今、自衛隊の在り方を問う!

急ピッチで進行する南西シフト態勢、巡航ミサイルなどの導入、際限なく拡大する軍事費、そして、隊内で吹き荒れるパワハラ……

●本日発売!「週刊金曜日」は、日本国憲法の特集!―反戦自衛官・小西誠氏に聞く 「自衛隊の憲法明記」で兵士と市民の殺し合い=市街戦を隊員にさせるのか!?

2022年04月29日 | 軍事・自衛隊

●本日発売!「週刊金曜日」は、日本国憲法の特集!
―反戦自衛官・小西誠氏に聞く 「自衛隊の憲法明記」で兵士と市民の殺し合い=市街戦を隊員にさせるのか!?


●特集では、ウクライナ戦争と憲法――「正義の戦争の是非」、「無防備都市宣言」、「日米の南西シフト」、そして「自衛官の人権」などなど……紙面6頁のインタビューをしていただきました(うち3頁を掲載、ぜひ同紙購読をお願い!

●反戦自衛官・小西誠氏に聞く
「自衛隊の憲法明記」で兵士と市民の殺し合い=市街戦を隊員にさせるのか!?

――聞き手・本田雅和(同紙編集部)

ウクライナ戦争を機に、自民党などの改憲勢力は改憲議論を一気に進めようとしている。そもそも他国の侵攻に対する「正義の戦争」とは何なのか。それがもたらすものは――。


以下略(残り3頁)
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自衛隊の対テロ作戦――治安出動態勢の歴史と現在その1

2022年04月01日 | 自衛隊一般

はじめに

 私は、一九六九年一一月、自衛隊の治安出動訓練に反対し、訓練を拒否したとして逮捕され、懲戒免職処分を受けた。当時私は、航空自衛隊佐渡分屯基地に所属する三等空曹であった。
 自衛隊ではこの年、「七〇年安保対策」ということでマスコミに公開された治安出動訓練が全国で大々的に開始された。だが、「国民を守る」ために自衛隊に入隊していた私にとっては、この治安出動訓練という「銃口を国民に向ける」訓練は到底許容できるものではなかった。

 したがって私は、その直前から始まっていた同分屯基地での治安出動訓練に反対し、庁舎内外のいたる所に、「治安訓練反対」などのチラシを貼り、そして訓練の初日、全隊員の目前で訓練を拒否した。
 この私の行動は、「政府の活動能率を低下させる怠業および怠業的行為をせん動した」として自衛隊法第六四条違反で起訴されることになった。その後、新潟地裁の一審無罪判決、東京高裁の差し戻し判決、さらに差し戻し後の新潟地裁での再度の無罪判決により、一九八一年、判決は確定した。無罪確定の理由は、「小西の行為は表現の自由の枠内の行為である」というものであった。

 この私の行動を含めて、自衛隊の内外からの批判にあった治安出動訓練は、七〇年直後、一旦中止されることになった。だが今や、この治安出動訓練がおよそ三〇年ぶりに公然と復活し始めている。「対テロ・ゲリラ対策」を口実にである。

 とりわけ、昨年の九・一一事件後の現在、全国の自衛隊が治安出動態勢に突入していることは重大な事態である。が、問題はマスコミのこの状況への「無関心」もあってか、ほとんどの国民に知らされていないことである。
 こうして本書では、いま始まっている自衛隊の治安出動態勢の現段階を分析・解説することに主眼を置いた。資料として収録した自衛隊の治安出動関係(対テロ関係)の未公開文書の一部は、私の刑事裁判における裁判所の「提出命令」により出されたものだが、大半は情報公開法に基づいて請求し、提出されたものである。
 情報公開法に基づく提出文書は、特に「極秘」や「秘」の文書は、ところどころスミで黒く塗りつぶされている(資料には「スミ消し」としてゴシックで表記)。これ自体は非常に不当なものだが、概要をつかんでもらうために全文を掲載することにした。
                          二〇〇一年三月五日
                           小西 誠


はじめに 2
第1章 始動する自衛隊の治安出動態勢 9
  外へ戦時派兵、内に治安出動態勢 9
  在日米軍などを警備する警護出動の新設 11
  「過激派ゲリラ」も対象 15
  治安出動下令前の情報収集活動の新設 20
  四六年ぶりの治安協定の改定 23
  治安の主導権を巡る自衛隊と警察の対立 27
  「不審船」事件と海上自衛隊の権限拡大 30
  領域警備という新任務 34
  政府の対テロ作戦 38

第2章 対テロ作戦に編成される自衛隊 41
  対テロ・ゲリラ戦演習 41
  新中期防衛力整備計画の対ゲリラ戦編成 44
  初めての特殊部隊編成 47
  対テロ作戦を担う旅団の編成 49
  治安出動応招義務をもつ即応予備自衛官 51
  学生の招集を予定する予備自衛官補 54
  予備自衛官制度について 56

第3章「テロ脅威論」下に主任務を転換する自衛隊 58
  新防衛計画の大綱下での対テロ戦略 58
  LICと地域紛争対処 62
  九・一一事件と「二一世紀型の新戦争」論 65
  今なぜ「有事立法」か? 67
  テロ対策特別措置法と防衛秘密 70
  テロを戦争で根絶できるのか 72

第4章「戦死」の時代を迎えた自衛隊員たち 76
  「戦死」を強制する小泉首相 76
  良心的兵役・軍務拒否の歴史的流れ 78
  小泉の靖国公式参拝と自衛隊員 80
  インターネット時代の「兵営」の熔解 84

●資料 自衛隊の対テロ作戦関係未公開文書 87
 第1節 政府・自衛隊のテロ対策関連文書 88
  第1 テロ対策特別措置法全文 88
  第2 テロ対策特措法に基づく対応措置の実施及び対応措置
                  に関する基本計画について 104
  第3 大規模テロ等のおそれがある場合の政府の対処について 115
  第4 国内テロ対策等における重点推進事項
        (法令整備・予算措置関連)の推進状況について 118
  第5 NBCテロ対策の推進について 124
  第6 NBCテロその他大量殺傷型テロへの対処について 127

 第2節 自衛隊の警護出動・海上警備行動 142
  第1 自衛隊法の一部を改正する法律全文 142
  第2 自衛隊の警護出動に関する訓令 153
  第3 自衛隊の警護出動に関する訓令の運用について(通達) 162
  第4 我が国周辺を航行する不審船への対処について 165
 
 第3節 治安出動に関する自衛隊と警察の各協定 167
  第1 治安出動の際における治安の維持に関する協定(新協定) 167
  第2 治安出動の際における治安の維持に関する協会(旧協定) 171
  第3 治安出動の際における治安の維持に関する細部協定 174
  第4 治安出動の際における自衛隊と警察との通信の協力に関する細部協定 178
  第5 治安出動の際における自衛隊と警察との通信の協力に関する実施細目協定 182
  第6 警察に対する物品等の支援要領 188
 第4節 治安出動に関する訓令・通達 194
  第1 「自衛隊の治安出動に関する訓令の一部を改正する訓令」について 194
  第2 自衛隊の治安出動に関する訓令の一部を改正する訓令 196
  第3 自衛隊の治安出動に関する訓令(旧訓令) 198
  第4 自衛隊の治安出動に関する訓令改正要綱(旧) 218
  第5 陸上自衛隊の治安出動準備に関する内訓 224
  第6 陸上自衛隊の治安出動の計画準備に関する内訓の一部を改正する内訓 227
  第7 西部方面隊の治安出動に関する達 229
  第8 治安出動準備支援計画に関する旭川駐屯地業務隊一般命令 242
  第9 「陸上自衛隊第七師団と航空自衛隊北部航空警戒管制団との
               治安出動に関する協定」の送付について(通知) 243

 第5節 治安出動態勢と即応予備自衛官 247
  第1 即応予備自衛官の任免、服務、服装等に関する訓令 247
  第2 即応予備自衛官招集手続に関する訓令 258




第1章 始動する自衛隊の治安出動態勢


  外へ戦時派兵、内に治安出動態勢

 そう、パニックの「演出」と呼んでいいだろう。
 昨年の九月一一日、ニューヨークの世界貿易センタービルとペンタゴンへの航空機によるテロ事件(以下「九・一一事件」という)の勃発以後の出来事を、である。
 テロ事件の直接の被害者であるアメリカはまだしも、日本政府のこのテロ後への「煽り」についてである。この「煽り」では、沖縄への修学旅行の大半が「父母の要望」ということから中止になったのを始め、海外旅行などの「国民的自粛」が今なお続いている。
 「演出」は、警察と自衛隊の対テロ厳戒態勢とともに始められた。九・一一事件以後、警察は、「国内での報復テロの可能性を想定」し、在日米軍基地、民間空港、原子力発電所(以下「原発」という)などの所在する沖縄、長崎、福井、青森など二八都道府県の約五八〇カ所を「重点警備対象」に指定し、機動隊約四二〇〇人で警戒態勢に突入した。

 この警察機動隊とともに、自衛隊もまた、自衛隊の基地・施設だけでなく日米共同基地・施設を重点に警戒態勢に突入した。自衛隊は、とりわけ秋期の年度行事である入間・百里・浜松基地などの航空祭だけでなく、自衛隊記念日の観閲式典や各基地・駐屯地の開庁祭まで中止した。そればかりではない。年度の重要な訓練である航空総隊総合演習も中止し、警戒態勢をとっている。唯一自衛隊が行っている訓練といえば、日米共同訓練のみだ。そして二〇〇二年二月の今なお、この警察と自衛隊の長期の厳戒態勢は続いている。
 このパニック的厳戒態勢は、政府の「演出」であり、「煽り」だということは、後ほど実証しよう。一応、結論を先に述べておくなら「ソ連脅威論」から「テロ脅威論」への煽り、つまり、米・ブッシュ政権の言うところの「二一世紀型の新しい戦争」という「対テロ戦争」の捏造だということだ。

 ところで、この「演出効果」もあって、日本ではわずか三週間の国会審議でテロ対策特別措置法が成立し、そしてその成立のおよそ一カ月後には、自衛隊の海外出動が始まった。
 海上自衛隊の護衛艦三隻・輸送艦二隻、航空自衛隊のC―130六機、人員約一二〇〇人という自衛隊始まって以来の戦時下の中東派兵は、アメリカのアフガン戦争支援というだけでなく、今後の自衛隊の本格的海外派兵への道を開くことになるだろう。
 そして、テロ対策特別措置法に便乗し、まったく何らの国会審議も議論もなしに、自衛隊の警護出動・情報収集活動などの治安出動(領域警備)・防衛秘密関連の自衛隊法改定案が国会で成立した。まさに火事場泥棒と言った方がふさわしい。

 さて、この治安出動(領域警備)関連法の成立によって、今まさに自衛隊が戦後始まって以来の治安出動態勢に突入していることを、国民のほとんどは知らされていない。いや、知らされていないというのは、新聞などのマスコミのほとんどが事の重大性について詳しく報じようとしないからだ。九・一一事件以後の現在、「外へは戦時下の派兵」「内には治安出動態勢」という情勢下にあるのだ。
 本論で私がもっとも検証したいのは、この自衛隊の治安出動態勢の現段階である。

  在日米軍などを警備する警護出動の新設

 自衛隊に警護出動などの新任務を新設した改定自衛隊法は、昨年一〇月二九日に成立し、一一月二日に公布、即日施行された。この自衛隊の警護出動とは何か。まずはその改定された自衛隊法の主要な条文から検討してみよう。
 改定自衛隊法は、「第八一条の次に次の一条を加える」として、「自衛隊の施設等の警護出動」を「第八一条の二」に規定する。

 「内閣総理大臣は、本邦内にある次に掲げる施設又は施設及び区域において、政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要し、又は社会に不安若しくは恐怖を与える目的で多数の人を殺傷し、又は重要な施設その他の物を破壊する行為が行われるおそれがあり、かつ、その被害を防止するため特別の必要があると認める場合には、当該施設又は施設及び区域の警護のため部隊等の出動を命じることができる」
 ここでいう「施設又は施設及び区域」とは、同条では第一号で「自衛隊の施設」、また第二号では日米安保条約第六条ならびに日米地位協定でいう「施設及び区域」をいう。

 この自衛隊の警護出動のための武器の使用については、「第九一条の二」を新設し、警察官職務執行法第七条の準用のほか、「その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器が使用できる」とする。
 さて、まず自衛隊の警護出動の防衛対象は何かということだ。ここでは第一に「自衛隊の施設」があげられている。これは従来、自衛隊の施設一般の警備は警察の仕事であったということだ。自衛隊施設の警備が警察の仕事であったというのは不思議な気もするが、その理由は後述しよう。そして自衛隊の警護出動の対象の第二は、在日米軍の「施設及び区域」であるということだ。
 当初、自衛隊の警護出動の防衛対象は、在日米軍ばかりか皇居、首相官邸、国会、原発、水源地(ダム)なども含まれていたものを公安委員会・警察の反対でこの二つに限定したというものだ。これも後述しよう。
 問題は、この在日米軍の「施設及び区域」とは、どの範囲を指すのかということだ。これは在日米軍の横田基地などの航空施設については、ある程度の限定性は考えられるが、在日米軍の横須賀や佐世保などの港湾の「区域」については、ほとんど限定されていない。

