今、自衛隊の在り方を問う!

急ピッチで進行する南西シフト態勢、巡航ミサイルなどの導入、際限なく拡大する軍事費、そして、隊内で吹き荒れるパワハラ……

『自衛隊の島嶼戦争―資料集・自衛隊の幹部用教範が定めるその作戦』(PART2)』の発行

2019年04月18日 | 書籍
*電子ブック[Kindle]版発行のお知らせ!
 (電子ブックKindle版の先行発売です)

『自衛隊の島嶼戦争―資料集・自衛隊の幹部用教範が定めるその作戦』(PART2)』(社会批評社、小西誠編著・定価1000円、全文451頁)

――新たに策定された『水陸両用作戦教範』『統合運用教範』『統合航空輸送教範』『機雷戦教範』、地対空ミサイル運用の『高射特科教範』など、非公開内部資料(幹部用教科書)を収録した日米の南西シフト態勢を読み解く! 


――『自衛隊の島嶼戦争―資料集・陸自「教範」で読むその作戦』の続編(『野外令』『離島の作戦』『地対艦ミサイル連隊』などを収録、書籍版2800円・350頁、電子ブックKindle版1200円) 


*PART2のKindle版
https://www.amazon.co.jp/dp/B07NCXXP91/ref=sr_1_1…

*PART2の「目次・はじめに・解説」の「なかみ検索!」
https://www.amazon.co.jp/dp/B07NCXXP91/ref=sr_1_1…


奄美大島・瀬戸内分屯地は、巨大弾薬庫(約31㏊)=兵站基地だった!

2019年04月15日 | 自衛隊南西シフト
 奄美・瀬戸内分屯地は、南西シフト態勢の巨大弾薬庫=兵站基地

(駐屯地開設の記者会見する奄美警備隊司令、そのエンブレムは「草薙剣」とハブ!)

 自衛隊の機関紙「朝雲新聞」は、2019年4月11日付で、驚くべき記事を配信した。以下がその内容だ。

 「瀬戸内分屯地は標高500メートル級の山々が連なる山間部の高台にあった。瀬戸内町の市街地から国道58号線を北東に向かい、幾つものトンネルを抜け、曲がりくねった道を20分ほど進むと、緑色に塗られた施設が見えてきた。ここが分屯地だ。
 『三日月』のような細長い形の分屯地の総面積は約48万平方メートル(ヤフオクドーム6.9個分)で、広さは奄美駐屯地に匹敵する。ここの敷地の約3分の2が弾薬や武器を保管する火薬庫となっています。完成は来年度以降になりますが、現在導入された装備品の弾薬はすでに配備が完了しています』と菅広報室長。」(2019/4/11付「朝雲新聞」)http://www.asagumo-news.com/homepage/htdocs/news/newsflash/201904/190411/19041102.html

 私の4月4日付のブログ「宮古島の5倍、石垣島の2・2倍という巨大基地に変貌した陸自奄美駐屯地!」の記述では、この瀬戸内分屯地の弾薬庫面積に関し、南海日日新聞を引用して、この南海紙の報道内容は正確だろうか?と疑問をなげかけていた。以下の記述がそうである。

 「3月31日に報道陣に公表された、この「火薬庫」は、南海日日新聞によると、『30万6551㎡が大型ミサイルの弾薬や小銃などを保管する火薬庫。完成は来年度以降となるものの、現在配備された装備品の弾薬はすでに配備が完了している」

 この疑問の根拠としたのが、図に示された防衛省の情報公開文書の内容だ。ここに示されているのは「貯蔵庫A×5棟 各1000㎡」というものだ。しかし、私自体も、この「貯蔵庫5000㎡」という記述に惑わされたようだ(下記図参照)。


 つまり、この「奄美駐屯地(瀬戸内)施設一覧表」([瀬戸内地区 貯蔵庫地区])に明示された施設等は、明らかに隠蔽し、誤魔化そうとする施設図だ。合計すると、ここに示された施設等面積の合計は、17.144㎡(1.7㏊)、朝雲に明記された約31万ヘクタールの18分の1に過ぎない。
 どういうことか? つまり、この図には弾薬庫(火薬庫)は、その面積を含めてまったく明記されていないということだ。
 
 間違いなく、この明示された施設図は、地上・地表に建てられる施設だけであり、弾薬庫(火薬庫)は、全てが地下に造られるということだ。つまり、瀬戸内分屯地B地区(貯蔵庫地区)の地下が、全て弾薬庫になるということだ。瀬戸内分屯地全体の面積48㏊の、半分強がB地区(貯蔵庫地区)であるとされているから、この約31㏊は図を見るまでもなく、弾薬庫が「地下構造物」として造られることは明らかだ! 約31㏊というと、宮古島駐屯地(22㏊)の約1.5倍の巨大さだ!

