今、自衛隊の在り方を問う!

急ピッチで進行する南西シフト態勢、巡航ミサイルなどの導入、際限なく拡大する軍事費、そして、隊内で吹き荒れるパワハラ……

広告

※このエリアは、60日間投稿が無い場合に表示されます。記事を投稿すると、表示されなくなります。

攻撃型空母・島嶼ミサイル防衛・宇宙軍拡を推進する新防衛計画の大綱

2018年12月18日 | 自衛隊南西シフト
 新大綱と新中期防の発表

 政府は、12月18日の閣議で新「防衛計画の大綱」と新「中期防衛力整備計画」(2019~23年度)を決定。5年間の軍事費整備の金額27兆4700億円という過去最大規模を打ち出した。前大綱の「統合機動防衛力」に替えて「多次元統合防衛力」という基本概念を打ち出したが、単なる言葉遊びだ。なるほど、宇宙、サイバーなどの新領域を「死活的に重要」とし、陸海空自衛隊の「領域横断(クロス・ドメイン)作戦」を展開するとしているが、最大の戦略は、中国脅威論ー対中抑止戦略に基づく、南西シフト態勢にある。

(写真は「いずも」型空母「かが」)#自衛隊 #南西シフト #沖縄 #宮古島 #石垣島 #奄美大島 #種子島 #防衛計画の大綱
*「防衛計画の大綱」は、10年先の日本の安全保障を見通して作成するとしており、前大綱は2013年に策定されている。わずか5年で改定された、その意図は、明らかだ。つまり、前大綱に明記されていない、「攻撃型空母」の導入、「高速滑空弾部隊」「弾道ミサイル防衛部隊」などの導入がその目的だ。

 実際、前大綱に比べて、新大綱は、北朝鮮脅威論に替えて、中国脅威論を全面に押しだした(前大綱は、第1に北朝鮮脅威論、新大綱は、第1に中国脅威論)。それは以下のように言う。
 「米国の中国やロシアとの戦略的競争」(筆者注、2018年国防総省「国家防衛戦略(NDS)」など)を前文として、次のように言う。
 「中国は、既存の国際秩序とは相容れない独自の主張に基づき、力を背景とした一方的な現状変更を試みるとともに、東シナ海を始めとする海空域において、軍事活動を拡大・活発化させている。我が国固有の領土である尖閣諸島周辺においては、我が国の強い抗議にもかかわらず公船による断続的な領海侵入や海軍艦艇による恒常的な活動等を行っている。太平洋や日本海においても軍事活動を拡大・活発化させており、特に、太平洋への進出は近年高い頻度で行われ、その経路や部隊構成が多様化している。南シナ海においては、大規模かつ急速な埋立てを強行しその軍事拠点化を進めるとともに、海空域における活動も拡大・活発化させている。」
 「中国は、……高い水準で国防費を増加させ、核・ミサイル戦力や海上・航空戦力を中心に、軍事力の質・量を広範かつ急速に強化している。」
 「中国は、……また、ミサイル防衛を突破するための能力や揚陸能力の向上を図っている。このような軍事能力の強化は、周辺地域への他国の軍事力の接近・展開を阻止し、当該地域での軍事活動を阻害する軍事能力、いわゆる「接近阻止/領域拒否」(「A2/AD」)能力の強化や、より遠方での作戦遂行能力の構築している」
 前大綱に比べて、驚くべき中国脅威論の鼓吹だ。そして、剥き出しの対中国の対抗戦略を唱えている。

 新大綱・新中期防で新たに新設される部隊

 さて、この新大綱の饒舌な、まとまらない長文よりも、新中期防で「新設される部隊」を検討した方が、新大綱の内容を理解するのに都合がよい。それは、以下の新部隊として明記されている。

 ●陸海空の共同部隊
 *サイバー防衛部隊・1個防衛隊
 *海上輸送部隊・1個輸送群


 ●陸自
 *島嶼防衛用高速滑空弾部隊・2個高速滑空弾大隊
 *弾道ミサイル防衛部隊・2個弾道ミサイル防衛隊


 ●海自
 *護衛艦・掃海艦艇部隊2個群(13個隊)

 ●空自
 *無人機部隊・1個飛行隊
 *空中給油・輸送部隊ー1個飛行隊を新編
 *空自戦闘機部隊・13 個飛行隊(1個飛行隊新編)
 (上記の戦闘機部隊 13 個飛行隊は、STOVL機で構成される戦闘機部隊を含む)

 攻撃型空母搭載のF35Bの運用は空自に!

