今、自衛隊の在り方を問う!

急ピッチで進行する南西シフト態勢、巡航ミサイルなどの導入、際限なく拡大する軍事費、そして、隊内で吹き荒れるパワハラ……

電子ブック版『金門島 戦跡ガイド――「台湾有事」の最前線を歩く』の発行

2024年02月11日 | 軍事・自衛隊


はじめに
 金門島は、最近、メディアによってにわかに注目され始めた地域だ。日本ばかりではなく、欧米のメディアでも金門島を報じる動きが広がっている。
 その注目とは、いうまでもなく「台湾有事の最前線の島」としてである。
 実際、金門島に行くと、目の前に中国大陸・厦門の高層ビル群が建ち並び、この島が本当に台湾なのかと驚くばかりだ。大金門島から厦門へは、約10キロ、小金門島(烈嶼郷)からは、約5・4キロの位置にある。これに比べて、金門島から台湾までは、約190キロにもなる。
 金門島を訪れると、確かに、この島はかつては「最前線の島」であり、「中台戦争の戦場」であったことが分かる。
 1949年最後の「国共内戦」を戦い、その後1954年からは第一次・第二次台湾海峡危機を経て、1992年戒厳令解除まで、まさに、「冷戦の島」(マイケル・スゾーニ)であったのだ。
 およそ、この43年間、金門島は戒厳態勢下に置かれ、この小さな島に、島の人口以上の、最大約10万の軍隊が駐屯し、住民はこの軍隊の兵站(補給)を支え、さまざまな地下坑道や軍事施設を造るために動員されるばかりか、「戦闘村」(武装民兵)の兵士としても戦争に駆り出されてきた。

 しかし、金門島は、今「最前線の島」から「平和の島」へ生まれ変わろうとしている。
 かつての軍事施設――多数の地下坑道、要塞、トーチカ、戦車、大砲などは、今日では「戦争遺跡」として全面的に公開され、台湾の人々ばかりか、中国からも多数の人々が訪れ、「平和学習の場」として活用されている。
 というか、金門島を訪れると、台湾政府が、これらの軍事施設を「観光資源」として徹底的に整備(「金門国家公園」)し、大いに活用していることが分かる。
 筆者は、日本の占領下にあったサイパン、グアム、フィリピン、シンガポール、チェジュ島などの戦跡調査を行ってきたが、これほど整備された戦跡を見たのは初めてだ。

 そして、金門島と大陸・厦門の間には、今では直行フェリー便が開通し(2000年1月)、両岸を結ぶ初の光海底ケーブルが敷設(2012年8月)、中国から金門島へ送る海底送水パイプラインもまた完成(2018年8月)したのである。さらに、両岸では、送電線敷設や架橋・海底トンネルも企画されているというが、台湾政府は強く反対しているという。
 いずれにしても、中国と金門島の間では、小三通政策(通商・通行・通便を表す)によって、中国との交流・交易が大きく発展し、金門島自体は、台湾海峡両岸にとってハブ機能を持ち始めている。新型コロナ前は、中国からの来訪者は、年間で延べ50万人を超えていたという。
 
 このような状況の中、ついに金門県地方議員8人から金門島を非武装地帯「平和の島」にという「島から全ての軍隊と軍事施設を撤去」を要求するという声明が発表された。1949年以降、長期間の軍事的屈従を強いられてきた金門島の人々には、平和に生きるためには、もはや自ら金門島の島々を非武装地帯とする他はないのだ。
 言うまでもなく、非武装地帯宣言とは、国際法に定められた「平和に生きる権利」である。1977年ジュネーヴ諸条約においても、第51条に「文民たる住民の保護」が明記され、第59条「無防備地区」、第60条「非武装地帯」が掲げられている。
 これは、第二次世界大戦以後、戦争によって兵士よりも住民の被害が極端に大きくなってきた状況の中、住民を守るために不可避的に制定されたのだ(住民の死亡者は、第二次大戦では48%、ベトナム戦争では95%にも達した)。

 金門島の総面積は、約150キロ平方メートル。この大きさは、琉球列島の宮古島とほぼ同じ大きさだ。島の地形も、宮古島と同じでほとんど山がない。
 宮古島(石垣島)は、中国大陸から約400キロだが、九州本土からは約1千キロも離れている。つまり、金門島と同様、戦争が始まれば「本土」側と異なり、最初の戦火を浴びるのだ。
 この宮古島を始めとした琉球列島に、今日本政府は、「台湾有事」を喧伝し、中国脅威論を煽りながら徹底した軍事化を押し進めている。琉球列島のミサイル基地化であり、対中国への攻撃拠点としての要塞化だ。
 したがって、宮古島・石垣島などの、琉球列島の非武装地帯化は、金門島と同じように「平和に生きる権利」として勝ち取らねばならない。
 このような意味で、金門島――台湾の人々と、そして大陸・中国の人々の連帯が今後、求められるだろう。本書がその一助となることを願う。
     2023年10月21日
                             小西 誠

目  次

はじめに 2
金門島戦跡の行き方ガイド 8

第1章 「台湾有事」の最前線・金門島の現在 10
     ●中台の最前線の島・金門島 10
    ●全島民が軍事動員された要塞島 11
    ●「金の如く固く雄々しい海の門」 12
    ●旧日本軍が駐留していた金門島 15
    ●金城鎮にひっそりと建立された碑  17
    ●台湾海峡は波静か 19

第2章 金門県の県都・金城鎮に張り巡らされた民防坑道(金城鎮) 20
     ●県都地下の民防坑道 20
    ●金城民防坑道の案内 23
    ●県都・金城鎮を防御するトーチカ群  24
    ●海防坑道――翟山坑道 27
    ●金城鎮戦跡の行き方ガイド 29

第3章 中国軍と国民党軍の最大の激戦地――古寧頭戦役(金寧郷) 30
     ●古寧頭戦史館 30
    ●古寧頭戦役とは 34
    ●古寧頭戦役の主戦場――林厝砲陣地 38
    ●1号砲堡・2号砲堡・3号砲堡・4号砲堡 39
    ●戦車がズラリと並ぶ慈湖三角堡 42
    ●海岸を埋め尽くす軌條砦 44
    ●大陸向けにテレサ・テンが宣伝する北山放送壁 46
    ●金寧郷(北西部)戦跡の行き方ガイド 48

第4章 金門島戦争のもう一つの激戦地―瓊林・成功海防坑道(金湖鎮) 50
    ●瓊林戦闘坑道・民防館 50
    ●市民武装のモデル村・瓊林「戦闘村」 52  
    ●金門研究の第一人者が語る戒厳体制 54
    ●住民女性らも民兵として動員 58
    ●海からの出撃拠点・成功海防坑道 60
    ●砲撃戦の戦死者を称える八二三戦史館 68
    ●金湖鎮戦跡の行き方ガイド 70

第5章 軍隊慰安婦たちの記念館「特約茶室展示館」(金湖鎮) 71
     ●公開された「831特約茶室」 71
    ●軍管理下の「軍人規定」 73
    ●台湾軍管理下の「軍事楽園制度」 75
    ●国会の要請で慰安婦制度廃止 77
    ●日本軍の軍隊慰安婦と 77

第6章 八二三砲撃戦の最激戦地・馬山観測所(金沙鎮) 81 
    ●大陸への最短地・馬山観測所 81
    ●馬山放送所を防御する馬山三角堡 87
    ●八二三砲撃戦の最前線・獅山砲陣地 89
    ●金門島最大の要塞型トーチカ・船型堡 93
    ●五龍山成功堡 100
    ●金沙鎮戦跡の行き方ガイド 100

第7章 中国に一番近い島・小金門島の戦争(烈嶼郷) 102
    ●小金門島防御の最前線――鉄漢堡・勇士堡 102
    ●厦門に最も近い湖井頭戦史館 106
    ●湖井頭戦史館南・双口海辺 109
    ●双口海辺のトーチカ群 111
    ●小金門島のL 26拠点という要塞 114
    ●抗日戦士を称える八達楼子 120
    ●非公開の基地跡 121
    ●小金門島を代表する九宮坑道 122
    ●小金門島の将軍堡 126
    ●八二三勝利記念碑と勝利門 129
    ●小金門島戦跡の行き方ガイド 130

第8章 解説 中国軍と国民軍との戦役 50年 131
    ●蔣介石・国民党軍の金門島占領 131
    ●古寧頭戦役とは…… 131
    ●毛沢東による敗北の総括 134
    ●米国・台湾の軍事同盟 136
    ●第一次台湾海峡危機 138
    ●第二次台湾海峡危機 139
    ●「台湾有事」と金門島の現在 142
    ●金門島の非武装地帯宣言を 143

書は、電子ブックとして10月26日に発行される『金門島 戦跡ガイド』(オールカラーバン・本体2000円)の第1章の公開である。Amazonほか、電子ブックの各書店で発売しているので、ぜひとも購読してほしい。

●取次書店 Kindleストア/紀伊国屋書店/楽天Kobo/BookLive!/honto/Reader Store/auブックパス/iBooks Store
https://www.amazon.co.jp/%E9%87%91%E9%96%80%E5%B3%B6%E6%88%A6%E8%B7%A1%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89-%E3%80%8C%E5%8F%B0%E6%B9%BE%E6%9C%89%E4%BA%8B%E3%80%8D%E3%81%AE%E6%9C%80%E5%89%8D%E7%B7%9A%E3%82%92%E6%AD%A9%E3%81%8F-%E5%B0%8F%E8%A5%BF%E8%AA%A0-ebook/dp/B0CLD3L25F


第Ⅱ期「島々シンポジウム」 *緊迫する馬毛島ー種子島軍事基地化の状況をリポート!

2022年09月08日 | 軍事・自衛隊


日米の南西シフトの演習・機動展開・兵站として位置づけられた馬毛島ー種子島の要塞化!

