伝統文化★資料室

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和歌披講譜

2008-09-14 23:54:46 | 青柳隆志先生

 

では、最古の和歌披講譜は、というと、これも我が大学が所蔵しています・・というのは少々大袈裟ですが、披講の家でもあった綾小路家が残した最古の披講譜(『朗詠九十首抄』所載、1448年)に次ぐ古さをもち、かつ「一枚物」であるという点では日本最古の「大永二年(1522)綾小路資能和歌披講譜」(写真)がそれです。

筆者綾小路資能は(1496~?)は、早熟の天才として将来を嘱望された綾小路家の若き当主でしたが、大永三年(1523)、28歳の時に突如逐電して出仕を停められ、出家してしまいます。以後綾小路家は九十年にわたり、当主不在という異常事態を迎えることになりますが、この譜はその資能が事件を起こす前年の五月に書かれたもので、詳細な音高表記を持つ完成度の高い譜面です。

この資能、出家ののちも、この披講譜をもって「飯の種」にしたらしく、出家から九年後の天文元年(1532)に、資能が実悟兼俊に、この譜を応用した形での伝授を行っている記録が残されています。数奇な運命を辿った資能にとって、この和歌披講譜はかけがえのないものであったようで、その自筆本を今見ることができるのは、そうした機微を知る者にとっては、有り得べからざる僥倖といってよいと思います。


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