今、自衛隊の在り方を問う!

急ピッチで進行する南西シフト態勢、巡航ミサイルなどの導入、際限なく拡大する軍事費、そして、隊内で吹き荒れるパワハラ……

電子ブック版『金門島 戦跡ガイド――「台湾有事」の最前線を歩く』の発行

2024年02月11日 | 軍事・自衛隊


はじめに
 金門島は、最近、メディアによってにわかに注目され始めた地域だ。日本ばかりではなく、欧米のメディアでも金門島を報じる動きが広がっている。
 その注目とは、いうまでもなく「台湾有事の最前線の島」としてである。
 実際、金門島に行くと、目の前に中国大陸・厦門の高層ビル群が建ち並び、この島が本当に台湾なのかと驚くばかりだ。大金門島から厦門へは、約10キロ、小金門島(烈嶼郷)からは、約5・4キロの位置にある。これに比べて、金門島から台湾までは、約190キロにもなる。
 金門島を訪れると、確かに、この島はかつては「最前線の島」であり、「中台戦争の戦場」であったことが分かる。
 1949年最後の「国共内戦」を戦い、その後1954年からは第一次・第二次台湾海峡危機を経て、1992年戒厳令解除まで、まさに、「冷戦の島」(マイケル・スゾーニ)であったのだ。
 およそ、この43年間、金門島は戒厳態勢下に置かれ、この小さな島に、島の人口以上の、最大約10万の軍隊が駐屯し、住民はこの軍隊の兵站(補給)を支え、さまざまな地下坑道や軍事施設を造るために動員されるばかりか、「戦闘村」(武装民兵)の兵士としても戦争に駆り出されてきた。

 しかし、金門島は、今「最前線の島」から「平和の島」へ生まれ変わろうとしている。
 かつての軍事施設――多数の地下坑道、要塞、トーチカ、戦車、大砲などは、今日では「戦争遺跡」として全面的に公開され、台湾の人々ばかりか、中国からも多数の人々が訪れ、「平和学習の場」として活用されている。
 というか、金門島を訪れると、台湾政府が、これらの軍事施設を「観光資源」として徹底的に整備(「金門国家公園」)し、大いに活用していることが分かる。
 筆者は、日本の占領下にあったサイパン、グアム、フィリピン、シンガポール、チェジュ島などの戦跡調査を行ってきたが、これほど整備された戦跡を見たのは初めてだ。

 そして、金門島と大陸・厦門の間には、今では直行フェリー便が開通し(2000年1月)、両岸を結ぶ初の光海底ケーブルが敷設(2012年8月)、中国から金門島へ送る海底送水パイプラインもまた完成(2018年8月)したのである。さらに、両岸では、送電線敷設や架橋・海底トンネルも企画されているというが、台湾政府は強く反対しているという。
 いずれにしても、中国と金門島の間では、小三通政策(通商・通行・通便を表す)によって、中国との交流・交易が大きく発展し、金門島自体は、台湾海峡両岸にとってハブ機能を持ち始めている。新型コロナ前は、中国からの来訪者は、年間で延べ50万人を超えていたという。
 
 このような状況の中、ついに金門県地方議員8人から金門島を非武装地帯「平和の島」にという「島から全ての軍隊と軍事施設を撤去」を要求するという声明が発表された。1949年以降、長期間の軍事的屈従を強いられてきた金門島の人々には、平和に生きるためには、もはや自ら金門島の島々を非武装地帯とする他はないのだ。
 言うまでもなく、非武装地帯宣言とは、国際法に定められた「平和に生きる権利」である。1977年ジュネーヴ諸条約においても、第51条に「文民たる住民の保護」が明記され、第59条「無防備地区」、第60条「非武装地帯」が掲げられている。
 これは、第二次世界大戦以後、戦争によって兵士よりも住民の被害が極端に大きくなってきた状況の中、住民を守るために不可避的に制定されたのだ(住民の死亡者は、第二次大戦では48%、ベトナム戦争では95%にも達した)。