 例えば、長崎新聞(二〇〇一年一〇月三〇日付)は、「佐世保港では日米地位協定で立ち入りを禁止したA制限水域(八%)を提供」しているが、自衛隊の警護出動が「佐世保港の大部分を想定」し、この提供水域以外にも「警護対象の米軍水域にあたる」とする海上自衛隊に疑問を投げかけている。
 自衛隊の警護出動は、陸上自衛隊だけの任務ではない。『警護出動に関する訓令』(二〇〇一年一一月二日施行)によると、その第三条で陸海空の任務分担が定められている。これによると、「海上自衛隊は、警護出動に際しては、海上自衛隊の施設の警護を行うとともに、主として海において施設及び区域の警護を行うことを任務とする」という。つまり、長崎新聞が指摘する佐世保港の水域は、海上自衛隊の護衛艦などが警護するというわけだ。
 こういう意味では、長崎新聞の疑問はまったく妥当といえる。改定自衛隊法でも「警護出動時の権限」のところで「その必要な限度において、当該施設又は施設及び区域の外部においても行使することができる」と規定している。つまり、自衛隊の警護出動の対象となる「施設及び区域」とは、その施設の外部にまでおよび、また、区域の範囲も相当の広がりを意味するのである。

 これについては、防衛事務次官から陸海空幕僚長・統合幕僚会議議長に宛てた『自衛隊の警護出動に関する訓令の運用について(通達)』も、次のように述べている。
 「『施設及び区域』が建造物、工作物等の物的な施設又は設備のみならずそれらの所在する土地等を含む区域全体を指すものであることから、それらの施設等に所在する施設若しくは設備その他の物又は人とを含めて、その区域全体として施設等の警護を行うことである」
 先に述べた、自衛隊施設の警備を警護出動条項の新設以前は警察の仕事としていたのも、「施設の警護」というものが、その施設の「外部の警備」まで及ぶという現実からであろう。
 

 「過激派ゲリラ」も対象

 さて私は、この自衛隊の警護出動の対象は、記述の都合上、今まで九・一一事件などのテロや外国から侵入したゲリラなどを想定して述べてきた。すでに引用した改定自衛隊法も「政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要」「多数の人を殺傷」「重要な施設その他の物を破壊」と規定しており、一見すると外国からのテロ・ゲリラだけが相手であるかのように規定している。

 しかし、同法は「外国から」という限定性がないように、国内のテロ・ゲリラも対象としている。これはオウム事件などのテロだけではない。「過激派」のテロ・ゲリラもその対象だ。後述する『自衛隊の治安出動に関する訓令の一部を改正する訓令』(二〇〇〇年一二月四日)もこれを示している。
 ところで、もうひとつの問題は、この自衛隊の警護出動は防衛出動や治安出動のような「有事」下の出動なのか、それとも「平時」下の出動なのかということだ。

 陸上自衛隊などは、この警護出動を「警察予備隊以来の悲願」として、航空自衛隊の「領空侵犯に対する措置」や海上自衛隊の「海上警備行動」と並ぶ「平時」の出動だというようである。
 だが、自衛隊法の規定を見ると、第七八条の「命令による治安出動」、第七九条の「治安出動待機命令」の後の第八一条の「要請による治安出動」の後に「自衛隊の施設等の警護出動」(第八一条二)は追加されている。つまり、この規定は「要請による治安出動」の範疇内の治安出動規定として受け取ることができる。

 実際、改定自衛隊法の警護出動条項には、「内閣総理大臣は、前項の規定により部隊等の出動を命じる場合には、あらかじめ、関係都道府県知事の意見を聴くとともに」として、知事などの意見聴取が義務づけられている。ここでは、すでに述べた自衛隊法第八一条の「要請による治安出動」が、知事等を要請主体として治安出動が行われるのに対して、知事等の「意見を聴く」だけにとどまっている。

 そして、この「警護出動時の権限」もすでに述べたように、自衛隊法の「治安出動時の権限」以下の第八九条、第九〇条の後の第九一条の二として追加されており、武器使用の規定も「その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器を使用することができる」。つまり、警護出動下の部隊は、治安出動と同様の武器の使用が規定されているのである。

 この治安出動時と同等の武器使用権限は、自衛隊の警護出動というのが治安出動の一環であることを意味する。が、これは後述する領域警備(平時から「非常時」を含む概念)という新任務の中で打ち出されたものである。
 これを裏付けるのが、今回改定された「平時」の自衛隊基地の警備との関係だ。従来の自衛隊法第九五条では、「自衛官は、自衛隊の……人又は武器、弾薬、火薬、船舶、航空機、車両、有線電気通信設備、無線設備若しくは液体燃料を防護する」ためには、「その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器を使用することができる。ただし、刑法第三六条又は第三七条に該当する場合のほか、人に危害を加えてはならない」としている。
 ところが、今回改定された自衛隊法では、この警備対象に「無線設備若しくは液体燃料を保管し、収容し若しくは整備するための施設設備」「営舎又は港湾若しくは飛行場に係る施設設備」を加え、一段と拡大している(第九五条の二「自衛隊の施設の警護のための武器の使用」)。

 問題は、ここでいう「平時」の自衛隊施設等の警備と警護出動下の警備とは、どこが異なるのか、ということだ。自衛隊施設の警備に限定していえば何ら変わらないと言えるが、重要なのはその武器の使用権限だ。すでに引用したように、自衛隊法第九五条での武器の使用は、事実上「正当防衛・緊急避難」以外の武器の使用を禁じている。しかし、警護出動下においては、この限定は取り払われている。つまり、この武器使用の権限をとってみても、新設された警護出動が治安出動の一環であることが明らかになる。
 この改定自衛隊法による警護出動訓練は、昨年一二月から在日米軍座間基地内で自衛隊と米軍の間で九日間にわたって実施訓練が行われており、日米共同のマニュアルも作成されていると言われている。そして、昨年暮れの新聞報道によれば、防衛庁は警護出動の実施計画策定を急ぎ、また、日米合同委員会を開き、米側が警護を希望する施設・区域を聴取するという。この手続きを経て、政府は、自衛隊の警護出動を行う施設・区域や期間を定めた実施計画を閣議決定することになっている。

 新聞報道では、当面の対象施設は横田・座間の在日米軍基地を予定しているとなっているが、三沢、厚木、横須賀、岩国、佐世保なども候補に挙がっていると言われる。だが、問題は、すでに自衛隊と米軍の共用施設では、自衛隊が自己警備の一環として事実上の警備支援を実施していることだ。
 このように、急速に進んでいる自衛隊の警護出動態勢に対して、都道府県知事らからの危惧の声も出始めている。二〇〇一年一〇月三〇付の「自衛隊法に基づく警護出動にあたっての都道府県知事意見の聴取について(緊急要望)」という文書がそれである。
 「この度、自衛隊法の一部が改正され、同法第八一条の二において、内閣総理大臣が自衛隊の部隊等に対し駐留米軍や自衛隊の施設等の警護出動を命じる場合には、あらかじめ関係都道府県知事の意見を聴くことが定められました。

 このことは住民生活の安全確保を責務とする知事の立場から重要な手続きであると考えているところですが、意見を聴く趣旨、内容などについて明確にされておりません。つきましては、早急にこれらを明らかにしていただくとともに、関係都道府県知事が責任ある意見を表明できるよう十分な情報の提供を要望します」
 この文書は、「渉外関係主要都道府県知事連絡協議会」(会長・神奈川県知事)による緊急要望であるが、このように自衛隊の警護出動という治安出動態勢に対しては、そのなし崩し的・泥沼的出動態勢の進行に、大きな危惧を抱かずにはいられない。

 だが、自衛隊はなぜ、この自衛隊始まって以来の治安出動態勢づくりを急ぐのか? これもまた、アメリカの「ショー・ザ・フラッグ」(態度をはっきりさせろ)という要求によって対米支援法であるテロ対策特別措置法が制定されたように、アメリカの強い要請であることが報道されている(山崎拓自民党幹事長の「在日米軍基地の警備は自衛隊にやってほしいとの米国の強い要請がある」との発言、二〇〇一年一〇月一三日『読売新聞』)。つまり、在日米軍基地からのアフガン派兵による兵員不足に対して、その警備の穴を自衛隊に埋めさせようというわけだ。


  治安出動下令前の情報収集活動の新設

 さて、こうした警護出動とともに、改定自衛隊法のもうひとつの目玉が「治安出動下令前の情報収集」規定の新設だ。これは「自衛隊法第七九条の次に次の一条を加える」とし、「治安出動下令前に行う情報収集」として同第七九条の二として次のようにいう。

 「長官は、事態が緊迫し第七八条第一項の規定による治安出動命令が発せられること及び小銃、機関銃(機関けん銃を含む。)、砲、化学兵器、生物兵器その他その殺傷力がこれらに類する武器を所持した者による不法行為が行われることが予測される場合において、当該事態の状況の把握に資する情報の収集を行うため特別の必要があると認めるときは、国家公安委員会と協議の上、内閣総理大臣の承認を得て、武器を携行する自衛隊の部隊に当該者が所在すると見込まれる場所及びその近傍において当該情報の収集を行うことを命ずることができる」
 そして、この「治安出動下令前の情報収集」活動を行う自衛隊の部隊は、第九二条二の新設により「その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器を使用することができる」という。

 ところで、自衛隊法第七九条とは、「治安出動待機命令」である。この後の条項として「下令前の情報収集」活動は追加されるのであるから、治安出動の待機命令以前に、つまり「平時」から「情報収集」という名目で自衛隊の部隊は出動できることになる。しかも、この出動する部隊は、治安出動と同等の権限で武器を使用できるのだ。
 この情報収集条項の新設について、二〇〇一年一〇月五日の防衛庁の『自衛隊法の一部を改正する法律案について』という文書によれば、「武装工作員等の事案及び不審船の事案への対処」として説明されている。すなわち、防衛庁の文書によれば、この下令前の情報収集条項の新設は、外国からのゲリラなどの侵入を想定しているだけでなく、不審船事態をも想定しているということだ。

 一九九九年三月には、自衛隊初の海上警備行動(第八二条)が発令されたことは記憶に新しい。この海上自衛隊による「海上における警備行動時の権限」は、従来は武器の使用に関しては「警職法第七条の準用」だけである。この中で治安出動下令前の情報収集条項の新設(大量殺傷武器等を所持した者による不法行為)による「海上警備行動」は、武器の使用権限がより広くなっている。改定自衛隊法案の「理由」のところでは、これについて「海上警備行動時等において一定の要件に該当する船舶を停船させるために行う武器使用につきそれぞれ人に危害を与えたとしても違法性が阻却される」という。つまり、この情報収集活動の新設と武器使用権限の拡大で、「不審船」に対する威嚇射撃だけでなく、正当防衛以外などにも堂々と「船体射撃」ができるというわけだ。
   
 また、この治安出動下令前に行う情報収集活動の範囲は、「当該者が所在すると見込まれる場所及びその近傍」というのであるから、都市部から山間地まで無限に広がることになる。そして、先に見た自衛隊の警護出動の範囲は、自衛隊及び在日米軍の「施設及び区域」の周辺にまで及ぶのであるから、この双方の出動範囲を重ねると日本全国、全土が治安出動態勢に組み込まれるということになるのだ。つまり、自衛隊の警護出動や情報収集のための出動というのは、全国を戒厳態勢に置こうとするものなのである。 

 もうひとつ、この改定自衛隊法が目論んでいるのが、自衛隊の治安出動の対象の拡大だ。これは、自衛隊法の「第七章 自衛隊の権限等」として付加され、「第九〇条第一項に次の一号を加える」として三号に次のようにいう。
 「前号に掲げる場合のほか、小銃、機関銃(機関けん銃を含む。)、砲、化学兵器、生物兵器その他その殺傷力がこれらに類する武器を所持し、又は所持していると疑うに足りる相当の理由のある者が暴行又は脅迫をし又はする高い蓋然性があり、他にこれを鎮圧し、又は防止する適当な手段がない場合」
 自衛隊法第九〇条は、治安出動時の武器使用権限が規定されている。そして、その第一号は、「職務上警護する人、施設又は物件の暴行・侵害」に対して、第二号は「多衆集合しての暴行・脅迫」に対して武器を使用することが規定されている。

 従来の、この自衛隊法第九〇条の治安出動規定は、反政府の大規模な大衆行動、つまり自衛隊のいう「暴徒」を対象にしていたのである。ところが新設された第三号では、新たに「殺傷力の強い武器などを所持」した勢力(ゲリラなど)が対象として追加されたのだ。これは次に述べる「治安侵害勢力」という広義の対象に言い換えられている。

  四六年ぶりの治安協定の改定

 治安出動下令前の情報収集活動や警護出動を新設した自衛隊法の改定を火事場泥棒的と評したが、この根拠は大いにあるのだ。
 もともと政府・防衛庁は、「不審船」や武装ゲリラに対処する「領域警備」関連法案を昨秋の臨時国会へ提出する予定だったという(二〇〇一年九月一三日、朝日新聞)。
 ところで、この「領域警備」関連法の制定は、一九九五年の新防衛計画大綱の決定以来の自衛隊の「悲願」である。そして、一九九七年の新ガイドラインの制定、一九九九年の周辺事態法の制定、一九九九年の能登半島沖事件を口実に、自衛隊は一挙に自衛隊の「新任務」として、領域警備関連法の制定へと突き進むのだ。このあたりの詳しい事情は後述しよう。