(情報公開文書で出された瀬戸内分屯地)

 自衛隊は、宮古島・石垣島・与那国島でも、弾薬庫(火薬庫)を「貯蔵庫」と誤魔化したり、「保管庫」と言ったり、その基地建設地域によってそのつど言い換えている。その典型がこの瀬戸内分屯地の弾薬庫(自衛隊内の通常の名称)である(岩屋防衛大臣は、この誤魔化しがバレたことから、今後、火薬取締法に基づく「火薬庫」に名称を統一するという)。

 31㏊の巨大火薬庫(弾薬庫)は、南西シフトー先島―南西諸島へ投入する巨大兵站基地

 先のブログでも書いてきたが、3/26の開設の奄美大島の2つの駐屯地が、南西シフト態勢への兵站施設・機動展開基地であることを、建設予定の馬毛島(種子島)基地の戦略的位置付けとともに述べてきたが、この瀬戸内分屯地の巨大弾薬庫が、その先島―南西諸島に投入される全部隊の「武器・弾薬」を中心とした兵站基地であることが明らかとなった。
 この奄美大島の基地が兵站基地であることを示す、防衛省の情報公開文書を再度掲載する。そして、この兵站基地=機動展開拠点の戦略的位置付けを示す、防衛省の情報公開文書を示しておこう。これは、拙著『自衛隊の南西シフト―戦慄の対中国・日米共同作戦の実態』にも引用しているが、2014年統合幕僚監部作成による「自衛隊の機動展開能力向上に係る調査研究 調査報告書」と題する文書である。
 この文書によっても、奄美大島ー種子島(馬毛島)が、自衛隊の南西シフト態勢の機動展開拠点であり、「前線基地 先島諸島」→「戦闘地域」への兵站拠点として策定されていることが明らかだ。


 マスメディアが奄美大島の基地建設に報道管制を敷いている理由

 この文字通り隠蔽された奄美大島・瀬戸内分屯地の巨大弾薬庫を見ると、全国の全てのマスメディアが、奄美大島における基地建設について、当初から現在まで一貫して沈黙している理由がわかる、というものだ。そしてまた、この奄美大島と並ぶ馬毛島(種子島)の基地が、米軍のFCLPなどよりも遥かに重大な、自衛隊の南西シフト態勢の基地であることを隠蔽している理由もだ!

 宮古島駐屯地弾薬庫への、中距離多目的誘導弾(ミサイル)の保管の隠蔽問題といい、この奄美大島の巨大弾薬庫自体の隠蔽といい、自衛隊の先島―南西諸島全体が、欺瞞と隠蔽に満ち満ちたものだ。
 戦後初めての自衛隊の新基地を、先島―南西諸島へ造るにあたって、防衛省・自衛隊は、こうした数々の住民だましの手口ー宣撫工作を駆使しようとしている。だが、私たちは、これらの事実一つ一つを暴き、この恐るべき基地建設=基地増殖を食い止めねばならない。

*参考「馬毛島問題での東京新聞を始めとするメディア報道を糺す――日米の巨大軍事要塞島と化す馬毛島のたたかいの重大局面に当たって」https://blog.goo.ne.jp/shakai0427/e/e9cf6ebfc6e9c95e996229ec79949b0a?fm=entry_awp

*参考文献 『自衛隊の南西シフト―戦慄の対中国・日米共同作戦の実態』プロローグの立ち読み
https://hanmoto.tameshiyo.me/9784907127251











奄美、与那国駐屯地に公然と配備された自衛隊の情報機関・情報保全隊―このスパイ機関が宮古島に配備されたのは確実だが、これは重大な住民への背信行為だ!

