今、自衛隊の在り方を問う!

急ピッチで進行する南西シフト態勢、巡航ミサイルなどの導入、際限なく拡大する軍事費、そして、隊内で吹き荒れるパワハラ……

電子ブック版『金門島 戦跡ガイド――「台湾有事」の最前線を歩く』の発行

2024年02月11日 | 軍事・自衛隊


はじめに
 金門島は、最近、メディアによってにわかに注目され始めた地域だ。日本ばかりではなく、欧米のメディアでも金門島を報じる動きが広がっている。
 その注目とは、いうまでもなく「台湾有事の最前線の島」としてである。
 実際、金門島に行くと、目の前に中国大陸・厦門の高層ビル群が建ち並び、この島が本当に台湾なのかと驚くばかりだ。大金門島から厦門へは、約10キロ、小金門島(烈嶼郷)からは、約5・4キロの位置にある。これに比べて、金門島から台湾までは、約190キロにもなる。
 金門島を訪れると、確かに、この島はかつては「最前線の島」であり、「中台戦争の戦場」であったことが分かる。
 1949年最後の「国共内戦」を戦い、その後1954年からは第一次・第二次台湾海峡危機を経て、1992年戒厳令解除まで、まさに、「冷戦の島」(マイケル・スゾーニ)であったのだ。
 およそ、この43年間、金門島は戒厳態勢下に置かれ、この小さな島に、島の人口以上の、最大約10万の軍隊が駐屯し、住民はこの軍隊の兵站(補給)を支え、さまざまな地下坑道や軍事施設を造るために動員されるばかりか、「戦闘村」(武装民兵)の兵士としても戦争に駆り出されてきた。

 しかし、金門島は、今「最前線の島」から「平和の島」へ生まれ変わろうとしている。
 かつての軍事施設――多数の地下坑道、要塞、トーチカ、戦車、大砲などは、今日では「戦争遺跡」として全面的に公開され、台湾の人々ばかりか、中国からも多数の人々が訪れ、「平和学習の場」として活用されている。
 というか、金門島を訪れると、台湾政府が、これらの軍事施設を「観光資源」として徹底的に整備(「金門国家公園」)し、大いに活用していることが分かる。
 筆者は、日本の占領下にあったサイパン、グアム、フィリピン、シンガポール、チェジュ島などの戦跡調査を行ってきたが、これほど整備された戦跡を見たのは初めてだ。

 そして、金門島と大陸・厦門の間には、今では直行フェリー便が開通し(2000年1月)、両岸を結ぶ初の光海底ケーブルが敷設(2012年8月)、中国から金門島へ送る海底送水パイプラインもまた完成(2018年8月)したのである。さらに、両岸では、送電線敷設や架橋・海底トンネルも企画されているというが、台湾政府は強く反対しているという。
 いずれにしても、中国と金門島の間では、小三通政策(通商・通行・通便を表す)によって、中国との交流・交易が大きく発展し、金門島自体は、台湾海峡両岸にとってハブ機能を持ち始めている。新型コロナ前は、中国からの来訪者は、年間で延べ50万人を超えていたという。
 
 このような状況の中、ついに金門県地方議員8人から金門島を非武装地帯「平和の島」にという「島から全ての軍隊と軍事施設を撤去」を要求するという声明が発表された。1949年以降、長期間の軍事的屈従を強いられてきた金門島の人々には、平和に生きるためには、もはや自ら金門島の島々を非武装地帯とする他はないのだ。
 言うまでもなく、非武装地帯宣言とは、国際法に定められた「平和に生きる権利」である。1977年ジュネーヴ諸条約においても、第51条に「文民たる住民の保護」が明記され、第59条「無防備地区」、第60条「非武装地帯」が掲げられている。
 これは、第二次世界大戦以後、戦争によって兵士よりも住民の被害が極端に大きくなってきた状況の中、住民を守るために不可避的に制定されたのだ(住民の死亡者は、第二次大戦では48%、ベトナム戦争では95%にも達した)。

 金門島の総面積は、約150キロ平方メートル。この大きさは、琉球列島の宮古島とほぼ同じ大きさだ。島の地形も、宮古島と同じでほとんど山がない。
 宮古島(石垣島)は、中国大陸から約400キロだが、九州本土からは約1千キロも離れている。つまり、金門島と同様、戦争が始まれば「本土」側と異なり、最初の戦火を浴びるのだ。
 この宮古島を始めとした琉球列島に、今日本政府は、「台湾有事」を喧伝し、中国脅威論を煽りながら徹底した軍事化を押し進めている。琉球列島のミサイル基地化であり、対中国への攻撃拠点としての要塞化だ。
 したがって、宮古島・石垣島などの、琉球列島の非武装地帯化は、金門島と同じように「平和に生きる権利」として勝ち取らねばならない。
 このような意味で、金門島――台湾の人々と、そして大陸・中国の人々の連帯が今後、求められるだろう。本書がその一助となることを願う。
     2023年10月21日
                             小西 誠

目  次

はじめに 2
金門島戦跡の行き方ガイド 8

第1章 「台湾有事」の最前線・金門島の現在 10
     ●中台の最前線の島・金門島 10
    ●全島民が軍事動員された要塞島 11
    ●「金の如く固く雄々しい海の門」 12
    ●旧日本軍が駐留していた金門島 15
    ●金城鎮にひっそりと建立された碑  17
    ●台湾海峡は波静か 19

第2章 金門県の県都・金城鎮に張り巡らされた民防坑道(金城鎮) 20
     ●県都地下の民防坑道 20
    ●金城民防坑道の案内 23
    ●県都・金城鎮を防御するトーチカ群  24
    ●海防坑道――翟山坑道 27
    ●金城鎮戦跡の行き方ガイド 29

第3章 中国軍と国民党軍の最大の激戦地――古寧頭戦役(金寧郷) 30
     ●古寧頭戦史館 30
    ●古寧頭戦役とは 34
    ●古寧頭戦役の主戦場――林厝砲陣地 38
    ●1号砲堡・2号砲堡・3号砲堡・4号砲堡 39
    ●戦車がズラリと並ぶ慈湖三角堡 42
    ●海岸を埋め尽くす軌條砦 44
    ●大陸向けにテレサ・テンが宣伝する北山放送壁 46
    ●金寧郷(北西部)戦跡の行き方ガイド 48

第4章 金門島戦争のもう一つの激戦地―瓊林・成功海防坑道(金湖鎮) 50
    ●瓊林戦闘坑道・民防館 50
    ●市民武装のモデル村・瓊林「戦闘村」 52  
    ●金門研究の第一人者が語る戒厳体制 54
    ●住民女性らも民兵として動員 58
    ●海からの出撃拠点・成功海防坑道 60
    ●砲撃戦の戦死者を称える八二三戦史館 68
    ●金湖鎮戦跡の行き方ガイド 70

第5章 軍隊慰安婦たちの記念館「特約茶室展示館」(金湖鎮) 71
     ●公開された「831特約茶室」 71
    ●軍管理下の「軍人規定」 73
    ●台湾軍管理下の「軍事楽園制度」 75
    ●国会の要請で慰安婦制度廃止 77
    ●日本軍の軍隊慰安婦と 77

第6章 八二三砲撃戦の最激戦地・馬山観測所(金沙鎮) 81 
    ●大陸への最短地・馬山観測所 81
    ●馬山放送所を防御する馬山三角堡 87
    ●八二三砲撃戦の最前線・獅山砲陣地 89
    ●金門島最大の要塞型トーチカ・船型堡 93
    ●五龍山成功堡 100
    ●金沙鎮戦跡の行き方ガイド 100

第7章 中国に一番近い島・小金門島の戦争(烈嶼郷) 102
    ●小金門島防御の最前線――鉄漢堡・勇士堡 102
    ●厦門に最も近い湖井頭戦史館 106
    ●湖井頭戦史館南・双口海辺 109
    ●双口海辺のトーチカ群 111
    ●小金門島のL 26拠点という要塞 114
    ●抗日戦士を称える八達楼子 120
    ●非公開の基地跡 121
    ●小金門島を代表する九宮坑道 122
    ●小金門島の将軍堡 126
    ●八二三勝利記念碑と勝利門 129
    ●小金門島戦跡の行き方ガイド 130

第8章 解説 中国軍と国民軍との戦役 50年 131
    ●蔣介石・国民党軍の金門島占領 131
    ●古寧頭戦役とは…… 131
    ●毛沢東による敗北の総括 134
    ●米国・台湾の軍事同盟 136
    ●第一次台湾海峡危機 138
    ●第二次台湾海峡危機 139
    ●「台湾有事」と金門島の現在 142
    ●金門島の非武装地帯宣言を 143

書は、電子ブックとして10月26日に発行される『金門島 戦跡ガイド』(オールカラーバン・本体2000円)の第1章の公開である。Amazonほか、電子ブックの各書店で発売しているので、ぜひとも購読してほしい。

●取次書店 Kindleストア/紀伊国屋書店/楽天Kobo/BookLive!/honto/Reader Store/auブックパス/iBooks Store
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●本日発売 電子ブック版『最新データ&情報2024 日米の南西シフト』

2024年02月09日 | 自衛隊南西シフト


小西誠著、社会批評社刊・定価1100円、発行のお知らせ!