 金門島の総面積は、約150キロ平方メートル。この大きさは、琉球列島の宮古島とほぼ同じ大きさだ。島の地形も、宮古島と同じでほとんど山がない。
 宮古島(石垣島)は、中国大陸から約400キロだが、九州本土からは約1千キロも離れている。つまり、金門島と同様、戦争が始まれば「本土」側と異なり、最初の戦火を浴びるのだ。
 この宮古島を始めとした琉球列島に、今日本政府は、「台湾有事」を喧伝し、中国脅威論を煽りながら徹底した軍事化を押し進めている。琉球列島のミサイル基地化であり、対中国への攻撃拠点としての要塞化だ。
 したがって、宮古島・石垣島などの、琉球列島の非武装地帯化は、金門島と同じように「平和に生きる権利」として勝ち取らねばならない。
 このような意味で、金門島――台湾の人々と、そして大陸・中国の人々の連帯が今後、求められるだろう。本書がその一助となることを願う。
     2023年10月21日
                             小西 誠

目  次

はじめに 2
金門島戦跡の行き方ガイド 8

第1章 「台湾有事」の最前線・金門島の現在 10
     ●中台の最前線の島・金門島 10
    ●全島民が軍事動員された要塞島 11
    ●「金の如く固く雄々しい海の門」 12
    ●旧日本軍が駐留していた金門島 15
    ●金城鎮にひっそりと建立された碑  17
    ●台湾海峡は波静か 19

第2章 金門県の県都・金城鎮に張り巡らされた民防坑道(金城鎮) 20
     ●県都地下の民防坑道 20
    ●金城民防坑道の案内 23
    ●県都・金城鎮を防御するトーチカ群  24
    ●海防坑道――翟山坑道 27
    ●金城鎮戦跡の行き方ガイド 29

第3章 中国軍と国民党軍の最大の激戦地――古寧頭戦役(金寧郷) 30
     ●古寧頭戦史館 30
    ●古寧頭戦役とは 34
    ●古寧頭戦役の主戦場――林厝砲陣地 38
    ●1号砲堡・2号砲堡・3号砲堡・4号砲堡 39
    ●戦車がズラリと並ぶ慈湖三角堡 42
    ●海岸を埋め尽くす軌條砦 44
    ●大陸向けにテレサ・テンが宣伝する北山放送壁 46
    ●金寧郷(北西部)戦跡の行き方ガイド 48

第4章 金門島戦争のもう一つの激戦地―瓊林・成功海防坑道(金湖鎮) 50
    ●瓊林戦闘坑道・民防館 50
    ●市民武装のモデル村・瓊林「戦闘村」 52  
    ●金門研究の第一人者が語る戒厳体制 54
    ●住民女性らも民兵として動員 58
    ●海からの出撃拠点・成功海防坑道 60
    ●砲撃戦の戦死者を称える八二三戦史館 68
    ●金湖鎮戦跡の行き方ガイド 70

第5章 軍隊慰安婦たちの記念館「特約茶室展示館」(金湖鎮) 71
     ●公開された「831特約茶室」 71
    ●軍管理下の「軍人規定」 73
    ●台湾軍管理下の「軍事楽園制度」 75
    ●国会の要請で慰安婦制度廃止 77
    ●日本軍の軍隊慰安婦と 77

第6章 八二三砲撃戦の最激戦地・馬山観測所(金沙鎮) 81 
    ●大陸への最短地・馬山観測所 81
    ●馬山放送所を防御する馬山三角堡 87
    ●八二三砲撃戦の最前線・獅山砲陣地 89
    ●金門島最大の要塞型トーチカ・船型堡 93
    ●五龍山成功堡 100
    ●金沙鎮戦跡の行き方ガイド 100

第7章 中国に一番近い島・小金門島の戦争(烈嶼郷) 102
    ●小金門島防御の最前線――鉄漢堡・勇士堡 102
    ●厦門に最も近い湖井頭戦史館 106
    ●湖井頭戦史館南・双口海辺 109
    ●双口海辺のトーチカ群 111
    ●小金門島のL 26拠点という要塞 114
    ●抗日戦士を称える八達楼子 120
    ●非公開の基地跡 121
    ●小金門島を代表する九宮坑道 122
    ●小金門島の将軍堡 126
    ●八二三勝利記念碑と勝利門 129
    ●小金門島戦跡の行き方ガイド 130