 上の新中期防の編成表を見ると、「いずも」型の改修空母に搭載するF35Bの運用は、空自ということになる。STOVL機とは、Short TakeOff/Vertical Landing、短距離離陸垂直着陸機、F35Bだ。これは、新中期防ではこう述べている。

 「柔軟な運用が可能な短距離離陸・垂直着陸(STOVL)機を含む戦闘機体系の構築等により、特に、広大な空域を有する一方で飛行場が少ない我が国太平洋側を始め、空における対処能力を強化する。その際、戦闘機の離発着が可能な飛行場が限られる中、自衛隊員の安全を確保しつつ、戦闘機の運用の柔軟性を更に向上させるため、必要な場合には現有の艦艇からのSTOVL機の運用を可能とするよう、必要な措置を講ずる。」

 空母を「多用途運用護衛母艦」と称するとしていたが、その名称は新大綱などでは明記されていない。報道では、F35B・42機を運用するとしているが、この新中期防での調達は、F35Bは、18機(新中期防別表に、「戦闘機(F-35A)の機数 45 機のうち、18 機については、短距離離陸・垂直着陸機能を有する戦闘機を整備するものとする」と)
 この新中期防のF35B・18機という態勢は、まずは「いずも」型空母2隻改修ということだろう。そして、これはいずれ、F35B・42機態勢ー3隻の「空母機動部隊」編成となるだろう。
 これら攻撃型空母の運用態勢は、新中期防では「太平洋側の空の対処能力強化」とあるから、琉球列島弧の太平洋側での運用となる。つまり、琉球列島弧の配置された対艦・対空ミサイル部隊に守られ(島々の影に隠れ)、運用されるということだ。しかし、「動く棺桶」と蔑称される空母を本格的に運用するということは、将来は、南シナ海・インド洋まで進出する「帝国海軍」を目指しているのは間違いない。

 「島嶼戦争」の新部隊編成

 しかし、新大綱で政府が盛んに宣伝する「多次元統合防衛力」構想に基づく「領域横断(クロス・ドメイン)作戦」として、「サイバー防衛部隊1個防衛隊」及び「電磁波作戦部隊」が新編されるが、それ以上に大編成、新編成されるのが、「島嶼戦争」態勢のための新部隊である。
 新中期防によると、陸自には、「島嶼防衛用高速滑空弾部隊」として、「2個高速滑空弾大隊」の編成が決定された。もはや、単なる研究開発段階ではなかったということだ。そして、「弾道ミサイル防衛部隊」として、「2個弾道ミサイル防衛隊」ーイージス・アショアーの新編成だ。さらに、海自では、「海上輸送部隊1個輸送隊」が、空自では、「空中給油・輸送部隊1個飛行隊」、「無人機部隊1個飛行隊」が新編成される。この他に、さらに、「スタンド・オフ・ミサイル(JSM、JASSM及びLRASM)の整備を進める」ほか、「新たな島嶼防衛用対艦誘導弾及び極超音速誘導弾の研究開発を推進」として、引き続き「島嶼戦争」用の「対艦・極超音速巡航ミサイル」導入が検討されている。

 水陸機動団の3個連隊目の新編成

 そして、引き続き南西シフト態勢のために「機動運用を基本とする作戦基本部隊(機動師団・機動旅団)」の新編成に加え、「航空機等での輸送に適した機動戦闘車等を装備し、各種事態に即応する即応機動連隊」が、引き続き新編される。そして、この機動師団・機動旅団に加え、「1個水陸機動連隊の新編等」により強化された水陸機動団が編成される。つまり、九州・佐世保にすでに編成された水陸機動団2個連隊に加えて、1個連隊が新編されるが、この配備先が沖縄島と予定されているのだ。
 新中期防では「また、引き続き、南西地域の島嶼部に初動を担任する警備部隊の新編等を行うとともに、島嶼部への迅速な部隊展開に向けた機動展開訓練を実施」として南西シフトの機動展開演習を重視している。

 機動展開能力強化と統合衛生

 さらに、新中期防では、「機動・展開能力」と称して、「島嶼部への攻撃を始めとする各種事態に実効的に対応するためには、……状況に応じた機動・展開を行うことが必要である」とし、「このため、水陸両用作戦能力等を強化する。また、迅速かつ大規模な輸送のため、島嶼部の特性に応じた基幹輸送及び端末輸送の能力を含む統合輸送能力を強化するとともに、平素から民間輸送力との連携を図る。」としている。
 この南西シフト態勢のために、奄美大島・種子島(馬毛島)などの、機動展開拠点の基地化・要塞化が押し進められているが、この海上輸送力の強化として民間船舶・ナッチャンWorldなどのフェリーがすでに動員されている。これに加えて、新中期防では、新たに陸自に「島嶼部への輸送機能を強化するため、中型級船舶(LSV)及び小型級船舶(LCU)を新たに導入するとともに、今後の水陸両用作戦等の円滑な実施に必要な新たな艦艇の在り方について検討」として、米軍などが保有する「上陸用舟艇」などが、初めて陸自の船舶輸送部隊として配備がなされる。