 大事なのは、昨秋の九・一一事件と自衛隊法の改定前にすでに、自衛隊は「不審船」や武装ゲリラに対処する新たな自衛隊の治安出動態勢づくりに突入したということだ。
 このひとつが、二〇〇〇年一二月四日に防衛庁長官と国家公安委員長との間で締結された『治安出動の際における治安の維持に関する協定』(以下「協定」という)の改定である。新聞各紙の、このあまり目立たない協定改訂の報道は、今後の自衛隊の行動をうらなう上で非常に大きな出来事であった。
 先に述べてきた、昨秋の自衛隊の治安出動権限の拡大は、すでにこの時点で自衛隊と警察の間の取り決めとして決定していたのだ。つまり、自衛隊はその自衛隊法の改定以前に、警察との協定によって治安出動の権限の拡大を果たしていたのである。もっと言うならば、この協定と同時に、『自衛隊の治安出動に関する訓令』も制定されており、資料として収録したこの関連文書が示すように、治安出動関連の通達・内訓・各種の協定もこの時点で完結していたのだ。

 この出来事は、この間の自衛隊の独走を示して余りある。基本法の制定よりも実際の行動の方が先行しているのである。
 それでは、この自衛隊と警察との協定の改定はどのような内容なのか。
 まず第一に、旧協定(一九五四年九月三〇日締結)は、自衛隊と警察の治安出動対象を「暴動」としていたのだが、新協定では、これを「治安を侵害する勢力」に言い換えていることだ。つまり、現在の情勢判断として警察は「暴動の鎮圧」については、警察力で足りるとし、この警察力で不足する事態の想定対象を「治安を侵害する勢力」、すなわち「武装ゲリラ」などを想定しているというわけだ。

 この新協定と同じ日に『自衛隊の治安出動に関する訓令の一部を改正する訓令』(以下「訓令」という)も改定されたが、ここでも「暴動の制圧」(第三条)から「治安を侵害する勢力の鎮圧」に改められている。ちなみに、この訓令の「改正の内容」では、「治安出動した際における自衛隊と警察との治安維持のための措置について、暴動への対処を想定したものから、武装工作員等への対処をも想定したものとする」と述べている。
 そして第二に、旧協定では、自衛隊と警察の任務分担について、自衛隊は警察の「支援後拠」、「拠点防護」、そして警察に代わって「直接制圧」というように、段階的に逐次移行することになっていた。が、新協定では、こうした段階的移行も確認されてはいるが、「この場合の任務分担は、治安を侵害する勢力の装備、行動態様等に応じたものにする」(第三条の一項の三)として、「治安を侵害する勢力」の武装によっては最初から自衛隊が出動することが明記されている。

 この内容は、新協定と同日に改定された訓令ではさらに明確になっている。すなわち、改定訓令の「改正の趣旨」では、「外部からの武力攻撃に当たらないような事案においては、一義的には警察が対処するが、警察では対処できないか、又は著しく困難な場合には、自衛隊が治安出動により対処する」として、初めの段階からの自衛隊の治安出動を想定していることを述べている。

 また、この改定訓令では、この立場から旧訓令に規定されていた自衛隊の治安出動の段階的移行という規定が削除されたのである(旧協定第五条二項)。
 ここで断っておかねばならないのは、新協定・新訓令は、確かに「暴動」から「治安侵害勢力」に表現が変わったが、それは一部のマスコミが言うように反政府の大衆行動、すなわち「暴動」「暴徒」を対象にしていないということではない、ということだ。つまり、「治安侵害勢力」という、より広い概念を想定して対象が広がっただけなのだ。

 これは新訓令の次の規定で明らかである。新訓令は「第二九条に次の一項を加える」として、「前項に規定する場合において、部隊指揮官は、相手が暴徒のときは、これに対し、解散を命じ、かつ、武器を使用する旨を警告した後でなければ、武器の使用を命じてはならない」としている。つまり、ここでは武器の使用・行使という規定の中で、「暴徒」「暴動」への対処が想定されているのだ。
 ところで、この訓令の第二九条は、治安出動における武器の使用権限について規定しているが、改定訓令では「治安侵害勢力」に対しては、「ただし」という断り書きで「警告」なしに武器を使用することが新設されている。つまり、国内のゲリラ勢力などに対しても自衛隊が「治安侵害勢力」と見なしたならば、警告なしに武器が使用されるということだ。

  治安の主導権を巡る自衛隊と警察の対立

 さて、この自衛隊と警察の新協定を詳しく分析してみると、旧協定では簡単にしか記述していなかった自衛隊と警察の「関係」が詳細に規定されていることに気づく。
「防衛庁長官は、治安出動待機命令を発する必要があると認める場合において……国家公安委員会に連絡の上、その意見を付して行うものとする」(第二条の一項)とか、「防衛庁長官又は国家公安委員会は、治安出動命令が発せられる必要があると認める場合において……それぞれ他方に連絡の上、その意見を付して行うものとする」(同第二項)とか、「前二項の規定による連絡を受けた国家公安委員会は、速やかにこれについて意見を述べるものとする」(同第三項)などなど。

 これは言うまでもない。この新協定による自衛隊と警察の治安権限の力関係の変化のみか、すでに見てきた自衛隊の下令前の情報収集活動や警護出動などの新設、そして治安出動時の権限拡大に対して、つまり、警察にとって代わる自衛隊の国内治安行動態勢への移行に対して、警察が相当の危機感をもって対抗していることがみてとれるのだ。
 昨秋、防衛庁・自衛隊の改定自衛隊法案の提出に対して、警察を代表する村井仁国家公安委員長は「治安維持は警察が担うのが原則」(九月三〇日、朝日新聞)と相当抵抗していることが報じられている。また、野中広務自民党元幹事長も「自衛隊が日本の重要施設を警備するという。恐ろしいことだ。警察はそれほど軟弱ではない」(同紙)とコメントを出している。さらに元警察庁長官の後藤田正晴は、「国民に直接、銃を向ける立場に自衛隊員を立たせてはならない。……治安出動が下令前に国内治安にまで自衛隊が出ていくなんて、間違いもはなはだしい」(同紙)と言っている。

 これらの警察の現・元官僚の言動は、単なる国内治安を巡る自衛隊と警察のヘゲモニー争いとだけ見ることはできない。問題は、自衛隊の制服組の台頭が、こうした警察に取って代わる国内治安行動態勢づくりにまで進行しているということなのだ。
 そして、この自衛隊の制服組の目的は、後述する「領域警備」という自衛隊の新任務の確保にある。
 ここ数年、治安権限を巡る自衛隊と警察の対立は激化している。この発端とも言うべきものが、一九九七年の新ガイドライン制定を巡る対立であった。この新ガイドラインでは、自衛隊に初めて有事下の任務として「ゲリラ・コマンドウ対処」方針が規定された。だが、これに対して、後藤田正晴を中心にした警察官僚は猛然と抵抗することになった。この結論は、自衛隊の「ゲリラなどの対処」は「有事下」の対処に限定するということで妥協がなされた。ところが、冷戦後の、「主敵」を喪失した自衛隊がこれで納得するわけがない。ここから自衛隊制服組の執拗な巻き返しが始まるのだ。

 こうした警察官僚の抵抗の中で、先に述べてきた改定自衛隊法は、警護出動におけるその防衛対象を「自衛隊施設」と「在日米軍基地」に限定することになる。ところが、防衛庁・自衛隊の要求はここにとどまらない。すでに政府・自民党は、警護出動の対象に原発を追加することを決めており、今年の通常国会で自衛隊法の再改定を固めているという(二〇〇一年一二月四日、日経新聞)。
 自民党国防族のドン、山崎拓は、当初からこの警護出動の対象を「皇居、官邸、原発」まで含める(二〇〇一年九月三〇日、朝日新聞)というのであるから、自衛隊の要求はもっとエスカレートするであろう。


 「不審船」事件と海上自衛隊の権限拡大

 ところで、先に引用した治安出動に関する改定訓令の「改正の趣旨」は、この間の自衛隊の治安出動権限の拡大などの背景として、「北朝鮮小型潜水艦の韓国東海岸座礁事件」や「下甑(しもこしき)島中国人密航者不法上陸事件」、そして「能登半島沖不審船事案」をあげている。

 しかしながら、これらの事件を冷静に考えるならば、これらの事件に対して過度に反応し、治安出動態勢などの対処行動へ移行した自衛隊の「新任務」こそ、問題にすべきだ。なぜなら、
一九五三年の朝鮮戦争の休戦以来、朝鮮半島ではこれらの事件は無数に発生してきた。が、金大中政権の成立によって、とりわけ南北首脳会談の開催以来、朝鮮半島の緊張は一段と緩和されるに至っているのだ。
 また、こうした戦後の一貫した朝鮮半島の緊張の激化の中で、国内での「不審船」などの事件がたびたび起こっていたことは、周知の事実である。問題は、今なぜ自衛隊は、こうした北朝鮮への対決政策に出始めたのか、ということだろう。

 戦後初めての海上警備行動の発令となった一九九九年三月の能登半島沖事件は、この自衛隊の対北朝鮮対決政策を象徴する事態といえよう。
 このとき、海上警備行動発令下の海上自衛隊は、停船命令を無視した「不審船」に対して、護衛艦二隻と対潜哨戒機による追跡を行い、そして、その中で護衛艦の機関砲による警告射撃と、対潜哨戒機P―3Cによる多数の警告爆弾の投下を行ったのである。

 問題なのは、なぜ海上自衛隊による海上警備行動なのか、ということだろう。
 言うまでもなく、海上における治安の確保は、海上においての警察である海上保安庁の任務だ。海上保安庁は、機関砲などの武器はもとより、海上における警察としての任務も手慣れている。「不審船」事件以後も、高速船などの導入や特別警備隊の設置(第五管区大阪保安部に設置)など、その対策を強化している。
 ここでも、「領域警備」という「新任務」の付与を求める自衛隊制服組の強い意向が働いていることが推測されるのだ。

 さて、この能登半島沖事件後の一九九九年一二月二七日、海上自衛隊と海上保安庁の「不審船に係る共同対処マニュアル」が作られている。これは、「基本的考え方」として「1、不審船への対処は、警察機関たる海上保安庁が第一に対処」「2、海上保安庁では対処が不可能又は著しく困難と認められる事態で防衛庁は内閣総理大臣の承認を得て、迅速に海上警備行動を発令」「3、防衛庁は海上保安庁と連携して対処」と双方の連携が取り決められた。
 ところが、問題はここではとどまらない。すでに述べてきたように、昨秋国会での自衛隊法改定では、「治安出動下令前の情報収集」という新任務が加わったのである。これは海上自衛隊でみると、従来、「不審船」事案に対して防衛庁設置法による「調査研究名目」で出動し、しかるべき段階で海上警備行動へ移行する、というものから、治安出動下令前の情報収集という名目で出動することが可能になったのである。

 ここでも海上の治安権限を巡る自衛隊と海上保安庁の間の対立、ヘゲモニー争いがみてとれる。だが、この関係は警察と異なり、海上保安庁に比べて自衛隊側がはるかに強くなっていると見なければならない。
 というのは、自衛隊法の第八〇条「海上保安庁の統制」によれば、海上保安庁は、防衛出動、治安出動という「有事下」では、防衛庁長官の指揮下に入ることが規定されているからだ。つまり、海上保安庁は「海の警察」と言っても、その実態は「準海軍」として位置づけられているということなのだ。
 こういう自衛隊法改定の後、偶然にも昨年一二月下旬、東「シナ」海での「不審船」事件が起きた。未だ生々しいこの事件については、詳細は省いていいだろう。ここで問題なのは、海上保安庁が「正当防衛」を主張する根拠は何もないということである。「不審船」が停戦命令を無視したとしても、これは領海外の「排他的経済水域」でのことである。そして、「不審船」は海上保安庁の二〇ミリ機関砲の威嚇射撃のあとに、対抗して発砲したのである。つまり、海上保安庁の「不審船」船体への威嚇射撃(火災発生)という事態がなければ、「不審船」側が発砲しない可能性もあったわけだ。この状況を「正当防衛」というなら、「正当防衛」という名の武器使用は、無限に拡大されることになろう。

 これを国際法が専門の広瀬義男明治学院大名誉教授は、「海上保安庁が威嚇射撃とはいえ、先に船を撃っており、正当防衛とは言い難い」(二〇〇一年一月二二日付、朝日新聞)と述べている。また、刑法・刑事訴訟法が専門の土本武司筑波大名誉教授は、「魚漁法違反という微罪の容疑で船に向けて射撃したとなると、根拠はあっても妥当性に疑問が残り、過剰な射撃となるのではないか」と述べている。
 昨秋の海上保安庁法改定も「領海内における危害射撃の免責」であったはずである。ところが、この事件では、まさに領海外の、中国の排他的経済水域内において、「不審船」を「撃沈」したのだ。それも一五人の乗組員を見殺しにして救助もせずに、である。「海の男」としても失格だ。

