住職日記

瀬戸内海の島にある寺の住職の日々の日記です。

医療福祉

2010-02-28 | 思い

 本日は午前中射場家の葬儀にお参りいたしました。

 喪主の射場様は地域で福祉関係のボランティア活動に参加されているお姿をよく拝見しております。

 謹んでご母堂様のご冥福をお祈りいたします。合掌

 

 射場家の葬儀にお参りした後、広島大学医学部内で開催されました「第9回思いやりの医療を考える会勉強会」に出席いたしました。

 本日のテーマはこれまで医療関係が中心であった内容から福祉と医療のより良い関係を考える会でした。

 

 最初の講演は現在介護関係の仕事をされている小代さんによるある末期癌の方と以前勤めていた高齢者施設での関わりについてでした。

 個人の生活歴を深く知るとき、最後の願いをどう受け容れそして自己実現を目指すかについての講演でした。

 多くの迷いがなかで、ある看護師の一言が決心を揺るぎないものにしたとのお話しでした。

 福祉関係者と医療関係者がある事案について協議をする際にはそれぞれの経験値或いは理念が協議の中心となりますが、一番大事なことはご本人の思い、願いを受容し、それを実現するためにチームとしての関わりが不可能であろうと思うことを可能とすることがあります。

 同様な経験が私自身もありましたので、当時を思い出しました。感謝尽々

 

 次の講演では大学で作業療法士の育成をされている野尻さんによる高齢者施設での末期癌患者さんの事例を中心に作業療法の意義等の講演をいただきました。

 近年高齢者施設でターミナルケアに関わる方々にとってはとても参考なる講演でした。感謝尽々

 野尻さんの講演では特にICF(国際生活機能分類・国際障害分類)を基本にした対象者の方への関わりが中心でした。

 ICFについてはネットで検索していただくと詳細が説明されていますのでご覧下さい。

 私事ですが、私も大学での講義の際にはICFについて時間をとり講義をした経験があります。

 野尻さんは医療系の仕事ですが、単に病歴を重視するのではなく生活歴をとても大切にされていることが講演の中から学びとることができました。

 「個人の尊厳」という言葉が医療。福祉の関係者の間で使われることが多々あります。

 言葉としては大変重みがある言葉ですが、そこには「自己選択」と「自己決定」があって初めてこの言葉が意味のあるものとなります。

 もう随分前になりますが、「高齢者ケア国際シンポジウム」に参加した際に認知症の方へのケアが議論の中心となりました。

 その際にアメリカ・フランス・デンマークのパネリストの英文のサマリー(要約)の最後に「尊厳をもって(with dignity)」との一文が必ず記されていたことを記憶しています。

 当時の様々な論文等には見当たらなかった一文です。勿論内容が相であったかもしれませんが、文末にこの言葉を見た記憶は私の拙い経験ではありませんでした。

 また、更に当時日本では「ケースマネージメント」という新しい手法が芽吹いていた時代でした。

 地元でも医師・福祉関係者が中心となり「ケースマネージメント研究会」を立ち上げ、今介護保険で重要視されているアセスメント(課題分析)の研究とアセスメント用紙を作成していました。

ところが、このシンポジウムにおいて講演をされたイギリスの演者が「ケース」とう言葉は不適切であり、「ケア」という言葉に変えたという話を聴き、研究会も名称も「ケアマネージメント研究会」に変更いたしました。

 単に名称の変更ではなく、そこには「尊厳をもって(with dignity)」の理念をしっかりと込めなければ単に時流にのっただけになってしまうこともお互いに確認したことがありました。

  

 話が長くなりましたが、本日の勉強会においてお二人の講演の後にグループに別れ、意見交換をいたしました。

 各グループより本日のテーマ並びに講演を聴いての様々な意見が出ましたが、「思いやりの医療」を進めるためには医療関係者と福祉関係者のチームプレイがとても重要であり、また、介護保険に特化して言えば介護支援専門員(ケアマネージャー)の資質が問われているとの話も出ました。

 「生命(いのち)」と「生活」、まさに一にして二、二して一の関係であるとともに現在の医療制度にも多くの課題があります。例えば治療期間の短縮(医療費の増加を防ぐという意味ですが)により本人との関係が希薄になっているとの指摘もありました。

 最後に異口同音にでる言葉に「相手の思いを知る。相手の思いを聴く。」ということが言われます。

 しかし、コミュニケーションを深めるためには相手のことを知る努力は勿論必要ですが、向かいあう私自身を知っていただくことなくしては本当の意味での相互理解が不可能なはずです。

 今日の講演者お二人の話を聴いていますと一般にいうサービス提供側が単に対象者の方を理解しようとしているのではなく、対象者の方もお二人を理解しようとする様々な行動があったと解しました。

 「思いやり」という言葉は決してサービスを提供する側だけの理念と実践ではなく、サービスを受ける側にもあることに気づき、学ぶとき本当の意味での「思いやり」という素晴らしい人間関係が構築されるはずです。

 本日は町内からも福祉関係者の方3名が参加されていました。

 お疲れさまでした。後日また感想等をお聞かせいただければ幸甚です。

 

 最後に本日も多くの素晴らしい出会いをいただきました皆様並びに会の運営にご協力をいただきましたボランティアの皆様の身体堅固、諸縁吉祥を念じますとともにまた、お会いできる日を楽しみにしております。感謝尽々&合掌 

 《本日の工事の様子》

 本日は日曜日のため工事はお休みとなっています。

 明日月曜日からまた再開されます。

 工事関係者の皆様宜しくお願い申し上げます。合掌

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