2019年04月10日 | 自衛隊南西シフト
 奄美駐屯地への情報保全隊(旧調査隊)の配備を無批判的に報道するメディア
 
 まず、冒頭の写真を見ていただきたい。


 これは、しばらく前に私のところに届いた手紙だ。「保全隊が暴走しています」という文とともに、自衛隊情報保全隊の部隊章INTELLIGENCE SECURITY COMMANDが送られてきた。手紙は、おそらくこの部隊に所属する隊員のものであり、保全隊の暴走を危惧する立場からの「告発」だろう。
 問題は、本来は自衛隊内の秘密情報の保持などで、隊員を監視する機関であるはずのこの部隊が、今、公然と、先島―南西諸島に配備され、住民の調査・監視に乗り出しつつあることだ。

 奄美大島・与那国島に配置された情報保全隊――果たして宮古島には配置されたのか?

 まず、自衛隊情報保全隊が、奄美大島などへ配備された事実から確認しよう。
 写真は3月31日、陸自奄美駐屯地から発表された、奄美駐屯地配備部隊の庁舎案内図だ(4月1日付「南海日日新聞」)。このB庁舎の下から3番目にある配置図には、「西部情報保全隊奄美情報保全派遣隊」が配置されている建物が掲示されている。B庁舎の一番下に掲示されているのが、自衛隊内の犯罪を取り締まる警務隊だ。こんな小さな部隊に警務隊が配置されているのも不思議だが、自衛隊情報保全隊の配置は、それにもまして不自然だ。この目的は何か? 



 前提的に確認する必要があるのは、問題は、奄美駐屯地とともに、2016年3月に配備された与那国駐屯地にも、自衛隊情報保全隊が配備されたということだ。与那国島の場合、沿岸監視隊という、わずか160人の部隊だ(配備予定の空自移動警戒隊を含めても約200人余り)。
 この状況からすると、自衛隊情報保全隊は、奄美大島・与那国島だけでなく、宮古島にも配備されたということであり、続く石垣島にも配備されるは確実だということだ。

 治安出動態勢下に隊員監視から住民監視へと変遷した旧調査隊
 
 本来、「部隊等の運用に係る情報保全業務のために必要な資料及び情報の収集整理及び配布を行う」(「自衛隊情報保全隊に関する訓令」第3条「(情報保全隊の任務」)として、部隊内の「隊員らからの秘密漏洩」のために設置された自衛隊情報保全隊(旧調査隊)は、防衛大臣直轄の「常設統合部隊」として、2009年に新たに調査隊から名称替えしてスタートした。この組織は、全国に中央保全隊ほか東北・西部など5つの保全隊が設置されていることから明らかだが、本来の保全隊の組織的配置は、陸でいえば「方面隊規模の大部隊内」への配置。これが、わずか160人の与那国、約600人規模の奄美、そして約800人規模の宮古島駐屯地に配備されるのは、異例の状況である。

 さて、この情報保全隊が、隊員らの調査・監視業務から、大きく離れて、もっぱら住民の調査・監視、スパイ(諜報活動)に任じるようになったのは、自衛隊の主要任務である「治安出動」と関係している。
  すなわち、1960~70年安保闘争による反戦運動の社会的広がりの中で、自衛隊はその最重要任務の1つとして、この時代に治安出動態勢に突入した。もっとも、この自衛隊の「国民を敵にして暴力的鎮圧」を行うという、血なまぐさい任務は、当然にも自衛隊員に動揺を生じさせることなった。

 この自衛隊の恒常的な治安出動態勢づくりは、治安出動態勢下における情報収集、対住民・市民対策として、旧調査隊の工作員を集会・デモなどに監視・潜入させるとともに、これらの部隊が日常的に「隊員監視」という業務から「住民監視」へと任務を変えていくことになったのである。