――その馬毛島・葉山港の浚渫が8/16早朝から開始された。八板俊輔西之表市長は、9月の西之表議会で基地計画への最終的賛否を表明するとしている。
今、急ピッチで馬毛島の要塞化が進む中、全国からの支援と連帯の大きな声が求められている。
「台湾有事」を始めとする日米の対中戦略が進むこの事態下、琉球列島の要塞化は、私たちの一人一人に成否が問われている。

●この島々で抗する市民が一同に集まるシンポジウムへ、全国から参加と連帯をお願い致します。

●日時 9/23(金・祝日)15:00~17:30

●場所 zoomウェブセミナー


●無料(カンパ歓迎)

●パネラー
・迫川浩英さん(馬毛島への米軍施設に反対する市民・団体連絡会事務局)
・長野広美さん(西之表市議)
・和田香穂里さん(前西之表市議・戦争をさせない種子島の会会員)
・和田 伸さん(種子島在住)

●司会 
・FUJIKOさん(うたうたい、島じまスタンディング) 
・石井信久さん(島じまスタンディング)

●解説 小西 誠(軍事ジャーナリスト)

●登録リンク(アドレス)
https://us06web.zoom.us/webinar/register/WN_QzYB3LT_QR28nuBpILHMpw

*主催 第Ⅱ期「島々シンポジウム」実行委員会

*寄付・カンパのお振込み
(現地の人々にお渡しします!)
・郵便振替 00160-0-161276(名義・社会批評社)(「島々基金」とお書き下さい)

*クレジットでのカンパができます(ただし、9/23(日)の20:50までの受付です。)
https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/02u09anevzi21.html?fbclid=IwAR3Irw6idyYWuDFGVhgsTseV0qnCvG400Q0aI6n6CSzrgPCeSiuIMrUGS7k#detail


*連絡先 shimajima2021@gmail.com

米国シンクタンク・ランド研究所のウクライナ戦争論

2022年08月09日 | 軍事・自衛隊
米国シンクタンク・ランド研究所のウクライナ戦争論

このリポートは、米国によるロシアの政治的・軍事的実態に関する、特にウクライナ戦争に関しての米国政府のシンクタンク「ランド研究所」の分析である。本文で明らかなように、米国は2019年当初からこのウクライナ戦争を米国とロシアとの「代理戦争」であり、米国のウクライナへの軍事支援が拡大して行くにつれ、戦争がウクライナとロシアの全面戦争に広がり、米国との軍事的衝突に至りかねないことを予測している。

私たちは、メディアによるウクライナ戦争への一方的、偏向的報道に迎合するのではなく、この戦争の客観的実態を観なければならない。なぜなら、このウクライナ戦争は、この戦争に乗じて、今まさに私たちの足下で「台湾有事」を口実とした、対中戦争態勢づくりへと広がろうとしているからだ。(以下のリポートの要約は、特にウクライナ戦争に関する箇所に限定した。全文はリンクから読める)


目次
「ロシアを拡張する――有利な条件での競争」(ランド研究所 2019 RAND Corporation)
まとめとして
本文のまとめ
●「米国は両国(東ウクライナとシリア)でロシアの敵対勢力に限定的な支援を行っており、さらに支援を行う可能性があるため、ロシアのコストを押し上げることになる。このような代理戦争は、決して新しいものではない。
「ロシアを拡張する――有利な条件での競争」(ランド研究所 2019 RAND Corporation)
本報告書は、ランド研究所研究プロジェクト「ExtendingRussia」の一環として実施された調査と分析をまとめたものである。本報告書は、陸軍省本部 G-8 参謀本部副長官室陸軍四年制防衛検討室が主催する研究プロジェクト「ロシア拡張:有利な地盤からの競争」の一環として実施された調査分析を記録したものである。

目次
序文
第1章 はじめに
第2章 ロシアの不安と脆弱性
第3章 経済的措置
第4章 地政学的措置
第5章 思想的および情報的措置
第6章 航空・宇宙の対策
第7章 海上での取り組み
第8章 土地およびマルチドメイン対策
結論


*「本報告書は、ロシアとのある程度の競合が避けられないことを認識した上で、米国が有利になるように競合できる分野を明らかにしようとするものである。ロシアの軍事・経済および国内外での政権の政治的地位を圧迫する方法として、ロシアの実際の脆弱性と不安を利用できる非暴力的な措置の数々を検討する。

私たちが検討した措置は、防衛や抑止を主目的とするものではなく、その両方に貢献する可能性はある。むしろ、これらの手段は、敵対国のバランスを崩し、米国が優位に立つ領域や地域でロシアが競争するように仕向け、ロシアが軍事的・経済的に過剰な拡張をしたり、政権が国内外での威信や影響力を失うように仕向ける作戦の一要素」

まとめとして
●「ウクライナ軍はすでにドンバス地方でロシアに出血している(その逆も然り)。米国の軍事装備や助言をさらに提供すれば、ロシアは紛争への直接的な関与を強め、その代償を払わされることになりかねない。ロシアは新たな攻勢をかけ、ウクライナの領土をさらに奪取することで対抗するかもしれない。これはロシアの犠牲を増やすかもしれないが、ウクライナだけでなく米国にとっても後退を意味する。」

●「ウクライナへの軍事的助言と武器供給を増やすことは、これらの選択肢の中で最も実現性が高く、最も大きな影響を与えるが、そのような構想は、広く拡大する紛争を避けるために非常に慎重に調整されなければならないだろう。」

*「NATO の黒海沿岸に陸上または空中発射の対艦巡航ミサイルを配備すれば、ロシアにクリミア基地の防衛を強化させ、黒海でのロシアの海軍の活動能力を制限し、クリミア征服の有用性を低下させることが可能である。そのような基地の候補としては、ルーマニアが最も意欲的であろう」

*「米軍の地上部隊の大部分を欧州に戻せば、欧州の有事(および一部の非欧州の有事)により迅速に対応できるようになる。しかし、米軍がロシア国境に近ければ近いほど、緊張を高める可能性が高くなり、他の場所に再配置することが難しくなる。従って、中欧に配置するのが望ましいと思われる」

*「これらの措置は、米国が優位に立つ領域や地域でロシアが競争するように仕向け、ロシアに軍事的・経済的な過剰な拡張を促し、国内外での政権の威信と影響力を失わせるなど、敵対国のバランスを崩すことを目的とした作戦の要素として考えられている。」

このような施策の歴史的な参照点として、1980年代のカーター政権とレーガン政権の政策がある。大規模な国防強化、戦略防衛構想(SDI、別名スターウォーズ)の開始、ヨーロッパへの中距離核ミサイルの配備、アフガニスタンの反ソ抵抗勢力への支援、反ソのレトリック(いわゆる悪の帝国)の強化、ソ連とその衛星国の反体制者への支援などであった。

これらの措置がワルシャワ条約機構の崩壊とソ連の崩壊に実際にどの程度貢献したかは不明だが、この10年間の米国の政策は、モスクワにいくつかの困難な選択を迫るものであった。結局、ゴルバチョフ新政権は、まずアフガニスタンからソ連軍を撤退させた。」

*「ロシアは今日、アメりカにとって最も手ごわい潜在的な敵国ではない。ロシアは米国と正面から張り合う余裕ないが、中国は力をつけている。米国にほとんど負担をかけずにロシアにストレスを与えることができる措置があれば、中国の反応を促し、逆に米国にストレスを与えることになるかもしれない。」

*「本報告書で取り上げた措置のほとんどは潜在的にエスカレートするものであり、そのほとんどはロシアの反撃につながる可能性が高い。米国は、利用可能なロシアの反撃オプションを検討・評価し、米国の全体戦略の一環として、それらを拒否または中立化するよう努めなければならない。このように、それぞれの措置に伴う具体的なリスクに加えて、さらに別のリスクがある。核武装した敵対国との競争激化に伴うリスクを考慮しなければならない。」

本文のまとめ

*「現在のロシア軍は、一様ではないにせよ、有能な戦闘力を持っている。地上軍と空軍は国外を軍事的に支配することができ、他の旧ソ連諸国はモスクワとの直接軍事対決で勝利する見込みはほとんどない。また、クレムリンは生存可能な戦略核抑止力を有している。ロシアは、陸上の大陸間弾道ミサイル(ICBM)、潜水艦の艦載弾道ミサイル(SLBM)、空中発射の巡航ミサイルによる爆撃機、および戦術核兵器の強力な兵器庫から構成されている。数十年にわたる持続的な投資により、ロシアは高度な防空能力を誇っている。米国(あるいはソ連)に比べれば、プーチン率いるロシアの戦力投射能力は限定的であるが、自国内でこれを破ることは極めて困難であり、コストもかかる。しかも、図 2.2.14 に示すように、軍事的に弱い国々と同程度の国防予算でこれらの能力を維持している。」

*「2016年、ロシアの国防費は米国の約10分の1であった。この金額は、約30万人の現役部隊の資金源となっている。77万人の兵士と200万人の予備役。重要なのは、ロシアの指導者が国防費を国内総生産(GDP)の約 5%以下に抑えることを確約」


●「米国は両国(東ウクライナとシリア)でロシアの敵対勢力に限定的な支援を行っており、さらに支援を行う可能性があるため、ロシアのコストを押し上げることになる。このような代理戦争は、決して新しいものではない。
実際、「偉大なるゲーム」は数世紀にわたって国家間関係を特徴づけており、世界的な大国が相反する影響圏をめぐって衝突してきた。このような駆け引きの復活は、冷戦の終結後、米国が唯一の超大国として残され、ロシアと米国以外の国との間で一時的に中断していた地政学的競争の形態への回帰を意味すると」

「施策1: ウクライナへのリーサルエイドの提供」
「2017年初頭までに、約6万人のウクライナ軍兵士が、推定5000人のロシア軍兵士を含む約4万人のロシア支援分離主義勢力と対峙し、これまでに約1万人の犠牲者を出した紛争であった。米国と欧州の同盟国はロシアに経済制裁を課し、ウクライナに経済支援と非殺傷軍事支援を行った。2014年、米国議会はウクライナ自由支援法に基づき、軍事・経済支援を承認した。」

「それ以降、2016年度(会計年度)まで、米国は安全保障支援に6億ドル提供し、 これらの資金はウクライナ軍を訓練するために使われたが、これらは対砲兵・対迫撃砲レーダー、安全な通信、兵站システム、戦術的無人偵察機、医療機器などの非殺傷軍事装備を提供」