――2022年12月、政府の「国家安全保障戦略」策定などで、琉球列島での対中国のミサイル攻撃基地化が、急ピッチで進みつつある。

 今年3月には、琉球列島ミサイル基地化の総仕上げとも言える、第7地対艦ミサイル連隊が陸自・沖縄勝連分屯地に新編され、24年度内には大分・湯布院駐屯地に、長射程(1500キロ)の第8ミサイル連隊の新編が決定、また25年には「先制攻撃能力」をもつトマホーク部隊の先行配備が決定ー。

 こうした中、先日の2/4付共同通信報道では、昨年の日米共同演習「キーン・エッジ」において、ついに「仮想敵国」を初めて「中国」と明示する演習が行われ、この想定の「台湾有事」に関する作戦計画が完成しつつあるという(仮想敵国の明示は、中国政府への軍事的対抗宣言)。

 こうして今や、日米政府の中国との戦争態勢が急ピッチで作りだされつつある。この戦争の目的は何か? 

 これは、22/10の米国「国家防衛戦略」(NDS)が明示している。それは米国の新冷戦戦略(「中国は最も重要な戦略的競争相手」)であり、この政治目標は、米国にとって替わろうとする中国のアジア・太平洋での覇権の阻止=中国共産党政権の瓦解であり、軍事目標は、そのための「中国海軍の壊滅」(海洋限定戦争)である。

 この歴史的リアリティは、旧ソ連を軍拡競争で崩壊・分裂させた、アメリカの冷戦戦略で明らかである。

 本書は現在、中国との戦争態勢の最前線になりつつある、琉球列島とそのミサイル基地化の現状を中心に、日米の南西シフトのその戦略と実態、進行しつつある最新データを、多数の写真・図表などで提示する。

【目次】
第1章 国家安全保障・防衛戦略による対中国戦争態勢

第2章 要塞化する与那国島への新配備部隊
第3章 日米共同作戦が進行する石垣島
第4章 チョーク・ポイント宮古島の軍事化
第5章 南西シフトの兵站拠点・奄美大島
第6章 南西シフト下の訓練・機動展開基地―馬毛島・種子島
第7章 南西シフトの実戦大演習場と化す薩南諸島
第8章 沖縄島への第7ミサイル連隊・師団新編
第9章 地対艦・地対空ミサイルの危険性
第10章 地対艦・地対空ミサイルの作戦・運用
第11章 「無用の長物」と化した水陸機動団
第12章 南西シフトによる自衛隊兵力の配置
第13章 陸自の南西シフト態勢
第14章 北方シフトから南西シフトへ
第15章 アメリカの対中国戦略
第16章 米軍の琉球列島―九州への中距離ミサイル配備
第17章 米海兵隊・陸軍の第1列島線配備
第18章 アメリカの国家防衛戦略と中国、ロシア
第19章 日本の「インド太平洋戦略」と中国
第20章 日米シンクタンクの「台湾有事」シナリオ
第21章 「台湾有事」下の国民保護と住民避難
第22章 有事態勢に突入する自衛隊員の危機
結 語 岸田政権は中国・DPRK(北朝鮮)との平和外交を行え

《販売電子書店》は、以下です。
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●中国の稼働中の原発は54基、建設中の原発は24基(計78基)、2030年までに100基建設するという予測がある!

2023年12月11日 | 自衛隊南西シフト


●中国の稼働中の原発は54基、建設中の原発は24基(計78基)、2030年までに100基建設するという予測がある!
――その原発の多くが、東中国海(東シナ海改め)の沿岸にある。中国との戦争で、日本の原発が攻撃されたら日本が全滅する、したがって戦争は起こらない、という主張をする人をみかけるが、それは中国も同様だ。


問題は、今想定されている戦争は、「島嶼戦争」=海洋限定戦争(海洋限定の局地戦)であり、互いに「本土攻撃」をしない、という前提で戦略化・作戦化されていることだ(例えば、23/1のCSISのウオーゲーム、ウクライナ戦争のケース)。
つまり、「戦争の敷居」が低くなっていることであり、小衝突が(南・東中国海での)戦火を拡大させ――海洋限定戦争――として発展するという、深刻な危機が近づいていることを認識すべきだ。

今、戦争は、南・東中国海が発火点になるのか、台湾か、尖閣か、いずれから勃発してもおかしくはない、という事態である。
本当の「危機の認識」が必要なときである!


*「次の大戦の最初の戦い
https://note.com/makoto03/n/n45c89676365a
*『ミサイル攻撃基地化する琉球列島―日米共同作戦下の南西シフト』
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784907127282
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
*中国の建設中の原子炉は24基、建設規模で世界一を維持
人民網日本語版 2023年04月27日10:48
中国原子力業界協会は26日、「中国原子力発展報告2023」青書を発表した。それによると、中国が現在建設している原子炉は24基で、建設規模では世界におけるリードを維持している。中央テレビ網が伝えた。
同青書によると、中国は原子炉の長期的な安全・安定運転を維持しており、原子炉の建設を着実に進めている。中国は2022年以降に新たに10基の原子炉を承認し、新たに3基の商業用原子炉の運転を開始し、新たに6基の原子炉の建設を開始した。現在までの中国の建設中の原子炉は24基、総発電設備容量は2681万kWで、世界一を維持している。商業用原子炉は54基、総発電設備容量は5682万kWで世界3位。
中国の22年の原子力発電総設備容量が全国電力総設備容量に占める割合は2.2%、発電量は前年比2.5%増の4177億8000万kWh、全国の総発電量の約4.7%を占め、原子力発電量は世界2位だった。
同青書によると、中国の22年の原子力発電は石炭火力発電と比べると、標準石炭を1億2000万トン近く、二酸化炭素排出量を3億1000万トン近く削減したのに相当する。中国の原子力発電量が持続的に増加し、電力供給の安全保障及び二酸化炭素排出削減の推進に重要な貢献を成し遂げた。同時に中国の原子力発電の安全運転の成果も世界トップレベルを維持している。(編集YF)
「人民網日本語版」2023年4月27日、2030年までに100基建設するという予測がある!
――その原発の多くが、東中国海(東シナ海改め)の沿岸にある。中国との戦争で、日本の原発が攻撃されたら日本が全滅する、したがって戦争は起こらない、という主張をする人をみかけるが、それは中国も同様だ。

問題は、今想定されている戦争は、「島嶼戦争」=海洋限定戦争(海洋限定の局地戦)であり、互いに「本土攻撃」をしない、という前提で戦略化・作戦化されていることだ(例えば、23/1のCSISのウオーゲーム、ウクライナ戦争のケース)。
つまり、「戦争の敷居」が低くなっていることであり、小衝突が(南・東中国海での)戦火を拡大させ――海洋限定戦争――として発展するという、深刻な危機が近づいていることを認識すべきだ。

今、戦争は、南・東中国海が発火点になるのか、台湾か、尖閣か、いずれから勃発してもおかしくはない、という事態である。
本当の「危機の認識」が必要なときである!