 住民を調査・監視し、「島嶼戦争」の「対スパイ戦」の任務にあたる情報保全隊 

 あまり知られていないが、自衛隊法の第78条「自衛隊の治安出動」には、「内閣総理大臣は、間接侵略その他の緊急事態に際して、一般の警察力をもつては、治安を維持することができないと認められる場合には、自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。」と規定され、第79条2には、「治安出動下令前に行う情報収集」として、「防衛大臣は、事態が緊迫し……治安出動命令が発せられる……ことが予測される場合において、当該事態の状況の把握に資する情報の収集を行うため特別の必要があると認めるときは、……自衛隊の部隊に当該者が所在すると見込まれる場所及びその近傍において当該情報の収集を行うことを命ずることができる。」と規定されている。
 
 重要なのは、この治安出動の規定は、国内の大規模デモなどを「間接侵略事態」(デモなどは外国からの教唆・煽動)として認定し、武力鎮圧を正当化していることだ。自衛隊が「災害派遣」などで、あたかも「国民を守る」かのような虚構に惑わされている人々にとって、この国民の正当なデモなどを「外国の教唆・煽動による間接侵略」とする規定は驚くことであろうが、これが自衛隊の本質であり、実態なのだ。

 陸自教範『野外令』『対ゲリラ・コマンドウ作戦』が策定する間接侵略論と情報保全隊の住民工作

 まず、陸自教範『野外令』は、第5編「陸上防衛作戦」の第7節「警備」の項で、警備の目的として「敵の遊撃活動、間接侵略事態等に適切に対処」、「間接侵略事態の様相は、多種多様である。……地域的にも局地的な事態から広範囲にわたる事態があり、その程度も非武装の軽度の様相から武装化した勢力による一般戦闘行動に準じる様相」、「間接侵略事態の主体勢力は、識別が困難であり、地域と密着した関係部外機関との協力なくしては、対処が困難である。また、武器使用に当たっては、非軍事組織に対する行動であることに留意」という(社会批評社刊『自衛隊の島嶼戦争ー資料集・陸自「教範」で読むその作戦』所収)。

 そして、結論として「多様な様相に適切かつ主動的に対処するため、早期から関係部外機関と緊密に連携した継続的な情報活動により、適時に情報を入手することが重要」「対象勢力に関する情報を……継続的に確保することが必要」としている。
 
 明らかなように、ここでいう間接侵略事態の対象は、武装したゲリラだけではなく、「非武装程度の様相」の「非軍事組織に対する行動」、つまり、基地・自衛隊に反対する、あるいは戦争に反対する市民・住民ということである。
 つまり、自衛隊は「陸上防衛作戦」の「島嶼戦争」下に、島々の住民対処――これは戦時下の住民避難としての対象ではなく、自衛隊の軍事行動を阻害し、妨害する反対勢力として、住民を対象化しているということだ。
 陸自教範『対ゲリラ・コマンドウ作戦』の第3編「不法対処行動」についても、自衛隊の治安出動下においての、情報収集活動や住民対策を規定しているが、これは別の機会に述べよう。



 自衛隊情報保全隊の住民監視・調査が暴露された裁判

 2007年、自衛隊のイラク派兵に反対する東北6県市民107人らが、自衛隊の情報保全隊の調査・監視の対象となり、精神的苦痛を受けた、として国・自衛隊を訴えた裁判では、仙台地裁・仙台高裁は国に賠償を命じる判決を下し、国・自衛隊はこれに上告せず判決は確定した。
 ここで、情報保全隊が情報収集した内容は、「日本共産党、社民党、ジャーナリストなど報道関係者や、市民や聖職者による自衛隊イラク派遣反対の活動」「反戦運動、また集会などの調査」、その「活動日時・場所・内容、活動に携わった団体の名称や活動の規模、活動団体の代表の氏名など」、「及びそれらの活動が自衛隊関係者または国民世論への影響や活動の今後の見通しの分析」などとされている(Wikipedia)。

 つまり、情報保全隊は、当時のイラク反戦運動に係わる、全国の全ての団体や個人・ジャーナリストなどの情報収集を行っていたということだ。
 このケースは、内部告発によって情報保全隊の調査資料が暴露され、裁判になったというまれな事件である。しかし、かつての1970年前後からの反戦運動では、自衛隊の調査隊が、集会・デモに潜入し、摘発されるケースはたびたびあった。いわば、自衛隊の市民監視態勢は常態化しており、自衛隊もまた、治安出動態勢の一環として正当化していたのだ。

 奄美・与那国、そして「宮古島駐屯地に配置」された自衛隊情報保全隊は撤退せよ!