 また、新中期防では、「島嶼戦争」の実戦態勢強化の一環として、すでに謳われていた「統合衛生」についても明記されている。「各種事態への対処や国内外における多様な任務に対応し得るよう、衛生機能を強化する必要がある。このため、隊員の生命を最大限守れるよう、第一線から最終後送先までのシームレスな医療・後送態勢を強化する。その際、地域の特性を踏まえつつ、南西地域における自衛隊の衛生機能の強化を重視する。また、自衛隊病院の拠点化・高機能化等により、効率的で質の高い医療体制を確立する。」
 この、いわゆる「野戦病院」が、埼玉県入間市の空自基地の近くに建設される自衛隊病院である。

 最後に明記すべきなのが、従来、「民生用」として盛んに言われていた「淮天頂衛星システム」が、この新中期防で軍事用として明らかになったことだ。「準天頂衛星を含む複数の測位衛星信号の受信や情報収集衛星(IGS)・超小型衛星を含む商用衛星等の利用等」と。これは、石垣島・宮古島・沖縄島・種子島を始めとする琉球列島弧を拠点に、すでに設置されているものだ。精度数㎝というこの衛星システムは、地対艦ミサイルや巡航ミサイルのGPS誘導のための軍事用であったということだ。
 
 対中・日米共同作戦態勢下、新冷戦を作りだそうとする新大綱・新中期防をストップせよ

 安倍政権下の、この新大綱・新中期防のもくろみは、もはや明白である。安倍政権は、この戦後最大の南西シフト態勢を突破口とする大軍拡において、新冷戦態勢を作り出そうとしているのだ。
 米日中の(米日の仕掛ける)、アジア太平洋全域を巻き込んだ軍拡競争が、今、始まろうとしている。重要なのは、このような安倍政権の軍拡政策が、民衆の社会保障費などを徹底して削り落とし、消費税などの増税を行い、つまり、民衆の多大の犠牲の上になされようとしていることだ。自民党・自衛隊制服組の中からは、すでに「防衛費2倍化」が打ち出されている。
 この状況のなか、私たちは、真剣に「軍拡停止・軍縮」の要求を掲げ、先島―南西諸島の「非武装地帯化」を求めるべき秋にきている。

 *新大綱・新中期防の他の重要点
・「グレーゾーンの事態は、国家間の競争の一環として長期にわたり継続する傾向にあり、今後、更に増加・拡大していく可能性がある。こうしたグレーゾーンの事態は、明確な兆候のないまま、より重大な事態へと急速に発展していくリスクをはらんでいる。」
・「安全保障協力の強化 自由で開かれたインド太平洋というビジョンを踏まえ、地域の特性や相手国の実情を考慮しつつ、多角的・多層的な安全保障協力を戦略的に
推進する。その一環として、防衛力を積極的に活用し、共同訓練・演習、防衛装備・技術協力、能力構築支援、軍種間交流等を含む防衛協力・交流に取り組む。」
 ――「オーストラリアとの間では、相互運用性の更なる向上等」
 ――「ンドとの間では、戦略的な連携を強化する観点から、「2+2」等の枠組みも活用しつつ、海洋安全保障を始めとする幅広い分野において、共同訓練・演習や防衛装備・技術協力を中心とする協力を推進する。また、日米印三国間の連携を強化」
 ――「英国やフランスとの間では、インド太平洋地域における海洋秩序の安定等のため、「2+2」等の枠組みも活用しつつ、より実践的な共同訓練・演習、防衛装備・技術協力、二国間で連携した第三国との協力等を推進する。欧州諸国並びにNATO及び欧州連合(EU)との協力を強化する。カナダ及びニュージーランドとの間では、共同訓練・演習、二国間で連携した第三国との協力等を推進する。」

