今、自衛隊の在り方を問う!

急ピッチで進行する南西シフト態勢、巡航ミサイルなどの導入、際限なく拡大する軍事費、そして、隊内で吹き荒れるパワハラ……

琉球列島の島々への、対中戦争態勢のための、シェルター造りキャンペーンを許すな!

2022年09月16日 | 自衛隊南西シフト


本日の沖縄関係新聞、東京新聞の報道にありますが、いよいよ自衛隊は「台湾有事」下の対中戦争態勢づくりの一環として、琉球列島住民の「国民保護法に基づく住民避難」の喧伝を開始、その一環として先島の各島々に「シェルター」を造るという方針を打ち出してきました。

この沖縄戦再来という、凄まじい戦争態勢づくりに、今こそ私たちは、全力でNOを突きつける運動を広げねばなりません。

以下は、拙著『オキナワ島嶼戦争: 自衛隊の海峡封鎖作戦』(社会批評社)で2016年に書いてきたものですが、すでにこの段階から自衛隊制服組は、「島外避難が不可能」という事態のなか、島々への「シェルター」造りを提案しています。

――この文字通り、対中戦争を前提とした、島々の徹底的な破壊戦を前提とした、政府・自衛隊の「島嶼戦争」態勢を許してはなりません!

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第7章 国民保護法と住民避難――沖縄を再び「捨て石」とするのか 

「島嶼防衛研究」の住民避難 

自衛隊では、島嶼防衛戦の戦略・戦術研究とともに、島嶼防衛戦での「住民避難」の研究が、さまざまな形で行われ始めている。なぜなら、島嶼防衛戦とは、本書の冒頭でも述べてきたが文字通り島々の破壊戦である。

かつて、サイパン・テニアン・グアムそして沖縄など、これらの小さな島々で起こった島嶼防衛戦は、一木一草も残らないほどの徹底した破壊戦であり、兵士たちだけでなく住民多数が死傷した凄まじい戦場であった。そして、あの時代と同様、いやそれ以上の島嶼防衛戦という名の島々の破壊戦が、今推し進められようとしているのだ。 

これら小さな島々に、彼我双方のミサイルが雨霰のように撃ち込まれ、空から、海からと、凄まじい砲爆撃が行われ(サイパン戦などは1平方メートルに数発)、そして破壊され尽くした島の海岸線に水陸両用車が上陸し、戦車などの砲弾(機動戦闘車など)が飛び交う、激しい地上戦闘が行われるのだ。

 この小さな島々の戦争において、住民たちをどうするのか。全住民を島外に避難させるのか、それとも、島内で避難するのか。 

島嶼防衛戦の住民避難問題の前提について、陸自の横尾和久(3佐)は「マリアナ戦史に見る離島住民の安全確保についての考察」(「陸戦研究」2015年 12月)という論文で、「国民保護法に基づく避難等の措置を実行するためには、武力攻撃予測事態等の認定が必要であり、その事態認定に必要な明白な兆候を要件とする。
しかし島嶼部に対する攻撃は一般に敵侵攻部隊の規模が小さく、侵攻企図の秘匿も容易であるため、侵攻企図を早期に察知することは困難である」と、その予測困難性を指摘する。 

この困難の中で横尾は、「このため有人離島住民の安全確保について考察する場合には『敵が侵攻してくる前の島外避難』と『敵の地上侵攻時に残留住民がいる場合の島内避難』の両方を考察」すべきとしている。 

しかし、横尾が言う、このような「島外避難」は、果たして可能だろうか。 

政府・自衛隊も、島嶼防衛戦は、「グレーゾーン事態」から始まり、シームレスに進行することを想定しているから、事前に住民避難のための武力攻撃事態・予測事態を認定するのは不可能である。なおかつ、もしも政府が、この武力攻撃予測事態の認定なしに、事前に住民避難を指示したとするなら、これは中国に対する「開戦宣言」になってしまい、戦争の挑発にさえなるだろう。 

このような「島外避難」の困難については、同じ『陸戦研究』で大場智覚(2佐)は、「陸上自衛隊は将来戦を戦えるか」と題した論文で、以下のように論じている(「陸戦研究」2013年6月号)。 

「地方自治体が行う国民保護措置に対しては、自衛隊が住民避難などを可能な範囲で支援することとなるが、平時と有事が曖昧な事態に対しては、両方の役割への軸足の設定に大きな困難が伴うことが予想される」 

「事態は認定以前の平素からグレーゾーンにおいては、当初の間は状況が不明であり、作戦準備期間が短縮化され、一挙に有事の状態になる恐れもある。 このような場合、防衛の対象が『国土か』それとも『国民か』という二者択一を迫られ、将来に大きな禍根を残す状況に追い込まれる可能性がある」

 大場もいうように、グレーゾーン事態から有事は一挙に進む可能性があり、全く島外避難を行う余裕はない。この事態を迎えたとき自衛隊は、「国土か、国民か」ではなく、明確に「国土」を優先するだろう。なぜなら、 もともと自衛隊の主任務(自衛隊法第3条)は「国家・国土の防衛」であり「国民」ではない。軍隊が国民を守らないというのは、そのように任務を定めているからだ。
 
このように見てくると、結局、島嶼防衛戦の場合、住民は「島内避難」を強いられるのだが、これに対しても横尾和久は『陸戦研究』で述べている。 

「島内避難については、陸上部隊の責任が重大であるため、陸上自衛隊としても『部隊と住民の分離の徹底』について平素からの充分な研究や準備が必要である」が、マリアナ戦史や沖縄戦を見る限りそれは容易ではなく、島内避難の戦例はいかに困難であるかを示すが、そのためには「国民保護法における強制避難条項の新設(強制避難の措置)」が必要であるという。

また、マリアナ戦史の教訓を反映するなら、「自衛隊の部隊と残留住民を分離するため離島に展開する陸上部隊は『作戦計画に部隊と住民の混在防止施策を織り込み』、地方公共団体は『避難計画に武力攻撃事態における島内避難のケースを想定し、平素から住民用のシェルター等を整備』する」(同上)ことが必要という。 

ここで横尾がたびたび強調しているのは、島嶼防衛戦とは「軍と住民の混合」が前提的であるから、「軍と住民の分離」を徹底しなければならないとし、そのためには「強制避難の措置」をとるのみならず、島内避難の場合は、シェルターまで造るべきだということだ。別の隊内の研究では、イスラエル並みに各戸に地下にシェルターを造れば、島内の経済が潤うという、とんでもない提言さえ主張されている。  

ところで、この島嶼防衛戦について、自衛隊は公式にはどのように言っているのか。先の陸自教範『野外令』には、次のように記載されている。 

「敵の離島侵攻に先んじて、適時に必要な情報を関係部外機関に通報して、先行的な住民避難等ができるように支援する。やむを得ず敵に占領された場合は、住民の島内等避難に努め、作戦行動に伴う被害及び部隊行動への影響を局限する。また、地方公共団体等と連携した適切な広報により、住民に必要な事項を周知させ、住民の安全及び作戦への信頼を確保する。」(第5編第3章第4節「部外連絡協力及び広報」) 

『野外令』の記述は、ただこれだけであるが、主眼は「作戦行動に伴う被害及び部隊行動への影響を局限」するということである。つまり、自衛隊の島嶼防衛戦においては、戦闘行動が最大優先なのであり、住民避難など真剣に考慮していないのだ。 」


写真は、1945年沖縄戦後、避難先から帰還する住民ら

本日の琉球新報

https://ryukyushimpo.jp/kyodo/entry-1584622.html

東京新聞

https://www.tokyo-np.co.jp/article/202446?rct=politics



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