 誰しも疑問を持つのは、なぜ海上保安庁はこのような強硬手段を行使しようとするのか、ということだろう。
 今回の「不審船」事件でも、能登半島沖事件でも、海上保安庁や海上自衛隊の強硬政策、つまり、北朝鮮への対決政策がはっきりとみてとれるのだ。これは、繰り返すまでもなく、自衛隊制服組の台頭を背景とした政府の「北朝鮮脅威論」「テロ脅威論」の「演出」「煽り」であるということだ。
 こういう政策の中で、防衛庁は今年一月一〇日の衆院国土交通委員会において「不審船」に対処する海上警備行動を発令する前段階として、「海上警備行動準備命令」あるいは「海上警備行動待機命令」などの自衛隊法改定の考えを示している。これを政府内の調整がつけば、通常国会にも提出するという。また、政府・与党は、今後の対策として「領域警備法」の新設に動くという(二〇〇一年一月一四日、共同通信)。
 「治安出動下令前の情報収集」に加えて、この新しい権限の新設である。まさに「屋上屋を架す」(防衛庁幹部)としか言いようがない、新法づくりである。
 この政府・防衛庁の意図を正しく把握することがいま必要だろう。 

  領域警備という新任務
 
 さて、ここで解説しておかねばならないのは、最近、新聞などでたびたび出てくる「領域警備」という概念についてである。この概念が初めて出てくるのは、私の知る限り一九九八年だ。 これについて、元統合幕僚会議議長の西本徹也は次のように言う(一九九八年五月一五日付、元自衛官組織の機関紙『隊友』)。
 「ポスト冷戦時代の大きな柱として、平常時と有事、平常時と周辺事態との間に発生し、あるいは周辺事態に伴い発生する可能性の高いテロ、海賊行為、組織的密入国、避難民の流入、隠密不法入国などに対する対処の責任、ならびにこのような状況の中で起こり得るゲリラ・コマンドウ攻撃や弾道ミサイル攻撃など、新たな脅威の態様やこれに伴う部隊運用の変化に対応し得る法制の整備も必要である」

 そしてまた、「この際、これらの事態への対応に密接な関係のある自衛隊に対する『領域警備の任務の付与』及び『武器等の使用基準(ROE)』についても本格的検討が必要と考える。特に領域警備については、ポスト冷戦時代の特性にかんがみ、我が国の領域を保全するため、国際法規・慣習に基づき、平常時から自衛隊の任務として早急に整備されるべきである」。
 自衛隊の言う領域警備とは、ここで西本が言うように、「テロ、海賊行為、組織的密入国、避難民の流入、隠密不法入国」、そして「ゲリラ・コマンドウ攻撃」などから「我が国の領域の保全」をすることである。そして、この事態とは「平常時と有事」「平常時と周辺事態」の間のこと、つまり自衛隊用語でいう「非常時」の事態ということになる。

 ところで、すでに別のところで述べてきたように、自衛隊法は「領空の保全」に関しては「領空侵犯に対する措置」を航空自衛隊の任務としており、「領海の保全」に関しては「海上警備行動」を海上自衛隊の任務として、すでに付与している。もっとも、これらの「領海・領空の保全」の任務は、「平常時」における任務である。
 そして、自衛隊の警護出動や下令前の情報収集行動は、主として陸上自衛隊の「領土の保全」という領域警備関連法として制定されたことを述べてきた。

 こうしてみると、領域警備とは、まず第一に「平常時」の「領空・領海・領土の保全」ということであり、これは「海と陸」においては改定自衛隊法で制定・強化されている。また、第二に領域警備とは、「非常時」という事態における「領空・領海・領土の保全」ということであり、これも改定自衛隊法では、その一部が制定されている。
 つまり、領域警備とは、「有事」に至る前の平時から非常時までを含む自衛隊の行動ということになる。
 だが、問題はなぜこのような領域警備という新任務が必要なのか? すでに繰り返し述べてきたが、西本の言うゲリラ・コマンドウ対処はともかく「海賊行為、組織的密入国」などへの対処は、海上保安庁の仕事である。また「領空の保全」や、海上保安庁が対処できない「領海の保全」は、すでに自衛隊法に定められているのだ。
 ここからの結論は明らかだ。つまり、ソ連脅威論の崩壊によって「有事」事態を喪失してしまった自衛隊が、その膨大な装備と予算を維持するために、新任務を創り出そうとしている、ということだ。

 山崎拓は、昨年暮れの「不審船」事件に対応して「自衛隊の海上警備行動と海上保安庁の海上警察行動の連係プレーをスムーズにやり、両者を一体とした領域警備法の整備が必要」(二〇〇一年一二月三一日、朝日新聞)と言っている。また、改憲論者の中曽根康弘もまた、「領域警備法を提唱」しているという。
 いずれにしても、このような自衛隊の領域警備という新任務への移行は、戦後の自衛隊のあり方を根本から転換させることになる。つまり、自衛隊は、当面の主任務を「有事下に出動する軍隊」から「平時・非常時に出動する軍隊」へ、すなわち、警察機関に代わり「国家の危機管理」を軍事的に担う実力組織へと移行しているのである。この事態の現出は、かならず、国民の軍事管理・統制へと行きつくだろう。それは今年早々、有事立法の整備として始まりつつある。
          
  政府の対テロ作戦

 以上のような領域警備に関する自衛隊法の改定に基づいて政府は、昨年一一月二日、『大規模テロ等のおそれがある場合の政府の対処について』(閣議決定)という文書を発表した。
 この文書は、九・一一事件のようなテロ、「小銃、機関銃、砲、化学兵器、生物兵器等の殺傷力の強い武器を所持した武装工作員等による破壊活動、その他のこれらに類する事案(以下『大規模テロ等』という)が我が国において発生するおそれがあり、一般の警察力では対応できない事態」について、内閣総理大臣を本部長とする「対策本部を設置」し、「事態が緊迫し、治安出動命令の発出が予測される場合には、対策本部の下に……防衛庁を中心に、あらかじめ、治安出動命令の発出に係る、対処方針の検討、自衛隊と警察の間の役割分担及び連携の確認、必要な情報の共有等について、相互に最大限の協力を行い、内閣総理大臣が治安出動を命じた際には速やかに強力な対処を行うことができる態勢を整える」としている。

 また、同文書は「治安出動命令の発出が予測される場合」、そして「治安出動待機命令及び武器を携行する自衛隊の部隊が行う情報収集命令」の発出の場合、電話等による「迅速な閣議手続」を決定している。
 この自衛隊始まって以来とでも言うべき、自衛隊の治安出動態勢に関わる閣議決定を新聞等のマスコミは、ほとんど報じていない。この文書は、政府のインターネット上のホームページでは公開されている。なぜ、マスコミはこの重大な、自衛隊の初めての治安出動に関わる閣議決定の報道をひかえているのか? 
 その疑問は深まるばかりだが、大事なのは、すでに政府が自衛隊の治安出動態勢を一挙に押し進めているということだ。自衛隊の治安出動態勢が決定的な段階にあるということである。もっとも、この態勢は、「対テロ対処」ということを口実にはしている。しかし、一旦、こうして作られた自衛隊の治安出動態勢は、すでに述べてきたように、自衛隊ばかりか、国内の社会状況にも大きな転換をもたらすだろう。

 こうしてまた、昨年の一二月一九日には、自衛隊法の改定などを踏まえて『国内テロ対策等における重点推進事項』(閣議決定)も決められている。ここでは、「出入国管理の強化やテロ資金動向把握」などとともに、とりわけ、「重要施設警備の強化」として「警察・自衛隊などの即応体制の強化」「原発等における防護措置の強化」も決められている。
 もうひとつ関連して明記しておきたいのが、政府の生物・化学兵器テロ対策関連の動きである。例えば昨年四月には、政府の「NBCテロ対策会議」が開催され、これへの「対処計画」が決定されている。
 この文書によると、「地下鉄サリン事件のような重大テロが発生した場合」について、「内閣に対策本部を設置」するとともに、「必要な場合には安全保障会議を開き、自衛隊の治安出動も想定し、対応を協議」すると、この手順が明記されている。

 問題は、ここでも安易に自衛隊の治安出動が謳われていることだ。確かにオウム事件などの生物・化学兵器などに対しては、それなりのしっかりとした対策は必要だろう。しかしながら一九九五年の地下鉄サリン事件を想起すれば明らかなように、この時点では自衛隊は、「災害派遣」として出動していたのである。なぜ、この災害派遣が一挙に治安出動になってしまうのか。ここには、やはり、「有事事態」を喪失した自衛隊への新任務の付与、という明確な意図があるといわねばならない。

第2章 対テロ作戦に編成される自衛隊


  対テロ・ゲリラ戦演習

 「訓練は『(敵の日本での潜入破壊活動で)防衛出動が発令された』との想定で実施。軽装備の敵遊撃部隊がA市市街地の三階建てビルに潜入していることをつかんだ陸自は、直ちに四一普連(別府)の三個中隊をもって同ビルの一帯を包囲。ビル周辺から一般人はすべて退去、人質などもない、という状況設定だ。現在の陸自の教範、編成、装備でどれだけ効果的なゲリラ掃討できるか、実員をもって検証するため、火砲で敵を粉砕するような作戦はとらず、あえて人員を突入させて撃滅する作戦がとられた」

 「敵の規模は軽装備の一~二個班(十数人)と推定。四一普連ではこれを撃滅するため、一個中隊約百人とヘリコプター三機により空・陸からの突入を決定した。突入に先んじて、まずヘリが屋上にいる敵を掃討。低空から高速で侵入したUH1ヘリの機関銃が見張りの敵二人を撃ち倒す。……同時刻、地上からも一斉突入が始まっていた。爆薬により開けられた共同溝の穴から組単位(三人程度)で、次々と隊員が飛び出し、ビルへ突入を開始。まず84ミリ無反動砲で一階の入口扉が破壊され、援護射撃を受けながら一個班が突入……」(二〇〇一年二月二二日、いずれも朝雲新聞)

 引用記事は、二〇〇一年二月一三日の陸上自衛隊西部方面隊初の「市街地戦闘訓練」の風景である。市街地に潜伏した敵ゲリラ・コマンドを掃討するという、大分・別府駐屯地でのこの訓練は、報道陣に公開して行われた。
 だが、この市街地戦闘訓練は、対ゲリラ戦訓練おいて初めての訓練ではない。この前年、二〇〇〇年三月一八日には、陸上自衛隊西部方面隊において「対遊撃戦訓練」が「山地内に拠点を置いた敵の捜索と同拠点に対する攻撃」という想定で、日出生台演習場で行われた。この陸上自衛隊初という山地での対ゲリラ・コマンド撃滅作戦を想定した訓練は、第一二普通科連隊(小倉)基幹の約六〇〇人が、二五人のゲリラを包囲し、制圧する訓練である。そして、この対ゲリラ戦訓練は、自衛隊が初めて訓練模様を報道陣に公開した訓練でもある。
 この二〇〇〇年三月、二〇〇一年二月の対ゲリラ戦訓練を皮切りに、陸上自衛隊の対ゲリラ戦訓練は、続々と開始されている。

 二〇〇一年一一月一三日からは、第一〇普通科連隊基幹(滝川)の一三七〇人と米第三海兵連隊一大隊(ハワイ)六五〇人による日米共同訓練による「対ゲリラ対処市街地訓練」「対ゲリラ対処山地索敵訓練」などが、北海道大演習場で行われている。
 指摘しておかねばならないのは、以上紹介した訓練が報道陣に公開されているのに対して、まったく公開されていない対ゲリラ戦訓練、すなわち、秘密裏に行われた訓練もあるということだ。
 一九九九年六月には、東京・市ヶ谷駐屯地(第三二普通科連隊)で極秘で「市街戦対テロ訓練」が行われたという。市街地で対テロ・ゲリラを想定した訓練は、事実上、これが初めての訓練だ。

 また、一九九八年後半より、全国の各師団では、極秘裏に山岳ゲリラ対処訓練が開始されたとも言われている。
 つまり、自衛隊はこれらの公開された訓練よりもはるか前に、対ゲリラ・コマンド戦訓練・演習を行っていたということになるが、問題はこれらの訓練は、先に示した警察との治安協定や、治安出動に関する訓令の改定よりもはるかに先行して行われていたということだ。訓練・演習に対する秘密主義の問題も指摘しなければならないが、もっと重要なのは、このような法令の改定以前に先行する自衛隊の行動である。ここにも、この間の自衛隊制服組の「独断専行」が働いているのだ。(以下略)
      
  
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●ロシアーウクライナ戦争についての覚え書き的試論! ――反戦平和運動の混乱を止揚するために!