*「次の大戦の最初の戦い
https://note.com/makoto03/n/n45c89676365a
*『ミサイル攻撃基地化する琉球列島―日米共同作戦下の南西シフト』
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784907127282
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*中国の建設中の原子炉は24基、建設規模で世界一を維持
人民網日本語版 2023年04月27日10:48
中国原子力業界協会は26日、「中国原子力発展報告2023」青書を発表した。それによると、中国が現在建設している原子炉は24基で、建設規模では世界におけるリードを維持している。中央テレビ網が伝えた。
同青書によると、中国は原子炉の長期的な安全・安定運転を維持しており、原子炉の建設を着実に進めている。中国は2022年以降に新たに10基の原子炉を承認し、新たに3基の商業用原子炉の運転を開始し、新たに6基の原子炉の建設を開始した。現在までの中国の建設中の原子炉は24基、総発電設備容量は2681万kWで、世界一を維持している。商業用原子炉は54基、総発電設備容量は5682万kWで世界3位。
中国の22年の原子力発電総設備容量が全国電力総設備容量に占める割合は2.2%、発電量は前年比2.5%増の4177億8000万kWh、全国の総発電量の約4.7%を占め、原子力発電量は世界2位だった。
同青書によると、中国の22年の原子力発電は石炭火力発電と比べると、標準石炭を1億2000万トン近く、二酸化炭素排出量を3億1000万トン近く削減したのに相当する。中国の原子力発電量が持続的に増加し、電力供給の安全保障及び二酸化炭素排出削減の推進に重要な貢献を成し遂げた。同時に中国の原子力発電の安全運転の成果も世界トップレベルを維持している。(編集YF)
「人民網日本語版」2023年4月27日

*沖縄の友人への手紙(質問への回答)

2023年12月11日 | 自衛隊南西シフト
*沖縄の友人への手紙(質問への回答)


遅くなりましたが、原稿を拝見しました。全体的にはいいのですが、やはり核心の戦争目的のところが引っかかります。
この日米の戦争目的をしっかり認識していないと、この事態の危機的状況が認識できないと思います。全国の反戦平和勢力が陥っている危機的状況が、この問題です。以下の所です。

「いったい中国との「戦争目的」は何なのか。安保3文書には、日本周辺の「力による現状変更を日米の同盟国、同志国が抑止する」、つまり「中国の台湾への武力侵攻を阻止する」ことが目的と書かれています。「日本を守る」ためでなく「中国から台湾を守る」ことが目的とされています。「台湾を守る」ために沖縄に壊滅的な犠牲を負わせ、日本が火だるまになることを覚悟して中国とミサイル戦争をも辞さない。このことが「日本の国益」にかなうことでしょうか。布施祐仁さんは「台湾を守るために中国と戦う。そのことを政府は国民にきちんと説明していない」と指摘しています。全くその通りだと思います。」

しかし「台湾有事」論は、日米の対中軍拡競争―戦争政策のひとつ「台湾カード」である、というのが、僕の分析した結果です。
この日米の南西シフトによる戦争は、沖縄でも話ましたが、南シナ海・東シナ海からか、台湾からか、あるいは、尖閣という島のとりあいからも起こりえるという事態です。

つまり、旧ソ連が米国の軍拡競争で崩壊したように、台頭する経済的超大国・中国、2030年代には、経済的にも米国に取って代わろうとする中国を崩壊させる、共産党政権を崩壊させる、というのが、日米の戦争目的なのです。

――ここから、日米の対中戦争は、「島嶼戦争」=海洋限定戦争であり、海峡戦争なのです。互いに「本土攻撃」はしない、ということ。
米国の専門家は、明確に公言していますよ。米国は中国本土を攻撃しない、中国には、日本本土どころか沖縄島さえも攻撃させないと(暗黙の了解)。

この戦争の「軍事目標」は、「中国の虎の子、中国海軍を壊滅させること」この壊滅さえ果たせば、中国共産党政権は崩壊する、と。つまり、超大国・中国の分裂・崩壊(旧ソ連のように!)なのです。
(もちろん、この海洋限定戦争は、5~10年では決着がつかず、海洋限定戦争から通常型のアジア太平洋戦争、そして世界核戦争に発展することはも不可避になる可能性もあります。)

「支配層の中では「トゥキュディデスの罠」というのが流行っていますが、米中の覇権を賭けた戦いが始まっているという意味では正しいと思います。

時間がありませんので、いくつか資料を提起します。昨日Facebookに投稿した内容と11/27神戸講演会の資料です。ご参考に。
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Facebookの投稿から

●中国の稼働中の原発は54基、建設中の原発は24基(計78基)、2030年までに100基建設するという予測がある!
――その原発の多くが、東中国海(東シナ海改め)の沿岸にある。中国との戦争で、日本の原発が攻撃されたら日本が全滅のする、したがって戦争は起こらない、という主張をする人をみかけるが、それは中国も同様だ。

問題は、今想定されている戦争は、「島嶼戦争」=海洋限定戦争(海洋限定の局地戦)であり、互いに「本土攻撃」をしない、という前提で戦略化・作戦化されていることだ(例えば、23/1のCSISのウオーゲーム、ウクライナ戦争のケース)。

つまり、「戦争の敷居」が低くなっていることであり、小衝突が(南・東中国海での)戦火を拡大させ――海洋限定戦争――として発展するという、深刻な危機が近づいていることを認識すべきだ。

今、戦争は、南・東中国海が発火点になるのか、台湾か、尖閣か、いずれから勃発してもおかしくはない、という事態である。
本当の「危機の認識」が必要なときである!

*「次の大戦の最初の戦い
https://note.com/makoto03/n/n45c89676365a
*『ミサイル攻撃基地化する琉球列島―日米共同作戦下の南西シフト』
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784907127282




●年末状(沖縄の友人からの質問に対する、メールの転載)

2023年01月01日 | 自衛隊南西シフト


○○さま
11/12の「命どぅ宝の会」のシンポジウムでは、大変お世話になりました。沖縄島での久々の講演で緊張しましたが、先島・沖縄島の各地から集まられた皆さんの熱気で無事やり終えました。ありがとうございました。

さて、メールでの、国場幸之助(自民党国防部会長)の件ですが、まさしく書かれているとおりですね。国場幸之助は軍事問題では素人でしょう。

彼をたてるのですから、72年自衛隊の沖縄進駐の時の桑江一佐と同様の役目でしょう。しかも、その就任が今年の8/31と。

沖縄の第2段階の、凄まじい軍事化―住民避難態勢―シェルターづくり、これらの「県民合意づくりの先兵」ということですね。

ところで、「台湾有事」のシナリオを書いてほしいという要望があるということですが、「台湾有事」―沖縄戦のシナリオを書くには、少し時間が掛かります。制服組のOB連中もこのところ作っていますが、あまり現実性のないシナリオばかりですからー。

ただ、日米共同統合演習(「台湾有事」の日米共同作戦計画)に見るように、当局の間では、だいぶ前からシナリオは出来ているでしょう。そして、そのシナリオ通り、安保関連3文書の策定で、第2段階の琉球列島のミサイル要塞化―攻撃基地化が始まり、住民の避難計画も始動した、ということです。
(第3段階もそのうち始まります。「機動展開予定」の陸自部隊と米海兵隊・陸軍(一部)の先島などへの常駐化など(自衛隊の輸送力の根本的脆弱性を見るべき!)。

このシナリオについて、詳しくは時間をかけて考えたいと思いますが、やはり、僕は前から何度も書いていますが、「島嶼戦争」=海洋限定戦争という日米の作戦計画をしっかり認識すべきだと思います(2016年『オキナワ島嶼戦争: 自衛隊の海峡封鎖作戦』参照)。

例えば、「台湾有事」は、中国側からは、台湾への経済封鎖で始まり、これが、「海峡戦争」へ、そして相当時間をかけて「海上戦闘」へと広がるでしょう(米国の台湾政府への「独立の使嗾」という前提での問題)。

しかし、中国の台湾本土侵攻という事態は、全くあり得ない想定です(ここ20年以上)。見ての通り、台湾海峡は約140キロ以上、この海峡を越えることは、現在の中国軍どころか、10~20年先の同軍の軍事力でも不可能に近いでしょう(ナチスさえも、約40キロのドーバー海峡を越えられなかった。保守反動連中の中国軍の沖縄島・本土侵攻などとんでもない荒唐無稽)。  あるいは、事態は「台湾有事」からではなく、東・南シナ海から、戦火が始まることもあり得ます(同時事態の進行も!)。

米日ー英仏豪軍の南シナ海での「航行の自由作戦」においては、今現在、中国との緊張関係から、いつ火がついてもおかしくない事態です。

いずれのケースでも、私たちがしっかり見据えねばならないのは、「先島戦争」(戦闘の初期、最初の段階では、沖縄島は巻き込まない)という「海洋限定戦争」への認識です。2012年「日米の『動的防衛協力』について」(統合幕僚監部)は、米軍と沖縄島をなんとか巻き込みたい、という自衛隊の意図が露骨に出ています。また、トシ・ヨシハラも最近の著作で、中国側が沖縄米軍を巻き込まない戦争態勢づくりを指向していることを、中国側評論家の文書で紹介しています。

ウクライナ戦争(現在のところは、限定・制限戦争)を見れば明らかですが、沖縄島(米軍本体)を戦場にすると、直ちにアジア太平洋戦争に発展します。もちろん、先島戦争は、数年間だけで、その後はアジア太平洋戦争に発展し、十数年後には世界戦争→核戦争になっていくでしょう。いったん、戦争が始まれば、その広がりも不可避です。

しかし、多くの人は、この「現代の戦争の性格」を認識できていないと思います。いきなり、核戦争になるとか(中距離[核]ミサイル配備論も!)、「台湾有事」が、いきなり、日本本土やアジア太平洋の戦争になるとか。

日米中の経済的相互依存関係(世界経済も)をみても、各国の支配層が、この戦争を「限定」したいという意図が、よくわかると思います。自らが自滅したら元も子もないですから、連中も「限定戦争」に留めておきたいという思惑があるでしょう。

