充電日記     

オフな話で一息を。

どこかで見たことない?

2010年07月22日 | 文体・表現
・津軽つながり(発音しづらい)で、弘前出身の葛西善蔵作品。他の作家の作品に似てませんか。
 その時分私は得体の知れない暗い不安に悩まされてゐた。生の自己破壊、生活の危機──さう云つた焦燥と絶望に駆り立てられて、私はちつとも落付いて居られない不安な気持だつた。不慮な、まつたく思ひもかけないやうな事件でも突発して根本的な破滅に陥るか、それとも近いうちに死ぬるのではないかと云つたやうな不安に襲はれ勝であつた。それほど私の心も身体も弱つてゐた。誰か明日の運命を知ることが出来るか──さう思ふと、私は淋しかつた。(「姉を尋ねて」





「警察がゆくえを追っている」

2010年06月07日 | 文体・表現
・警察も大変だよね…… と普通なら思うのですが、地域住民が一番不安で大変かもしれないですね。と、こちらを見て初めて思ったことでした。大学から2kmくらいしか離れていないので。最近、岐阜県ではこの手の犯罪が多いようです。

キャラ不定「ぬ」の表現性

2009年10月13日 | 文体・表現
・航空自衛隊岐阜基地の南にかかみがはら航空宇宙科学博物館があります。その前庭に展示された対潜哨戒機P2J。機体を眺めていると、いろいろな注意書きに気づきます。それも日本語で書いてあったりもする。機体番号「82」の直下には「誘導棒が赤線を越えてはならぬ」とあります。

・禁止している具体的な行為は分かりませんが、この表現には、有無を言わさぬ迫力があるように思います。
 a 誘導棒が赤線を越えてはならぬ
 b 誘導棒が赤線を越えてはならない
 まったくの同義ながら、ニュアンスは違う。bの方は、マニュアルや規則集に書いてあるので「やってはいけない」という感じ。「規則は破られるためにあるノダ」とうそぶく隊員なら冗談まじりに破るかもしれない。aだと、何がなんでもしてはならい感じ、いや、指示を破ったら何が起こるか分からない、起こるとしたらとんでもないことが起こる、そんなニュアンスがあるように思えてきます。禁止する言外の圧力がaとbとではかなり違うような気がする。
・これを説明するのに、役割語研究の成果を援用すると分かりやすい。現代共通語では打消の助動詞にナイを使うのが普通です(=無標)。これに対して、打消ヌは、何か特別な場合にのみ使います(=有標)。老人だったり、西日本方言だったり。ドラマ・アニメなら、博士だったり、殿様・お姫様だったり、神・仏だったり、超人だったり、マザーコンピューターだったり(ちょっと古いか)。まずは、このような打消ヌの表現性が確認できる。
・現実にもどります。表現aを使って禁じているのが誰なのか、実ははっきりしていない。上官なのか、設計技師なのか、空港管理者なのか、基地の長なのか、日本政府なのか、国連なのか…… ナイだったら普通の打消なのでそんな詮索をする気も起きない。でも表現aではヌを使っているんだから特別なキャラクタがあるはず。なのにそれが明示されないものだから、得体のしれなさ感はいや増します。それが禁止のニュアンスを増幅してはいないかと思うんですが、考えすぎかな。
・より簡明には、キャラの出現を予想だにしないところ・文脈で、有標な表現に出くわした違和感がある、もしくはそれに起因する不気味さがあって、禁止の増幅作用が生じる、と説明すべきかもしれません。
・こんなことは、自衛隊とは関係ない民間人が感じるだけで、当事者たちにはもっとも明確な指示として、粛々と守るべきであり、何ら疑念の余地のないものなのかもしれません。「~てはならぬ」と書いた人も淡々と書いたのでしょうか。あるいは、ステンシルだから固定化した表現なのか。新たにステンシルを発注してのことだとしたら、発注者は「ぬ」の表現性を意識していたかどうか…… いろいろ想像したくなります。

負けちゃった

2009年08月24日 | 文体・表現
・県立岐阜商業、1-2で負けました。9回で同点、12回くらいで決勝点と勝手に読んでいたのですが。もう少し、相手投手をゆさぶるような攻撃はできなかったものか。出塁したら必ず大きなリードをとるとか、しつこくファール攻めするとか。すっかり、ペースにはまってしまった気がします。
・さて、愚妻と言葉をめぐる食い違いが面白い今日このごろ。「ゴミ袋がやぶれた」「皿が割れた」「洗濯物が落ちた」…… いやいや、あなたが無用に力を入れたり、無理な体勢で事を進めるからでしょう。そういうときは、「〈破った〉〈割った〉〈落とした〉と、自分を主格にした他動詞で表現しなさい!」
・ひょっとして物体主格の自動詞で表現するのは、関西方言*の特徴だったりするのだろうか。すると愚妻「関東はチャッタがあるから他動詞でもいけるけど、関西には元々ないから、自動詞でカバーするんや」。なるほど、〈やぶっちゃった〉〈割っちゃった〉〈落としちゃった〉、なるほどなるほど。一理ある気がします。

*関西方言でも、女性にその傾向が強い、との話も聞きました。

高校野球記事の表現

2009年08月19日 | 文体・表現
県立岐阜商業高校がスゴイにゃぁ。PL学園に6-3で快勝。ベスト8だにゃ。これはひょっとして行くかも。
3回以降、常に3点差をキープしているのだから、接戦を想起させる「「競り勝つ」とはいかがなものか。ちょっと失礼かもね。自然環境も、日本語も、大人たちが破壊するのだ。