2022年03月21日 | 軍事・自衛隊


・この戦争の政治的性格(歴史的性格)を規定することは、今決定的に重要であり、この試みなしには、現在、世界で始まっている「新冷戦」=世界的「国家間争闘戦」(覇権争い)には対処できない。
かつ、反戦運動の歴史的後退を防ぐことはできない。 以下は、私の「覚え書き的試論」である。

・この世界的危機ー戦争の始まりを、あえて、2018年のアメリカの「国家安全保障戦略(NSS)」による「対中ロ競争戦略」の開始=新冷戦の歴史的始まりからとする(2014年の東ウクライナ戦争を基点とはしない)。

・この「対中ロ競争戦略」によってアメリカは、世界的な帝国主義的争闘戦(覇権戦争)に突入した。

・これがアジア太平洋においては、日米を軸とする「対中包囲戦略」として発動され、「Quad」、「AUKUS」などの英仏豪を巻き込んだ、対中政治・軍事態勢がつくられている。

・ヨーロッパにおいては、このアメリカの対ロ競争戦略は、東西冷戦後から一貫して引き継がれてきた、東欧へのアメリカの覇権政策――NATOの東方拡大政策として強化され、これに欧州もまた巻き込まれてきた。

・ウクライナの「民族運動」(「民族解放運動」ではない)も、歴史的なロシアのウクライナ民族への抑圧政策の中で、このアメリカの東欧覇権戦略に乗っかり、それを利用して進められてきた。

・したがって、このロシアーウクライナ戦争の政治的性格は、端的にいえば、「米ロ間の帝国主義的争闘戦」(覇権争い)に、ウクライナ民族運動が巻き込まれた、「本質的に帝国主義間戦争」と見るべきだ。

・問題は、この米ロ間の「本質的に帝国主義間戦争」に、欧州と日本(そして中国も!)も巻き込まれる「世界的戦争」(新冷戦の本格的始まり)に発展しようとしていることである。

・この戦争を「専制ロシアとウクライナー民主主義国間の戦争」と規定する大きな流れがあるが、これは、第2次世界大戦の、歴史的規定の誤りにも起因する。

・第2次大戦は、独伊日対米欧の「帝国主義間戦争」にソ連が巻き込まれた世界大戦であり、アジア的には、中国ーアジア市場の争闘(覇権)を巡る、米英蘭対日本の帝国主義間争闘戦であり、これに中国の民族闘争ー「民族解放戦争」が巻き込まれたものである。

・世界と日本の歴史学説は、この戦争を「民主主義対ファシズム」の戦争として規定してきたが、これは、米英、特にアメリカの「戦争犯罪」(ヒロシマ・ナガサキ、東京大空襲などの無差別爆撃)を免罪するための主張である。

・この戦争の正確な規定は、特に、急迫するアジア太平洋戦争ーアメリカ(米日)の対中戦争(南・東シナ海戦争ー「台湾有事」)の歴史的はじまり、という事態が進行する中で、とりわけ重要である。

・繰り返すが、アメリカの2018年「国家安全保障戦略(NSS)」による「新冷戦」宣言は、アフガンーイラク戦争後の、アメリカの世界的戦争態勢作りであり、対中戦争態勢づくりである(実際上は、ウクライナ戦争が先行しただけ!)

・この事態の中、現在の反戦のスローガンは、

*「ロシアのウクライナ侵攻反対」
*「米ロの帝国主義間戦争反対」
*「アメリカのNATO東方拡大戦略反対」
*「ウクライナの中立政策支持」
*「ウクライナーロシアの即時停戦を」
*「市民の犠牲をなくすためにキエフ等の無防備都市宣言を」 となろう。



そして、「台湾有事」キャンペーンによる、日米豪(欧)の対中戦争が切迫の中、今私たちが、特に求められているのは、ウクライナ戦争に反対するとともに、日米の対中戦争態勢づくり――琉球列島へのミサイル要塞化を阻むための、沖縄島――奄美・石垣島・宮古島と連帯した、全国的たたかいである!

●参考文献『ミサイル攻撃基地化する琉球列島―日米共同作戦下の南西シフト』

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「台湾有事」キャンペーを糺す!

2022年01月03日 | 軍事・自衛隊


注 本論文は、21/12/8発行の拙著『ミサイル攻撃基地化する琉球列島―日米共同作戦下の南西シフト』の「序論」である。アジア太平洋地域の情勢が緊迫している中、これを公開したい。

序論 煽られる「台湾有事」論

サイル軍拡競争が始まった琉球列島
 2021年3月9日、米インド太平洋軍のデービッドソン司令官(当時)は、米上院軍事委員会で「今後6年以内に中国が台湾を侵攻する可能性がある」と証言。これを契機に日本のメディアは、一斉に「台湾有事」キャンペーンを始めた。メディアだけではない。名だたる識者や軍事評論家らも、この喧伝に飛びつき、唱和している。

 だが、デービッドソンの上官、ミリー米統合参謀本部議長が、米上院歳出委員会で「中国には現時点で武力統一するという意図も動機もほとんどないし、理由もない」と証言(21年6月19日付朝日新聞)したのだが、ほとんどのメディアはこれを無視した。

 また、同年7月5日、麻生副総理(当時)が都内の会合で「台湾海峡は石油に限らず日本の多くの輸出入物資が通る」とし、「台湾有事」を念頭に「日本にとって存立危機事態に関係」(同日付沖縄タイムス)と発言すると、メディアは一斉にこれに呼応し、さらに「台湾有事」を鼓吹するという状況である。

 だが、この麻生発言は、完全なフェイクである。「台湾海峡は……日本の多くの輸出入物資が通る」と? 台湾海峡はどこだ! 中国大陸と台湾の間だ。この中国大陸に沿う海峡を通る、日本の船舶はほとんどない(「日本の海運SHIPPINGNOW2020―2021」日本船主協会作成)。

 日本の実際の「シーレーン」は、台湾とフィリピンの間のルソン海峡、バシー海峡だ。台湾海峡という「危険地帯」を通過する必要は全くない。
 こんな麻生のフェイクを真に受け「台湾有事が切迫」と、危機アジりに唱和してはならない。現在、いかなる危機が生じているのか? この実態は、正確に見据えねばならない。

進行する琉球列島のミサイル基地化
 現在、急ピッチで進んでいるのは、九州から与那国島に至る、琉球列島=第1列島線に沿う、ミサイル部隊を軸とした大がかりな自衛隊の新配備計画だ。この事実をメディアは、ほとんど報じない。

 これらの琉球列島の基地建設の中で、いち早く自衛隊が配備されたのは、日本の最西端・与那国島だ。台湾まで約110キロという距離にある同島と台湾との間の海峡は、頻繁に中国の軍民艦船が行き来する。

 この与那国島の山頂に5基、異様な形で聳え、配備されているのが、陸自(陸上自衛隊、以下陸自・海自・空自という)沿岸監視隊160人の部隊だ(2016年3月配備)。沿岸監視レーダーは、与那国西水道を通過する中国軍艦を常時監視する。また、与那国駐屯地東側の一段と高い場所には、対空レーダーも設置。同島には、今後、空自移動警戒隊、陸自電子戦部隊も配備される予定だ(与那国と台湾間の海峡の公式名称はない。便宜的に筆者は「与那国西水道」とした)。


 与那国島の東に位置する石垣島には、陸自の対艦・対空ミサイル部隊、警備部隊(普通科部隊)計約600人が配備される予定だ。この石垣島では、宮古島、奄美大島よりも遥かに遅れて、2019年3月、基地造成工事が始まった。そして現在は、コロナ禍でもほとんど休止することなく、本格的なミサイル基地造成工事が続いている。


 しかし、石垣島でも、与那国島と同様、激しい基地建設への抵抗が起きている。基地建設の発表以来、予定地である平得大俣地区の農民らを中心にして、石垣市民の間にも根強く運動は広がっていく。平得大俣地区は、島への食糧を供給するもっとも豊かな農村地帯であり、戦後沖縄本島から移住してきた農民たちが、厳しい環境下で切り開いてきた開拓農地だ。しかもこの地帯は、沖縄においても最高峰を誇る於茂登岳から湧き出してきた豊かな水源地帯である。

 この地にミサイル基地を造るという自衛隊の横暴に、農村の青年たちが起ち上がった。この運動は、基地建設の是非を問う、住民投票を求める闘いへと発展する。この住民投票署名は、わずか1カ月の期間に石垣市有権者の4割を超える、1万4844筆の署名を達成。しかし、この状況に驚いた石垣市長らは、この「市条例に基づく住民投票実施」を拒否するという暴挙に出たのだ。これに対し、住民投票の実施を求めて石垣市を訴えた裁判が、今なお続いている。
(注 市長に住民投票実施を義務付ける「義務付け訴訟」は、1審、2審、最高裁とも却下されたが、2021年10月、市民たちは「石垣市平得大俣地域への陸自配備計画の賛否を問う住民投票において投票することができる地位にあることの確認請求」という新たな訴訟を提起。)

 石垣島とともに、今なおミサイル基地を阻む激しい運動が続いているのが宮古島だ。2019年3月、ここには陸自の警備部隊が配備。また地対艦・地対空ミサイル部隊も、1年遅れの2020年3月に配備された(約800人)。こうして宮古島には、ミサイル部隊が配備されたのだが、この部隊は未だ「ミサイルなし」(弾なし)の部隊(2021年11月10日現在)。同駐屯地には、対艦・対空ミサイル部隊の車両多数が配備されたが、これらの「ミサイル搭載車両」は、キャニスター(発射筒)だけを搭載したものだ。
 
 というのは、ミサイルを保管する弾薬庫は、21年4月に同島南東の保良地区にようやく一部開設したが、肝心のミサイル弾体が未だに搬入されていない(写真上、宮古島・保良ミサイル弾薬庫)。この理由は、保良の居住地区のすぐ側(200㍍)に造られているミサイル弾薬庫に抗し、住民たちは2年以上にわたって工事現場に座り込み、弾薬庫反対の行動を続けているからである。そして、4月から現在まで、この住民の行動に、沖縄の海運業界が共鳴し、今なおミサイル弾薬の輸送を拒んでいるのだ。もちろん、この保良を始め宮古島では、千代田地区の宮古駐屯地に対しても、反対の闘いが粘り強く続けられていることは付言しておかねばならない。


南西シフトの機動展開基地となる奄美大島・馬毛島
 奄美大島のミサイル基地開設は、宮古島と同じ2019年3月だ。奄美大島では、警備部隊と地対艦・地対空ミサイル部隊が、島の3カ所、計550人規模で配備された。さらに、今後、空自の移動警戒隊(大熊駐屯地内)・通信基地(湯湾岳)、陸自電子戦部隊が配備される予定だ。

 奄美大島で驚くのは、これらの基地の規模である。奄美駐屯地(大熊地区)の敷地面積は、約51㌶、瀬戸内分屯地(瀬戸内町)は、約48㌶(石垣基地の約2倍・宮古基地の約2・5倍)。瀬戸内分屯地には、巨大弾薬庫(約31㌶)が今なお建設中だ。山中にトンネル5本を掘るミサイル弾薬庫は、それぞれが約250㍍の長さの地中式弾薬庫である。弾薬庫は、現在2本目が完成しているが、情報公開文書によると全ての完成は2024年だ。

 この奄美大島のミサイル弾薬庫には、作戦運用上の目的もある。奄美大島―馬毛島は、先島諸島有事への、兵站・機動展開・訓練拠点として位置付けられている。つまり、この瀬戸内弾薬庫は、南西諸島有事へのミサイル弾薬の兵站(補給)拠点である。問題は、これら奄美大島の基地建設について、本土のメディアが全く報道しないことだ

 種子島―馬毛島の基地化が、自衛隊の南西シフトの一環であることは、以前から防衛省サイトでは公開されている(「国を守る」)。
 このサイトでは「他の地域から南西地域への展開訓練施設、大規模災害・島嶼部攻撃等に際しては、人員・装備の集結・展開拠点として活用、島嶼部への上陸・対処訓練施設」などを明記。

 馬毛島基地(仮)について、ようやく用地買収のメドがたった2019年12月、防衛副大臣が種子島を訪れ「自衛隊馬毛島基地」(陸海空の統合基地)建設を市に要請。つまり、馬毛島は、自衛隊の南西シフトの兵站・機動展開・訓練拠点として公に位置付けられたのである。

 これは、以前から筆者請求の情報公開文書でも裏付けられている。2012年、防衛省文書「奄美大島等の薩南諸島の防衛上の意義について」は、「南西地域における事態生起時、後方支援物資の南西地域への輸送所要は莫大になることが予想→薩南諸島は自衛隊運用上の重大な後方支援拠点」、また情報公開文書「自衛隊施設所要」(2012年統幕計画班)でも「統合運用上の馬毛島の価値」として、「南西諸島防衛の後方拠点(中継基地)」であること、「島嶼部侵攻対処を想定した訓練施設」であると明記。こうして、2本以上の滑走路建設予定の馬毛島は、自衛隊史上最大の航空基地、そして軍港(後述)として、まさに「要塞島」が造られるのだ。


沖縄本島の増強とミサイル要塞と化す琉球列島
 以上の先島などと同時進行しているのが、沖縄本島での全自衛隊の大増強だ。すでに2010年、那覇の陸自第15混成団は旅団へ昇格、空自も2017年、南西航空混成団から南西航空方面隊に昇格。那覇基地のF15戦闘機は、2倍の40機へ増強された。

 そして、沖縄本島の全自衛隊は、2020年には、約9000人に増大(2010年約6300人)、陸自・沖縄部隊は、最大勢力の約5100人に増強された。
 問題は、この中で沖縄本島へ地対艦ミサイル部隊の配備が決定されたことだ。新中期防衛力整備計画(2018年~)では、宮古島・石垣島を含む3個中隊の追加配備が決定されたが、このミサイル1個中隊の陸自・勝連分屯基地への2023年度の配備が通告された(21年8月21日)。しかし、勝連への配備は、ミサイル中隊だけではなく、石垣島・宮古島、奄美大島の地対艦ミサイル部隊を隷下におく、地対艦ミサイル連隊本部の配備(約180人)と発表されている。この配備で琉球列島では、地対艦ミサイル1個連隊「4個中隊」が編成・完結される。