もちろん、かつての日米戦争をみても、この戦争は「限定戦争」には留まりません。新冷戦(熱戦)が何年も続き、日米中とも「経済ブロック化」(サプライチェーンの再構築を進めながら)が進み、そして、次第に「通常戦型のアジア太平洋戦争」へ発展し、ついには核戦争へ行き着く、ということでしょう。

これは、沖縄にとって、文字通りの意味で「沖縄戦再来」です。沖縄だけが犠牲になる戦争です。

とてもきつい言い方ですが、日米政府・自衛隊は、まず、沖縄―琉球列島を戦場にし、盾にして、ヤマト政府が生き延びるー、ということです。これは南西シフトの全ての文書から明らかです。

「戦域」を限定する、これは、現代世界の政治・軍事関係からすれば、不可避的に行われる戦略ですね。ウクライナ戦争は、それを証明していますが、別にウクライナ戦争がなくても、初めから想定される事態です。現代国際政治の軍事外交(砲艦外交)政策をみれば、明らかです。

繰り返しますが、事態は、「先島諸島―沖縄の戦場化」という「島嶼戦争」=海洋限定戦争として始まり、これが何年も続きます(覇権戦争)。したがって、先島住民の避難(安保3文書に初めて明記)、シェルター造りという、とんでもない状況が発表されているのです。

与那国島などは、要塞島として無人化する、宮古島などでの「海峡戦争」(チョークポイント)ということから、宮古島の相当部分(保良地区など)の無人化(拙著で北方シフトの例を挙げています。)も、計画化されていると思います。


実際、日米の第2段階・第3段階の軍事化が始まれば、3個機動師団・4個機動旅団・1個機甲師団のうち(有事動員予定)のうち、数個機動師団は「平時配置」にされるでしょう(輸送力の脆弱性から、同じ理由で住民避難も平時から!)。

防衛研究所が数年前に、フォークランド戦史という本を公開していますが、1個旅団1万人の部隊を3カ月補給するのに、100隻の輸送船団を要したということを書いています。

自衛隊の輸送力からすると、全くの問題外ですから、安保3文書でも機動展開部隊(航空・海上の輸送力)の大増強を謳っています。

繰り返しますが、日米中の経済的相互依存関係からも、先島戦争=海洋限定戦争態勢――新冷戦(熱戦)が何年も続き、日米中とも「経済ブロック化」が進行し、そして、最終的にアジア太平洋戦争に行き着くということです。

また、安保3文書の策定は、「台湾有事」態勢作りだけでなく、それを軸にしていますが、同時に、対中軍拡競争を日米が仕掛けたという側面も見るべきだと思います(昨日の発表だけでも、米国の台湾への軍事援助100億ドル!)。日本の軍費費2倍化もそうですね!

現在の全ての状況は、この対中軍拡競争―「新冷戦」(熱戦)という、日米中の覇権抗争、戦争が本格的に始まったということです。これを構造的に変える日本政治体制の転換が必要なことは言うまでもありません。

やはり、この状況を変えるには、沖縄―本土の、特に本土の反戦運動の根源的なたたかいが必要です。

この前の沖縄講演でも話しましたが、本土の平和運動も、良心的知識人も、この事態の認識が、全く出来ていないという根本的問題があります。未だに軍拡一般に反対とか、改憲反対とか、だけで、その軍拡も、戦争も、沖縄―琉球列島から、只今現在、凄まじい形で始まっていることを見ようとしないのです。


少し長くなりましたが、「シナリオ」はそのうちに、なんとかー。

では、「良いお年」とは言えませんが。今年の沖縄は寒いようですから、お体に気をつけてください。
(註 国場組とは、沖縄島の最大の「ゼネコン」)
 写真は、サイパン島・バンザイクリフ

●政府・自衛隊と一体化した、与那国町長が独裁で進める、与那国島の要塞化――棄民政策を糺す!

2022年12月30日 | 自衛隊南西シフト

引用の糸数町長のインタビュー(読売新聞)に明らかな、島の要塞化計画、そして安保関連3文書が計画する島の要塞化をみてほしい。この計画は、住民には、全く知らされていない町長独断の計画だ。

*「政府は国家安全保障戦略に、防衛に活用できる公共インフラ(社会基盤)整備の促進を盛り込み、同町においては、▽自衛隊のF35戦闘機の離着陸を可能とする与那国空港の延伸▽自衛隊の護衛艦などを接岸できる岸壁などの整備――を目指している。町が求める国民保護の観点も踏まえ、調整が本格化」

*「糸数町長は台湾有事を見据え、大型旅客機・大型船舶による町民の島外避難体制を確立するため、与那国空港滑走路の500メートル延伸と、島南部・比川集落への港湾新設を政府に要望」

*「町議会は12月、シェルターの早期設置を国に求める意見書を可決した。一方、糸数町長は「国が設置するのなら歓迎するが、私は町民を一人たりともシェルターに押し込むことはしたくない。そういう事態になる前に、島外避難の道筋を付けるのが先だ」と強調」

*「町は17年、有事に全町民が島外避難することを念頭に国民保護計画を策定」

*「糸数町長は、島外避難を前提に町独自に設けた「危機事象対策基金」についても言及。有事となる前に島外に自主避難する町民に旅費や生活資金を支給するための基金で、9月議会で設置条例案が可決され、積み立てを進める方針[1人あたり100万円]と」

与那国町議会に提案された避難計画基金条例案
*「政府はF35戦闘機の空港利用や護衛艦などの港湾利用などを想定している。沖縄県の玉城デニー知事は自衛隊による利用拡大に懸念を示しており、与那国島での空港・港湾整備についても協議が難航する可能性」

●そして、安保関連3文書で決定されたのは、既存の陸自沿岸監視隊・同電子戦部隊、空自移動警戒隊に加えて、空自警戒監視部隊(固定レーダー基地)、陸自地対空ミサイル部隊の配備である(予定地の町有地の買収についても町長の独断)。



加えて、与那国空港の軍事化、与那国島港湾の軍港化の決定である。


要するに、与那国島は、島の全てが文字通り軍事化=要塞化され、住民は排除・棄民化されるということだ。

――まさに今、与那国島で行われるつつあることは、22年度内に地対艦・地対空ミサイル部隊開設予定の石垣島で、既開設の宮古島・奄美大島で、間違いなく進行する事態である。



●この恐るべき琉球列島の軍事化を、いつまで「本土」の人々、知識人、反戦運動団体は放置するのか? 

この急ピッチで突き進む、琉球列島の戦争態勢(文字通りの「沖縄戦」の再来)と対峙することなく(無視・軽視)、軍拡反対・軍事費2倍化反対、改憲反対一般だけを主張するのは、琉球列島軍事化の容認だ。

また、この恐るべき琉球列島軍事化の実態を一言も批判することなく、この実態を知ることもなく「(安保関連3文書は)戦争が近いと煽り立てる国内向けのプロパガンダ」(内田樹・AERA23/1)にすぎないとして、軽視・無視することも、琉球列島軍事化の容認であり、その協力者だと言うべきだ!


https://www.yomiuri.co.jp/national/20221229-OYT1T50064/...


海洋プレッシャー戦略によるアジア太平洋戦略の大転換⑫

2022年12月27日 | 自衛隊南西シフト
海洋プレッシャー戦略によるアジア太平洋戦略の大転換⑫(「ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会」の連載⑫)


●海洋プレッシャー戦略とは

 さて、「海洋プレッシャー戦略」(MPS:Maritime Pressure Strategy)は、CSBAが2019年5月に「西太平洋における海上プレッシャーの戦略の実施」として発表した報告書である。

 この戦略の核心を結論から言うと、米軍のエアーシー・バトルなどによる対中国の「撤退戦略」を大きく転換し、米軍が対中戦争の初期作戦段階から西太平洋の「シー・コントロール」(SC制海権)確保を目指すとしたことだ。

これは具体的には、中国の日米軍事基地への初期ミサイル飽和攻撃に対処する、米軍の沖縄等からの「撤退戦略」を基本的に修正し、戦争の初期から第1列島線内に「インサイド部隊」が防衛バリアを確立、このインサイド部隊を第2列島線内に配置された「アウトサイド部隊」がバックアップして、「縦深防衛ライン」を確立するということである。そして、これらの「インサイド・アウト防衛」部隊によって、戦争の初期から米軍による西太平洋の「シー・コントロール」を確保する、というものだ。

新たに提案された、この「海洋プレッシャー戦略」の根幹にあるのが、「インサイド・アウト防衛」という作戦構想である。

この作戦構想の実戦的運用指針は、「第1列島線に沿って、精密な攻撃ネットワーク、特に陸上の対艦・対空能力を配備し、生命、財産などという多大なコストを払わずに、迅速に侵略によって利益を得る中国の能力に対抗すること」と同報告書は提示する。つまり、琉球列島へのミサイル配備網の構築だ。