「米国がウクライナへの支援を拡大することは、殺傷力のある軍事支援を含め、ドンバス地域を保持するためにロシアが負担するコストを血と財の両面で増大させる可能性がある。分離主義者に対するロシアの援助とロシア軍の駐留が必要となり、より大きな支出、装備の損失、ロシア人の死傷者が生じる可能性がある。後者は、ソビエトがアフガニスタンに侵攻したときのように、国内で大きな議論を呼ぶ可能性がある。このような米国のコミットメントの拡大により、もう2つのやや推測的な利益がもたらされるかもしれない。米国に安全保障を期待する他の国々は、心強く感じるかもしれない」

「米国のウクライナに対する安全保障支援が増加すれば、それに比例してロシアの分離主義者 への支援やウクライナ国内のロシア軍も増加し、紛争はより高いレベルで維持される可能性が高い 。元米国陸軍欧州軍司令官 Ben Hodges 中将は、まさにこの理由からウクライナへのジャベリン対戦車ミサイルの供与に反対している 。あるいは、ロシアは逆にエスカレートし、より多くの軍隊を投入し、ウクライナに深く入り込むかもしれない。ロシアは米国の行動を事前に察知し、米国の追加援助が到着する前にエスカレートする可能性さえある。このようなエスカレーションはロシアを拡大させるかもしれない。東ウクライナはすでに疲弊している。ウクライナをさらに占領すれば、ウクライナ国民を犠牲にするとはいえ、負担が増すだけかもしれない。」

「米国がウクライナの NATO 加盟をより積極的に主張すれば、ウクライナの士気と、それを阻止しようとするロシアの決意力が高まり、その結果、ロシアの関与と犠牲がさらに拡大する可能性がある。また、このような動きはNATO内部の反発を招き、ロシアの侵略に対抗するためにこれまでどちらかといえば統一された戦線であったものを損なうことになるだろう。」

「ロシアを拡張する地政学的な動きは、(時間と資源の関係で)ここでは深く検討しなかった他の選択肢、すなわちNATOとスウェーデン、フィンランドとの協力関係の強化、ロシアの北極における主張への圧力、北極におけるロシアの影響力のチェックも考慮する必要がある。」

*「スウェーデンとフィンランドを同盟に組み入れることは、特に魅力的である。スウェーデン海軍はコルベット 7 隻と潜水艦 5 隻を保有し、フィンランド海軍は 8 隻の高速攻撃機と広範な沿岸防衛システムを運用する。ロシアは、スウエーデンとフィンランドを威嚇するために、バルト海での航空・海軍活動を活発化させている。

「これらの行動は、NATOが両国との協調を強化しようとする努力を鈍らせようとするロシアの企てでもある。しかし、最近のロシアの動きが活発化した結果、NATOはスウェーデン、フィンランドとの連携を強めている。バルト海での NATO、スウェーデン、フィンランド、および米国の演習は、この小さなロシア艦隊に対する圧力を強める可能性がある。」

「バルト海の状況は、特に興味深い機会を提供している。NATO 海軍はすでに数的にも能力的にも優位に立っている。スウェーデン軍をNATO軍に含めれば、軍事バランスはさらに有利になる。ロシアは、水上・航空部隊の自由な活動能力を脅かすアクセス拒否能力に多大な投資を行っている。NATO とスウェーデンの部隊の組み合わせは、特に米海軍の定期的な支援を得て、このようなロシアの改良に挑戦することができる。NATO とスウェーデンは海中戦力において大きな優位性を持っており、ロシアに ASW の投資をさせることができる。」

*「黒海におけるNATOの対接近・領域拒否(A2AD)措置の強化は、クリミアのロシア基地防衛のコストを押し上げ、この地域を掌握したことによるロシアの利益を低下させることが最大の利点となる。
ルーマニアは、黒海におけるロシアの増強に懸念を表明し、それに応じてNATOとの関係を強化しようとしてきた。実際、ルーマニアは黒海での NATO 軍の旅団編成や海上演習の強化などを求めている。ウクライナは東部の陸上紛争に重点を置いているが、黒海の安全保障に懸念を示し、NATOが主導するタスクフォースへの参加を申し出ている」

「米海軍のプレゼンスが高まれば、作戦上のリスクも生じる。クリミアに基地を置くロシアの対艦ミサイルの射程は400~500km であり、黒海で活動するほとんどの米艦に到達することが可能である 。プレゼンスの拡大はまた、偶発的な衝突のリスクもはらんでいる。これまでにも、ロシア航空機が黒海で米軍艦に接近し、「ブザー」を鳴らしたことがある」

「ルーマニアに空中発射型または陸上配備型のASCM を配備すれば、米国とその同盟国が許容できるコストで、ロシアがクリミアの施設を利用するためのコストが増加すると思われる。」

*「第一の選択肢は、欧州における米軍の地上戦力を、重戦力と火力を含めて、少なくとも10年前の水準まで大幅に増強することである 。米陸軍は現在、欧州に3つの旅団戦闘チーム(BCT)を置いている。ストライカーと歩兵・空挺部隊、およびローテーション機甲部隊である。このオプションは在欧米陸軍の兵力をおおよそ倍増させ、最大6つの常設または持続的ローテーションBCT、そのうち少なくとも2つは機甲部隊、さらに大砲と対砲兵部隊を大幅に増強することを意味」

*「第 2 の選択肢は、欧州 NATO 加盟国が自国軍の即応性と能力を向上させるために支出を大幅に増加させることである。「防衛費の支出は、ドイツ(現在GDPの約1.2%)でさえ、今後数年のうちに目標のGDP比2%を達成するほど、急速に拡大している」

*「第 3 の選択肢は、米軍または西ヨーロッパの NATO 加盟国軍をバルト三国またはポーランドに直接、より多く展開させるものである。NATO の駐留強化構想は、すでにエストニア、ラトビア、リトアニア、およびポーランドへの多国籍大隊のローテーション配備につながっているが、このオプションでは、はるかに大規模で効果的な戦闘力を持つ部隊を検討することになる。例証のため、バルト海沿岸の各県に1 個以上の BCT または同等の部隊を前方配備することも可能である。」
「バルト諸国またはポーランドにこの規模の部隊を前方展開することは、ロシアと少な くとも一部の欧州 NATO 加盟国から見れば、1997 年の NATO ロシア建国法に違反するように見える」


*「潜在的な利益とリスク欧州における NATO 陸軍の増強、または実効的な能力の向上がもたらす潜在的なメリットは 3 つある。まず、これらの戦略は、(1) 同盟の戦う決意を示し、(2) その戦いに勝つためのNATOの能力を高めることで、ロシアがNATO加盟国への短期警戒攻撃を企てる可能性を低下させる可能性がある。陸上戦力の増強が抑止にもたらす効果は、陸上戦力がない場合にロシアがそのような攻撃を考える可能性に依存する」
「第3に、NATO の陸上戦力の増強は、その潜在的脅威に対抗するため、あるいは国境での優位性を維持し、継続的な行動の自由を確保するために、より多額の投資をモスクワに促すことで、ロシアを拡大させる可能性があることである。」

●ロシア国境付近または国境上に位置するNATO地上軍や、はるかに高い即応性レベルで相当数が維持されているNATO地上軍は、異なる反応を示す可能性が十分にある。NATO の東側諸国への高適応度 BCT の配備は、NATO がロシアへの本格的な地上侵攻を計画している可能性をモスクワに納得させ ることはできないだろうが、それでもロシアの立場からすれば、非常に脅威的な展開となる。このような部隊は、現実的にはモスクワを脅かすことはないだろうが、特に、多連装ロケットシステム(MLRS)や高機動砲ロケットシステムなど、戦場のNATO部隊に対するロシアの砲兵の優位性に対抗するための能力を伴う場合、カリンイングラードを危険にさらす可能性はある。また、これらの部隊は、ウクライナやグルジアなど、ロシアに非常に敏感な地域の他の場所にも容易に配備することが可能である。」
「さらに、この部隊は、自国の「近海」での優位性を含め、ロシアの大国としての役割の再確立に国内の民度を賭けてきた政権に、明確な政治的挑戦を突きつけることになる。バルト海やポーランドに駐留する部隊が、西ヨーロッパのNATO加盟国ではなく、主に米国からであった場合、認識される脅威と政治的課題は拡大する可能性が高い。」

●「西ヨーロッパを中心としたNATO地上軍の強化や能力向上は、ロシアの重要な関心事に対する政治的・軍事的挑戦とは認識されない可能性が高い。しかし、よりロシアに近い場所、あるいは国境に近い場所を中心とした、飛躍的に大規模で高い即応性を持つ地上軍を考えた場合、リスクはより大きくなる。先に述べたように、このような部隊は、ウクライナ、ベラルーシ、グルジアなどにおけるロシアの利益に対する政治的、そして可能性として戦略的な明確な挑戦となるため、まさにロシアの軍事支出を拡大する可能性を持っている。ロシアは、前方姿勢の強化を、近海で争う NATO の全体的な取り組みの一部と見なし、ウクライナなどの国々がモスクワに対してより強硬な姿勢を取るよう促すとともに、欧州への戦略的方向転換を検討している他の国々に物的、精神的支援を与える可能性もある。

このような変化は、ロシアの戦略的軌道から重要な国家を外し、この地域の国家がモスクワの現体制に不都合な政治・経済改革を行う可能性を示すことによって、ロシア政権の安全保障を脅かすことになる。このようなロシアの核心的利益に対する潜在的脅威を示すことで、ロシアは、米国と NATO の配備を抑止するため、あるいは、配備後の撤回を求めるために、強力に反撃する動機付けとなるであろう。この反撃は、以下のような形で行われる可能性がある」
・「配備を受け入れるNATO加盟国を不安定にするため、配備そのものに対する現地の反対勢力を動員することを含む、より大きな努力。
・中東など他の地域における米国または欧州の利益を脅かす水平方向のエスカレーション。
・戦略的軍隊を警戒態勢に入れ、配備そのものが関係における深刻な危機を構成することを強調する。INF条約を脱退し、核武装した中距離ミサイルを配備すること。
・欧米の政治体制を不安定にしようとする動きが強まっている。