追記
・PL視点で書かれた「5回に本塁打を浴び、じわじわと点差が広がる」というのも変。県岐商が3回以降3点差をキープしたことを、どう見れば「点差が広がる」と表現できるのか。「なかなか点差が縮まらない」なら分かるが。きちんと取材しているのだろうか。

ツンデレ語で一休み

2008年11月20日 | 文体・表現
・空山さんのところを経由してツンデレ語の発表資料を閲覧。ふむふむ。発話冒頭の言い淀みや、カラ+ネによる文断止に特徴があるとか。語彙的にも特徴がありそう。「別に・ため・偶然・たまたま・ついで・あんた・ない」などが頻用されるとかね。「やり/もらい」の「やり」系もでしょうか。こういった特徴的な言い回しをさせることで、キャラクター(に味)付けできる(=役割語化している)ということ? そこまでは熟していない? 場面・状況の方が優位?
・院演習と学部概論の一息入れるところで振ってみましたが、学生たちは乗ってきますね。実感できるところが多いのかな。
 「い、「犬」が〔inu〕と呼ばれるのは偶然なんだからねっ!」
これはもう一つか。

・N氏のツンデレ論考は、もうすぐ公刊されるのでしょうか。サイニーで検索すると出てくるようになるのかな。何だか楽しみだな。

・典型的な役割語になるには、日常語からの逸脱が必要条件になるのかもしれませんね。その端的な場合が死語化していること。博士語でもお嬢様言葉でもそうだし(悪博士語の場合は違いますが、対立する善博士語が日常語から逸脱していることにすがっているため、悪博士語として成立しているのでしょう)。日常語としては死語化しているからこそ、バーチャルな世界で生きられる(でしか生きられない)。そういう点からみるとツンデレ語はどうなのか。まだ不十分のような気がしますが、どんなものでしょうか。
・ただ、典型的な役割語ではないからこそ、検討する意義もある。これから典型化するかもしれない訳ですから、典型への道を観察するにはもってこいの対象ではないか。この点、すでに典型となった役割語について、その来由の解明が問題になっているのとは別の存在意義がある。ひょっとしたら、非日常語化を経ないで役割語化する新たなルートを作っていくことになるのかもしれない…… などと、知ったかぶりで、すみません。

「奇跡は起きます。起こして見せます!」

2008年04月13日 | 文体・表現
・風呂上がりに『日本沈没』の終りの方を見る。爆薬に反応したマグマ脈(というんですか?)が太平洋に巨大な水柱を吹き上げる場面。ううん、巨大さが伝わって来ないなあ。容易にぽんぽん上がってしまう。もう少しタメとか予兆とかがあってもよいのでは。日本を救った証でもあるんだから、その辺の期待も込めた演出がほしいです。
・「奇跡は起きます。起こして見せます!」と主人公が叫んで特攻する。私の世代だと『トップをねらえ!』第6話を思い浮かべるところ。監督さんも参加した作品のようですし。こういう引用のようなものは、アニメとかの世界で多いみたいですね。○○作品・監督へのオマージュの意味を込めてるんでしょうか。
・「奇跡は~」のセリフ、こちらの「予告編」の最後で聞けます。音楽は、ホルストの『惑星』の「火星」を下敷きにしてますね。
・危機対策大臣の声明に「御遺族に御冥福をお祈りします」という部分あったと思うんですが、ちょっと気になりました。

さらに出典はさかのぼる? というか、引用の連鎖でしょうか。リンク先で言及してませんが、第4話の入電文「我、操舵不能」は、『風の谷のナウシカ』からじゃないでしょうか。

「昨晩お会いしましょう」

2008年04月10日 | 文体・表現
松任谷由実のアルバムもそうでしたね。「おととい、来やがれ」的。『椿姫』にヒントをえた題名だそうですが、何がどういう訳でそうなったのか……
・「カンナ8号線」。好きな曲ですね。ノリがいい(私にもついていけるノリ、ということですね)。B面最初の曲として、新しいステージの始まりを告げるのにぴったり…… B面を知らない? そ、そうか。CD世代か。CDの前にはABがあるんだよ。

「夢で逢いましょう」

2008年04月07日 | 文体・表現
・定時に帰宅。途中、FMを点けていたら「♪夢で逢いましょう~」と流れた。ふと、これは「一昨日、来やがれ!」と同じような使い方ができるなと思った。コンパ(私の語彙では「合コン」。いつから違ってしまったのか)で、ちょっと趣味でない人にデートに誘われた時、やんわりお断りするのには良い言葉かと。「リアルでは逢いたくないの」。
・もちろん、私にはこういう場面は訪れるはずもない。ほかの方々、どうぞお使いくだされ。実際使用した方は御一報ください。薄謝進呈。発送は発表に代えさせていただきます。

「ふしぎな魚」

2007年05月30日 | 文体・表現
・出前授業などで、読書のすすめとか、解釈とかの話をするときは「短いものを読みましょう」などと言っている。短いから読めるわけだで、究極の例として短歌をあげたりする。たとえば、岡井隆さんの作品とか。
食卓のむかうは若き妻の川ふしぎな魚の釣り上げらるる(『E/T』)
「ふしぎな魚」って何のことでしょう、とみんなで考えたりする。時間を共有した感じが増す気がする。
・で、「ふしぎな魚」の解ですが…… 魚の一種、または変形したもの。(洋風な)珍しいおかず全般というあたりがまず出ます。私の解は沢庵。大根とかでも可。先日、1年生に聞いてみたら、作者、というのがあった。旦那がつい吸いよせられてしまうんだね。想定外だったけれど、アリですかね。