「海洋プレッシャー戦略」の全体的概要について、もっと詳細に見ておこう。 
同報告書は、第1章の冒頭で「戦略の概要」として「陸軍と海兵隊が地上戦を開始することを含む海洋プレッシャー戦略」と銘打っている。ここに海洋プレッシャー戦略の核心的な実戦的指針がある。


つまり、従来の自衛隊による第1列島線配備である南西シフトを、米国の陸軍・海兵隊が、共同作戦として担うということであり、この具体的内容は、米海兵隊、米陸軍を第1列島線へ配備するということだ。

この戦略概要では、具体的には第1列島線に沿って、生存性の高い精密攻撃ネットワーク(ミサイル網)を構築すること、海軍、航空、電子戦、その他の能力を背景に、米国と同盟国は海上の目標に対して「地上配備の対艦ミサイル」を発射する態勢を作ること、「地上配備ミサイルの数」を増やすことを求めている。

また、これら精密攻撃ネットワーク(ミサイル網)は、作戦上、西太平洋の島嶼に沿って「地理的に分散配置」され、これは中国軍のA2/AD脅威の範囲内から中国軍を攻撃するための「インサイド」部隊として機能し、さらに遠く離れた場所からも戦闘に参加する「アウトサイド」の空軍と海軍の支援を受けることになるとしている。

そして、「前方配置された航空部隊」は、新しい基地構想の下、「遠征用飛行場に分散」する。海軍は、第1列島線の背後の位置する場所に出撃するか、あるいは海岸線に沿って出撃して、危険度を減らすという。

これを報告書は、フットボールに例えるならば、生存可能な内部の攻撃網が防御ラインとして機能し、機動力のある外部の空軍と海軍がラインバッカーとして機能することになるという(ラインバッカーとは、ディフェンスラインとディフェンスバックの間、守備陣の真ん中に位置する選手)。

●海洋プレッシャー戦略が想定する戦場

 最後になったが、海洋プレッシャー戦略が想定する有事とは、どのようなものか、想定される戦場はどこか。2021年4月の日米首脳会談以後、日本では、「台湾有事」キャンペーンが異様に強調されているのだが、果たして「台湾有事」はあり得るのか。

海洋プレッシャー戦略では、この有事について「地理的設定・西太平洋」として、「アメリカと同盟国のアナリストは、西太平洋における中国との衝突は、台湾、南シナ海、東シナ海のいずれかで起こると想像している」として、それぞれの可能性について詳述している。

まず台湾だが、「中国が台湾を攻撃した場合、米国は戦争に巻き込まれる可能性があり、米国の指導者たちは、中国が軍事力によって現状を変えようとしないようにとの長年にわたる公然とした警告を行っている」とし、中国軍の作戦計画の多くが、「主な戦略的方向」として台湾を指定していることに言及する。しかし、提言書はいう。

「中国が主目的から注意をそらすために戦域内でフェイントをかけた場合、複数の場所で紛争が発生する可能性がある。米国と中国の間の将来の紛争は、特に中国の利益とそれをパワープロジェクションによって保護する中国軍の能力が高まるにつれて、北朝鮮や西太平洋の向こう側でも起こるかもしれない。そのような場合でも、中国海軍は中国沿岸の基地から第1列島線を経由して出撃する必要がある。また、遠方での軍事行動を行う際には、中国本土を攻撃から守らなければならない。したがって、第1列島線における紛争シナリオを理解することは、そこでの戦争であれ、遠くでの戦争であれ、必要不可欠である」と。

また、提言書は具体的に「南シナ海」では、「中国の南シナ海の軍事化が進行しているため、米軍を巻き込んだ紛争が発生する可能性がある」とし、「南シナ海における中国の軍事化は、意図的な攻撃以外にも、不用意な衝突を引き起こす危険性がある。中国軍と航行の自由作戦を実施している米艦船を含む他国の軍隊との間で対立を引き起こす可能性がある」としている。

さらに「東シナ海」では、「中国が日本と東シナ海の領有権問題で好戦的な態度を続ければ、日本との相互防衛条約に揺るぎないコミットメントを持つ米国を巻き込んだ戦争に発展する可能性がある」とし、「軍事力が互いに近接して影を落とす中で、艦長やパイロットの1つのミスが各国を軍国主義的な危機へと突き動かす可能性がある」としている。

●海洋プレッシャー戦略下の「ライトニング空母構想」と海自の空母運用

ここで付記しておきたいのが、「ライトニング空母構想」と言われる海軍・海兵隊の計画と海自の空母運用についてである。

この「ライトニング空母」構想は、米海兵隊による、2017年の海兵隊航空計画(2017 Marine Aviation Plan)で発表されたもので、具体的には、2025年までに185機のF35Bを運用し、7隻全ての最新鋭強襲揚陸艦にそれを搭載・配備するというものだ。つまり、米強襲揚陸艦にF35Bを搭載した多数の「小型空母」を揃え、既存の大型の攻撃型空母に替わる、「安上がりの空母」を大量に配備するという計画だ。


左が強襲揚陸艦「アメリカ」(ホワイトビーチ)

この構想は、すでに実施されつつある。米海軍佐世保基地には、現在、最新鋭の大型強襲揚陸艦「アメリカ」(全長約260メートル、約4万4000トン)が配備されているが、「アメリカ」には、すでに米岩国基地のF35Bを搭載し、運用する訓練が行われている。

岩国基地では、2017年に16機のF35B(第121戦闘攻撃中隊)が、すでに配備され、以後、これにプラスして32機態勢へ増強されると発表されている。この数は、2~3個の「強襲揚陸艦・空母部隊」が作戦態勢に入るのに充分である。

明らかなように、海自のF35導入と「いずも」「かが」型護衛艦の改修による「空母保有」計画は、この米海軍の「ライトニング空母」構想と連動し、一体化して進行しているのである。

まさしく、すでに始まった「いずも」改修後の米海軍との共同運用の始まりは、露骨なまでの「日米ライトニング空母」計画である。つまり、日米共同作戦による「西太平洋の海上・航空優勢の確保」(制海・制空権)ということだ。

これらライトニング空母計画の背後にあるのは、米海軍の新たな作戦構想である。それが「分散型海上作戦(DMO)」として2018年に発表された。公表したリチャード海軍作戦部長の「海上優勢維持のための構想』では、大型艦船、小型艦船、戦闘艦、揚陸艦、無人艦艇などの戦力を分散して、さまざまな水上艦艇に長射程の対艦・対空ミサイル等の攻撃力を持たせて分散配備するとともに、それらを高度なネットワークで連接する。分散しながらも一体化した攻撃力を発揮する。つまり、敵に攻撃対象を絞らさせず、A2/ADを広く強化するというものだ。

●海洋プレッシャー戦略下の「遠征前方基地作戦」(EABO)

 このように、米国は海洋プレッシャー戦略下で、アジア太平洋の制海権・制空権を確保する、新たな戦略に入りつつある。これが「紛争環境における沿岸作戦(LOCE)」、「遠征前方基地作戦」(EABO)であり、「フォース・デザイン2030」という米海兵隊の大転換戦略だ。


米海兵隊の「フォース・デザイン2030」では、「最初のステップとして、単一の海兵沿岸連隊(MLR)形成を作成する」としており、この部隊が、在沖縄第3海兵遠征軍(3MEF、うるま市のキャンプコートニー)に編成される「海兵沿岸連隊」として、すでに発表されている。

海兵沿岸連隊は、このEABOを実現するために特化された部隊である。これらは、現部隊である3個海兵連隊を改編し、ハワイ、沖縄およびグアムに配備するという。また、この海兵沿岸連隊は、歩兵大隊、対艦ミサイル中隊を基幹とする沿岸戦闘団、沿岸防空大隊、兵站大隊から編成される予定である。この部隊は、2022年までに仮編成され、その後沖縄などへ配備されるという。

「台湾有事」の日米共同作戦計画で明らかになった、琉球列島の40の島々への海兵隊ミサイル配備計画が、この「遠征前方基地作戦」(EABO)として計画化されているのは明らかである。

小西誠(軍事ジャーナリスト・当会オブザーバー)

●参考資料 『ミサイル攻撃基地化する琉球列島―日米共同作戦下の南西シフト』https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784907127282

安保3文書に見る琉球列島の島々の恐るべき「有事の住民避難」―果たして自衛隊は住民避難を行えるのか?

