長期滞米研究者ネットワーク

管理人たちの日記

オーストラリアへ行く話しその24 えむあいえすとは

2006年04月08日 | ばみら日記
さて、今回こそ、性分化のミニレビューにけりをつけて、ワラビー牧場へ戻っていきたい。分量的には某日本語雑誌のミニレビュー以上のものを書いている気もしないでもない。ミニレビューと言うよりは業界裏話に終始しているという気も本気でしないでもない。で、そのえむあいえすである。ひとくちで言えば、変身増殖因子(TGF)ベータの仲間である。これが精巣のセルトリ細胞から分泌され、そばにあるミュラー管を消していくのである。消える仕組みは生物種によってすこし違うようであり、ワニなどではアポトーシスの誘導、ほ乳類では、管の上皮細胞の間充織への再分化の促進などといわれている。でも、なんでワニなんかを調べる気になったのだろうか。ミュラー管もウォルフ管も上皮が輪になっているから?

えむあいえすの遺伝子はボストンのベンチャーがクローニングし、その受容体は同じグループとオランダのグループがデッドヒートを展開し、同じ年に発表をしている。この競争ゆえ、候補のクローンは暗号名で呼ばれていた。当時の関係者のあいだでは、今でもデージーといえば、えむあいえす受容体遺伝子の事をさす。えむあいえすのトランスジェニックマウスは90年代初頭に作られ、予想通り、子宮のないメスが生まれてきた。ノックアウトマウスも作られ、今度は子宮を持ったオスが生まれてきた。この論文をアーノルドジョストへ捧げる、とくだんの論文のアクノレッジには書いてある。受容体のノックアウトマウスも作られ、えむあいえすのノックアウトと全く同じ表現になり、変身増殖因子ベータの仲間としては非常に珍しく、リガンドと受容体の特異性が非常に高いことが示された。これらのノックアウトマウスは精巣は正常なので、ホルモン的にもオスであるが、アンドロジェン経路を遮断してやると精巣の発生が押さえられるので、精巣を持たず、子宮を持ったXY個体が誕生する。こうして作ったマウスに女性ホルモンを投与し、子宮に受精卵を移植してやれば、妊娠オスマウスができるはずであるが、未だにそういうマウスができたという話しは聞かない。かわりにそういう映画がずいぶんまえに公開された。妊娠した主演男優はあーのるどのしゅわちゃんであった。

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