第8章 解説 中国軍と国民軍との戦役 50年 131
    ●蔣介石・国民党軍の金門島占領 131
    ●古寧頭戦役とは…… 131
    ●毛沢東による敗北の総括 134
    ●米国・台湾の軍事同盟 136
    ●第一次台湾海峡危機 138
    ●第二次台湾海峡危機 139
    ●「台湾有事」と金門島の現在 142
    ●金門島の非武装地帯宣言を 143

書は、電子ブックとして10月26日に発行される『金門島 戦跡ガイド』(オールカラーバン・本体2000円)の第1章の公開である。Amazonほか、電子ブックの各書店で発売しているので、ぜひとも購読してほしい。

●取次書店 Kindleストア/紀伊国屋書店/楽天Kobo/BookLive!/honto/Reader Store/auブックパス/iBooks Store
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●本日発売 電子ブック版『最新データ&情報2024 日米の南西シフト』

2024年02月09日 | 自衛隊南西シフト


小西誠著、社会批評社刊・定価1100円、発行のお知らせ!


――2022年12月、政府の「国家安全保障戦略」策定などで、琉球列島での対中国のミサイル攻撃基地化が、急ピッチで進みつつある。

 今年3月には、琉球列島ミサイル基地化の総仕上げとも言える、第7地対艦ミサイル連隊が陸自・沖縄勝連分屯地に新編され、24年度内には大分・湯布院駐屯地に、長射程(1500キロ)の第8ミサイル連隊の新編が決定、また25年には「先制攻撃能力」をもつトマホーク部隊の先行配備が決定ー。

 こうした中、先日の2/4付共同通信報道では、昨年の日米共同演習「キーン・エッジ」において、ついに「仮想敵国」を初めて「中国」と明示する演習が行われ、この想定の「台湾有事」に関する作戦計画が完成しつつあるという(仮想敵国の明示は、中国政府への軍事的対抗宣言)。

 こうして今や、日米政府の中国との戦争態勢が急ピッチで作りだされつつある。この戦争の目的は何か? 

 これは、22/10の米国「国家防衛戦略」(NDS)が明示している。それは米国の新冷戦戦略(「中国は最も重要な戦略的競争相手」)であり、この政治目標は、米国にとって替わろうとする中国のアジア・太平洋での覇権の阻止=中国共産党政権の瓦解であり、軍事目標は、そのための「中国海軍の壊滅」(海洋限定戦争)である。

 この歴史的リアリティは、旧ソ連を軍拡競争で崩壊・分裂させた、アメリカの冷戦戦略で明らかである。

 本書は現在、中国との戦争態勢の最前線になりつつある、琉球列島とそのミサイル基地化の現状を中心に、日米の南西シフトのその戦略と実態、進行しつつある最新データを、多数の写真・図表などで提示する。

【目次】
第1章 国家安全保障・防衛戦略による対中国戦争態勢

第2章 要塞化する与那国島への新配備部隊
第3章 日米共同作戦が進行する石垣島
第4章 チョーク・ポイント宮古島の軍事化
第5章 南西シフトの兵站拠点・奄美大島
第6章 南西シフト下の訓練・機動展開基地―馬毛島・種子島
第7章 南西シフトの実戦大演習場と化す薩南諸島
第8章 沖縄島への第7ミサイル連隊・師団新編
第9章 地対艦・地対空ミサイルの危険性
第10章 地対艦・地対空ミサイルの作戦・運用
第11章 「無用の長物」と化した水陸機動団
第12章 南西シフトによる自衛隊兵力の配置
第13章 陸自の南西シフト態勢
第14章 北方シフトから南西シフトへ
第15章 アメリカの対中国戦略
第16章 米軍の琉球列島―九州への中距離ミサイル配備
第17章 米海兵隊・陸軍の第1列島線配備
第18章 アメリカの国家防衛戦略と中国、ロシア
第19章 日本の「インド太平洋戦略」と中国
第20章 日米シンクタンクの「台湾有事」シナリオ
第21章 「台湾有事」下の国民保護と住民避難
第22章 有事態勢に突入する自衛隊員の危機
結 語 岸田政権は中国・DPRK(北朝鮮)との平和外交を行え

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