2022年12月19日 | 政治・沖縄・日米共同作戦

(表紙写真は、1944年8月22日、沖縄から九州へ避難する児童生徒らを載せた輸送船・対馬丸で、米潜水艦の攻撃に遭い、児童ら1484名の悲惨な犠牲をだした)

●安保3文書は「沖縄文書」(南西シフト

安保3文書の大改定と問題点については、その歴史的大軍拡(防衛費の2倍化など)について、メディアがさまざまな論評を行っている。特に沖縄の各紙は「沖縄戦の再来」として、連日厳しい論評を加えている。
確かに、この安保3文書は、自民党国防族がいうように「沖縄文書」であり、自衛隊および米軍の南西シフト態勢の大強化――急速な有事=戦時態勢づくりめざす文書であり、このための国民への宣言(宣伝・煽動)だ。

ただ、ここで再度強調しなければならないのは、この安保3文書が「沖縄文書」すなわち、琉球列島の要塞化、とりわけ、この列島が中国へのミサイル攻撃基地(拠点)になることについて、メディアはもとより、反戦平和運動を担っている人々、知識人のほとんどの認識が欠落していることについてだ。
この歴史的大軍拡――軍事費大増強の内容、真の意図を私たちは正確に認識しなければならない。今政府・自衛隊(米軍)が行っているのは、一般的軍拡でもなければ、軍事費2倍化の大増強一般でもない。
繰り返すが、政府・自衛隊が目論み、政治的・軍事的目標にしているのは、琉球列島のミサイル攻撃基地化(拠点化)であり、対中国への戦争態勢だ。

そのために、12式地対艦ミサイルの長射程化(地上発射・空中発射・艦艇発射・潜水艦発射)、ミサイル量産化であり、(極)超高速滑空弾の開発配備であり、極超音速ミサイルの開発配備、米軍のトマホークの配備(500発)である。
安保3文書の発表を見ての通り、琉球列島の島々に、これらのミサイルがズラリと隙間なく配備されるのだ。
この軍事的実態を観ることなく、今なお「軍拡一般」を語る人々は、現実をまったく見る知識も判断力もないのかと、厳しく批判しなければならない。

事態は、決定的に重大な段階に来ている。
「国家安全保障戦略(NSS)」によれば、「現下の我が国を取り巻く安全保障環境を踏まえれば、我が国の防衛力の抜本的強化は、速やかに実現していく必要がある。具体的には、 本戦略策定から5年後の 2027 年度までに、我が国への侵攻が生起する場合には、我が国が主たる責任をもって対処し、同盟国等の支援を受 けつつ、これを阻止・排除できるように防衛力を強化する」としているのだ(2021年3月インド太平洋軍司令官デービットソンの「台湾有事」デマに乗っかる)。

●沖縄ー先島の国民保護・住民避難を明記した安保3文書

さて、この琉球列島のミサイル要塞化をはじめ、安保3文書には、沖縄への陸自師団の設置・増強(現在は旅団)――常設の統合司令部を創設、地対艦ミサイル部隊の7個連隊(琉球列島へ2個連隊)への増強、与那国島などへの地対空ミサイル部隊配備、ミサイル弾体など(弾薬庫増強)の継戦能力強化など、有事事態ー戦争へのさまざまな態勢づくりが唱えられている。

私は、この中において、特に多くの人々が認識・把握できていない「国民保護ー住民避難」問題について、重点的に見ておきたいと思う。
この問題は、政府・自衛隊が「有事事態」をどのように見ているのかを如実に現しているだけではない。この問題は、沖縄ー琉球列島住民にとって、ひじょうに緊迫した、厳しい切実的問題となりつつあるからだ。

結論から言えば、安保3文書は、沖縄ー琉球列島住民への「島外避難」を初めて唱え、現実に「島外避難」(棄民政策)を押し進めようとする、とんでもない、非人道的な、政府決定文書だということだ。しかも、その避難とは「武力攻撃より十分に先立って、南西地域を含む住民の迅速な避難を実現」するという、つまり、「平時の避難」であり、文字通り沖縄ー琉球列島の人々の「棄民政策」である。

では、2022年12月16日発表の安保3文書が、有事の住民避難について、どのように明記しているのか、その文面から見てみよう。

●国家安全保障戦略(NSS)
「国民保護のための体制の強化  国、地方公共団体、指定公共機関等が協力して、住民を守るための 取組を進めるなど、国民保護のための体制を強化する。具体的には、 武力攻撃より十分に先立って、南西地域を含む住民の迅速な避難を実現すべく、円滑な避難に関する計画の速やかな策定、官民の輸送手段の確保、空港・港湾等の公共インフラの整備と利用調整、様々な種類の避難施設の確保、国際機関との連携等を行う。 また、こうした取組の実効性を高めるため、住民避難等の各種訓練の実施と検証を行った上で、国、地方公共団体、指定公共機関等の連携を推進しつつ、制度面を含む必要な施策の検討を行う」

●国家防衛戦略(NDS現大綱)
「機動展開能力・国民保護  島嶼部を含む我が国への侵攻に対しては、海上優勢・航空優勢を確保し、我が 国に侵攻する部隊の接近・上陸を阻止するため、平素配備している部隊が常時活動するとともに、状況に応じて必要な部隊を迅速に機動展開させる必要がある。 このため、自衛隊自身の海上輸送力・航空輸送力を強化するとともに、民間資金等活用事業(PFI)等の民間輸送力を最大限活用する。 また、これらによる部隊への輸送・補給等がより円滑かつ効果的に実施できるように、統合による後方補給態勢を強化し、特に島嶼部が集中する南西地域における空港・港湾施設等の利用可能範囲の拡大や補給能力の向上を実施していくと ともに、全国に所在する補給拠点の近代化を積極的に推進する。 自衛隊は島嶼部における侵害排除のみならず、強化された機動展開能力を住民避難に活用するなど、国民保護の任務を実施していく。 このため、2027 年度までに、PFI船舶の活用の拡大等により、輸送能力を強化することで、南西方面の防衛態勢を迅速に構築可能な能力を獲得し、住民避難の迅速化を図る。」

●防衛力整備計画
「機動展開能力・国民保護 自衛隊の機動展開や国民保護の実効性を高めるために、平素から 各種アセット等の運用を適切に行えるよう、政府全体として、特に南西地域における空港・港湾等を整備・強化する施策に取り組むとともに、既存の空港・港湾等を運用基盤として使用するために必要な措置を講じる。さ らに、自衛隊の機動展開のための民間船舶・航空機の利用の拡大について関係機関等との連携を深めるとともに、当該船舶・航空機に加え自衛隊の各種輸送アセットも利用した国民保護措置を計画的に行えるよう調整・協力する。その際、政府全体として、武力攻撃事態等を念頭に置いた国民保護訓練の強化や様々な種類の避難施設の確保を行う。また、国民保護にも対応できる自衛隊の部隊の強化、予備自衛官の活用等の各種施策を推進す る。」

皆さんは、下記のマークを知っていますか?

東京都国民保護計画の表紙


だが、待てよ!
自衛隊は「軍民分離の原則」、および上のマーク(特殊標識)をご存じか。

ジュネーヴ諸条約第一追加議定書第48条は、以下のように規定する。
「基本原則 紛争当事者は、文民たる住民及び民用物を尊重し及び保護することを確保するため、文民たる住民と戦闘員とを、また、民用物と軍事目標とを常に区別し、及び軍事目標のみを軍事行動の対象とする。」

引用のように、ジュネーヴ諸条約は、「戦闘員と非戦闘員」「軍事目標と非軍事目標」の区別を「基本原則」とし、「軍民分離の原則」を明確に定めている。
この規定は、現代戦(総力戦)において、非戦闘員の住民・市民の戦争による犠牲が膨大化しつつあることが背景にある。第1次世界大戦では住民の死亡5%、第2次世界大戦では45%、ベトナム戦争では95%に及んだ。
この事態から、戦後の1977年ジュネーヴ諸条約第1追加議定書が制定された。そして、2004年成立の国民保護法も、同法に基づく住民避難計画を規定することになったのだ。

さて、マーク(特殊標章)とは、オレンジ色地に青の正三角形で、ジュネーヴ諸条約第1追加議定書「識別に関する規則」にいう特殊標章だ。
赤十字標識と同様、国民保護に従事する航空機・船舶・建物・地区等に目立つように掲げる義務がある。この特殊標章により有事に避難する住民が軍事目標になるのを防ぐ。


*標章は、東京都国民保護計画の表紙にも、沖縄県を始め自治体の保護計画や消防庁、海上保安庁の同計画にも明記。ジュネーヴ諸条約は、以下のように明記する。

第66条 識別 
1 紛争当事者は、自国の文民保護組織並びにその要員、建物及び物品が専ら文民保護の任務の遂行に充てられている間、これらのものが識別されることのできることを確保するよう努める。文民たる住民に提供される避難所も、同様に識別されることができるようにすべきである。