・「統合幕僚監部において、自衛隊全体の効果的な能力発揮を迅速に実現し得る効率的な部隊運用態勢や新たな領域に係る態勢を強化するほか、将来的な統合運用の在り方として、新たな領域に係る機能を一元的に運用する組織等の統合運用の在り方について検討の上、必要な措置を講ずるとともに、強化された統合幕僚監部の態勢を踏ま
えつつ、大臣の指揮命令を適切に執行するための平素からの統合的な体制の在り方について検討の上、結論を得る。」(これは、「南西統合司令部」設置の件だ!)
*新大綱全文
http://www.mod.go.jp/j/approach/agenda/guideline/2019/pdf/20181218.pdf

*新中期防全文
http://www.mod.go.jp/j/approach/agenda/guideline/2019/pdf/chuki_seibi31-35.pdf

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

自衛隊の南西シフトに対する、反戦左派勢力の「沈黙」と終焉―60年・70年安保闘争を闘った勢力はどこに行ったのか?

2018年12月13日 | 自衛隊一般
 自衛隊の南西シフトに対して左派勢力はなぜ「沈黙」するのか!

 自衛隊の南西シフト態勢は、来年3月の宮古島・奄美大島への自衛隊配備開始に向け、急ピッチで突き進んでいる。その態勢の戦略的環とも言える石垣島でも、防衛省・自衛隊は来年2月着工を宣言――さらに「薩南諸島の機動展開拠点」づくりを急ぐ種子島(馬毛島)でも、用地買収(島の軍事化)へ向けての動きが加速し始めた。まさしく、前回ブログの「鎮西30演習」で報告したごとく(陸自幹部の公言)、「(宮古島・奄美大島配備の)中SAMとSSMのミサイル部隊を配備する計画に、陸自幹部は『即応態勢は整う。後は政府がいかに早く事態レベルを決められるかだ』」(11/21付西日本新聞)ということなのだ。

 (2018/10/22、南種子町で統合水陸両用演習を行う水陸機動団)
 #自衛隊 #南西シフト #沖縄 #宮古島 #石垣島 #奄美大島 #種子島

 首都圏「反自衛隊闘争」の牽引力だったグループの南西シフトへの「沈黙」

 70年安保闘争闘争以来、長年に亘って地域で反戦・反自衛隊のたたかいを推進してきた、首都圏の反戦グループの活動は、ほとんどの反戦勢力や野党勢力が、「自衛隊の現実的認知・承認」という「転向」を行っている中では、称賛に値するすばらしい活動だ。
 しかし、先に見るような南西シフト態勢の進行の中での、このグループのそれへのほとんど「沈黙」といういうべき内容は、厳しく批判せねばならない。なぜなら、このもっとも戦闘的で、もっとも反戦をたたかってきた集団がこの状況では、「本土」の先島―南西諸島への自衛隊配備問題への反対運動は、心もとないからである。

 例えば、彼らは、この間どういう主張をしているのか。そのチラシを見てみよう。
 「改憲を先取りする新しい『防衛大綱』に反対する12・15集会」では、以下のようにいう(【主催】大軍拡と基地強化にNO!アクション2018」の呼びかけ全文)。
 「安倍政権は、自衛隊を憲法に明記する条項を追加しようとしています。何とかして憲法に自衛隊を書き込もうとしているのです。 また、この年末をめどに、新しい「防衛大綱」が策定されようとしています。それには、「敵基地攻撃力」の保有にまで踏み込むことが盛り込まれると言われています。 この新しい「防衛大綱」に基づいて、来年度から始まる「中期防衛力整備計画」には、長距離巡航ミサイルなどの取得が盛り込まれると思われます。
他にも、南西諸島の自衛隊増強や「イージス・アショア」の導入など、来年度の防衛費が史上最大の5兆3千億円もの予算になるのは必至です。
その背景には、米軍と自衛隊の役割分担の見直しがあります。その実情を踏まえ、新しい「防衛大綱」の問題点を明らかにし、大軍拡に反対する論議を深めていきたいと思っています。是非、ご参加ください。」

「『敵基地攻撃力』を持つな! 2019年度防衛省概算要求を斬る! 9.11学習討論集会」ではー(呼びかけ全文)、
 「安倍政権は、自衛隊明記条項の追加改憲に先行して、新しい「防衛大綱」を策定し、「専守防衛」を大きく逸脱する「敵基地攻撃力」の保有に乗り出そうとしています。2019年度防衛予算は、新しい「防衛大綱」の下での「中期防衛力整備計画」の初年度予算になります。その額は、過去最高の5兆3千億円にも達すると報じられています。概算要求の問題点を分析するとともに、この学習と討論を踏まえて、大軍拡をやめるよう防衛省に求める申し入れを行います。学習討論集会、並びに防衛省への申し入れ行動にご参加ください」

