今、自衛隊の在り方を問う!

急ピッチで進行する南西シフト態勢、巡航ミサイルなどの導入、際限なく拡大する軍事費、そして、隊内で吹き荒れるパワハラ……

日米首脳の「改修予定空母・かが」艦上の閲兵は、何を意味するのか――日米空母艦隊による対中国・共同作戦の宣言

2019年05月29日 | 政治・沖縄・日米共同作戦
 トランプと安倍の「改修空母・かが」(予定)艦上での閲兵の意味

 
(トランプと安倍が閲兵した「かが」)

 昨日のトランプー安倍の、海自「改修空母・かが」艦上での閲兵式について、マスコミでは「日米同盟の連携強化だ」とする報道がなされている。しかし、この改修空母予定の「かが」艦上での海自隊員と米兵への閲兵は、単なる「連携の儀式」ではない。本日の読売新聞が報じるように、中国軍への威嚇であり、いずも型改修空母が完成する2022年には、日米空母艦隊が東シナ海・南シナ海で、制海権ーシー・コントロールを絶対的に確保するという宣言とみなければならない。
 
 実際に、トランプは「かが」で閲兵を行ったあと、わざわざ佐世保所属の、米海軍強襲揚陸艦「ワスプ」を横須賀まで寄港させ、その艦上で「日米連携の重要性」を演説したのだ。これについて防衛省幹部は、「F35Bの導入といずも型の改修で、運用の幅が広がり、日米の共同対処能力が高まる」(5/29付読売)と言明している。

(トランプが「かが」に続き閲兵した強襲揚陸艦ワスプ)

 予定される海自「改修空母・かが」などと米強襲揚陸艦の西太平洋での共同作戦

 トランプー安倍が、わざわざ横須賀まで出向き、かがとワスプに乗艦・閲兵したことには、重大な意味がある。これは、直接には、海自隊員(全自衛隊員)及び米軍兵士に対する、対中国の「空母艦隊による共同作戦」の任務宣誓であり、同時に、中国への公然たる威嚇ー海軍軍拡競争の宣言であり、東シナ海・南シナ海の「覇権絶対護持」の宣言なのだ。

 「小型空母」として、F35B搭載・強襲揚陸艦ワスプの配備

 周知のように、佐世保に配備された米強襲揚陸艦ワスプは、海兵隊の上陸作戦を支援する任務と同時に、いやそれ以上に、STOVL機の運用能力が強化され、「空母」としての作戦態勢に投入されつつある(シー・コントロール(制海権)への投入。2017年の海兵隊航空計画(2017 Marine Aviation Plan))。いずも型と同様、全通甲板をもつワスプは、既にF35Bを搭載し、西太平洋での任務に就いている。アフガン・イラク戦争敗勢下の軍事費削減要求の強まりの中で、「300隻艦艇」体制に縮小された米海軍は、アジアへのリバランスの中で(その6割を西太平洋に配備)、空母機動部隊と一体化した「強襲揚陸艦の空母化」ー空母機動部隊の増強に乗り出しつつある、ということだ。

(「いずも型護衛艦STOVL機の運用について」2018年12月、防衛省)

 問題は、海自のいずも型の改修空母化の決定が、もともとこの米強襲揚陸艦との、共同運用ー共同作戦が想定されているということだ。つまり、米軍の1個空母機動部隊が約1兆5千億円という巨大軍費が必要とされる中、強襲揚陸艦の空母化は、数千億円に満たない、安上がりの空母部隊増強策として、運用が決定されているということだ。その米空母機動部隊の一翼に自衛隊が組み込まれたのだ。

 中国軍の弾道ミサイル、潜水艦搭載巡航ミサイルからの標的の分散化

 この強襲揚陸艦の空母化ーいずも型改修空母との共同運用態勢は、日米軍事筋の間では、対中「島嶼戦争」ー東・南シナ海をめぐる第1列島線=琉球列島弧での、シー・コントロール(制海権)の戦いの一環として戦略的に位置付けられている。つまり、東シナ海をめぐる「島嶼戦争」において、中国の弾道ミサイル・巡航ミサイルの飽和攻撃への対処において、一旦、グアム以東に撤退する予定の米空母機動艦隊は、「戦闘初期」において中国軍ミサイルの激しい波状攻撃に晒されるわけだが、そのミサイル標的の「分散化」が、いずも型改修空母や米強襲揚陸艦の任務というわけだ。

(2012年統合幕僚監部「日米の『動的防衛協力』について」)
 
