、藤尾士長は再任拒否、吉本三曹は懲戒免職)。以下が彼らの意見具申書などである。

 意見具申書および請願書

 私たちは、憲法および自衛隊法を公然とふみにじる海上自衛隊・掃海艇部隊の中東派兵を即時中止するよう陸上自衛隊服務規則第二〇条に基づき意見具申するとともに、請願法第五条の定めにより一市民として請願する。
 自衛隊の任務および行動は、自衛隊法第三条が定めたように、日本の領海に限定したものである。しかるに、今回の「機雷除去」を口実にした自衛隊の海外出動は、この任務を大きく逸脱した違憲・違法の出動であり、私たちは断じてこれを黙認できない。
 今回の「日の丸」をつけ、武装した艦隊の海外出動は、アジア・中東諸国への軍事的威嚇であり、戦闘行動――武力行使以外のなにものでもない。
 もしも、このような自衛隊海外派兵の第一歩を許したとすれば、もはや戦後憲法は破壊され、日本が再び戦争への道へいきつくことは明らかである。
 今や、中東・アジア諸国の人々はこうした自衛隊海外派兵に強い危惧を抱いており、国内でも多くの民衆が懸念を表明している。
 以上の立場に立ち私たちは、一自衛官として、あるいは一市民として次の点を意見具申し、請願する。
 一、違憲・違法の海上自衛隊掃海艇部隊の海外出動を即時中止すること。
 二、自衛官に思想および言論の自由などの民主的権利、命令拒否権を与えること。
 三、藤尾靖之陸士長への思想弾圧に基づく、再任用拒否の通告をただちにとりやめること。
 四、吉本守人三曹への思想弾圧に基づく、人権侵害を深く反省し、是正すること。
 五、片岡顕二・佐藤備三二曹の思想弾圧による転任および懲戒免職処分を公正審査会はただちに   取り消すこと。
 一九九一年四月二五日
        陸上自衛隊第三二普通科連隊第二中隊  陸士長  藤尾靖之   拇印
        陸上自衛隊第三二普通科連隊重迫中隊 三等陸曹 吉本守人  拇印
        陸上自衛隊第三二普通科連隊第四中隊 二等陸曹  片岡顕二  拇印
防衛庁長官 池田行彦殿

 九〇年代から現在へ 

 この勇気ある三自衛官の闘い以後、市ヶ谷駐とん地内では、反戦自衛官らへの凄まじい弾圧が吹き荒れ始めた。当局は自ら手を下すのでなく、右翼・当局派の下士官らを使嗾して、「反戦派狩り」を推し進め始めたのだ。隊内では、彼らへの暴力事件、リンチ事件が頻発・横行する。もちろん、これらの暴力事件に対して、当局は形式上の処分はするのだが、実際は奨励していたのだ。

 こういう厳しい弾圧を経過して、二〇〇四年の自衛隊のイラク派兵という本格的海外派兵の始まりの中で、「自衛官人権ホットライン」運動が始まった。この自衛隊内の、初めての隊員たちの相談機関であるホットラインには、発足以来すでに一五〇〇件を優に超える自衛官とその家族からの相談が寄せられている。隊内で孤立し、苦悩する隊員たちとその家族らには、この救済組織が事実上、唯一つの「駆け込み寺」となっているのだ。
 そしてまた、このような歴史的闘いの経験と継承が、現在始まっている現職自衛官らの国・自衛隊を相手にした裁判である。只今現在、「安保法=戦争法」の違憲裁判を含め三人の現職自衛官たちが、自衛隊当局を相手に行政裁判を行っている。この現職自衛官らが「現職」のままで、当局の不当な取り扱いに抗議の声を挙げ始めたということは重大だ。しかも彼らは、幹部や上級の曹である。ここには、自衛隊がもはや旧日本軍の伝統を継承した軍隊(「命令への絶対服従」などの軍紀)としては存立し得ない、社会的・政治的根源が生じていると言えよう。

 同様に、自衛隊内のいじめ・パワハラ・自殺事件などをめぐって、この一〇数年来、自衛官およびその家族からの訴えによる二〇数件にものぼる裁判が行われていることも重大だ(裁判終了を含む)。しかも、これらの自衛隊を相手にした裁判は、ほとんどが国・自衛隊の敗訴として終わっているのだ。
 このような状況を見ると、もはや自衛隊は、自衛官らに「絶対服従」を強いて忠実さだけを求める「軍隊」として存立することはできないということである。つまり、日本の軍隊=自衛隊もまた、北欧諸国の軍隊と同様、民主主義・人権を尊重した組織として「脱皮」(変革)するほかはないし、そうしない限り組織としては生き残れないのだ。

 言い換えれば、先進国の軍隊は、この人権・民主主義・生命の尊重(そして少子化)という重大なテーマを克服しない限り、その存立の危機に立たされる時代に入っているのだ。
 反戦自衛官らの、およそ半世紀にわたる闘いが提示したのは、まさしく、この戦争と軍隊の問題、根源的な平和社会を、この世界にどのように実現するかをめぐる運動であったとも言えよう。
                          (二〇一八年二月二〇日)