 問題は今、「新防衛計画の大綱」の策定などで始まっている自衛隊の凄まじい軍拡を、これらの人々は、「一般的軍拡」だと思っているということだろう。結論的に批判すれば、これらの主張は、F35B導入=改修空母の導入にしても、巡航ミサイル、スタンド・オフ・ミサイル、イージス・アショアの「敵基地攻撃能力」についても、水陸機動団などの編成やオスプレイ配備などの、陸海空自衛隊の全ての大増強が、「島嶼戦争」態勢構築を口実に突き進んでいることを見ようとしないのである。つまり、「島嶼防衛態勢」と言えば、全ての基地建設、配備、装備の導入、軍事費の大増額が許されるとしているのが、安倍政権と自衛隊である。
 しかし、この南西シフトを突破口とする大軍拡について、残念ながら彼らは「他にも、南西諸島の自衛隊増強」というような、「小さな一つの課題」としか捉えようとしない。この傾向は、ほとんどの全国の左派勢力がもっているトンデモ認識である。

 だが、すでに見たように、自衛隊(日米)の南西シフト態勢は、その戦略構想に、中国脅威論と日米の「対中・日米共同作戦」態勢――対中抑止戦略(新冷戦=[暖かい戦争論])があることは明らかだ。2017年~2018年の米政権の「国家防衛戦略(NDS)」「国家安全保障戦略」(NSS)」では、公然とそれを主張しているのだ。

 もっとも重要なのは、これら反基地・反自衛隊闘争をたたかってきた人々が、先島―南西諸島で必死に闘っている住民たちの姿、苦闘を見ようとしないことだ。これらの軍拡は「一般的」になされているのではない。先島―南西諸島への住民たちを蹂躙しながら、分断しながら、突き進みつつあるのだ。再び「沖縄戦」を強いる、としてだ。あの先島―南西諸島の島々の基地建設の実態を、はっきりと見てほしい。
 それは、島々を無残にも破壊し、貴重な動物・植物・水資源を破壊し、島人らを押しつぶすかのように急ピッチで突き進んでいる。南西シフト態勢の完成――戦争はそこ「南西諸島」にきているのだ。

 60年・70年安保闘争を牽引した左派集団の終焉
 
 かつての安保・反戦闘争を牽引してきた、左派集団、例えば「革共同全国委員会」は、自衛隊の南西シフトにどういう主張をしているのか? 以下は機関紙「前進」が、ここ「数年間」で唯一、それに触れた箇所だ。  

 「安倍政権は、辺野古基地建設ばかりでなく自衛隊の沖縄配備・増強計画をも次々と進めているが、それは各地で沖縄県民の怒りと闘いをますます燃え上がらせている。全島の軍事基地化と、朝鮮侵略戦争を想定した軍事演習の激化は、県民の生業と生活を根底から脅かしている。県民はオスプレイなど軍用機の墜落事故や騒音被害、米軍犯罪と背中合わせの生活を強いられ、青年は非正規職化、貧困化に直面している。こんな現実を絶対に転覆しなければならない。
 日米安保と基地が存続する限り、沖縄県民の怒りと不屈の闘いは絶対にやむことがない。それは改憲攻撃を粉砕し、革命を切り開く力である。(週刊『前進』2967号・2018/08/27)」

 驚くなかれ、これが数年間の記述の全てだ。今までは、一言の先島―南西諸島への自衛隊配備問題への言及もなかった。そして、この8月に初めて言及したのがこれである。しかし、「自衛隊の沖縄配備・増強計画」と一般論で表記していることは、「自衛隊先島―南西諸島への配備」に関しては、文字通り、その主張も実践もゼロだ。まったく触れない、主張・分析・検討したこともないということ。もちろん、反対運動もゼロだ。なぜ、こういう、恐るべきとんでもない認識が生じているのか? それは、以下の彼らの主張を見れば明らかだ。

「歴史上最も腐敗し、最も危機に立つ安倍政権は、沖縄の労働者階級の闘いを抑え込もうと必死です。そして安倍政権は日米安保同盟にすがりつきながらも軍事大国化へ向け改憲と核武装、そして朝鮮侵略戦争に突き進もうとしています。この安倍政権の改憲と戦争を阻止し、北東アジアの分断支配の体制を打ち破っていく国際連帯の最前線に沖縄の闘いがあります。辺野古への新基地建設を阻止する闘いは、その要をなしています。安倍政権を打倒する決定的な好機を迎えているのです。(週刊『前進』2962号・2018/08/02))」