*「米国は地上配備型中距離核ミサイルを独自に開発、配備する能力と資源を持っており、選択すればINF条約から脱退することも可能である。しかし、欧州にミサイルを配備するには、配備先の同盟国やパートナー国の同意が必要であり、その実現は難しいかもしれない。1980 年代には、ヨーロッパへのパーシング 2 ミサイルの導入に対して大規模な抗議が行われ、西ヨーロッパ諸国政府は、地理的に近 く、広範囲なソ連の軍事的脅威に直面していたとしても、これらのミサイルを受け入れることに消極的 であった 。このようなミサイルが再導入される状況にもよるが、これらの配備に対するホスト国の支持を確保することは困難であると考えるのが賢明であろう。この政策オプションの他の2つの代替バージョンについては、個別に議論する価値がある。

第一に、米国は、西ヨーロッパではなく、あるいは西ヨーロッパに加えて、ポーランドなど東ヨーロッパのNATO同盟国の領土に、核搭載可能なものを含む中距離ミサイルを配備することができる。これはある意味で、1980年代半ばに行われたパーシングIIミサイルの西ヨーロッパへの配備と同じであり、NATOへの攻撃には核による対応が必要であることをソ連とNATO加盟国の双方に保証するためのものである。しかし、今回はロシア国境に直接配備する。原則的に、このようなミサイルの配備は、米国がNATOの東側諸国を防衛するために核兵器を使用する意思があるという強いシグナルを送り、米国の抑止力を強化する可能性がある。しかし、このような動きは、ミサイルがモスクワに近接し、飛行時間が短いことから、ロシアにとっても大きな脅威となる。米国の海上・空中発射精密攻撃システムの体制破壊攻撃能力に対するロシアの懸念は、おそらく数倍に拡大されるであろう。これは、NATO領域に対するロシアの攻撃を抑止するのに役立つが、同時に、NATO領域に対するロシアの攻撃を誘発する可能性もある。」

●「結論
米国との競争において、ロシアの最大の弱点は、経済規模が比較的小さく、エネルギー輸出に大きく依存していることである。ロシア指導部の最大の不安は、体制の安定と持続性である。
ロシアの最大の強みは、軍事と情報戦の領域である。ロシアは先進的な防空、大砲、ミサイルシステムを配備し、米国やNATOの防空管制や大砲の対砲撃能力を大きく上回っている。このため、米国の地上軍は制空権を失い、劣勢な火力支援で戦わざるを得ない可能性がある。ロシアはまた、誤報、破壊、不安定化という旧来の手法に新しい技術を適合させている。
ロシアに対する最も有望な対策は、これらの脆弱性、不安、強みに直接対処し、ロシアの現在の優位性を損なわずに弱点分野を開拓することである。ロシアを含むあらゆる形態の米国エネルギー生産の継続的な拡大。自然エネルギーを活用し、他の国にも同じことを奨励することは、ロシアの輸出収入、ひいては国家予算や防衛予算に対する圧力を最大化することになる。」

*「ウクライナ軍に対する米国の武器と助言を強化することは、検討された地政学的選択肢の中で最も実行可能なものであるが、そのような努力は、より広範囲の紛争を避けるために慎重に調整される必要がある。」

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RAND_RR3063-ロシア.pdf

●本日発売!「週刊金曜日」は、日本国憲法の特集!―反戦自衛官・小西誠氏に聞く 「自衛隊の憲法明記」で兵士と市民の殺し合い=市街戦を隊員にさせるのか!?

2022年04月29日 | 軍事・自衛隊

●本日発売!「週刊金曜日」は、日本国憲法の特集!
―反戦自衛官・小西誠氏に聞く 「自衛隊の憲法明記」で兵士と市民の殺し合い=市街戦を隊員にさせるのか!?


●特集では、ウクライナ戦争と憲法――「正義の戦争の是非」、「無防備都市宣言」、「日米の南西シフト」、そして「自衛官の人権」などなど……紙面6頁のインタビューをしていただきました(うち3頁を掲載、ぜひ同紙購読をお願い!

●反戦自衛官・小西誠氏に聞く
「自衛隊の憲法明記」で兵士と市民の殺し合い=市街戦を隊員にさせるのか!?

――聞き手・本田雅和(同紙編集部)

ウクライナ戦争を機に、自民党などの改憲勢力は改憲議論を一気に進めようとしている。そもそも他国の侵攻に対する「正義の戦争」とは何なのか。それがもたらすものは――。


以下略(残り3頁)

●ロシアーウクライナ戦争についての覚え書き的試論! ――反戦平和運動の混乱を止揚するために!

2022年03月21日 | 軍事・自衛隊


・この戦争の政治的性格(歴史的性格)を規定することは、今決定的に重要であり、この試みなしには、現在、世界で始まっている「新冷戦」=世界的「国家間争闘戦」(覇権争い)には対処できない。
かつ、反戦運動の歴史的後退を防ぐことはできない。 以下は、私の「覚え書き的試論」である。

・この世界的危機ー戦争の始まりを、あえて、2018年のアメリカの「国家安全保障戦略(NSS)」による「対中ロ競争戦略」の開始=新冷戦の歴史的始まりからとする(2014年の東ウクライナ戦争を基点とはしない)。

・この「対中ロ競争戦略」によってアメリカは、世界的な帝国主義的争闘戦(覇権戦争)に突入した。

・これがアジア太平洋においては、日米を軸とする「対中包囲戦略」として発動され、「Quad」、「AUKUS」などの英仏豪を巻き込んだ、対中政治・軍事態勢がつくられている。

・ヨーロッパにおいては、このアメリカの対ロ競争戦略は、東西冷戦後から一貫して引き継がれてきた、東欧へのアメリカの覇権政策――NATOの東方拡大政策として強化され、これに欧州もまた巻き込まれてきた。

・ウクライナの「民族運動」(「民族解放運動」ではない)も、歴史的なロシアのウクライナ民族への抑圧政策の中で、このアメリカの東欧覇権戦略に乗っかり、それを利用して進められてきた。

・したがって、このロシアーウクライナ戦争の政治的性格は、端的にいえば、「米ロ間の帝国主義的争闘戦」(覇権争い)に、ウクライナ民族運動が巻き込まれた、「本質的に帝国主義間戦争」と見るべきだ。

・問題は、この米ロ間の「本質的に帝国主義間戦争」に、欧州と日本(そして中国も!)も巻き込まれる「世界的戦争」(新冷戦の本格的始まり)に発展しようとしていることである。

・この戦争を「専制ロシアとウクライナー民主主義国間の戦争」と規定する大きな流れがあるが、これは、第2次世界大戦の、歴史的規定の誤りにも起因する。

・第2次大戦は、独伊日対米欧の「帝国主義間戦争」にソ連が巻き込まれた世界大戦であり、アジア的には、中国ーアジア市場の争闘(覇権)を巡る、米英蘭対日本の帝国主義間争闘戦であり、これに中国の民族闘争ー「民族解放戦争」が巻き込まれたものである。

・世界と日本の歴史学説は、この戦争を「民主主義対ファシズム」の戦争として規定してきたが、これは、米英、特にアメリカの「戦争犯罪」(ヒロシマ・ナガサキ、東京大空襲などの無差別爆撃)を免罪するための主張である。

・この戦争の正確な規定は、特に、急迫するアジア太平洋戦争ーアメリカ(米日)の対中戦争(南・東シナ海戦争ー「台湾有事」)の歴史的はじまり、という事態が進行する中で、とりわけ重要である。

・繰り返すが、アメリカの2018年「国家安全保障戦略(NSS)」による「新冷戦」宣言は、アフガンーイラク戦争後の、アメリカの世界的戦争態勢作りであり、対中戦争態勢づくりである(実際上は、ウクライナ戦争が先行しただけ!)

・この事態の中、現在の反戦のスローガンは、

*「ロシアのウクライナ侵攻反対」
*「米ロの帝国主義間戦争反対」
*「アメリカのNATO東方拡大戦略反対」
*「ウクライナの中立政策支持」
*「ウクライナーロシアの即時停戦を」
*「市民の犠牲をなくすためにキエフ等の無防備都市宣言を」 となろう。



そして、「台湾有事」キャンペーンによる、日米豪(欧)の対中戦争が切迫の中、今私たちが、特に求められているのは、ウクライナ戦争に反対するとともに、日米の対中戦争態勢づくり――琉球列島へのミサイル要塞化を阻むための、沖縄島――奄美・石垣島・宮古島と連帯した、全国的たたかいである!

●参考文献『ミサイル攻撃基地化する琉球列島―日米共同作戦下の南西シフト』


「台湾有事」キャンペーを糺す!