 東・南シナ海をめぐるシームレスな戦争の危機

 現在、この海自のいずも型護衛艦が、陸自・水陸機動団を乗船させて、南シナ海に遊弋(第31海兵遠征部隊MEUの真似事)しているという事実があるが、先日、読売新聞が報じたように、この水陸機動団と海自のいずも型改修空母の、常時の東・南シナ海の遊弋、つまり、中国軍への威嚇・砲艦外交が具体的に計画されている。
 2017年米政権「国家安全保障戦略」(NSS)」、2018年米国防省「国家防衛戦略(NDS)」において、「対中抑止戦略」を決定したアメリカは、ついに、日本政府・自衛隊を米軍の対中抑止戦略=新冷戦(「Warm War」)に巻き込みつつ、凄まじい軍拡競争に乗り出し始めている。
 この軍拡競争は、絶えず、日米中の一触触発の危機を孕んだ情勢にあり、深刻な事態が東・南シナ海で生じようとしている(昨年9月、米巡洋艦と中国海軍の42㍍の衝突寸前の事態発生)。

 いずも型の改修空母建造に反対の声を! 先島―南西諸島への自衛隊配備ー軍拡競争停止を要求しよう!

 マスメディアは、安倍ートランプの「接待外交」なる茶番劇を垂れ流すだけで、この急ピッチで進行する日米の軍事態勢の危機的状況をほとんど報じない。いわんや、自衛隊の先島―南西諸島、とりわけその最大の南西シフト態勢の機動展開拠点として建設されつつある、奄美大島の巨大基地、馬毛島(種子島)の軍事化(南西シフト態勢の兵站拠点等)を全くと言っていいほど報じない。ここでは、朝日新聞・東京新聞はおろか、読売・産経さえ、報道規制・統制がなされているのだ。
 この重大なジャーナリズムの現在的崩壊に、警鐘乱打しなければならない。

 
 いや、それ以上に恐るべきは、この先島―南西諸島への自衛隊配備ー「島嶼戦争」の危機に対して、未だに沈黙し続ける日本の「識者」ら、「文化人」ら、政党だ。おそらく、この基地建設の事実を知らずして、沈黙している「識者」らもいるかも知れない。しかし、マスメディアが報じないから「知らない」というのは、許されることではない。「新聞はベタ記事に真実がある」というのは、ジョウシキだ。奄美大島の基地建設については、「ベタ記事」さえない状況だが、それにしても、このSNSが普及している中、努力して情報が入らないわけがない。

 *いずも型改修空母の建造・配備に反対の声を! 先島―南西諸島への自衛隊配備、とりわけ、石垣島への基地着工反対、宮古島の保良弾薬庫建設反対、馬毛島(種子島)の軍事化反対、そして、沖縄本島への地対艦ミサイル部隊配備反対の声を! これらの声を全国へ広げよう!


沖縄島に配備されようとしている、南西シフト態勢下の地対艦ミサイル部隊――琉球列島弧でのミサイル戦争を阻むために!

2019年05月21日 | 自衛隊南西シフト
 沖縄島に配備される地対艦ミサイル部隊


 まず、沖縄島における陸自地対艦ミサイル配備の報道から見てみよう。
 2018年2月27日付朝日新聞、同月28日付の琉球新報は、おおよそ以下のように報じている。
 「沖縄本島に地対艦ミサイル部隊配備検討 中国牽制を強化 沖縄本島と宮古島の間の宮古海峡を中国海軍の艦艇が航行するのが常態化していることから、政府は地対艦誘導弾(SSM)の部隊を沖縄本島に配備する方向で本格的な検討に入った。すでに宮古島への部隊配備は決まっており、海峡の両側から中国軍を強く牽制する狙いがある。
 複数の政府関係者が明らかにした。国家安全保障局や防衛省内で部隊の編成規模などの検討を進め、今年末までに策定される新たな防衛計画の大綱や中期防衛力整備計画(中期防)に盛り込む方向だ。」(朝日新聞)
 
 琉球新報も、ほぼ同内容の記事だ(上写真)。この報道以後の昨年12月、新中期防策定で沖縄島でのミサイル部隊配備は決定された。新中期防では、新たに地対艦ミサイル部隊の3個中隊を新編成すると明記しており、この3個中隊が、宮古島・石垣島とともに沖縄島へ配備されるミサイル中隊であるということだ。

 防衛省は、すでに宮古島にミサイル部隊司令部を置く、としていることから、沖縄島のミサイル部隊も、この1個中隊を構成するものといえる。ただ、地対艦ミサイル連隊の基本編成は、4個中隊で編成されることから、奄美に編成された地対艦ミサイル部隊が、この沖縄島・宮古島のミサイル部隊と同一連隊に編成されるのかは、明らかではない。

 「島嶼防衛用高速滑空弾部隊・2個高速滑空弾大隊」は沖縄島ー宮古島配備か?