2 紛争当事者は、また、文民保護の国際的な特殊標章が表示される文民のための避難所並びに文民保護の要員、建物及び物品の識別を可能にする方法及び手続を採用し及び実施するよう努める。

3 文民保護の文民たる要員については、占領地域及び戦闘が現に行われており又は行われるおそれのある地域においては、文民保護の国際的な特殊標章及び身分証明書によって識別されることができるようにすべきである。

4 文民保護の国際的な特殊標章は、文民保護組織並びにその要員、建物及び物品の保護並びに文民のための避難所のために使用するときは、オレンジ色地に青色の正三角形とする。

なお、この規定を受け、政府の「赤十字標章等及び特殊標章等に係る事務の運用に関するガイドライン」(2005年8月2日)においても、「特殊標章」を規定している。


●防衛省・自衛隊の国民保護規定
ところが、驚くことに、国民保護を謳う「防衛省・防衛装備庁国民保護計画」(2005年)等には、これらの「特殊標章」の規定が全く記されないのだ。
これについて、救急救助専門の国士舘大中林啓修は「自衛隊に特殊標章規定がないのは専従部隊の提供を予定していない」と解説する。

つまり、自衛隊が予定する国民保護なるものは、当初から住民保護を予定していないのだ。
実際、防衛省の国民保護計画は「国民保護措置の基本的考え方」として「我が国に対する武力攻撃の排除措置に全力を尽すことが主たる任務」であり、「排除措置に支障の生じない範囲で可能な限り国民保護措置を実施」とする(統合幕僚監部の『統合運用教範』も同様の記述)。

ここに規定するように、自衛隊が国民保護を実際上行い得ないのは、圧倒的輸送力不足からである。したがって、安保3文書でも自衛隊は、PFI船舶を含む輸送力の強化を謳っているのだ(自衛隊のPFI船舶は「なっちゃんワールド、はくおうの2隻であり、大型輸送艦は3隻のみ)。
ちなみに、1982年のフォークランド戦争では、英国は1個旅団の兵力と兵站3カ月分を輸送するのに、100隻の大型船舶を要した。『フォークランド戦争史』防衛研究所)。

しかし問題は、この輸送力の圧倒的不足だけではない。もっと根本的大問題が背後にあるのだ。
安保3文書の規定をみてほしい。住民避難が「機動展開能力・国民保護」とセットで記述されている。

つまり、自衛隊は、先に見たように、ジュネーヴ諸条約第1追加議定書がいう、「軍民分離の原則」をまったく認識していない、ということだ。自衛隊がこの原則を認識できていれば、「機動展開能力・国民保護」を一体的に記述するはずがない。

いわば、「強化された機動展開能力」というが、ジュネーヴ諸条約が厳格に規定する「特殊標識を付けた避難専用船舶等」の規定が、どこにも見当たらないのである。
繰り返すが、ジュネーヴ諸条約には、赤十字標章同様、特殊標識を国民保護に従事する航空機・船舶・地区等に目立つように掲げる義務があるだけでなく、この船舶等は、いったん住民保護に使用されたならば、これを再び軍用に使用することは許されないのだ。

ちなみに、ジュネーヴ諸条約第1追加議定書には、次のように明記されている。
*第67条 文民保護組織に配属される軍隊の構成員及び部隊
1 文民保護組織に配属される軍隊の構成員及び部隊は、次のことを条件として、尊重され、かつ、保護される。
(a)要員及び部隊が第61条に規定する任務のいずれかの遂行に常時充てられ、かつ、専らその遂行に従事すること。
(b)(a)に規定する任務の遂行に充てられる要員が紛争の間他のいかなる軍事上の任務も遂行しないこと。
(c)文民保護の国際的な特殊標章であって適当な大きさのものを明確に表示することにより、要員が他の軍隊の構成員から明瞭に区別されることができること(以下略)

このジュネーヴ諸条約の規定は、ひじょうに重要な規定だ。つまり、自衛隊が一旦、避難民の輸送に当たった場合、この当該軍用輸送船等は、今後いっさい、軍用には使えないということだ。
輸送力の圧倒的不足にある自衛隊が、このような住民避難専用任務につくということは、全く不可能というべきだ。これは、以前から、制服組からも度々指摘されていたことである。
にもかかわらず、安保3文書が初めて国民保護法に基づく住民避難について明記することになったのは、沖縄戦の文字通りの再現を危惧する、沖縄等の人々の「反対運動の沈静化」を謀るためだ。

例えば、有名な「対馬丸事件」。1944年8月22日、沖縄から九州へ避難する児童生徒らを載せた輸送船が、米潜水艦の攻撃に遭い、児童生徒ら1484名の悲惨な犠牲をだした。この船は、もともと民間船であったが、戦争中、軍事輸送任務につつき、撃沈されたときも「往路は軍事輸送、復路は疎開輸送」ということであった。


まさに、この対馬丸の悲惨な事態に見るように、安保3文書にみる政府・自衛隊の「国民保護・住民避難」の規定は、「軍民分離の原則」を全く考慮しない、とんでもない暴策と言わねばならない。
それとも、政府・自衛隊は、「有事事態」では避難しない、「平時の避難」だと強弁するのか?
だが、自衛隊は、繰り返し防衛白書などでも明記しているではないか。「平時と有事はシームレスに発展する」と。

結論から言うと、現実は「有事の住民避難は不可能」であり、政府・自治体が行えるのは「厳然たる平時の避難」、つまり、平時からの沖縄ー琉球列島の人々の疎開である。そして、これは何年も続く、沖縄島などからの棄民である。

「国家安全保障戦略(NSS)」の国民保護・住民避難についても「武力攻撃より十分に先立って」避難を進める、と明記する。この文書は、決定的に重要だ。

「台湾有事」キャンペーンに見るように、住民に戦争を煽り、不安にさせ、平時から避難を強いる。
しかし、このような沖縄ー琉球列島の人々の生活を全面的に破壊する避難計画こそは、問題の転倒だ。必要なのは、琉球列島の軍事要塞化を凍結し有事を招かない、中国との徹底した平和外交だ。

安保3文書には、この平和外交の記述がほとんど見られないばかりか、「中国脅威論」がうんざりするほど、繰り返し繰り返し書かれている。この岸田自公民政権の歴史的横暴を私たちは徹底して糺さねばならない。

参考文献 『ミサイル攻撃基地化する琉球列島―日米共同作戦下の南西シフト』
参考資料 2022/12/18付沖縄タイムス






⑥「日米の『動的防衛協力』」による南西シフト

2022年09月29日 | 自衛隊南西シフト
⑥「日米の『動的防衛協力』」による南西シフト  


                        
*この論文は「ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会」メルマガ第60号への投稿記事からです。
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●隠蔽された「日米の『動的防衛協力』について」

 前項のような、日米制服組による内密の南西シフトとして策定された計画が、公然として始まるのは、2010年の「防衛計画の大綱」の改訂であり、2012年の統合幕僚監部による「日米の『動的防衛協力』について」(部外秘文書で非公開)においてである。

 しかし、2000年代初頭に計画された南西シフトが、なぜこのように遅れてしまったのか。この理由はシンプルだ。頼みの米軍が、アフガン、イラク戦争の泥沼から抜け出せなかったからだ。

 すでに明記してきたように、アメリカのイラク戦争などへの一定のメドがたった2010年の米国防総省のQDR、そして、それと連動した同年の「防衛計画の大綱」での策定を経て、自衛隊の南西シフトは公開され、始動する。 

 ただし、ここで公開されたのは、「離島の防衛」の必要性ということだけであり、南西シフトの具体的態勢――その部隊編成・規模・配備場所・時期などについては、一向に公開されることはなかったのだ(筆者は、2016年、防衛省に「南西シフトに関する全文書」の情報開示を求めたが、なんと提出されたのは、「1点13頁」の文書だけである!それ以後、琉球列島の基地建設が進むにつれて、なんと数百点の文書が公開!)。

 さて、この この統合幕僚監部の文書は、「動的防衛協力」と「別紙第2」の、「沖縄本島における恒常的な共同使用に係る新たな陸上部隊の配置」という2つの文書からなる(全文19頁)。

 なお、これら統幕文書は、筆書への情報開示では、全文がほとんど黒塗りであったが、2018年3月、日本共産党の国会質問で、「一市民への開示において同文書の改竄がある」と質問され、問題になった。その後、全文が同党によって公開された(「一市民」とは筆者のこと)。
まず、「動的防衛力」文書の重大さは、公開された文書の図を見れば一見して明らかである。文書は、正面から「対中防衛の考え方」を明記している。

 「平時の抑止」においては、「米軍との緊密な連携により、中国の影響力拡大を抑制」し、「中国の東シナ海の海洋権益を抑止」する。また、「中国のA2・AD能力に対抗し西太平洋での日米の活動を活発化する」。さらに、「有事の対処」としては、「日本の主体的行動及び米軍との共同作戦をもってこれを阻止」し、「米軍の来援基盤の確立を推進し米軍との共同対処」をする、と。