 つまり、すでに見たように、現在の日本の軍拡を一般化し、対中の日米共同作戦=対中抑止戦略として急速に実体化している南西シフト態勢が、まるで見えていないのだ。最悪なのは、「朝鮮侵略戦争の危機」をここ数年、一貫して主張しているようだが、実践的には、それさえもアリバイ的主張でしかなく、労働運動主義に接ぎ木しただけの主張ということだ。朝鮮半島の和平の歴史的流れを見ようともせず、その「朝鮮半島危機の現実論」さえ見えていないのである。つまり、この革共同の主張が許しがたいのは、「そこに(対中ー先島ー南西諸島)本当の戦争の危機が生じている」のに、「(相も変わらず)戦争の危機は朝鮮半島である」として、南西シフト態勢の反対運動の妨害物とさえ言えるものになっていることである(戦争そのものが先島―南西諸島で始まろうとしているときに、本当の戦争反対運動への妨害となっている)。

 もはや、ここまでに至ると、彼らの「反戦運動の終焉」を宣告(「島嶼戦争」への沈黙=協力者)せざるを得ない。現実の自衛隊の南西シフトによる先島―南西諸島への自衛隊基地建設を見ようとしないのである。南西シフトによる空母の導入、巡航ミサイルなどの敵地攻撃能力、水陸機動団などの実態を捉えようとしないのである。現地住民たちの、基地建設に対する激しい闘いが、先島―南西諸島で繰り広げられていることを、まったく見ようとしないのである。つまり、こういう認識しか出来なくなったという、この官僚的上意下達組織の、終焉なのである。
 情けないことだが、この革共同まで酷くなくとも、1970年闘争を牽引してきた左派組織の、先島―南西諸島への自衛隊配備問題へのたたかいは、一部の組織・グループを除いて似たりよったりである。

 繰り返すが、2019年3月、宮古島・奄美大島の基地開設の強行を阻むためにも、かつて反戦闘争をたたかい、牽引してきたすべての人々が、この恐るべき事態をしっかりと捉えられることをのぞみたい。
(なお、私は、先週、Facebook上で、「平和新聞」編集部の「南西シフトへの沈黙」を批判してきたが、「平和新聞」から「しっかり取り組む」という直接の回答があったことを報告します。)
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

対中国「島嶼戦争」態勢を構築する「鎮西30演習」―「陸自幹部は『即応態勢は整う。後は政府がいかに早く事態レベルを決められるかだ』と公言!

2018年12月09日 | 自衛隊南西シフト
 急ピッチで始まった、西部方面隊の「鎮西30演習」による「島嶼戦争」態勢の構築


(「統合水陸両用作戦演習」で、南種子町沖合から発信した水陸両用車(AAV7)、沖は海自輸送艦「おおすみ」2018年10月22日)
#自衛隊 #南西シフト #沖縄 #宮古島 #石垣島 #奄美大島 #種子島

 陸自西部方面隊が軸になり、全国的「島嶼戦争」態勢を構築する「鎮西30演習」―今年11月中旬からの演習は、全国最大規模の約1万7千人、車両約4500台、航空機約65機が参加して九州、種子島、奄美大島、沖縄島などの琉球列島弧と、十文字原演習場(別府市など)と日出生台演習場(同県由布市など)で行われた。
 これらの演習では、「それぞれ『島』に見立て、鹿児島港から『島の港』に想定した小倉港(北九州市)までミサイル部隊を民間フェリーで運搬。陣地を築いて『敵』の侵攻に備えた」のだ(西日本新聞)。

 この「鎮西演習」の目的について、陸自幹部は公言する。

「(宮古島・奄美大島配備の)中SAMとSSMのミサイル部隊を配備する計画に、陸自幹部は『即応態勢は整う。後は政府がいかに早く事態レベルを決められるかだ』」と

 つまり、来年3月以降に開設する、宮古島・奄美大島(→石垣島・沖縄島)の対艦・対空ミサイルへの配備が、まさしく「有事への発動態勢」づくりであることを言明するのだ。
 
 そして、この「鎮西演習」と並行して10月15~24日までに行われた「統合水陸両用作戦」演習は、まさしく先島諸島への上陸演習として行われた。
 演習が 実施された場所は、「海自佐世保地区から種子島に至る海空域、同島周辺海空域及び同島から海自横須賀地区に至る海空域」とされているが、主要には種子島の南種子町の前之浜海浜公園で行われた(写真)。