  2023年、地対艦ミサイル配備予定の陸自・勝連分屯基地
 海自(空自)でも、「いずも」型護衛艦の空母への改修工事が完了しつつあり、すでに海自・空母と米強襲揚陸艦との共同運用が行われ始めている。
 その他、南西シフト下で「島嶼奪回」部隊として、華々しく喧伝されているのが、佐世保市で編成された水陸機動団だ。これは現在、2個水陸機動連隊が編成され、新たに1個連隊が増強予定だ。この他、南西シフト下では、九州の空自増強と日米共同基地化が進行、新田原基地では、2021年7月、F35B配備・基地化が通告された。

 以上の宮古・奄美・沖縄本島などへの地対艦・地対空ミサイル配備を皮切りに急ピッチで進んでいるのが、さらなる琉球列島全体のミサイル要塞化計画だ。
 2018年防衛大綱では、「島嶼防衛用高速滑空弾部隊・2個高速滑空弾大隊」の新設が発表された。高速滑空弾とは、現在、日米中露が激しい開発競争をしている新型のミサイルであり、迎撃不可能であるといわれる。チョークポイント・宮古海峡封鎖のための配備が推定される。

 自衛隊は、この他、中国大陸まで射程に収める12式地対艦ミサイルの約900キロの射程延伸を計画し、自衛隊初のトマホーク型巡航ミサイルの開発などを含む、凄まじいミサイル戦争態勢づくりを推し進めている。

 そして、2019年8月2日、トランプ政権は、中距離核戦力(INF)全廃条約からの脱退を決定したが、この目的は米軍の琉球列島を中心としたミサイル軍拡を押し進めるためである。条約脱退発表の直後に米軍は、沖縄―九州などへの中距離弾道ミサイルの配備(非核戦力)を発表したのである。一部の御用評論家などは、米中の中距離ミサイルの戦力比が「米ゼロ対中国1250発」とフェイクを流し、中国の多数の中距離ミサイルに対抗するには、米軍の中距離ミサイルの日本配備が必要だと吹聴している。

 しかし、米軍は、SLCM(潜水艦発射巡行ミサイル)を始め、すでに艦艇などに多数のトマホークなどの中距離ミサイルを配備している。SLCMは、1隻に154発のトマホークを装備している(搭載潜水艦4隻保有)。明らかに、米軍が目論むのは、地上発射のトマホークや中距離弾道ミサイルの日本配備によって、ミサイル軍拡競争において中国に対し圧倒的優位に立つということだ。

 さらに、急ピッチで進みつつある米海兵隊・陸軍の「第1列島線シフト」でも、地対艦・空ミサイル部隊の配備計画が明らかになっている。つまり、日米の双方による、琉球列島への凄まじいミサイル配備計画が押し進められており、対中国の激しいミサイル軍拡競争が、すでに始まっているということだ。

対中国の日米共同作戦
 自衛隊の南西シフトの初めての策定は、2010年の新防衛大綱だ。この南西シフトは、米軍のエアーシーバトル(2010年QDR)のもとで決定された。この具体的な運用計画が示されたのが「沖縄本島における恒常的な共同使用に係わる新たな陸上部隊の配置」(2012年統合幕僚監部)という文書である。

 この文書では、驚いたことに在沖米軍基地―嘉手納・伊江島航空基地等を含む在沖全米軍基地の、自衛隊との共同使用、さらにこの後編成予定の陸自1個連隊のキャンプ・ハンセンへの配備も記されている。つまり、このハンセン配備予定の水陸機動団が、辺野古新基地をも使用し、日米共同基地にするということだ(21年1月28日付沖縄タイムスは、これを裏付ける辺野古新基地の水陸機動団との共同使用密約を報道)。

 こうしてみると、自衛隊の南西シフトは、初めからエアーシーバトル下の日米共同作戦として決定されたといえる。
 この作戦の特徴は、在沖・在日米軍は中国軍のミサイルの飽和攻撃を逃れ、あらかじめ空母機動部隊のグアム以遠への一時的撤退を予定していたことだ。そして、中国軍のミサイル飽和攻撃が終了した後、米空母機動部隊などは、第1列島線に参上し参戦する。


 すなわち米軍は、対中戦略では自衛隊の南西シフトに依拠する。つまり、第1列島線沿いに配備された、自衛隊の対艦・対空ミサイル部隊が、初期の対中戦闘の主力となる。米軍の初期構想では、これら琉球列島に配置されたミサイル部隊の任務は、中国軍を東シナ海に封じ込め、「琉球列島を万里の長城、天然の要塞」にするとしている。これはまた、中国の軍民艦船を東シナ海へ封鎖する態勢であり、中国の海外貿易を遮断する態勢づくりだ。

 だが、このエアーシーバトルという戦略は、一時的であれ、米海軍の西太平洋の制海権を放棄する態勢である。これは米海軍においては「制海権放棄」という第2次大戦後の初めての事態となる。

 こうして、これを全面的に修正する戦略が、「海洋プレッシャー戦略」として米軍に対して提言された(戦略予算評価センター[CABA]、2019年5月)。「海洋プレッシャー戦略」とは、端的にいうと、中国の初期ミサイル飽和攻撃に対処する「撤退戦略」を修正し、「対中・前方縦深防衛ライン」を構築し、戦争の初期から西太平洋の制海権を確保する戦略だ。


 作戦の中心は、第1列島線沿いに分散配置された対艦巡航ミサイル、対空ミサイルなどを装備した地上部隊が、中国の水上艦艇を戦闘初期で無力化する。つまり、琉球列島に配備された自衛隊の対艦・対空ミサイルと、米軍の新たな対艦・対空ミサイルとの共同作戦である。


 この戦略下、海兵隊も「フォース・デザイン2030」を提唱し、その構想が「紛争環境における沿海域作戦」(LOCE)、「遠征前方基地作戦」(EABO)としてすでに具体化している。第1列島線上で海兵隊が、地対艦ミサイルなどで武装することが最大の核心だ。2027年までにそれを担う「沿岸連隊」を沖縄に配備するという方針である。

 問題は、米海兵隊のミサイル部隊配備だけではない。この海兵隊に加えて、米陸軍もまた、マルチ・ドメイン・オペレーション(MDO)という運用構想の中、第1列島線に地対艦ミサイル部隊などを配備することを決定しているのだ。詳細は本文で述べるが、実際は米海兵隊よりもこの陸軍のミサイル部隊配備が先行するという状況だ。

「台湾有事」論の実態
 このような日米の南西シフト下の、対艦・対空ミサイル配備、そしてトマホークを始めとする中距離ミサイル配備計画が急ピッチに進行する中、東シナ海・南シナ海とも、軍事衝突の緊張が一段と高まっている。

 しかし、冒頭に述べてきた「台湾有事」論の本当の狙いは、米軍による第1列島線の完結・完成、つまり、台湾を対中戦略に動員し、台湾とフィリピンとの間の、ルソン――バシー海峡の封鎖態勢を完成させることである(中国海軍―海南島に配備された原潜の太平洋への出口を遮断)。そして、「台湾有事」論のもう1つの重大な狙いは、中距離ミサイルの日本配備のための、一大キャンペーンでもあるのだ。

 現在、これら日米中露のミサイル軍拡競争は、熾烈な段階に入りつつある。この事態を放置したとすれば、アジア太平洋は「キューバ危機」以上の危機に突入する。極超高速滑空弾、中距離弾道ミサイルは、中国におよそ10分前後で着弾する。

 だが、迫りつつあるこの戦争の危機を、逆にアジア太平洋の軍縮に転化すること、日米の南西シフトを中止に追い込むこと、琉球列島へのミサイル基地建設を凍結し、基地の廃止に追い込むこと――これらが今緊急に必要である。私たちは、再び沖縄を最前線とするこの戦争態勢づくりに、黙してはならない。
(注 「序章」については、雑誌『アジェダ』2021年9月号発表の論文に加筆。


『ミサイル攻撃基地化する琉球列島』目 次
序 章 煽られる「台湾有事」 9  
    ミサイル軍拡競争が始まった琉球列島 9 
    進行する琉球列島のミサイル基地化 11
    南西シフトの機動展開基地となる奄美大島・馬毛島 14
    沖縄本島の増強とミサイル要塞と化す琉球列島 16
    対中国の日米共同作戦 18
    「台湾有事」論の実態 21

第1章 アメリカの「島嶼戦争」論  25
    クレピネビッチの「群島防衛」論  25
    「台湾問題」を全面化したクレピネビッチ論文 30
    トシ・ヨシハラらの「島嶼戦争」論 35
    対ソ抑止戦略下の「三海峡防衛」と第1列島線防衛 38
    海峡防衛論=島嶼防衛論の虚構 42
    「台湾有事」論による中国南海艦隊の封じ込め 43
    海峡防衛をめぐる(対)着上陸作戦 45
    チョークポイント・宮古海峡の要塞化 47

第2章 エアーシーバトルから海洋プレッシャー戦略へ  51
    エアーシーバトルの限界 51
    中国本土攻撃を想定するエアーシーバトル 54
    オフショア・コントロールと「海洋拒否戦略」 58
    「制限海洋」作戦による「海洋限定戦争」論 63
    海洋プレッシャー戦略とは 66
    「インサイド・アウト防衛」部隊の運用構想 70
    海洋プレッシャー戦略が想定する戦場 75
    第1列島線構成国によるA2/ADの完結 77

第3章 米海兵隊・陸軍の第1列島線へのミサイル配備 81
    海兵隊作戦コンセプト(2016年) 81
    「紛争環境における沿海域作戦」(LOCE)構想の策定 85
    「フォース・デザイン2030」による米海兵隊の大再編 89
    海兵沿岸連隊へのトマホーク配備 93
    米陸軍ミサイル部隊の第1列島線配備 98
   
第4章 自衛隊の南西シフトの始動と態勢 105
    南西シフトの始動 105
    陸自『野外令』の大改訂 114
    「日米の『動的防衛協力』」による南西シフト 117
    「日米の『動的防衛協力』」による琉球列島の部隊配備 123
    宮古島などのミサイル配備はいつ決定されたのか? 125
    自衛隊の南西シフトの運用 127
    南西シフト態勢下の統合機動防衛力 131
    10万人を動員した機動展開演習「陸演」 132
    陸上総隊の創設―軍令の独立化 134
    2018年防衛大綱・中期防の策定 135
    多次元横断的(クロス・ドメイン)防衛力構想 137
    南西シフト下の空自の大増強 141
    南西シフト下の海自の大増強 143

第5章 琉球列島のミサイル戦場化 149
    地対艦・地対空ミサイルの運用 149
    対艦ミサイルを守る対空ミサイル 152
    ミサイル部隊の空自・海自との統合運用 153
    陸自教範『地対艦ミサイル連隊』では 154
    敵基地攻撃能力を有するミサイルの配備 158
    極超高速滑空弾の開発・配備 161
    中距離ミサイルの琉球列島――九州配備 165
    中距離ミサイルは核搭載か? 169
    ミサイル攻撃基地となる琉球列島 172

第6章 無用の長物と化した水陸機動団 177
    水陸機動団の編成 177
    水陸機動団の作戦運用 179
    自衛隊の水陸両用作戦とは 182
    陳腐化した水陸機動団の強襲上陸 188
    水陸機動団の装備 192
第7章 機動展開・演習拠点としての奄美大島・馬毛島の要塞化 195
    明らかになった南西シフト下の馬毛島要塞 195
    統合演習場・機動展開拠点としての馬毛島 196
    空母も寄港できる巨大港湾設備 201
    馬毛島配置人員のウソ 203
    南西シフト下の演習拠点となった種子島 204
    機動展開拠点としての馬毛島・奄美大島 206
    奄美大島・瀬戸内分屯地の巨大ミサイル弾薬庫 208
    南西シフトの軍事拠点としての馬毛島 211
    種子島―薩南諸島の演習場化 214
    臥蛇島のミサイル実弾演習場化と新島闘争 217
    「南西有事」への民間船舶の動員 223
    「統合衛生」という戦時治療態勢 226

第8章  アメリカのアジア戦略と日米安保 229
    「太平洋抑止イニシアティブ」(PDI) 229
    アメリカの西太平洋へのリバランス 232
    アメリカの「国家安全保障戦略」(NSS) 237
    「インド太平洋戦略報告」による対中国・台湾戦略の始動 240
    急激に進むアメリカの台湾への武器売却 244
    安保法制定の目的とは 246
    日本の「インド太平洋戦略」 251
    激化する対中演習と新冷戦態勢 253

結 語 アジア太平洋の軍拡競争の停止へ 257
    メディアの「台湾有事」キャンペーン 257
    日米中の経済的相互依存と戦争 259
    沖縄を再び戦争の最前線にするのか? 261
    ワシントン海軍軍縮条約による島嶼要塞化の禁止 264
    琉球列島の「非武装地域宣言」 266
    日中平和友好条約に立ち返れ 267


●本書の「結語」は「note」からhttps://note.com/makoto03/n/n34aad4e72be7

●本文は以下のアドレス https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784907127282
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「海峡防衛戦」=通峡阻止作戦下の、宮古島・保良ミサイル弾薬庫ー訓練場の軍事的意味と、ミサイル弾体の搬入ー運用について!

2021年06月02日 | 自衛隊南西シフト
*「海峡防衛戦」=通峡阻止作戦下の、宮古島・保良ミサイル弾薬庫ー訓練場の軍事的意味と、ミサイル弾体の搬入ー運用について!