2022年01月03日 | 軍事・自衛隊


注 本論文は、21/12/8発行の拙著『ミサイル攻撃基地化する琉球列島―日米共同作戦下の南西シフト』の「序論」である。アジア太平洋地域の情勢が緊迫している中、これを公開したい。

序論 煽られる「台湾有事」論

サイル軍拡競争が始まった琉球列島
 2021年3月9日、米インド太平洋軍のデービッドソン司令官(当時)は、米上院軍事委員会で「今後6年以内に中国が台湾を侵攻する可能性がある」と証言。これを契機に日本のメディアは、一斉に「台湾有事」キャンペーンを始めた。メディアだけではない。名だたる識者や軍事評論家らも、この喧伝に飛びつき、唱和している。

 だが、デービッドソンの上官、ミリー米統合参謀本部議長が、米上院歳出委員会で「中国には現時点で武力統一するという意図も動機もほとんどないし、理由もない」と証言(21年6月19日付朝日新聞)したのだが、ほとんどのメディアはこれを無視した。

 また、同年7月5日、麻生副総理(当時)が都内の会合で「台湾海峡は石油に限らず日本の多くの輸出入物資が通る」とし、「台湾有事」を念頭に「日本にとって存立危機事態に関係」(同日付沖縄タイムス)と発言すると、メディアは一斉にこれに呼応し、さらに「台湾有事」を鼓吹するという状況である。

 だが、この麻生発言は、完全なフェイクである。「台湾海峡は……日本の多くの輸出入物資が通る」と? 台湾海峡はどこだ! 中国大陸と台湾の間だ。この中国大陸に沿う海峡を通る、日本の船舶はほとんどない(「日本の海運SHIPPINGNOW2020―2021」日本船主協会作成)。

 日本の実際の「シーレーン」は、台湾とフィリピンの間のルソン海峡、バシー海峡だ。台湾海峡という「危険地帯」を通過する必要は全くない。
 こんな麻生のフェイクを真に受け「台湾有事が切迫」と、危機アジりに唱和してはならない。現在、いかなる危機が生じているのか? この実態は、正確に見据えねばならない。

進行する琉球列島のミサイル基地化
 現在、急ピッチで進んでいるのは、九州から与那国島に至る、琉球列島=第1列島線に沿う、ミサイル部隊を軸とした大がかりな自衛隊の新配備計画だ。この事実をメディアは、ほとんど報じない。

 これらの琉球列島の基地建設の中で、いち早く自衛隊が配備されたのは、日本の最西端・与那国島だ。台湾まで約110キロという距離にある同島と台湾との間の海峡は、頻繁に中国の軍民艦船が行き来する。

 この与那国島の山頂に5基、異様な形で聳え、配備されているのが、陸自(陸上自衛隊、以下陸自・海自・空自という)沿岸監視隊160人の部隊だ(2016年3月配備)。沿岸監視レーダーは、与那国西水道を通過する中国軍艦を常時監視する。また、与那国駐屯地東側の一段と高い場所には、対空レーダーも設置。同島には、今後、空自移動警戒隊、陸自電子戦部隊も配備される予定だ(与那国と台湾間の海峡の公式名称はない。便宜的に筆者は「与那国西水道」とした)。


 与那国島の東に位置する石垣島には、陸自の対艦・対空ミサイル部隊、警備部隊(普通科部隊)計約600人が配備される予定だ。この石垣島では、宮古島、奄美大島よりも遥かに遅れて、2019年3月、基地造成工事が始まった。そして現在は、コロナ禍でもほとんど休止することなく、本格的なミサイル基地造成工事が続いている。


 しかし、石垣島でも、与那国島と同様、激しい基地建設への抵抗が起きている。基地建設の発表以来、予定地である平得大俣地区の農民らを中心にして、石垣市民の間にも根強く運動は広がっていく。平得大俣地区は、島への食糧を供給するもっとも豊かな農村地帯であり、戦後沖縄本島から移住してきた農民たちが、厳しい環境下で切り開いてきた開拓農地だ。しかもこの地帯は、沖縄においても最高峰を誇る於茂登岳から湧き出してきた豊かな水源地帯である。

 この地にミサイル基地を造るという自衛隊の横暴に、農村の青年たちが起ち上がった。この運動は、基地建設の是非を問う、住民投票を求める闘いへと発展する。この住民投票署名は、わずか1カ月の期間に石垣市有権者の4割を超える、1万4844筆の署名を達成。しかし、この状況に驚いた石垣市長らは、この「市条例に基づく住民投票実施」を拒否するという暴挙に出たのだ。これに対し、住民投票の実施を求めて石垣市を訴えた裁判が、今なお続いている。
(注 市長に住民投票実施を義務付ける「義務付け訴訟」は、1審、2審、最高裁とも却下されたが、2021年10月、市民たちは「石垣市平得大俣地域への陸自配備計画の賛否を問う住民投票において投票することができる地位にあることの確認請求」という新たな訴訟を提起。)

 石垣島とともに、今なおミサイル基地を阻む激しい運動が続いているのが宮古島だ。2019年3月、ここには陸自の警備部隊が配備。また地対艦・地対空ミサイル部隊も、1年遅れの2020年3月に配備された(約800人)。こうして宮古島には、ミサイル部隊が配備されたのだが、この部隊は未だ「ミサイルなし」(弾なし)の部隊(2021年11月10日現在)。同駐屯地には、対艦・対空ミサイル部隊の車両多数が配備されたが、これらの「ミサイル搭載車両」は、キャニスター(発射筒)だけを搭載したものだ。
 
 というのは、ミサイルを保管する弾薬庫は、21年4月に同島南東の保良地区にようやく一部開設したが、肝心のミサイル弾体が未だに搬入されていない(写真上、宮古島・保良ミサイル弾薬庫)。この理由は、保良の居住地区のすぐ側(200㍍)に造られているミサイル弾薬庫に抗し、住民たちは2年以上にわたって工事現場に座り込み、弾薬庫反対の行動を続けているからである。そして、4月から現在まで、この住民の行動に、沖縄の海運業界が共鳴し、今なおミサイル弾薬の輸送を拒んでいるのだ。もちろん、この保良を始め宮古島では、千代田地区の宮古駐屯地に対しても、反対の闘いが粘り強く続けられていることは付言しておかねばならない。


南西シフトの機動展開基地となる奄美大島・馬毛島
 奄美大島のミサイル基地開設は、宮古島と同じ2019年3月だ。奄美大島では、警備部隊と地対艦・地対空ミサイル部隊が、島の3カ所、計550人規模で配備された。さらに、今後、空自の移動警戒隊(大熊駐屯地内)・通信基地(湯湾岳)、陸自電子戦部隊が配備される予定だ。

 奄美大島で驚くのは、これらの基地の規模である。奄美駐屯地(大熊地区)の敷地面積は、約51㌶、瀬戸内分屯地(瀬戸内町)は、約48㌶(石垣基地の約2倍・宮古基地の約2・5倍)。瀬戸内分屯地には、巨大弾薬庫(約31㌶)が今なお建設中だ。山中にトンネル5本を掘るミサイル弾薬庫は、それぞれが約250㍍の長さの地中式弾薬庫である。弾薬庫は、現在2本目が完成しているが、情報公開文書によると全ての完成は2024年だ。

 この奄美大島のミサイル弾薬庫には、作戦運用上の目的もある。奄美大島―馬毛島は、先島諸島有事への、兵站・機動展開・訓練拠点として位置付けられている。つまり、この瀬戸内弾薬庫は、南西諸島有事へのミサイル弾薬の兵站(補給)拠点である。問題は、これら奄美大島の基地建設について、本土のメディアが全く報道しないことだ

 種子島―馬毛島の基地化が、自衛隊の南西シフトの一環であることは、以前から防衛省サイトでは公開されている(「国を守る」)。
 このサイトでは「他の地域から南西地域への展開訓練施設、大規模災害・島嶼部攻撃等に際しては、人員・装備の集結・展開拠点として活用、島嶼部への上陸・対処訓練施設」などを明記。

 馬毛島基地(仮)について、ようやく用地買収のメドがたった2019年12月、防衛副大臣が種子島を訪れ「自衛隊馬毛島基地」(陸海空の統合基地)建設を市に要請。つまり、馬毛島は、自衛隊の南西シフトの兵站・機動展開・訓練拠点として公に位置付けられたのである。

 これは、以前から筆者請求の情報公開文書でも裏付けられている。2012年、防衛省文書「奄美大島等の薩南諸島の防衛上の意義について」は、「南西地域における事態生起時、後方支援物資の南西地域への輸送所要は莫大になることが予想→薩南諸島は自衛隊運用上の重大な後方支援拠点」、また情報公開文書「自衛隊施設所要」(2012年統幕計画班)でも「統合運用上の馬毛島の価値」として、「南西諸島防衛の後方拠点(中継基地)」であること、「島嶼部侵攻対処を想定した訓練施設」であると明記。こうして、2本以上の滑走路建設予定の馬毛島は、自衛隊史上最大の航空基地、そして軍港(後述)として、まさに「要塞島」が造られるのだ。


沖縄本島の増強とミサイル要塞と化す琉球列島
 以上の先島などと同時進行しているのが、沖縄本島での全自衛隊の大増強だ。すでに2010年、那覇の陸自第15混成団は旅団へ昇格、空自も2017年、南西航空混成団から南西航空方面隊に昇格。那覇基地のF15戦闘機は、2倍の40機へ増強された。

 そして、沖縄本島の全自衛隊は、2020年には、約9000人に増大(2010年約6300人)、陸自・沖縄部隊は、最大勢力の約5100人に増強された。
 問題は、この中で沖縄本島へ地対艦ミサイル部隊の配備が決定されたことだ。新中期防衛力整備計画(2018年~)では、宮古島・石垣島を含む3個中隊の追加配備が決定されたが、このミサイル1個中隊の陸自・勝連分屯基地への2023年度の配備が通告された(21年8月21日)。しかし、勝連への配備は、ミサイル中隊だけではなく、石垣島・宮古島、奄美大島の地対艦ミサイル部隊を隷下におく、地対艦ミサイル連隊本部の配備(約180人)と発表されている。この配備で琉球列島では、地対艦ミサイル1個連隊「4個中隊」が編成・完結される。



  2023年、地対艦ミサイル配備予定の陸自・勝連分屯基地
 海自(空自)でも、「いずも」型護衛艦の空母への改修工事が完了しつつあり、すでに海自・空母と米強襲揚陸艦との共同運用が行われ始めている。
 その他、南西シフト下で「島嶼奪回」部隊として、華々しく喧伝されているのが、佐世保市で編成された水陸機動団だ。これは現在、2個水陸機動連隊が編成され、新たに1個連隊が増強予定だ。この他、南西シフト下では、九州の空自増強と日米共同基地化が進行、新田原基地では、2021年7月、F35B配備・基地化が通告された。

 以上の宮古・奄美・沖縄本島などへの地対艦・地対空ミサイル配備を皮切りに急ピッチで進んでいるのが、さらなる琉球列島全体のミサイル要塞化計画だ。
 2018年防衛大綱では、「島嶼防衛用高速滑空弾部隊・2個高速滑空弾大隊」の新設が発表された。高速滑空弾とは、現在、日米中露が激しい開発競争をしている新型のミサイルであり、迎撃不可能であるといわれる。チョークポイント・宮古海峡封鎖のための配備が推定される。