 だが、現在、先島―南西諸島に配置された自衛隊は、あたかも災害派遣などから「住民を守る」という詭弁を使って、島々の軍事化を図っており、その任務や意図を住民から押し隠し続けている。「住民を守る」とする自衛隊が、なぜ、情報保全隊という諜報機関を配備し続けているのか? この自衛隊当局のウソ、欺瞞を徹底して追及しなければならない。

 例えば、与那国・奄美・宮古島において、防衛省説明会では情報保全隊の配備は、一切説明もない。配備部隊自体が隠されているのだ(奄美では新聞に掲載だが!)。宮古島のミサイル弾体問題と全く同様、自衛隊は住民に対して、配備部隊の編成をも隠し続けているのだ(与那国駐屯地での情報保全隊の配備は、私の請求した情報公開文書で明らかになったのだ)。

 こういう状況が続けば、宮古島駐屯部隊などの、住民から隠された部隊の増強は、留まることはない。一旦配備された部隊の、自治体を無視した大増強が続くことは、沖縄島を見れば一目瞭然である。

 現在、先島―南西諸島の、緊急の重要な問題は、この自衛隊の住民を欺き続けるミサイル弾薬庫などの危険物の排除、住民から隠された部隊配備、そしてなし崩し的に始まる部隊の増強を阻むたたかいとなるだろう。
 

宮古島の5倍、石垣島の2・2倍という巨大基地に変貌した陸自奄美駐屯地!

2019年04月04日 | 自衛隊南西シフト
 これが、住民からも、メディアからも隠されて巨大化した奄美の自衛隊基地だ! 


 3月26日に編成され、3月31日に開設記念式典を行った奄美駐屯地・奄美瀬戸内分屯地という2つの基地。政府・自衛隊は、防衛副大臣、陸幕長以下の西部方面隊幹部50人を引き連れて記念行事を行い、報道陣に初めて、基地の全容を公開した。編成され配備された部隊にも驚くが、もっと重大な事態は、この公開された基地のとてつもない巨大さだ。

(奄美駐屯地[大熊地区])

 この奄美駐屯地(大熊地区)の敷地面積50万4674㎡(50.5㏊)瀬戸内分屯地(瀬戸内町節子地区)の面積48万279㎡(48㏊)という、初めて公表された基地……この大きさは、宮古島駐屯地(千代田地区、22㏊)の5倍、石垣島に予定する駐屯地(46㏊)の2.2倍という面積、福岡ヤフオクドームの7.3個分、6.9個分という大きさだ。

 問題は、この巨大な基地の面積は、この日、初めて報道陣に公開されたということであり、地元の防衛省説明会でもこれまで一切、提示しなかったということだ。かろうじて、鹿児島建設新聞が、この敷地面積を公開していたのだが、この建設業界にさえ、自衛隊はウソをついていたか、建設業界と自衛隊ぐるみで隠蔽を図ったということだ。

(奄美・瀬戸内分屯地、左が瀬戸内分屯地A地区、右が瀬戸内分屯地B地区[弾薬庫地区])

 下記の資料に、2017年の工事開始時の建設業界の発表記事があるが、ここには、奄美駐屯地30㏊、瀬戸内町節子地区28㏊と、はっきり明記されている。要するに、建設業界には、それぞれ半分ほどの敷地面積が公表されたということだ。

 宮古島でも、石垣島でも、与那国島でも、防衛省はあらかじめ基地の敷地面積を公表していた。当然である。だが、このようにウソまでついて、この巨大基地建設を隠していた意図は何か? 