●現在、宮古海峡に接する保良ミサイル弾薬庫・訓練場について、ミサイル弾体の搬入ー運用開始という事態が切迫している。この状況を理解するためにも、日米の南西シフト態勢下の「海峡戦争」=通峡阻止作戦の意味を理解すべきだ。

●この日米の南西シフト態勢が、「台湾有事」=米中戦争論などという虚構(危機煽り)としか捉えられないことも、琉球弧=第1列島線における通峡阻止作戦(島嶼戦争=海洋限定戦争)の意味を認識できていないというべき。

●添付資料は、ソ連脅威論下の北方シフト――宗谷・津軽・対馬の三海峡封鎖作戦のものであるが、この三海峡封鎖作戦を南西シフトに転換・適用したのが、第1列島線、琉球弧へのミサイル部隊等の配備である。


●これらの「海峡防衛論」=通峡阻止作戦で明らかになったのは、宮古島へのミサイル部隊とその司令
部配備ー保良ミサイル弾薬庫・訓練場建設が、第1列島線の通峡阻止作戦の重要な拠点(チョークポイント)となることであり、そのための、宮古島・保良地区の恐るべき「要塞化」が、今後目論まれている、ということだ。


●間違いなく、宮古海峡を望む保良地区には、「海峡防衛」のためと称して、堅固な地下施設、監視所、演習場など、一連の要塞システムが構築される。

●この要塞には「対空、対海上、対水中、対地ミサイル、火砲、爆雷、機雷等の火力機能と、水中、水際等の障害を備え、さらに砲爆撃、ミサイル攻撃に十分堪え得る防護力を持った施設」(『海峡防衛』)が造られるということだ。

●そして「この要塞と連携して、国有地、公有地を中心に所用の地域を防空演習場として確保し、事態切迫時に迅速に防衛諸施設を構築できるよう、平時からそなえておく」(『海峡防衛』)ということだ。
――「重要土地等調査法案」=要塞地帯法の必要性が叫ばれている!

*宮古島・保良ミサイル弾薬庫の運用を停止せよ
「海峡防衛においては、海峡周辺の住民の避難・保護の問題をはじめ、陣地の構築のための土地の使用、建築物の利用、民間の船舶、航空機、車両の運行統制、電波統制等民生一般に関連する問題が必然的に出てくる」(同)とする。
――防衛省は、先日の超党派「沖縄等米軍基地問題議員懇談会」において、宮古島市が要望すれば、宮古島市の住民避難計画の実施検討を進める、としている。

*防衛省・自衛隊は、この宮古島・保良地区の「要塞化」計画の全貌を明らかにするとともに、ミサイル弾体搬入ー運用を停止せよ!

(引用資料は『海峡防衛』日本戦略研究センター)



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「オンライン・島々シンポジウム―要塞化する琉球弧の今」の 開催決定!

2021年06月02日 | 自衛隊南西シフト
*「オンライン・島々シンポジウム―要塞化する琉球弧の今」の
  開催決定!
 ――第3回 奄美ー種子島から琉球弧の要塞化を問う!



●日米軍隊の南西シフト下、急ピッチで進行する奄美のミサイル基地と馬毛島(種子島)の航空要塞化
――これに抗して、厳しいながらも必死に闘い続ける、奄美大島ー種子島の住民たちの、現地からの声を聞こう!

●日時 6月26日(土)13時~

●場所 奄美市「AiAiひろば」での公開・ZOOM ビデオウェビナーによるシンポジウム      
(入場無料・カンパ歓迎。先着500人の事前登録制。すでに登録済みの方は、登録なしで参加できます)

●パネラー
城村典文さん(戦争のための自衛隊配備に反対する奄美ネット代表)
荒田幸司さん(奄美市議会議員)
牧口光彦さん(奄美のミサイル部隊配備を考える会代表)
佐竹京子さん(同・考える会)
迫川浩英さん(馬毛島への米軍施設に反対する市民・団体連絡会事務局)
和田香穂里さん(前西之表市議)
古川正則さん(種子島漁師)

●ゲスト 山里節子さん(いのちと暮らしを守るオバーたちの会)
 解説  小西 誠さん(軍事ジャーナリスト)
 司会  三上智恵さん(ジャーナリスト・映画監督)


*申し込み用アドレス(登録リンク)
https://zoom.us/webinar/register/WN_QzYB3LT_QR28nuBpILHMpw


●寄付・カンパのお振込み
・郵便振替 00160-0-161276(名義・社会批評社)(「島々基金」とお書き下さい)
*シンポジウムは無料ですが、現地の運動支援のためのカンパを、ぜひともお願いします!
・クレジットカードからもカンパができます!
https://passmarket.yahoo.co.jp/.../detail/02iqb4128qp11.html

●お問い合わせは shakai@mail3.alpha-net.ne.jp
*登録上の注意
登録時に少しエラーが出ていますが、すでにzoomアカウントをお持ちの方は、パスワードなどは入力せずに、Facebook(下に表示)など
からアクセスして下さい!
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*オンライン・島々シンポジウム――要塞化する琉球弧の今  ●第2回「ミサイル基地工事を阻む石垣島」

2021年04月09日 | 自衛隊南西シフト
●第2回「ミサイル基地工事を阻む石垣島」

●日時 2021年5月9日(日)13:00~  ZOOM ビデオウェビナーによるシンポジウム      
 (入場無料・カンパ歓迎。先着500人の事前登録制)

●申し込み用アドレス(登録リンク)
https://zoom.us/webinar/register/WN_QzYB3LT_QR28nuBpILHMpw

●パネラー
・山里節子さんをはじめとする「いのちと暮らしを守るオバーたちの会」の皆さん)
・嶺井 善さん(「石垣島への自衛隊配備を止める同住民の会」共同代表)
・内原英聡さん(石垣市議会議員)
・小西 誠さん(軍事ジャーナリスト)
・司会・三上智恵さん(映画監督・ジャーナリスト)


*2019年3月、石垣島のミサイル基地着工以来、防衛省・市当局を相手に闘い続けるオバーたちの会、
そして住民の会の人々――その住民運動の現場からの、生の声をぜひ聞いてください!
自衛隊の南西シフト態勢での、急速に進行するミサイル基地建設―この宮古島・奄美大島に続くミサイル
要塞化に抗して、厳しいながらも必至に闘い続ける石垣島の住民たちを孤立させてはならない!

●zoomビデオウェビナーは、事前登録制(視聴者の氏名等は非表示)。
 なお、すでに第1回で登録された方は、登録の必要ありません。事前にメールで「視聴アドレス先」が届きます。

●初参加の方は、下記リンクより登録をお願いします。登録すると、専用の参加アドレスがメールで送られて来ますので、当日
時間(15分前から入室可能)になりましたら、そのアドレスからご参加ください。また、開始までにZoomアプリをインストー
ルしておくと、スムーズに参加できます。

*後日、YouTubで視聴可能(YouTubeのURLをお知らせします)
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●主催「島々シンポジウム」実行委員会
連絡先 東京都中野区大和町1-12-10 社会批評社気付

E:mail shakai@mail3.alpha-net.ne.jp
・カンパ振込先 郵便振替 00160-0-161276(名義・社会批評社)
(「島々基金」とお書き下さい)

*シンポジウムは無料ですが、現地の運動支援のためのカンパを、ぜひともお願いします!
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*オンラインZoomの活用術
 Zoomを利用したことがない方に向け、「PC用」「iOS用(iPhone/iPad)」「Android用」の利用マニュアル
*PC用 
https://drive.google.com/file/d/1qQ05KxzHc9hGNb5DHJdraVUehi522wmM/view?fbclid=IwAR0DdvF0Q1JEJdSR_As0ljsgPOvApyS4L_n5VI-h0Lns1PbvwOxXRdCP11Q
*iOS用(iPhone/iPad)
https://drive.google.com/file/d/16KX3eqhf5VFptqODtbYWDzSDMY7t0KBe/view?fbclid=IwAR2pPwYi6sm_S4Khv9xFXY0H3nRt_mNi_X-OiDIJ3Cv8vjI-UyLpynaT6eA
*Android用
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代表 小西 誠
〒165-0034 東京都中野区大和町1-12-10 小西ビル
  ℡ 03-3310-0681 Fax 03-3310-6561
  E-mail shakai@mail3.alpha-net.ne.jp 
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宮古島・保良ミサイル弾薬庫の現在―500日もの座り込みを続ける保良の人々!

2021年03月22日 | 自衛隊南西シフト
宮古島・保良ミサイル弾薬庫の現在―500日もの座り込みを続ける保良の人々!



 500日の座り込みを続ける下地博盛さん夫妻! 

 僕は、一昨年10月に保良を訪れたときも、帰りは台風に直撃された! そして今年の保良住民集会の後も、台風の直撃!「嵐を呼ぶ男」になったのか?
 しかし、それにしても保良は暑い。海のすぐ側にありながら、カンカンの日照りだ。冬はすさまじい風が吹き荒れるというが、山がまったくないこの地特有の環境だろう。

 この真夏の、灼熱の炎天下をものともせず、「ミサイル・弾薬庫反対!住民の会」共同代表の、下地博盛さんと連れ合いの薫さんのお二人は、なんと300日もの座り込みを続けている。朝早くから夕方までー。もちろん、地域住民の方々も座り込みには参加されるし、宮古島市内はもとより本土からも応援の人々は駆けつける。だが、日によっては二人きりになろうとも夫妻は、連日座り込み、ミサイル弾薬庫工事の車両の出入りを止めているのだ。

雨の日も、風の日も「絶対に危険なミサイル弾薬庫造りを許さない」と、基地建設を阻む行動を続ける下地夫妻――。

 その下地博盛さんは、城辺(ぐすくべ)町役場に長らく勤め、保良の区長を3期、また宮古島市議会議員を務めた人で、ふだんは寡黙な人だが、風貌からも断固たる信念を感じる人だ。一方、連れ合いの薫さんは、明るく話し好き、ジョーク好きで、この暑さの中、工事入口に敷き詰められた鉄板の上で、卵焼きを作るという「イベント」もやったという。鉄板の上は50度以上はあったようだ(娘さんの茜さんは、当日の「実行委の学習会」の司会を務めるなど、家族ぐるみの闘い)。           

 保良ミサイル弾薬庫工事が始まったのは、一昨年10月7日、その4日前の10月3日に防衛省の地元説明会が強行された。「説明会」を住民はボイコットしたが、この説明会が工事着工のアリバイづくりであったことは明らかだ。

 凄まじいミサイル弾薬庫工事が進む保良 

 この工事が始まる1週間前、僕は地元住民の要請で保良・七又の住民集会に講師として参加したのだが、あれから1年、当時、深い鉱山跡には何もなかったが、この地はみるみるうちに整地され、もうミサイル弾薬庫の骨格が姿を現しつつある。                    

 防衛省から経産省への「設置承認申請書」によれば、ミサイル弾薬庫の工事は、現在、二棟が造られつつある(もう一棟は、土地買収の遅れという報道あり)。

上の写真は、ミサイル弾薬庫の1つで、左側の長い建築物が「防爆壁」(土堤)であり、右のビルのような構造物がミサイル弾薬庫の本体である。
これは、現場で見ると凄まじい大きさだ。現在進んでいる工事だけでも、ビルに例えると4階建ての高さだ。

「米軍基準」のミサイル弾薬庫!
 先の経産省への防衛省の「設置承認申請書」には、上の右図面が描かれているが(宮古島市民の斉藤美喜氏請求による情報公開文書)、この文書では「米軍基準」という文言が何度となく出てくる。

 この「米軍基準」ということと、文書に明記されている、ミサイル弾薬庫の「爆破実験」などを推定すると、おそらく自衛隊では、地対艦ミサイルの弾薬庫について「地上覆土式一級火薬庫」を造るのは初めてではないかということだ。奄美大島のミサイル弾薬庫も(未だ工事中)、北海道のミサイル連隊などで造られているミサイル弾薬庫も、すべてが「地中式弾薬庫」である!

 いつものことだが、防衛省・自衛隊は、この爆破実験でさえ、ほとんど墨塗で出してきた。しかし、ミサイル弾薬庫について、この文書が言うように「安全が証明された」とするなら、全文を明らかにすべきだろう。

 だが、実際のこのような「爆破実験」など机上の空論である。筆者は、かつて防衛大学校による「弾薬庫の爆破実験」を調査したことがあったが、わずか数キロのTNT火薬を詰めた、ミカン箱程度の大きさの箱を爆破しただけのものである。つまり、実証実験とするには、あまりにも爆破の規模が小さすぎるのだ。     

 一方、防衛省は従来、宮古島などの住民説明会でも、「ミサイル弾薬庫の爆破試験を行ったことはない」と明言し取り繕っていた。

 そしてまた、経産省においても「地対艦ミサイルなどの爆発物は火薬類取締法ではそもそも想定していない」というのであり、地対艦ミサイルなどの高度の爆発物の実証実験はなされていないのだ。

 こうした、防衛省は、住民らがもっとも怖れる、ミサイル弾薬庫の「保安距離」をひた隠しにして、「自衛隊を信頼しなさい」と言うばかりである。

 すでに、拙著『要塞化する琉球弧―怖るべきミサイル戦争の実験場!』、動画「軍事ジャーナリスト・小西 誠が暴く南西シフト態勢―宮古島編」(part2)などで、この保安距離の問題は詳しく述べてきたが、ミサイル弾薬庫が爆発したとき、住民の危険はとてつもなく、凄まじいものになるのだ!     
 そして、「保良ミサイル弾薬庫」は、もう一つの「ミサイル基地」となる!