 自衛隊は、この他、中国大陸まで射程に収める12式地対艦ミサイルの約900キロの射程延伸を計画し、自衛隊初のトマホーク型巡航ミサイルの開発などを含む、凄まじいミサイル戦争態勢づくりを推し進めている。

 そして、2019年8月2日、トランプ政権は、中距離核戦力(INF)全廃条約からの脱退を決定したが、この目的は米軍の琉球列島を中心としたミサイル軍拡を押し進めるためである。条約脱退発表の直後に米軍は、沖縄―九州などへの中距離弾道ミサイルの配備(非核戦力)を発表したのである。一部の御用評論家などは、米中の中距離ミサイルの戦力比が「米ゼロ対中国1250発」とフェイクを流し、中国の多数の中距離ミサイルに対抗するには、米軍の中距離ミサイルの日本配備が必要だと吹聴している。

 しかし、米軍は、SLCM(潜水艦発射巡行ミサイル)を始め、すでに艦艇などに多数のトマホークなどの中距離ミサイルを配備している。SLCMは、1隻に154発のトマホークを装備している(搭載潜水艦4隻保有)。明らかに、米軍が目論むのは、地上発射のトマホークや中距離弾道ミサイルの日本配備によって、ミサイル軍拡競争において中国に対し圧倒的優位に立つということだ。

 さらに、急ピッチで進みつつある米海兵隊・陸軍の「第1列島線シフト」でも、地対艦・空ミサイル部隊の配備計画が明らかになっている。つまり、日米の双方による、琉球列島への凄まじいミサイル配備計画が押し進められており、対中国の激しいミサイル軍拡競争が、すでに始まっているということだ。

対中国の日米共同作戦
 自衛隊の南西シフトの初めての策定は、2010年の新防衛大綱だ。この南西シフトは、米軍のエアーシーバトル(2010年QDR)のもとで決定された。この具体的な運用計画が示されたのが「沖縄本島における恒常的な共同使用に係わる新たな陸上部隊の配置」(2012年統合幕僚監部)という文書である。

 この文書では、驚いたことに在沖米軍基地―嘉手納・伊江島航空基地等を含む在沖全米軍基地の、自衛隊との共同使用、さらにこの後編成予定の陸自1個連隊のキャンプ・ハンセンへの配備も記されている。つまり、このハンセン配備予定の水陸機動団が、辺野古新基地をも使用し、日米共同基地にするということだ(21年1月28日付沖縄タイムスは、これを裏付ける辺野古新基地の水陸機動団との共同使用密約を報道)。

 こうしてみると、自衛隊の南西シフトは、初めからエアーシーバトル下の日米共同作戦として決定されたといえる。
 この作戦の特徴は、在沖・在日米軍は中国軍のミサイルの飽和攻撃を逃れ、あらかじめ空母機動部隊のグアム以遠への一時的撤退を予定していたことだ。そして、中国軍のミサイル飽和攻撃が終了した後、米空母機動部隊などは、第1列島線に参上し参戦する。


 すなわち米軍は、対中戦略では自衛隊の南西シフトに依拠する。つまり、第1列島線沿いに配備された、自衛隊の対艦・対空ミサイル部隊が、初期の対中戦闘の主力となる。米軍の初期構想では、これら琉球列島に配置されたミサイル部隊の任務は、中国軍を東シナ海に封じ込め、「琉球列島を万里の長城、天然の要塞」にするとしている。これはまた、中国の軍民艦船を東シナ海へ封鎖する態勢であり、中国の海外貿易を遮断する態勢づくりだ。

 だが、このエアーシーバトルという戦略は、一時的であれ、米海軍の西太平洋の制海権を放棄する態勢である。これは米海軍においては「制海権放棄」という第2次大戦後の初めての事態となる。

 こうして、これを全面的に修正する戦略が、「海洋プレッシャー戦略」として米軍に対して提言された(戦略予算評価センター[CABA]、2019年5月)。「海洋プレッシャー戦略」とは、端的にいうと、中国の初期ミサイル飽和攻撃に対処する「撤退戦略」を修正し、「対中・前方縦深防衛ライン」を構築し、戦争の初期から西太平洋の制海権を確保する戦略だ。


 作戦の中心は、第1列島線沿いに分散配置された対艦巡航ミサイル、対空ミサイルなどを装備した地上部隊が、中国の水上艦艇を戦闘初期で無力化する。つまり、琉球列島に配備された自衛隊の対艦・対空ミサイルと、米軍の新たな対艦・対空ミサイルとの共同作戦である。


 この戦略下、海兵隊も「フォース・デザイン2030」を提唱し、その構想が「紛争環境における沿海域作戦」(LOCE)、「遠征前方基地作戦」(EABO)としてすでに具体化している。第1列島線上で海兵隊が、地対艦ミサイルなどで武装することが最大の核心だ。2027年までにそれを担う「沿岸連隊」を沖縄に配備するという方針である。

 問題は、米海兵隊のミサイル部隊配備だけではない。この海兵隊に加えて、米陸軍もまた、マルチ・ドメイン・オペレーション(MDO)という運用構想の中、第1列島線に地対艦ミサイル部隊などを配備することを決定しているのだ。詳細は本文で述べるが、実際は米海兵隊よりもこの陸軍のミサイル部隊配備が先行するという状況だ。

「台湾有事」論の実態
 このような日米の南西シフト下の、対艦・対空ミサイル配備、そしてトマホークを始めとする中距離ミサイル配備計画が急ピッチに進行する中、東シナ海・南シナ海とも、軍事衝突の緊張が一段と高まっている。

 しかし、冒頭に述べてきた「台湾有事」論の本当の狙いは、米軍による第1列島線の完結・完成、つまり、台湾を対中戦略に動員し、台湾とフィリピンとの間の、ルソン――バシー海峡の封鎖態勢を完成させることである(中国海軍―海南島に配備された原潜の太平洋への出口を遮断)。そして、「台湾有事」論のもう1つの重大な狙いは、中距離ミサイルの日本配備のための、一大キャンペーンでもあるのだ。

 現在、これら日米中露のミサイル軍拡競争は、熾烈な段階に入りつつある。この事態を放置したとすれば、アジア太平洋は「キューバ危機」以上の危機に突入する。極超高速滑空弾、中距離弾道ミサイルは、中国におよそ10分前後で着弾する。

 だが、迫りつつあるこの戦争の危機を、逆にアジア太平洋の軍縮に転化すること、日米の南西シフトを中止に追い込むこと、琉球列島へのミサイル基地建設を凍結し、基地の廃止に追い込むこと――これらが今緊急に必要である。私たちは、再び沖縄を最前線とするこの戦争態勢づくりに、黙してはならない。
(注 「序章」については、雑誌『アジェダ』2021年9月号発表の論文に加筆。


『ミサイル攻撃基地化する琉球列島』目 次
序 章 煽られる「台湾有事」 9  
    ミサイル軍拡競争が始まった琉球列島 9 
    進行する琉球列島のミサイル基地化 11
    南西シフトの機動展開基地となる奄美大島・馬毛島 14
    沖縄本島の増強とミサイル要塞と化す琉球列島 16
    対中国の日米共同作戦 18
    「台湾有事」論の実態 21

第1章 アメリカの「島嶼戦争」論  25
    クレピネビッチの「群島防衛」論  25
    「台湾問題」を全面化したクレピネビッチ論文 30
    トシ・ヨシハラらの「島嶼戦争」論 35
    対ソ抑止戦略下の「三海峡防衛」と第1列島線防衛 38
    海峡防衛論=島嶼防衛論の虚構 42
    「台湾有事」論による中国南海艦隊の封じ込め 43
    海峡防衛をめぐる(対)着上陸作戦 45
    チョークポイント・宮古海峡の要塞化 47

第2章 エアーシーバトルから海洋プレッシャー戦略へ  51
    エアーシーバトルの限界 51
    中国本土攻撃を想定するエアーシーバトル 54
    オフショア・コントロールと「海洋拒否戦略」 58
    「制限海洋」作戦による「海洋限定戦争」論 63
    海洋プレッシャー戦略とは 66
    「インサイド・アウト防衛」部隊の運用構想 70
    海洋プレッシャー戦略が想定する戦場 75
    第1列島線構成国によるA2/ADの完結 77

第3章 米海兵隊・陸軍の第1列島線へのミサイル配備 81
    海兵隊作戦コンセプト(2016年) 81
    「紛争環境における沿海域作戦」(LOCE)構想の策定 85
    「フォース・デザイン2030」による米海兵隊の大再編 89
    海兵沿岸連隊へのトマホーク配備 93
    米陸軍ミサイル部隊の第1列島線配備 98
   
第4章 自衛隊の南西シフトの始動と態勢 105
    南西シフトの始動 105
    陸自『野外令』の大改訂 114
    「日米の『動的防衛協力』」による南西シフト 117
    「日米の『動的防衛協力』」による琉球列島の部隊配備 123
    宮古島などのミサイル配備はいつ決定されたのか? 125
    自衛隊の南西シフトの運用 127
    南西シフト態勢下の統合機動防衛力 131
    10万人を動員した機動展開演習「陸演」 132
    陸上総隊の創設―軍令の独立化 134
    2018年防衛大綱・中期防の策定 135
    多次元横断的(クロス・ドメイン)防衛力構想 137
    南西シフト下の空自の大増強 141
    南西シフト下の海自の大増強 143

第5章 琉球列島のミサイル戦場化 149
    地対艦・地対空ミサイルの運用 149
    対艦ミサイルを守る対空ミサイル 152
    ミサイル部隊の空自・海自との統合運用 153
    陸自教範『地対艦ミサイル連隊』では 154
    敵基地攻撃能力を有するミサイルの配備 158
    極超高速滑空弾の開発・配備 161
    中距離ミサイルの琉球列島――九州配備 165
    中距離ミサイルは核搭載か? 169
    ミサイル攻撃基地となる琉球列島 172