 ●小西裁判・自衛官の人権関連資料 
 *『自衛隊その銃口は誰に』(小西反軍裁判支援委員会編、現代評論社) 
  小田実・小田切秀雄・山辺健太郎・藤井治夫・江橋崇・竹内芳郎、そして小西誠ら、各界の論客が語る叛軍の論理
 *『裁く――民衆が日本の軍国主義を』(小田実編、合同出版)
  ・小田実・山辺健太郎・星野安三郎らが、今法廷で裁かれようとしている小西の立場から権力を裁く「民衆法廷」を開催。その全記録
 *『小西反軍裁判』(小西誠編著・三一書房)
  ・小西刑事裁判の記録とドキュメント、第一審・控訴審・差し戻し審の判決全文収録
 *『自衛隊の兵士運動』(小西誠著・三一新書)
  ・七〇年代前半の自衛隊内の反戦運動の詳細を記録
 *『自衛隊の海外派兵』(小西誠・星野安三郎共著・社会批評社)
  ・九〇年代の海外派兵に向かう自衛隊内部の諸問題を記述
 *『隊友よ、侵略の銃はとるな』(小西誠著・社会批評社)
  ・七〇年代から八〇年代の自衛隊内の緊迫する闘いを描く
 *『海外派兵』(片岡顕二著・社会批評社)
  ・掃海艇のペルシャ湾派兵に反対した市ヶ谷自衛官たちのドキュメント
 *『自衛隊 そのトランスフォーメーション』(小西誠著・社会批評社)
  ・二〇〇〇年代に歴史的再編に向かう自衛隊とその内部の問題を喝破
 *『自衛隊 この国営ブラック企業』(小西誠著・社会批評社)
  ・現在の大再編される自衛隊内の隊員らの意識・苦闘を描く
 *『マルクス主義軍事論入門――マルクス主義軍事論第一巻』(小西誠著・社会批評社)
  ・クラウゼヴィッツ、マルクス、エンゲルス、レーニン、トロツキーなどの軍事理論を体系的に分析した革命の軍事理論
 *『現代革命と軍隊――マルクス主義軍事論第二巻』(小西誠著・社会批評社)
  ・パリ・コンミューン、ドイツ・ロシア革命、チリ・クーデタ、日本の戦前の兵士運動など、世界革命史の中の軍隊と革命をめぐる歴史と理論、兵士運動を分析

新刊『自衛隊の南西シフト―戦慄の対中国・日米共同作戦の実態』の発行

2018年08月26日 | 書籍
 
小西 誠(著) 発行:社会批評社 A5判 191ページ 並製 価格 1,800円+税
#自衛隊 #南西シフト #沖縄

紹介
自衛隊の南西シフト態勢による、急ピッチで始まっている与那国島・石垣島・宮古島・奄美大島などへの新基地建設の現状のリポート。
これを約220枚の写真と現地調査、そして自衛隊内部の資料で描く。そこには国民が全く知らない、知らされていない、恐るべき実態が隠されている。始まっているのは、「島嶼防衛戦」=日米共同の東シナ海戦争態勢づくりという、戦慄する事態である。


目   次
プロローグ  6  
     ――急ピッチで進む先島―南西諸島の要塞化

第1章 与那国島に開設された沿岸監視部隊  18
    ――果たして与那国にミサイル部隊は配備されないのか?

第2章 自衛隊の新基地建設を阻む石垣島住民  24
    ――駐屯地建設に向けて動き出した中山市長

第3章 急ピッチで駐屯地建設が進む宮古島  32
    ――要塞化する美ら島での住民たちの抵抗

第4章 軍事要塞に変貌する奄美大島  48
    ――陸海空の巨大基地が建設される!

第5章 南西シフトの訓練――事前集積拠点・馬毛島  68
    ――島嶼上陸演習場・米軍FCLP訓練場

第6章 沖縄民衆にも隠されて進む沖縄本島の自衛隊増強  74
    ――空自那覇基地の増強で大事故は必至

第7章 与那国・石垣・宮古・南北大東島の「不沈空母化」 82
    ――ヘリ空母「いずも」改修による本格空母より効率的か?

第8章 沖縄本島への水陸機動団一個連隊の配備  86
     ――在沖米軍基地の全てが自衛隊基地に

第9章 日本型海兵隊・ 水陸機動団の発足  94
    ――「島嶼防衛」不可能を示す「奪回」作戦

第10章 琉球列島弧を全て封鎖する海峡戦争  102
    ――自衛隊兵力の半分を動員する「島嶼防衛戦」

第11章 「動的防衛力」から「統合機動防衛力」へ  106
    ――「南西統合司令部」の創設

第12章 陸上総隊の新編は南西有事態勢づくり  110
    ――軍令独立化による制服組の台頭

第13章 南西諸島への機動展開・動員態勢  112
    ――進行する民間船舶の動員・徴用

第14章 先島諸島などからの戦時治療輸送 116
    ――始まった「統合衛生」態勢づくり

第15章 強化される「島嶼ミサイル戦争」の兵器  120
   ――巡航ミサイル、高速滑空弾、スタンドオフ・ミサイル、イージス・アショア

第16章 北方シフトから南西シフトへ  126
    ――東西冷戦終了後の新たな「脅威」を求めて!

第17章 「東シナ海限定戦争」を想定する「島嶼防衛戦」  130
    ――エアシー・バトル、オフショア・コントロールとは?

第18章 安倍政権の「インド太平洋戦略」とは何か  140
    ――日米豪英仏印の対中包囲網づくり

第19章 先島―南西諸島の「非武装地域宣言」  142 
    ――かつて南西諸島は非武装地域だった

第20章 アジア太平洋戦争下の「島嶼防衛戦」  146
    ――島嶼戦争では日本軍は玉砕全滅、住民は「強制集団死」

第21章 島嶼戦争の現場を歩く  150