 その内容を結論から言うならば、この奄美大島の基地が、南西シフト態勢下の巨大な「兵站基地」であり、「機動展開拠点」であることを、奄美市民はもとより、メディアからも、国民からも隠しておきたかったということである。
 全てのマスメディアが、3月26日に奄美駐屯地が開設されるまで、一切の報道について沈黙を守ったことがその証拠である。この日まで、在「本土」マスメディアは、1分・1行たりとも、鹿児島のマスコミを含めて、この奄美大島の基地建設について、報道しなかったのだ。貝のように沈黙し続けたのだ(変節した朝日新聞が、奄美大島の基地建設について沈黙し、完全報道規制しているだけでなく、マスコミでは唯一ジャーナリズム精神を発揮している東京新聞でさえ、奄美基地については完全に報道規制しているという、とんでもない、恐るべき状況が現れている)。

 自衛隊情報保全隊(調査隊)が編成配備された奄美駐屯地


 この日、メディアに発表された資料によれば、奄美駐屯地には、警務隊とともに、自衛隊情報保全隊が配備された(上図のB庁舎の配置図参照)。この悪名高い自衛隊情報保全隊とは、自衛隊の対住民情報機関(スパイ)で、かつて調査隊と呼ばれた組織だ。反戦集会などに潜入し、市民・住民の動向調査をするスパイ組織で、今まで多くの反戦集会などで隊員が摘発され、告発された。近い所では、イラク反戦への住民動向調査で、市民多数から裁判所に訴えられ、裁判でそのスパイ活動について認定、賠償されられたこともある(2016年高裁判決確定 https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG16HG1_W6A210C1000000/)。

 問題は、なぜ、わずか300人という規模の部隊に自衛隊情報保全隊が配備されたのか、ということだ。本来、自衛隊情報保全隊は、陸自でも方面隊規模の部隊配置である。この理由は、与那国駐屯地配備の自衛隊情報保全隊と同様である(情報公開文書参照)。つまり、先島―南西諸島配備は、住民の強烈な反対の中での配備であり、今後もこの反対運動の広がりは予想される、したがって、絶えず住民の動向調査が自衛隊にとって必要不可欠と判断したということである(したがって、宮古島駐屯地の自衛隊についても、間違いなくこの情報保全隊は配備されている!)。
 ちなみに、陸自が「島嶼戦争」で予定する、対ゲリラ・コマンドウ作戦では、住民の動向調査が、大きな作戦となっている(陸自教範『対ゲリラ・コマンドウ作戦』)。

 南西シフト態勢下の重大な兵站拠点、機動展開拠点に位置付けられた奄美大島基地


 さて、奄美駐屯地50.5㏊、瀬戸内分屯地48㏊という巨大基地の出現は、自衛隊の南西シフト態勢にどのような意味をもつのか? 
 結論すれば、奄美大島(種子島ー馬毛島)が、先島―南西諸島における「島嶼戦争」=海洋限定戦争の、一大兵站基地・機動展開拠点として、位置付けられていた、ということである。上図の拙著『自衛隊の南西シフト』所収の情報公開文書は、「薩南諸島」(種子島から沖永良部島)の軍事的位置付けが明記されている。
 すなわち、薩南諸島は、「南西地域における事態生起時の重要な後方支援拠点」であり、「奄美大島の名瀬港は海自輸送上の重要な中継拠点」、「空自通信の南西地域の航空作戦の基盤」であり、「薩南諸島は、陸自ヘリ運用上の中継拠点」である、ということだ。
 つまり、南西シフト態勢下の、兵站拠点、機動展開拠点であるが、言い換えれば奄美大島は、「海上兵站」拠点、種子島(馬毛島)は、「航空兵站」拠点だということだ。

 瀬戸内分屯地の巨大弾薬庫!

 この実態を図示しよう。この文書は、地元住民が情報公開で提出させた文書である。

 図は、瀬戸内町節子地区の瀬戸内分屯地のB地区の図と配備表である。この中には、「貯蔵庫A×5棟」、「各1000㎡」というものが明記されている。これこそ、ミサイル部隊の弾薬庫である。別の図には、そのB地区の地下に予定される5本のトンネル上のミサイル弾薬庫が図示されている(第1ミサイル連隊[北海道の弾薬庫参照])。


 この5本の貯蔵庫には、おそらく、数百発のミサイル弾体の保管が予定されている。つまり、先島―南西諸島で、有事に使用するミサイル部隊の弾体すべての保管が予定され、この地域から、先島―南西諸島への兵站・弾薬供給が行われるということだ。

 ところで、3月31日に報道陣に公表された、この「火薬庫」は、南海日日新聞によると、「30万6551㎡が大型ミサイルの弾薬や小銃などを保管する火薬庫。完成は来年度以降となるものの、現在配備された装備品の弾薬はすでに配備が完了している」(4月1日付同紙、宮古島で問題となった、「中距離多目的誘導弾(ミサイル)弾体」も!)ということだ。