第6章 無用の長物と化した水陸機動団 177
    水陸機動団の編成 177
    水陸機動団の作戦運用 179
    自衛隊の水陸両用作戦とは 182
    陳腐化した水陸機動団の強襲上陸 188
    水陸機動団の装備 192
第7章 機動展開・演習拠点としての奄美大島・馬毛島の要塞化 195
    明らかになった南西シフト下の馬毛島要塞 195
    統合演習場・機動展開拠点としての馬毛島 196
    空母も寄港できる巨大港湾設備 201
    馬毛島配置人員のウソ 203
    南西シフト下の演習拠点となった種子島 204
    機動展開拠点としての馬毛島・奄美大島 206
    奄美大島・瀬戸内分屯地の巨大ミサイル弾薬庫 208
    南西シフトの軍事拠点としての馬毛島 211
    種子島―薩南諸島の演習場化 214
    臥蛇島のミサイル実弾演習場化と新島闘争 217
    「南西有事」への民間船舶の動員 223
    「統合衛生」という戦時治療態勢 226

第8章  アメリカのアジア戦略と日米安保 229
    「太平洋抑止イニシアティブ」(PDI) 229
    アメリカの西太平洋へのリバランス 232
    アメリカの「国家安全保障戦略」(NSS) 237
    「インド太平洋戦略報告」による対中国・台湾戦略の始動 240
    急激に進むアメリカの台湾への武器売却 244
    安保法制定の目的とは 246
    日本の「インド太平洋戦略」 251
    激化する対中演習と新冷戦態勢 253

結 語 アジア太平洋の軍拡競争の停止へ 257
    メディアの「台湾有事」キャンペーン 257
    日米中の経済的相互依存と戦争 259
    沖縄を再び戦争の最前線にするのか? 261
    ワシントン海軍軍縮条約による島嶼要塞化の禁止 264
    琉球列島の「非武装地域宣言」 266
    日中平和友好条約に立ち返れ 267


●本書の「結語」は「note」からhttps://note.com/makoto03/n/n34aad4e72be7

●本文は以下のアドレス https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784907127282

オンライン「島々シンポジウム―要塞化する琉球弧の今」

2021年02月09日 | 軍事・自衛隊

オンライン「島々シンポジウム―要塞化する琉球弧の今」
*第1回「宮古島・保良ミサイル弾薬庫の住民、そして市民運動の現場から!」
・日時 2021年3月7日(日) 14:00~16:00
 ZOOM ビデオウェビナーによるシンポジウム      
 (入場無料・カンパ歓迎。先着500人の事前登録制、下記メールへ申し込み。詳細は本文案内参照)


出演
下地博盛さん(「ミサイル・弾薬庫反対!住民の会」共同代表)
下地 茜さん(同住民の会・宮古島市議)
石嶺香織さん(「てぃだぬふぁ島の子の平和な未来をつくる会」)
楚南有香子さん(同)
軍事アドバイザー・小西 誠さん(軍事ジャーナリスト)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
司会・三上智恵さん(映画監督・ジャーナリスト)

(先島の自衛隊問題に早くから取り組んできたジャーナリストであり、ドキュメンタリー映画「標的の島 風かたか」を2017年に公開)

*ミサイル弾薬庫着工以来、およそ500日、座り込みを続ける保良ミサイル弾薬庫の「住民の会」共同代表・下地博盛さんらの、防衛省を相手にして、決して諦めないその行動の背景はー。

*市行政に風穴を開ける「てぃだぬふぁ 島の子の平和な未来をつくる会」の、宮古島の地下水問題、沖縄県の環境アセスへの提言、そして最近の新市長への質問状など、宮古島のママたちの平和を求める様々な取り組み

*zoomビデオウェビナーは、事前登録制です。視聴者の氏名等は表示されません。先着定員500人で〆切り(3月5日〆切り厳守)
・申し込み用 E:mail shakai@mail3.alpha-net.ne.jp

*〆切り後は、YouTubでLive視聴できます(zoomはパネラーへの質問が可能ですが、こちらは視聴のみ。後日YouTubeのURLをお知らせします)

●主催「島々シンポジウム」実行委員会
連絡先 東京都中野区大和町1-12-10 社会批評社気付
E:mail shakai@mail3.alpha-net.ne.jp

カンパ振込先  郵便振替 00160-0-161276(名義・社会批評社)(「島々基金」とお書き下さい)
*現地の運動支援のためのカンパを、ぜひともお願いします!

東アジア共同体研究所の東京シンポジウムでアジアでのミサイル軍縮を緊急提案

2020年07月04日 | 軍事・自衛隊
*日米中の、アジアでのミサイル軍拡競争を直ちに停止し、軍縮交渉へ(6/29付琉球新報報道)
 ――東アジア共同体研究所の東京シンポジウムで提案!
  日米の南西シフト態勢ー南西諸島へのミサイル配備を停止へ



*中距離核戦力全廃条約(INF)の廃棄で、東アジアは激しいミサイル軍拡競争が始まろうとしている。
 今なら、まだ止められる‼ このミサイル軍拡競争ー新冷戦体制の始まりを‼





●イージス・アショア中止と連携した、この凄まじい琉球弧のミサイル戦争の実態を、初めて追及!
 ――米海兵隊・陸軍が、「島嶼戦争」ー南西諸島へのミサイル戦争態勢をつくり出しつつある!


*軍事ジャーナリスト・小西 誠が暴く南西シフト態勢
 ―アメリカのアジア戦略と日米軍の「島嶼戦争(part6・10分)

https://youtu.be/03lPJJn0QzE

*以下のシリーズもご覧下さい!
*part1、与那国島・石垣島編
https://youtu.be/2RqdmGT-lr4

*part2、宮古島編
https://youtu.be/KzVQZZq06Lo

*part3、奄美大島・馬毛島(種子島)編
https://youtu.be/IjONW-VsnrI

*part4、沖縄本島編
https://youtu.be/0tFM_UHIhHI

*part5 水陸機動団・陸自の南西諸島動員態勢編
https://youtu.be/9y7anqhoIXE

自衛隊の中東派兵は、ジブチ基地を維持するためのリストラ対策だ!――自衛隊版「ジブチ慰安所」をいつまで維持するのか?

2020年01月26日 | 軍事・自衛隊
「戦力回復日」という特別休暇で利用される「自衛隊の慰安所」


 自衛隊の初めての海外駐留基地である、ジブチ基地が開設されてからおよそ10年。――この日本から遠く離れた自衛隊ジブチ基地の実態が、メディアなどで報道されることはほとんどない。
 陸海の自衛隊員約400人が駐留するこの基地は、ジブチ国際空港の北西地区にあり、同空港地区には、米仏軍の基地も置かれている。
 この駐留軍の位置する場所から、北へ10数キロ行ったジブチ市内の最大のリゾート地には、ジブチでもっとも高級と言われるドイツ系の「パレス・ケンピンスキー」というホテルがある。一泊4万~20万円というこのホテルには、プライベートビーチが2つあるほか、カジノまで据えつけられている。

 この超高級ホテルこそ、関係者にはよく知られている、自衛隊員の「慰安所」である。言うまでもなく、ここでは、買売春が公然と行われており、派兵部隊の幹部連ばかりだけでなく、一般隊員も利用する「慰安所」だ(事情通の証言)。
 隊員たちには、月に一度「特別休暇」が与えられ、このホテルを利用する日を、駐留部隊の隊員の間では「戦力回復日」と呼んでいる。


 問題は、この自衛隊版「慰安所」が、10年もの間、防衛省・自衛隊内で何ら問題にされることなく「運営」されていることだ。この背景にあるのは、隊員の間で昔から知られている、海外演習部隊の「慰安所」の公認である。
 知られているように、例えば陸空のミサイル部隊は、毎年交代でアメリカ本土でのミサイル実弾演習に出かける。国内では射程の長いミサイル演習場がないからだが、このアメリカの演習で隊内で上司から密かにいわれるのが、「病気をうつされないようにスキンを持って行け!」ということだ(例えば『逃げたい やめたい自衛隊』根津進司著・社会批評社刊「海外演習にはスキン必携」)。

 もちろん、これらの事実は、旧日本軍の「軍隊慰安所」の隠蔽と同様、自衛隊内でも隠されている。しかし、関係する隊員らが海外演習の実態を全て周知のように、このジブチ基地の「慰安所」問題も、世間に知られていくことは時間の問題である。
 大事なのは、旧日本軍と同じで、自衛隊が海外出動していくときに、この「慰安所」を必ず「設置」しようとすることだ。これは旧日本軍とまったく同様、自衛隊首脳は「病気対策」で行おうとしているようだが、問題はこのような旧日本軍体質の根本的な改革ではないのか。旧日本軍の性暴力問題を検証するどころか、隠蔽してきた政府・自衛隊の根本的体質がここには現れているというべきである。


 リストラ対策に他ならない自衛隊の中東派兵

 さて、この自衛隊のジブチ基地を拠点に、今年早々、海自を軸に航空・艦艇部隊が、中東ペルシャ湾周辺へ派兵されようとしている。
 ところが、メディアで語られているのは、この派兵が「調査・研究」という名の脱法行為だ、という批判だけである。もちろん、この防衛省・自衛隊のトンデモナイ「脱法行為」を許容するわけにはいかない。
 だが問題は、これら自衛隊の中東派兵が、もはや、何の意義もなくなった自衛隊ジブチ基地を維持する、「リストラ対策」であることがまったく隠されていることだ。

 別表を見てほしい。2009年の海賊対処法成立以来、自衛隊が行ってきた「海賊対処行動」は、今やほとんどなくなったに等しい。2011年に237件行われたそれは、2015年にゼロ件になり、2019年もゼロ件を記録している(アデン湾、ソマリア沖も同様に圧倒的減少)。

(2019年3月「ソマリア沖・アデン湾における海賊対処に関する関係省庁連絡会」)

 つまり、もはや、自衛隊がジブチ基地を維持する必要性が、全くなくなったということだ。

 この存在価値を完全に喪失したジブチ基地を維持するために、まさしく「リストラ対策」として、新たなジブチ基地を拠点とした中東派兵が決定された、ということである(筆者は、例えば、東京新聞・半田滋氏の「自衛隊の南西シフトは陸自のリストラ対策」という主張に真っ向から反論している。というのは、この論は、日米の対中抑止戦略下の、先島―南西諸島への自衛隊配備という大軍拡競争を徹底的に軽視し、この南西シフト態勢を許容している論に他ならないからだ)。

 言い換えると、自衛隊の中東派兵は、「アメリカの要請」という形式をとりながら、あくまで政府・自衛隊が、初めての海外駐留基地であるジブチ基地を固持するための詭弁であると言わねばならない。もちろん、この自衛隊の中東派兵が、「世界の火薬庫」になりつつある中東危機に軍事的に介入する危険な行動であることを批判しなければならない。


 安倍政権のインド太平洋戦略―砲艦外交・軍事外交政策を阻もう!