 この文書は、明らかなように「対中防衛」をはっきり宣言するとともに、公然と対中の日米共同作戦(戦略的にはA2/AD戦略)を策定した文書である。
以下略(続きは、以下のリンクからお読みください)
https://note.com/makoto03/n/n1076e6c92a42


「命どぅ宝の会」からー
 いつも活動をご支援いただき誠にありがとうございます。           
 今回のメルマガは当会オブザーバー小西誠さんからの第6回目の寄稿です。自衛隊の南西シフトを考える上で、小西さんがもっとも重要な文書だと指摘する、2012年7月に策定された「日米の『動的防衛協力』について」(統合幕僚監部防衛計画部作成)の解説です。                 
 この文書を通じて現在の日米共同作戦や在沖米軍基地の自衛隊との共同使用など沖縄が直面する課題について具体的分析を加えていただきました。ぜひお読みください。

★新しく賛同人、呼びかけ人になられた方々へ 
過去のメルマガ、沖縄「戦前新聞」のアーカイブをホームページで公開していますので、こちらをクリックして、ぜひご覧ください。
沖縄「戦前新聞」http://nomore-okinawasen.org/category/prewar/
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琉球列島の島々への、対中戦争態勢のための、シェルター造りキャンペーンを許すな!

2022年09月16日 | 自衛隊南西シフト


本日の沖縄関係新聞、東京新聞の報道にありますが、いよいよ自衛隊は「台湾有事」下の対中戦争態勢づくりの一環として、琉球列島住民の「国民保護法に基づく住民避難」の喧伝を開始、その一環として先島の各島々に「シェルター」を造るという方針を打ち出してきました。

この沖縄戦再来という、凄まじい戦争態勢づくりに、今こそ私たちは、全力でNOを突きつける運動を広げねばなりません。

以下は、拙著『オキナワ島嶼戦争: 自衛隊の海峡封鎖作戦』(社会批評社)で2016年に書いてきたものですが、すでにこの段階から自衛隊制服組は、「島外避難が不可能」という事態のなか、島々への「シェルター」造りを提案しています。

――この文字通り、対中戦争を前提とした、島々の徹底的な破壊戦を前提とした、政府・自衛隊の「島嶼戦争」態勢を許してはなりません!

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第7章 国民保護法と住民避難――沖縄を再び「捨て石」とするのか 

「島嶼防衛研究」の住民避難 

自衛隊では、島嶼防衛戦の戦略・戦術研究とともに、島嶼防衛戦での「住民避難」の研究が、さまざまな形で行われ始めている。なぜなら、島嶼防衛戦とは、本書の冒頭でも述べてきたが文字通り島々の破壊戦である。

かつて、サイパン・テニアン・グアムそして沖縄など、これらの小さな島々で起こった島嶼防衛戦は、一木一草も残らないほどの徹底した破壊戦であり、兵士たちだけでなく住民多数が死傷した凄まじい戦場であった。そして、あの時代と同様、いやそれ以上の島嶼防衛戦という名の島々の破壊戦が、今推し進められようとしているのだ。 

これら小さな島々に、彼我双方のミサイルが雨霰のように撃ち込まれ、空から、海からと、凄まじい砲爆撃が行われ(サイパン戦などは1平方メートルに数発)、そして破壊され尽くした島の海岸線に水陸両用車が上陸し、戦車などの砲弾(機動戦闘車など)が飛び交う、激しい地上戦闘が行われるのだ。

 この小さな島々の戦争において、住民たちをどうするのか。全住民を島外に避難させるのか、それとも、島内で避難するのか。 

島嶼防衛戦の住民避難問題の前提について、陸自の横尾和久(3佐)は「マリアナ戦史に見る離島住民の安全確保についての考察」(「陸戦研究」2015年 12月)という論文で、「国民保護法に基づく避難等の措置を実行するためには、武力攻撃予測事態等の認定が必要であり、その事態認定に必要な明白な兆候を要件とする。
しかし島嶼部に対する攻撃は一般に敵侵攻部隊の規模が小さく、侵攻企図の秘匿も容易であるため、侵攻企図を早期に察知することは困難である」と、その予測困難性を指摘する。 

この困難の中で横尾は、「このため有人離島住民の安全確保について考察する場合には『敵が侵攻してくる前の島外避難』と『敵の地上侵攻時に残留住民がいる場合の島内避難』の両方を考察」すべきとしている。 

しかし、横尾が言う、このような「島外避難」は、果たして可能だろうか。 

政府・自衛隊も、島嶼防衛戦は、「グレーゾーン事態」から始まり、シームレスに進行することを想定しているから、事前に住民避難のための武力攻撃事態・予測事態を認定するのは不可能である。なおかつ、もしも政府が、この武力攻撃予測事態の認定なしに、事前に住民避難を指示したとするなら、これは中国に対する「開戦宣言」になってしまい、戦争の挑発にさえなるだろう。 

このような「島外避難」の困難については、同じ『陸戦研究』で大場智覚(2佐)は、「陸上自衛隊は将来戦を戦えるか」と題した論文で、以下のように論じている(「陸戦研究」2013年6月号)。 

「地方自治体が行う国民保護措置に対しては、自衛隊が住民避難などを可能な範囲で支援することとなるが、平時と有事が曖昧な事態に対しては、両方の役割への軸足の設定に大きな困難が伴うことが予想される」 

「事態は認定以前の平素からグレーゾーンにおいては、当初の間は状況が不明であり、作戦準備期間が短縮化され、一挙に有事の状態になる恐れもある。 このような場合、防衛の対象が『国土か』それとも『国民か』という二者択一を迫られ、将来に大きな禍根を残す状況に追い込まれる可能性がある」

 大場もいうように、グレーゾーン事態から有事は一挙に進む可能性があり、全く島外避難を行う余裕はない。この事態を迎えたとき自衛隊は、「国土か、国民か」ではなく、明確に「国土」を優先するだろう。なぜなら、 もともと自衛隊の主任務(自衛隊法第3条)は「国家・国土の防衛」であり「国民」ではない。軍隊が国民を守らないというのは、そのように任務を定めているからだ。
 
このように見てくると、結局、島嶼防衛戦の場合、住民は「島内避難」を強いられるのだが、これに対しても横尾和久は『陸戦研究』で述べている。 

「島内避難については、陸上部隊の責任が重大であるため、陸上自衛隊としても『部隊と住民の分離の徹底』について平素からの充分な研究や準備が必要である」が、マリアナ戦史や沖縄戦を見る限りそれは容易ではなく、島内避難の戦例はいかに困難であるかを示すが、そのためには「国民保護法における強制避難条項の新設(強制避難の措置)」が必要であるという。

また、マリアナ戦史の教訓を反映するなら、「自衛隊の部隊と残留住民を分離するため離島に展開する陸上部隊は『作戦計画に部隊と住民の混在防止施策を織り込み』、地方公共団体は『避難計画に武力攻撃事態における島内避難のケースを想定し、平素から住民用のシェルター等を整備』する」(同上)ことが必要という。 

ここで横尾がたびたび強調しているのは、島嶼防衛戦とは「軍と住民の混合」が前提的であるから、「軍と住民の分離」を徹底しなければならないとし、そのためには「強制避難の措置」をとるのみならず、島内避難の場合は、シェルターまで造るべきだということだ。別の隊内の研究では、イスラエル並みに各戸に地下にシェルターを造れば、島内の経済が潤うという、とんでもない提言さえ主張されている。  

ところで、この島嶼防衛戦について、自衛隊は公式にはどのように言っているのか。先の陸自教範『野外令』には、次のように記載されている。 

「敵の離島侵攻に先んじて、適時に必要な情報を関係部外機関に通報して、先行的な住民避難等ができるように支援する。やむを得ず敵に占領された場合は、住民の島内等避難に努め、作戦行動に伴う被害及び部隊行動への影響を局限する。また、地方公共団体等と連携した適切な広報により、住民に必要な事項を周知させ、住民の安全及び作戦への信頼を確保する。」(第5編第3章第4節「部外連絡協力及び広報」) 

『野外令』の記述は、ただこれだけであるが、主眼は「作戦行動に伴う被害及び部隊行動への影響を局限」するということである。つまり、自衛隊の島嶼防衛戦においては、戦闘行動が最大優先なのであり、住民避難など真剣に考慮していないのだ。 」


写真は、1945年沖縄戦後、避難先から帰還する住民ら

本日の琉球新報

https://ryukyushimpo.jp/kyodo/entry-1584622.html

東京新聞

https://www.tokyo-np.co.jp/article/202446?rct=politics