 問題は、沖縄島における地対艦ミサイル部隊の配備が、この12式地対艦ミサイルに留まらないことだ。すでに、新防衛大綱・新中期防においては、「島嶼防衛用高速滑空弾部隊・2個高速滑空弾大隊」の編成を決定しており、この部隊の配備先が、沖縄島ー宮古島になる可能性が大である。
 いわゆる「島嶼戦争」下の琉球列島弧=第1列島線の通峡阻止作戦(海峡封鎖)において、宮古海峡が重要なチョークポイントになることは明らかだが、この宮古海峡の両岸には、高速滑空弾大隊が配置が予測される(早期装備型のブロック1は、2025年度を目途に実用化、性能向上型のブロック2は2028年度までに実用化される)。


 沖縄島などへのミサイル部隊の配備は、これだけには留まらない。次から次へと新たなミサイル部隊が、開発・配備されようとしている。図は、すでに防衛省が予定している巡航ミサイルだ。


 これには、米軍の「AGM-158C LRASM」(射程370~926㎞)、スエーデンの「RBS-15Mk.3」、ロシア/インドの共同 開発による「BrahMos」を提案候補にされている。いずれにしても、自衛隊にとっては、初めての巡航ミサイル導入であり、これらの巡航ミサイルは、島嶼間のミサイル戦だけでなく、中国大陸の沿岸も射程内に入ることになる。


 そして、陸自の地対空ミサイルに加えて、空自もまた、スタンド・オフ・ミサイルの導入配備をすでに決定している。この戦闘機から発射されるミサイルは、千㎞前後の射程を持ち、文字通り、沖縄島から中国大陸に向けて発射が可能であり、大陸が射程内に入るのだ。

 ミサイル戦の戦場と化する沖縄島ー琉球列島弧

 沖縄島での地対艦ミサイル配備に始まり、高速滑空弾部隊配備(極高速滑空弾の開発も!)、巡航ミサイル部隊配備と、今まさに、先島―南西諸島ー沖縄島が、ミサイル戦の戦場とされつつある。
 この凄まじい実態が、沖縄島の人々にどの程度知られているだろうか? あるいは、このミサイル戦場と化しつつある「現実」が、どの程度のリアリティをもって伝わっているだろうか?

 残念ながら、南西シフト態勢下の、「島嶼戦争」=海洋限定戦争の実態、琉球列島弧=第1列島線をめぐる海峡戦争=通峡阻止作戦の実態が、伝わっている、知られているとは言えない。2018年の米政権「国家安全保障戦略」(NSS)」などの「対中ソ競争戦略」の発動、つまり、新冷戦の宣言以来、米中・日中の軍拡競争が激化していることは、知られている。だが、今始まっているのは、新冷戦下(「Warm War」ともいう)の軍拡競争とともに、「平時から有事へとシームレス」(防衛白書にいう)に進行していく戦争の危機なのだ。


 言い換えると、琉球列島弧=東シナ海の内側へ、中国船舶・軍艦を、いつでも封じ込める、中国の世界貿易・経済を封鎖する態勢づくりが進みつつあるということだ。これを天皇制国家・旧日本軍は「砲艦外交」と称していたが、まさしく軍事力を背景とした力の外交政策なのだ(空母配備は、その砲艦外交の道具。例えば米空母の朝鮮半島近くへの遊弋は、軍事的圧力の行使。また、先の国会で、日米豪英のACSA締結に続き、仏加のACSAが成立し、安倍・トランプのインド太平洋戦略が発動されつつあることも注意)。

 沖縄島ー先島―南西諸島の戦場化に抗す!

 昨年秋、岩屋防衛大臣は、琉球新報にインタビューにおいて「南西諸島は日本防衛の最前線だ」と宣言した。この岩屋の言動を認めてはならない。これを許容してはならない。岩屋は、再び沖縄ー南西諸島を戦場化することを宣言したのだ。沖縄の人々を盾にして「本土防衛」することを宣言し実現しようとしているのだ。

 日米軍、特に自衛隊の予定する「島嶼戦争」は、文字通り先島―南西諸島の「海洋限定戦争」(第1列島線封鎖態勢)として想定されている。つまり、沖縄ー南西諸島ですさまじいミサイル戦争ー機雷戦→海上・航空戦を予定しているということだ。この「島嶼戦争」においては、島々はまさしく一木一草も生えない土地となるだろう。
 そしてまた、一旦開始された戦争が限定されるということはない。この戦争は、不可避的に西太平洋での「通常型大戦」にまで、少なくとも発展する(制服組官僚どもは「島嶼限定戦争」を夢想するが、一旦始まった戦争は「自己運動」し暴走する)。
今進行している事態は、このような重大な危機の始まりなのだ。

 この危機的事態を止めるためにこそ、沖縄島でのミサイル部隊配備を食い止め、宮古島を初めとする先島でのミサイル部隊配備を食い止めねばならないのだ。