*注、2019年3月26日付朝雲新聞によれば、南海日日新聞記事による弾薬庫面積30万6551㎡というのは、正確な報道であったことが記されている。それにしても、この瀬戸内分屯地自体が、南西シフト態勢の兵站拠点出あることが、あらためて裏付けられた。
「『三日月』のような細長い形の分屯地の総面積は約48万平方メートル(ヤフオクドーム6.9個分)で、広さは奄美駐屯地に匹敵する。ここの敷地の約3分の2が弾薬や武器を保管する火薬庫となっています。完成は来年度以降になりますが、現在導入された装備品の弾薬はすでに配備が完了しています』と菅広報室長。」(朝雲新聞)


 だが、この新聞が明記する約30万㏊が、「火薬庫」というのは、正しいのだろうか? 図表には、合計5000㎡と明記してあり、他には大きな「整備工場」などが設置される予定である。これらが、巨大な兵站施設であることは確かであるが、もし、この新聞の記述に間違いがないとすれば、防衛省は情報公開文書にさえ、ウソの図表で公開したということになる。
 いずれにしても、この瀬戸内分屯地が巨大なミサイル部隊の弾薬庫であり、南西シフト態勢の兵站拠点であることは明らかだ。

 奄美大島などの対艦・対空ミサイル部隊配備は、兵站防衛部隊だ!

 さて、この情報公開文書で明らかになったもう一つの重大な内容は、「島嶼戦争」=琉球列島弧の海峡封鎖作戦の、巨大兵站・機動展開拠点として、奄美大島ー種子島などが位置付けられた、作戦化されたということだ。
 従来、日米の「島嶼戦争」において、奄美大島を含む対艦・対空ミサイル部隊の配備は、琉球列島弧の海峡封鎖作戦の一貫、つまり、奄美大島のミサイル部隊配備は、大隅海峡などの通峡阻止作戦の一貫として想定されていた。しかし、この情報公開文書をはじめとする計画が明記するのは、奄美大島などの薩南諸島は、先島―南西諸島への兵站物資の補給・機動展開拠点であるということだ。

(馬毛島ー種子島の軍事化を示す防衛省情報公開文書)

 そして、この兵站拠点を防御するために、海空作戦とともに、地対艦ミサイルを配備するのであり、この地対艦ミサイルを防御するために地対空ミサイルを配備するというものだ。さらに言うならば、この鈍重な、発射したら位置がすぐにバレる、対艦・対空ミサイル部隊を防御するために警備部隊を配備するということである(陸自教範『地対艦ミサイル連隊』『対ゲリラ・コマンドウ作戦』参照、拙著所収)。
 こうして、この兵站拠点など防御するために、次々と「島嶼防衛用高速滑空弾部隊・2個高速滑空弾大隊」(新防衛大綱)や、巡航ミサイル、PAC3などが配備されていくことは疑いない。
 なお、奄美駐屯地には、空自の移動警戒隊の配備が予定されており、同島の最高峰・湯湾岳には、空自の通信基地配備が予定されている(陸海空の配備!)

 拡大し増殖する奄美大島、そして薩南諸島の島々の軍事化

 宮古島への、ウソで塗り固められた、ミサイル弾薬庫設置の問題と同様、奄美大島、与那国島を含め、一旦、造られた軍事基地は増殖していくのみだ。
 奄美大島では、瀬戸内町古仁屋港で、海自の誘致運動が始まり、また徳之島でも、自衛隊の誘致運動が始まりつつあり、この一帯の沖永良部島まで、既に「鎮西演習」という西部方面隊の機動展開演習が繰り返し行われている。「生地訓練」という名の市街地訓練、機動展開訓練である。

(2018年10月、南種子町での統合機動演習[市街地])

 この凄まじい南西シフト態勢下の、薩南諸島の軍事化・要塞化の実態を、全国の心ある人々は、凝視して見てほしい。馬毛島の日米の、特に自衛隊の要塞化を、冷徹に見てほしい。
 そして、何よりも、孤立しながらも、必死にこの巨大な軍事化を阻もうとしている、抵抗している島々の、人々の、声を聞いてほしい。
 奄美大島でも、宮古島でも、石垣島でも、そして沖縄島でも、南西シフト態勢の軍事化とのたたかいは、これからが正念場だ。