 「宮古島訓練場火薬庫」(仮称)という駐屯地! 

 現在の保良ミサイル弾薬庫の正式名称は、「陸自宮古島訓練場火薬庫」(仮)とされている。変な名前の基地だ! 全国でこんな名前の基地はない。おそらく開設後には、名称を変えてくるだろう。たぶん「宮古島駐屯地保良分屯地」となる。となると、この弾薬庫は、単なる「訓練場」でもなく、部隊が常駐する「ミサイル基地」となるということだ。

 まず問題は、「廠舎」という常駐隊舎の建設である。防衛省の住民に出された説明書によれば、この保良地区には、弾薬庫・射撃場・整備工場・訓練場・廠舎などを造るとされている。             

 まず、ここに明記される廠舎とは何か? 旧日本軍では、廠舎というと古ぼけた、木造の造りの、演習などで一時的に滞在する宿舎のことを言う。自衛隊でも、長らくは同様の、例えば「かまぼこ型」の古い木造造りが多かった。だが、近年では廠舎には、隊員宿舎だけでなく、大浴場やコンビニさえも置かれた、もう一つの隊舎(基地)となっている(下は建設中の北海道・然別の廠舎)。                       

 つまり、「保良基地」は、宮古島・千代田地区にある警備部隊とは、別の常駐基地であり、そういうものとして造られようとしているということだ。

 訓練場という一大演習場 

 もう一つの問題は、保良基地がミサイル弾薬庫・射撃場・廠舎を中心に造られながら、一大訓練場としても造られようとしていることだ。上の防衛省図面をみてほしい。ミサイル弾薬庫の上・下の部分が「訓練場」として明記されている。

 宮古島駐屯地には、ただ今現在、訓練場が整備されていない。陸自は、空自の訓練場を時々借りるという状態だ。この訓練場を保良に造るというのは当初からの計画だが、問題はこの訓練場(演習場)は、普通科部隊の戦闘訓練に留まらない、対艦・対空ミサイル部隊の訓練場・演習場になりうる、ということだ。

 例えば、対艦・対空ミサイル部隊の実射・実弾演習は、射程の問題などで現在、国内では行っておらず、アメリカ本土の演習場を借りて行われている。しかし、ミサイルの実弾演習ではなく、「模擬弾の演習」などは、国内でも行われている。保良に地対艦ミサイル部隊が配備されるとすれば、この模擬弾の演習も行われることになり、非常に危険な状態が生じることになるのだ(保良ミサイル基地と訓練場全図。上下の敷地が訓練場・演習場。全体では19㏊だが、間違いなく演習場は買収され、拡大されていく。沖縄県環境アセスメント逃れのために現在、19㏊にきり縮められた!!)。                           

 保良基地は「地対艦ミサイル基地」となる!

 さて、今ひとつの、決定的重要問題は、保良ミサイル基地が、将来、間違いなく宮古島の地対艦ミサイル部隊の常駐基地として造られていく、ということだ。

 これを例えば、奄美大島に建設・配備された地対艦・地対空ミサイル基地と対比してみてみよう。奄美では、この地の北・大熊地区に地対空ミサイル部隊(+警備部隊)が配備され、遠く離れた奄美の南に瀬戸内町に、地対艦ミサイル部隊(+警備部隊)が配備された。
              

 これを見ると、全国的にも同様だが、1つの基地に指揮系統も作戦運用も完全に異なる部隊が配備されることはない、ということだ。これは、石垣島配備の部隊も、将来、同様になるだろう(拙著『要塞化する琉球弧』の掲載資料には、石垣空港・北の候補地の詳細図面もある)。        

 地対艦ミサイル、地対空ミサイルの作戦運用においては、陸海空の統合運用が決定的となる。いわゆる「友軍相撃」(同士討ち)を避けるためであり、無駄撃ちを避けるためでもある。

 保良住民らが座り込みを続ける道路のすぐ下・脇には沖縄島と宮古島を結ぶ宮古海峡が広がっている。周りには、南国の島々特有のリーフは全くなく、水深のある広大な海峡が広がっている。

 自衛隊が、地対空ミサイル部隊の配備について、この保良の位置・地形を選んだことには、地対艦ミサイルの作戦運用からすると不可欠だったということか。                 

 この宮古海峡は、第1列島線のチョークポイントと言われ、現在でも中国の艦船・航空機が頻繁に行き来している。もちろん、中国脅威論者が騒ぐ必要もない、この海峡は排他的経済水域(領海ではなく自由通行可)である。

 宮古島・保良地域が、日米の南西シフト態勢=「島嶼戦争」=海峡戦争(通峡阻止作戦)、とりわけミサイル戦争の「絶好の地域」とされたのだ。だから一旦、宮古島・保良に地対艦ミサイル部隊の弾薬庫、部隊配備を許容したとするなら、次から次へと、日米のミサイル部隊がやってくるのだ。                                 すでに、自衛隊は「高速滑空ミサイル」(ブロック1・2025年度配備)、「極高速滑空ミサイル」(ブロック2・2028年度配備ー「島嶼防衛用高速滑空弾部隊・2個高速滑空弾大隊」[2018年新防衛大綱策定])を決定している。もし、この高速滑空ミサイル部隊の配備が進行したとするなら、宮古島(+沖縄島)配備は、不可避となるだろう。    

 そしてまた、米軍の海兵隊、陸軍部隊の地対艦ミサイル部隊を中心とした部隊配備ー「島嶼戦争」部隊の配備が決定されつつある。この第1列島線=琉球弧が、とりわけ宮古島が、その最大のミサイル戦争の戦場とされようとしているのだ(参照 YouTube「軍事ジャーナリスト・小西 誠が暴く南西シフト態勢―アメリカのアジア戦略と日米軍の「島嶼戦争」(part6))。

 この事態を座して待つだけなのか、それとも連日の猛暑の中で闘いつづける保良住民(→宮古島住民・石垣島住民ら)とともに、これを食い止めるべく闘うのか、今ギリギリのところで全ての「本土民衆」は突きつけられているのだ。

 今なら、まだ、保良ミサイル弾薬庫は止められる!         

 宮古島駐屯地に配備されているのは、ミサイル弾体のない、キャニスターだけの、「空鉄砲」の対艦・対空ミサイル部隊だ。宮古島ミサイル基地は、未だ不完全な、未完成の基地なのだ!
(これはブログ「note」からの転載[2020/8])
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オンライン「島々シンポジウム―要塞化する琉球弧の今」

2021年02月09日 | 軍事・自衛隊

オンライン「島々シンポジウム―要塞化する琉球弧の今」
*第1回「宮古島・保良ミサイル弾薬庫の住民、そして市民運動の現場から!」
・日時 2021年3月7日(日) 14:00~16:00
 ZOOM ビデオウェビナーによるシンポジウム      
 (入場無料・カンパ歓迎。先着500人の事前登録制、下記メールへ申し込み。詳細は本文案内参照)


出演
下地博盛さん(「ミサイル・弾薬庫反対!住民の会」共同代表)
下地 茜さん(同住民の会・宮古島市議)
石嶺香織さん(「てぃだぬふぁ島の子の平和な未来をつくる会」)
楚南有香子さん(同)
軍事アドバイザー・小西 誠さん(軍事ジャーナリスト)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
司会・三上智恵さん(映画監督・ジャーナリスト)

(先島の自衛隊問題に早くから取り組んできたジャーナリストであり、ドキュメンタリー映画「標的の島 風かたか」を2017年に公開)

*ミサイル弾薬庫着工以来、およそ500日、座り込みを続ける保良ミサイル弾薬庫の「住民の会」共同代表・下地博盛さんらの、防衛省を相手にして、決して諦めないその行動の背景はー。

*市行政に風穴を開ける「てぃだぬふぁ 島の子の平和な未来をつくる会」の、宮古島の地下水問題、沖縄県の環境アセスへの提言、そして最近の新市長への質問状など、宮古島のママたちの平和を求める様々な取り組み

*zoomビデオウェビナーは、事前登録制です。視聴者の氏名等は表示されません。先着定員500人で〆切り(3月5日〆切り厳守)
・申し込み用 E:mail shakai@mail3.alpha-net.ne.jp

*〆切り後は、YouTubでLive視聴できます(zoomはパネラーへの質問が可能ですが、こちらは視聴のみ。後日YouTubeのURLをお知らせします)

●主催「島々シンポジウム」実行委員会
連絡先 東京都中野区大和町1-12-10 社会批評社気付
E:mail shakai@mail3.alpha-net.ne.jp

カンパ振込先  郵便振替 00160-0-161276(名義・社会批評社)(「島々基金」とお書き下さい)
*現地の運動支援のためのカンパを、ぜひともお願いします!
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*戦争を体験された長老らの「東アジアの不戦宣言」を支持する!

2020年08月27日 | 自衛隊南西シフト
そして、「不戦宣言」とともに、直ちに「日米の南西シフト」を始めとする東アジアのミサイル軍拡競争ーミサイル基地建設を停止させることを提言する!


*「少なくともまず東アジアを戦争のない地域に―長老たちの提言」(東アジア不戦推進プロジェクト)


●東アジアの全構成国の共同宣言
私たちは、戦争時代を直接体験した最後の世代に属する者として、「最近の世界情勢」と「プロジェクトの思想」が明らかにしたように、このたびの新型コロナウイルス感染症が人類の存続にかかわる深刻な脅威の兆候であるととらえ、人類が全力を挙げてこれに対処できるようにするため、2022年2月22日22時22分22秒という千年に一度の稀有な時点を期して、まずもって東アジアの全構成国の首脳が次のような共同宣言、又は個別同時の宣言を発出することを提言する。

(1)あらゆる対立を超えて人類全体の連帯を図り、人類絶滅の危機を回避するよう努力する。
(2)少なくともまず東アジアを戦争の無い地域とする。
日本国政府のこの宣言への参加を熱望する

上記の宣言を実現するため、まず日本の国民各位がこの提言の趣旨にご賛同下さり、可能であれば各種のグループを作り、最終的には日本国政府のこの宣言への参加を実現するよう尽力して下さることを熱望する。
東アジアの政府を動かす運動を切望する

さらに、東アジアの、私たちと同じく戦争時代を体験した世代の方々が志を一つにし、それぞれの国の国民に訴え、ひいては政府を動かす運動を展開して下さることを切望する。
東アジアのみならず、ほかの

地域の戦争放棄に一歩近づけたい
東アジアのみならず、2022年2月22日という希有な時点を活用し、同様または類似の宣言を発出することのできる地球上の他の地域があれば、戦争放棄という人類の悲願の達成に確実に一歩近づくと信じてやまない。

瀬戸内 寂聴(1922年5月12日)作家・宗教家(文化勲章受章者)
千 玄室(1923年4月19日)茶道裏千家大宗匠(文化勲章受章者)
伊藤 雅俊(1924年4月30日)イトーヨーカ堂 セブンイレブン等創業者
大城 立裕(1925年9月19日)作家
岡田 卓也(1925年9月19日)イオン創業者 イオン環境財団理事長
石原 信雄(1926年11月24日)元内閣官房副長官
西原 春夫(1928年3月13日)元早稲田大学総長
野村 萬(1930年1月10日)狂言師 人間国宝(文化勲章受章者)
谷口 誠(1930年3月31日)元国連大使 元OECD事務次長
澤地 久枝(1930年9月3日)ノンフィクション作家
有馬 朗人(1930年9月13日)元東京大学総長 元文部大臣(文化勲章受章者)
明石 康(1931年1月19日)元国際連合事務次長
花柳 壽應(1931年3月22日)日本舞踊家 元花柳流家元(日本芸術院会員)
平岩 弓枝(1932年3月15日)作家(文化勲章受章者)
三浦 雄一郎(1932年10月12日)登山家 冒険家
森田 実(1932年10月23日)政治評論家
仲代達矢(1932年12月13日)俳優 無名塾代表(文化勲章受章者)
有馬龍夫(1933年6月13日)元駐ドイツ日本国大使 前中東調査会理事長
海老沢勝二(1934年5月5日)元NHK会長

http://www.asianpeace.jp/chourou/index.html

*参考に                       https://news.infoseek.co.jp/article/gendainet_657799/
https://www.asahi.com/articles/DA3S14599898.html
https://www.excite.co.jp/news/article/Harbor_business_226626/

*「自衛隊南西シフトと新冷戦」(後編)https://www.youtube.com/watch?v=7infZM1XSYA&list=LLgjXy2XsRCiN-t7yzIYoJTw&index=7&t=0s

*私たちは、先島―南西諸島の軍事化・要塞化に抗し、同地域の非武装化を求める共同声明」に賛同します! https://blog.goo.ne.jp/shakai0427/e/25eef843499418214e7da3e8bbfb9f56

*深刻化する南西シフト態勢を水路とする日中の軍拡競争(「島嶼戦争」の危機)に対し、全野党・平和勢力は、直ちに軍拡停止ー軍縮を要求しよう! https://blog.goo.ne.jp/shakai0427/e/8b6a89396a4f10cdf7c3aaeea92dc316
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