 周知のように、マスメディアは、10月12日から中種子町(旧種子島空港)で実施された日米海兵隊の演習については報じているが、この南種子町での自衛隊の統合水陸両用演習については、まったく報道していない。しかも、この演習は、海自輸送艦「おおすみ」まで動員した「島嶼戦争」の上陸演習というすそまじい演習にもかかわらず、メディアは沈黙する。

 だが、以下の記事にあるように、西日本の地方のメディアは、率直である。この「鎮西30演習」、「統合水陸両用作戦演習」が、宮古島、奄美大島への来年3月の対艦・対空ミサイル部隊配置を前提とした、実戦演習である、としていることだ。

 自衛隊の急激に進行する南西シフト態勢下、宮古島・石垣島の新基地建設とともに、奄美大島ー種子島ー馬毛島においても、凄まじい軍事化進行している。この状況を今、全国の人々の力で食い止めない限り、琉球列島弧は、まさに島々全域の軍事化・要塞化が進むだろう。


(統合水陸両用作戦演習で南種子町に上陸した水陸両用車(AAV7))

(情報公開で出された自衛隊の「薩南諸島の軍事化)


(「鎮西30演習」で奄美大島の旧奄美空港に展開した陸自中SAM部隊)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
*陸自、離島防衛へ「布石」着々 九州・沖縄で大規模演習(11/21(水) 11:47配信 西日本新聞)

 「即応態勢」強化で抑止力強化

 陸上自衛隊が離島防衛の「布石」を着々と打っている。中国の海洋進出をにらみ、南西諸島に駐屯地を新設。「即応態勢」を強化し、抑止力の向上を狙う。24日まで約1カ月間、陸自西部方面隊(熊本市)が主体となって九州・沖縄各地で実施中の大規模演習「鎮西30」にも、その強い意思が反映されていた。陸上部隊が海を渡り離島に展開し、レーダーで「見えない敵」に対処する-。変革期の陸自の姿に迫った。

 今演習には全国最大規模の約1万7千人、車両約4500台、航空機約65機が参加。十文字原演習場(大分県別府市など)と日出生台演習場(同県由布市など)では一部をそれぞれ「島」に見立て、鹿児島港から「島の港」に想定した小倉港(北九州市)までミサイル部隊を民間フェリーで運搬。陣地を築いて「敵」の侵攻に備えた。

 15日午後、荒れ野が広がる十文字原演習場。顔を迷彩塗装した陸自隊員が「島」の山中に潜んでいた。近くの背の高い草木の陰には「03式中距離地対空誘導弾」(中SAM)。ヘリや戦闘機のほか、巡航ミサイルもレーダーで探知し、コンピューター制御で迎え撃つ「離島防衛の要」の一つだ。

 実は、もう一つの「要」が演習に先立つ10月中旬、健軍駐屯地(熊本市)で報道公開された。射程100キロ以上とされる「12式地対艦誘導弾」(SSM)。自前のレーダーに加え、海上、航空両自衛隊とも連携し、遠く離れた海域までにらみを利かせる。このSSMを空爆から守るのが、中SAMの「最大の役割」とさえ言われている。

 来春は鹿児島県奄美大島と沖縄県宮古島に新駐屯地を建設

 公開された15、16両日は、猛烈な艦砲射撃で援護された「敵」が優勢で「いかに生き残るか」という厳しい局面を想定。野外病院では医官らが次々に搬送されてくる重傷者の救命措置に追われていた。隊員は「けがが治れば前線に戻す。戦力維持は並大抵ではない」と説明した。

 九州本土から日本最西端の沖縄県与那国島まで距離約千キロ以上。従来、この広大な海域で陸自の拠点は沖縄本島だけ。16年の与那国島への沿岸監視隊設置を皮切りに、来春は鹿児島県奄美大島と沖縄県宮古島に新駐屯地を建設。今後は同県石垣島にも駐屯地を置く計画だ。

 「空白地帯」を埋め、中SAMとSSMのミサイル部隊を配備する計画に、陸自幹部は「即応態勢は整う。後は政府がいかに早く事態レベルを決められるかだ」と言う。だが、課題はある。日本版海兵隊とも言われる陸自「水陸機動団」を運ぶ輸送機オスプレイの佐賀空港配備や、石垣島への部隊配置には地元に反対や慎重論が根強く、丁寧な説明が欠かせない。

 陸自が描く「完成形」の実現はまだ見通せない。それでも、今年から南西諸島への即応態勢を担う「機動師団」に改編された第8師団の吉田圭秀師団長は演習の意義をこう表現し、国民の理解を求めた。「われわれは刀を一生懸命に研ぐが、それは抜かないため。抑止力を高めるためなのです」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
*垣間見た離島防衛の備え 「鎮西30」ルポ(朝日新聞九州版、2018年11月24日03時00分)