 もともと、戦後日本初の海外駐留基地であるジブチ基地は、海賊対策に名を借りた、日本の軍事外交政策の一環であった。海賊対策も、「シーレーン防衛論」も、インド太平洋戦略の口実に他ならない。
 今や、日本はアメリカとともに、インド太平洋戦略下で、アジア太平洋ばかりでなく、インド洋まで自衛隊に遊弋させている。この間のインド軍との共同演習もこの一環だ。そして、自衛隊は、オーストラリアを始めとして、インド、フランス、イギリス軍などとの、アジア太平洋ーインド洋にわたる共同演習を頻繁に繰り返している(日米ACSAに加え、ここ数年に日豪・日英・日仏・日加ACSAを締結)。

 始まっている事態は、日米の対中抑止戦略下の南西シフト態勢を突破口に、日米、とりわけ自衛隊が、東シナ海から南シナ海、そしてインド洋にまで軍事行動を広げている、軍事外交政策(砲艦外交)をとっているということだ。この日本の軍事外交政策は、繰り返すが、対中戦略を突破口に、グローバルな戦略として広がっているのである。

 自衛隊の中東派兵を阻止し、ジブチ基地を撤去せよ!

 この自衛隊のジブチ基地の設置が、初めから重大な問題を孕んでいることは、筆者もたびたび指摘してきた。この問題とは、日本政府が、ジブチ共和国との間で結んでいる地位協定が、日米地位協定よりも遥かに酷い差別的協定、植民地協定だということだ。
 知られているように、日米地位協定が、米兵の公務中の犯罪ー刑事裁判権を排除している(日本の)ことなどが、沖縄を始めとして頻繁に問題になっている。ところが、日本ージブチ地位協定では、公務中も非公務中も、全ての刑事・民事裁判権がジブチ政府は排除され、日本の一方的な司法権が行使されることになっている。つまり、自衛隊員がジブチ基地内外で、人を殺傷しようがジブチ政府には何らの裁判権もない、ということだ。
 まさしく、自衛隊は、ジブチで「治外法権」を行使していると言うべきである!
 「ジブチ共和国における日本国の自衛隊等の地位に関する日本国政府とジブチ共和国政府との間の交換公文について」
  https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/pirate/djibouti.html

 自衛隊の南西シフト態勢を突破口とする、海外派兵―軍事外交を阻もう!
 
 この自衛隊の中東派兵は、繰り返すが、自衛隊の東シナ海・南シナ海への行動の拡大の中で生じている事態である。自衛隊は、日米の対中抑止戦略―インド太平洋戦略下で、今や、アジア太平洋からインド洋にまで軍拡を広げようとしているのだ。この東シナ海を軸としたアジア太平洋での軍拡・覇権闘争という水路を抜きに、問題を見誤ってはならない。そうでない限り「本当の危機」を見失ってしまうのである。


*石垣島・宮古島のミサイル基地化、種子島ー馬毛島の要塞化!――今ならまだ、止められる、まだ、まにあう!全国から支援・連帯の声を届けよう!
 「先島―南西諸島の非武装化を求める共同声明」への賛同のお願い
(第2次〆切り、2020/1/31)
 https://ssl.form-mailer.jp/fms/d7c1aaf7649395?fbclid=IwAR0r3UjJAlGVNiuJEyjs52DfqMshYk-8IUHRnAkIiaiKQSYP6WYzJQ1-W2g

*ジブチ・メモ
ジブチ共和国の人口は、約90万人。同国の失業率は、約60%(2014年)。一人あたりのGNIは2180ドル。

*ジブチ基地の自衛官 
水上部隊は、3カ月交替。航空部隊は4カ月交替。派兵隊員は1日2千円の「特殊勤務手当」のほか、護衛艦乗組員は俸給の33%の乗務手当のほか、航海手当等が加算される。航空機乗員は1日7700円の航空機手当等が加算される。 

「先島―南西諸島の軍事化・要塞化に抗し、同地域の非武装化を求める共同声明」のご賛同のお願い

2019年12月03日 | 軍事・自衛隊

 「先島―南西諸島の軍事化・要塞化に抗し、同地域の非武装化を求める共同声明」のご賛同のお願い
――私たち「本土」の市民は、先島―南西諸島のミサイル基地化を、自分たちの生存に関わる問題として捉え、ともにこの地域の軍事化を阻む、重大なときにあります!



 現在、石垣島・宮古島を始め、先島―南西諸島の基地化=軍事化が、急ピッチで進行しています。
 2016年与那国島には、陸自沿岸監視隊が開設、続いて2019年3月宮古島駐屯地、奄美大島駐屯地・奄美瀬戸内分屯地が開設。また今年3月石垣島では、駐屯地の造成工事が始まり、さらに種子島―馬毛島では、日米共同基地化の動きが強まっています。
 特に、この3月石垣島駐屯地着工、10月宮古島・保良ミサイル弾薬庫着工は、いよいよこの地域のミサイル基地建設=琉球弧ミサイル要塞化への、重大な段階がきていることを現しています。

 しかし、この厳しい局面の中でも石垣島では、多くの人々の住民投票を求める運動とそれを拒否する市当局に対する裁判が始まり、宮古島ではミサイル弾薬庫建設を阻む地域住民の抵抗が連日、工事現場で行われています。


 これら先島―南西諸島へのミサイル部隊配備―ミサイル戦場化の動きは、メディアの報道自粛の中で、全国の市民に事実自体が伝わっていません。そして、政府・自衛隊は、それを奇貨として、先島・奄美・種子島だけでなく、沖縄島への地対艦ミサイル部隊配備、陸海空自衛隊の増強を一段と進めています。しかも自衛隊は、2025年までに、現在の南西諸島への対艦・対空ミサイル部隊配備に加え、「島嶼防衛用高速滑空弾部隊・2個高速滑空弾大隊」の南西諸島配備も決定しています(2018年防衛計画大綱)。南西諸島を「ミサイル戦争の実験場」にしようとしているのです。

 辺野古新基地の建設と沖縄全島の「日米共同基地化」も、その一環です。昨年暴露された2012年統合幕僚監部の「動的防衛協力」においては、全沖縄米軍基地の日米共同使用が実際に計画されていることが明らかになりました。
 私たちは、このような辺野古新基地を阻む世論の広がりとともに、現在、凄まじい勢いで進行する自衛隊の先島―南西諸島配備を阻む、大きな世論が求められていると思います。

 2018年『琉球新報』のインタビューで岩屋防衛大臣(当時)は、「南西諸島は日本防衛の最前線」と言明(2018/11/11)。まさしく政府・自衛隊は、10万人以上の先島住民の犠牲の上に、再び沖縄―南西諸島を戦場とする「対中国の島嶼戦争=海峡戦争」を構えているのです。宮古島・保良、石垣島・平得大俣で建設予定の、破壊力の凄まじいミサイル弾薬庫建設こそ、この住民の命を軽んずる日本軍以来の軍隊の横暴に他なりません(両地域とも住宅地の約200㍍にミサイル弾薬庫設置)

 沖縄は、かつて非武装の島でした。1944年日本軍の沖縄上陸以前、軍事基地はもとより一兵たりとも軍隊は存在しません。与那国・石垣は、戦後完全に「非武の島」。自衛隊は、今この地域を「防衛の空白地帯」とし軍事化を進めようとしますが、戦後74年間非武装の島に、軍隊は必要ありません。
 この沖縄(奄美)の再戦場化という凄まじい事態に、私たち「本土」の市民は、自分たちの生存に関わる問題として捉え、ともにこの地域の軍事化を阻む世論を創りだすべきだと思います。
 どうぞ、先島―南西諸島の人々の平和を求める声に応える、全国の良識ある人々への「非武装を求める共同声明」へのご賛同をお願い致します。
                                                      2019年12月1日

発起人(敬称略)
蟻塚亮二(精神科医)、石川逸子(詩人)、岩崎眞美子(フリーランスライター)、植松青児(雑誌編集者)、石原真樹(ジャーナリスト)、大内要三(ジャーナリスト)、大竹秀子(Stand With Okinawa NYコーディネイター)、川口真由美(シンガーソングライター)、木村紅美(作家)、栗原佳子(ジャーナリスト)、小西 誠(軍事ジャーナリスト)、坂手洋二(劇作家・演出家)、坂内宗男(キリスト者政治連盟委員長)、家)、阪上 武(沖縄と千葉を結ぶ会)、佐藤 泉(青山学院大学教員)、新藤健一(フォトジャーナリスト)、丹下紘希(人間/映像作家)、出口綾子(編集者)、DELI(松戸市議会議員・ラッパー)、豊島耕一(佐賀大学名誉教授)、富田英司(「静岡▪沖縄を語る会」共同代表)、辻村千尋(自然保護アナリスト)、永田浩三(ジャーナリスト)、中川 敬(ソウル・フラワー・ユニオン)、浜野佐知(映画監督)、彦坂諦(無銘作家)、福島みずほ(参議院議員)、増田都子(元社会科教師)、増田 薫(松戸市議会議員)、森 正孝(戦争をさせない1000人委員会静岡・共同代表)、森口 豁(フリージャーナリスト)、森口ゆうな(高江の森を守り隊)、よしむらしゅういち(自営業)

*事務連絡先 東京都中野区大和町1-12-10 小西誠気付・090-6000-6952 FAX03-3310-6561  shakai@mail3.alpha-net.ne.jp

*ご賛同はファクスか、電子メール、郵送でお送り下さい。

●私は「先島―南西諸島の軍事化・要塞化に抗し、同地域の非武装化を求める共同声明」に賛同します。

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