*3月31日、奄美大島で提出された住民らの防衛大臣等への「請願書」
     請願書

防衛大臣 殿
統合幕僚長 殿
陸上幕僚長 殿
奄美警備隊兼奄美駐屯地司令 殿
奄美駐屯地瀬戸内分屯地司令 殿
西部方面特科隊第5地対艦ミサイル連隊第301地対艦ミサイル中隊隊長 殿
西部方面隊第2高射特科団第3高射特科群第344高射中隊隊長 殿

日本国憲法第16条「請願」および請願法に基づき、以下の請願を行う。

1、奄美警備隊および地対艦・地対空ミサイル部隊等の自衛隊の部隊は、奄美大島市街地での訓練・演習などでの、いわゆる「生地訓練」などを行わないこと、武器を携行し、武装した部隊の奄美市街地・周辺海岸でのいかなる訓練展開・演習・活動を行わないこと。

2、奄美大島の地対艦・地対空ミサイル部隊等は、アマミノクロウサギ等の生息地に配慮し、夜間における駐屯地外での移動・訓練・演習を行わないこと。       

3、自衛隊配備に関する奄美市民への説明会資料などにある、奄美の景勝地・江仁屋離島での訓練・演習を中止すること(防衛省説明資料「奄美大島への部隊配備について、統合演習等の実施範囲「瀬戸内町」、「鎮西25」演習以後の演習等)。

4、西部方面隊の「鎮西演習」等で行われている、94式水際地雷敷設装置などを使用した古仁屋港などでの、市街地・周辺海域での地雷施設訓練を直ちに中止し、今後とも行わないこと。 

5、自衛隊および米軍の奄美空港、旧奄美空港などを使用した、オスプレイ、軍用ヘリ、軍用航空機での訓練・演習を行わないこと。

6、自衛隊の各級指揮官は、休日等における隊員の事故防止に努め、市民の平穏な生活を保障すること。

 2019年3月31日
                     奄美市名瀬●町○○番地 氏名(奄美市民の連名)


*鹿児島建設新聞(2017/9/7)
防衛省は、奄美大島に新設する駐屯地の整備費として2016年度予算案に約86億7000円を盛り込んでおり、造成と実施設計に着手する。また、鹿屋航空基地では、アメリガ軍の訓練に伴う施設整備費として約11億円、湯湾岳で通信所開設に向けて約10億1000万円を配分した。 
 駐屯地を新設する場所は、奄美大島の2カ所。奄美市の場所は、「奄美カントリーの一部」で敷地面積は約30ha。16年度は約45億円。 
 施設概要は、RC造4階建約8200㎡と約6000㎡の隊庁舎2棟をはじめ、訓練施設(RC造平屋建て約1万1200㎡)、体育館(同2階建約1500㎡)のほか、食房・浴場・厚生施設、車両整備場ほか27棟。 
 瀬戸内町は、節子地区の町有地で敷地面積は約28ha。16年度予算は約41億円。主な施設は、隊庁舎がRC造2階建約6300㎡、体育館(同2階建約1500㎡)、食厨・浴場・厚生施設、車両整備場など23棟などの設置を計画。官舎は、阿木名地区を選定した。 
 鹿屋航空基地では、アメリカ軍岩国基地に展開している空中給油機KC-130型機の訓練用地として約5haのコンクリート舗装を実施。契約ベースの事業費は約22億円。 
 大和村と宇検村にまたがる湯湾岳には、航空警戒管制の通信開設所に向けて、用地取得と通信装置の製造を予定している。 
 また、南西地域における移動式警戒管制レーダーの展開基盤整備は、約3億円を計上。奄美市に整備する駐屯基地内に整備することにより、隙のない警戒監視体制を保持する。http://www.senmonshi.com/archive/02/02D56TLjT53226.asp?fbclid=IwAR1DZ6dhR1jU5GhuCuBUwfpydrttFwgHvng4q7kejDt48mkSRYogb4ilWCw