 陸上自衛隊で最大規模の演習「鎮西30」が24日まで、九州・沖縄各地で実施されている。海洋進出を活発化させる中国を念頭に、自衛隊は近年、南西地域の守り固めに心血を注ぐ。演習の現場で、陸自がめざす備えの形が垣間見えた。

 鎮西30は10月22日に始まり、西部方面隊(約3万人)を中心に約1万7千人・車両約4500両・ヘリなど約65機が参加している。陸自が報道機関に演習を公開した今月15、16の両日、陸上自衛隊日出生台(ひじうだい)演習場(大分県玖珠町など)と十文字原(じゅうもんじばる)演習場(同県別府市)に入った。

 初冬の高原はススキの枯れ草で黄金色に染まっていた。山々にいだかれた二つの演習場は、この時期「島」になる。離島をめぐる攻防が演習のシナリオだ。

 所々に、草木の葉を模した偽装…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
*対艦ミサイル演習を初公開 離島防衛の柱(朝日新聞九州版、2018年11月22日03時00分)

偽装網で隠される12式地対艦誘導弾=2018年11月21日午前7時24分、熊本県山都町の大矢野原演習場、田中久稔撮影
https://www.asahi.com/articles/ASLCP4JHNLCPTLVB003.html

 九州、沖縄の防衛を担う陸上自衛隊西部方面隊の最新装備、12式地対艦誘導弾(12SSM)の演習が21日、熊本県山都町の陸自大矢野原(おおやのはら)演習場で初めて報道公開された。日本に対する武力攻撃への対処を想定し、沿岸に近づく艦艇を迎え撃つ訓練を繰り返した。

 12SSMは陸上から発射する対艦ミサイルで、従来のミサイルより射程や精度が向上。訓練機関を除き全国で唯一、西部方面隊の第5地対艦ミサイル連隊(熊本市)に配備されている。南西諸島などの離島防衛の要となる装備の一つで、来年3月に駐屯地ができる鹿児島・奄美大島などにも配備される予定。

 演習は、陸自最大規模の実動演習「鎮西30」の一環で、艦艇による夜間の攻撃を想定して行われた。未明の午前1時過ぎ、大分・日出生台演習場にある本部からの命令を受け、大矢野原演習場に待機する発射機を積んだ車両が出動。ミサイルの入った筒を空に向け、洋上の艦艇に狙いを定める操作をした。鹿児島・宮崎県境の霧島演習場でも同様の演習をした。(田中久稔)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
*ミサイル部隊の演習、初公開 陸自西部方面隊、山都町で(熊本日日新聞、11月22日)(2018/11/22 08:0012/7 )
https://this.kiji.is/438111849471001697

 陸上自衛隊西部方面隊(総監部・熊本市)は21日、山都町の大矢野原演習場で、地上から敵艦船を攻撃する地対艦ミサイル部隊の「12式地対艦誘導弾」演習を報道陣に初めて公開した。

 九州各地で10月から実施している陸自の大規模演習「鎮西演習」の一環。同部隊の訓練は19~23日、県内外の4演習場であり、西部方面特科隊の約880人、車両約280台が参加し、指揮命令の伝達や隊員の基本動作を確認する。

 21日の大矢野原演習場には、沿岸部に敵艦船が接近したとの想定で、第5地対艦ミサイル連隊(同市)が展開。旧来型より射程が長く命中精度が向上した最新鋭の同誘導弾は、同連隊に国内で唯一配備されている。隊員らは未明から明け方にかけ、ミサイルを車両に装塡[そうてん]し、発射する直前までの動作を計3回繰り返した。

 地対艦ミサイル連隊は全国5カ所に編成。南西諸島の防衛力強化のため、来年3月末には奄美大島(鹿児島県)と宮古島(沖縄県)に駐・分屯地を開設予定で、第5連隊指揮下の部隊を配備する方針。西部方面総監部広報室は「南西地域の防衛の『空白地帯』を埋める抑止力の要の部隊。訓練を通して対処能力をさらに向上させていく」としている。(前田晃志)
*******************************************************************


自衛隊の南西シフト全体の詳細については拙著を参照
『自衛隊の南西シフト―戦慄の対中国・日米共同作戦の実態』(社会批評社)、リンクで同書のプロローグが読めます。
https://hanmoto.tameshiyo.me/9784907127251 



コメント (2)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

12月3日(月)のつぶやき

2018年12月04日 | 主張
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする