千秋小梅日記

コミティア参加サークル「千秋小梅うめしゃち支店」を運営する小津端うめからの連絡、雑感、感想などです。

ゴーストバスターズ2016、改めて感想

2018年11月08日 21時42分41秒 | 映画

最初は全然違う話から始めます。

最近創作のために改めて上野千鶴子「女ぎらい」を読み返しておりました。で、ホモソーシャルというものを復習していたのです。

ホモソーシャルというのは男同士の連帯で成り立つ社会構造のことで、女でないもの、主観的な存在でいるもの、所有される側でなく所有する側、支配する側によるサークルの中での権力闘争によって作られる社会、というような理解をしています。合ってるかな?

その「真の男(笑)」がつくる社会の参加資格が「せめて一人くらい女性を所有すること」というもので、要は女性は男性がいてこそ価値があるものだという考え。女性は劣位存在で、女好きでオトした女の数が多いと誇りとなるが、女や、女っぽいとみなされるような男は軽蔑される。(それを「ミソジニー(女ぎらい)」と呼ぶそうです。)

女性は男性から社会の中の価値を与えられるもののために、より良い男性に選ばれるように「女らしく」ふるまうし、女性同士の連帯はない(だから男性が浮気されると怒りは女性に向かい、女性が男性に浮気されると怒りが女性に向かう)。

またその社会で男を所有しようとするかもしれないゲイの男性は女と共に疎まれる存在である、という話もあるけど、今回はその話は割愛。

で、そんな本を読みながら一方で今、新作のネタの整理と発展に悩んでいまして、あんな映画が参考にならないか、こんな映画が参考にならないかとしているところでした。そんな中「ゴーストバスターズ」思い出していて、新作とは関係ないかもしれないけど、そのホモソーシャル的な考え方で見直してみたら思った以上に新たな見方が出来たという話。

あの話の冒頭、大学のポストを狙うエリンが緊張のあまり変な仕草をしていて、男性の教授に見られ、変な顔をされるのです。で、ものすごくエリンはうろたえる。見てるこちらは、あのおかしな楽しいエリンが本体で、大学という社会の中でなんとかポストを得ようとしているエリンは擬態ということがあのシーンで瞬時にしてわかる。擬態を取らないといけない社会がドン!とある世界なんだなと冒頭で知らされるのです。

そんなエリンは旧友のアビーに対しても「あんたとは違って私はこの世界に適応していくの」と最初は言ってます。しかしお化けにあったら本音が漏れてしまう。本音が漏れた瞬間に大学社会から滑り落ちていきます。

で、ここまで特に気にならず見てたけど、よく考えたらオタク趣味があったくらいでずり落ちるかな?とか思ったのですよ、ええ、男なら。女性だからリアリティあるんじゃないかしら?とか思ったのです。つまり、女性が「女性らしくない(男性として認められる)人間」になり、男性社会に入ることはそれだけシビアであるという前提があっての展開なのかもしれないなと思ったのでした。

そしてアビーとホルツマン、そしてパティと合流するわけです。それぞれの特徴を挙げれば、太った人、レズビアン、黒人。(白人)男性に女性と認められない集団。そしてケヴィン。おバカなケヴィンは男性社会では間違いなく下位です。しかしケヴィンは愛らしく、自己否定がない(創作者としては製作者たちが考えたケヴィンのバックボーンがぜひ知りたいところですよ)。そしてエリンたちに愛されます。居場所が出来るケヴィン。ここで男性社会ではない連帯を描写しようとしてるのかもしれないと思ったのでした。それは多様性と重なる世界な気がします。

一方で敵であるローワンもホテル従業員から「キモい」と言われ、馬鹿にされてる明らかに男性社会では下位の存在。そんなローワンは頭は良くて、プライドが高く、社会に復讐を企ていて、孤独です。エリンたちに仲間になろうよと言われるけど拒否します。それは彼が男性社会の中で上位に立ちたかったからではないか、だから女性と手をつなぐのを拒否したのではないか、そして警察官たちを操って踊らせたんじゃないかと思うのです。

話が前後するけど、ゴーストバスターズたちは社会の表舞台に立つことを社会の上位の立場の人(ニューヨーク市長)から禁じられます。役に立っても馬鹿にされ、挙句の果てには逮捕された真似までさせられます。「そこまでやらんでもいいじゃないの」と見るたびに思っていたのですが、また旧作の主人公達が最後は栄光を手に入れたのと対照的だなぁと思っていたのですが、男性社会の安定のためにひたすらその存在価値が隠蔽され、時に悪とされてるんじゃないかしら、なんて見たら何となく納得できたのでした。

そう考えるとあのラストシーン、社会の中で生きる一般の人たちが、男性社会の中では表立って言えないから夜に紛れて「ニューヨークは多様性を受け入れるよ!」と言っているような気がして、あぁ、なんかいいなーと思ったのでした。


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