随縁記

つれづれなるままに、ものの歴史や、社会に対して思いつくことどもを記す

壁紙とシックハウス症候群

2005-09-25 22:29:08 | 健康
前々からの我が家の懸案事項であった、壁紙の貼り替えを、連休を利用して実行した。
材料はすべて揃っていたが、寒い時にはおっくうで、暑い中では物憂いので、延び延びになっていた。幸い秋の入り口で、作業をするには最も適した気候となり、幸い妻と共に連休となったので、重い腰を上げることにした。
初日にまず古い壁紙を剥がしておいたので、二日目の今日は壁紙の貼り付け作業となった。
壁紙の貼り替えでは、貼る作業事よりも、古い壁紙を剥がす事のほうが大変なのである。

ところで、壁紙に現在さまざまなタイプの壁紙が販売されているが、およそ十数年程前に、アメリカの大学の研究で、塩ビ壁紙の可塑剤に発ガンの可能性のある物質があると話題になった。あくまでもマウスの実権段階での可能性の指摘であったが、壁紙業界の反応は早かった。
また、シックハウス症候群も社会問題としてクローズアップされるようになった。

シックハウス症候とは、住まいの中で発生する化学物質に常時被曝される事による過敏症のことである。
近年の住宅は、その機能性重視から、高気密性住宅が多くなり、伝統的な和風建築が少なくなってしまった。高気密住宅が増加するにともない、シックハウス症候が増加しているのである。
換気不足により、住まいで発生する化学物質やカビ・ダニなどによる過敏症が増加しており、一種の社会問題ともなった。
家庭内で発生する化学物質として、家具や床材・壁材に使われている接着剤が問題となり、さらに塩ビ壁紙やレザーのソファーなどさまざまな物が問題とされた。
また、タバコの煙や、頭に振るスプレー、そして室内に持ち込まれる花粉、カーペットや畳に巣くうダニ、そしてカビなど問題にされている。

問題は、シックハウスの原因となる犯人捜しではなく、住宅の換気の問題であった。事実その後の建築基準法の改正で、住宅には一定の換気性能が義務付けされている。本来の伝統的和風建築では、自然素材を使用しているから、素材自体のもつ自然換気能力があった。
純和風建築に住んでいる人に、決してシックハウスが問題になる事はないのである。

が、マスコミは一斉に犯人捜しに焦点を当てた。特に問題視されたのが、住宅の建設に欠かせない接着剤である。
壁紙業界は、いち早く問題の可塑剤の使用を中止し、シックハウス対策として、壁紙の品質にもさまざまな改良が重ねられ、厳格な安全基準も設定された。

さらに壁紙業界は、積極的に健康壁紙を開発して行った。
光触媒壁紙・ルム吸着壁紙・消臭抗菌壁紙・イオン壁紙・カテキン壁紙・珪藻土壁紙・和紙壁紙・い草壁紙・バガス壁紙・ヒノキ壁紙・コルク壁紙など枚挙にいとまがない程である。壁紙用糊のメーカーも、いち早くノン・ホルムアルデヒドの商品を市場に投下している。
業界全体で健康壁紙に取り組み、それなりに成功したと言える。

壁紙は本来その材質は「紙」で出来ていた。
日本では、戦争後の住宅復興需要の中で、最も加工し易く単価も比較的に安く、さらに施行が簡単な塩化ビニール壁紙が主流となった。
塩化ビニールは、グラビア印刷適正が良く、高速印刷が可能である。さらに可塑剤で柔らかくし、発泡剤を入れるとボリュームが出る。発泡塩ビシートを、ヒート・エンボスロールに掛けると、さまざまな凹凸模様を付けることができる。
グラビア印刷と凹凸のあるエンボス加工の組み合わせで、千変万化の意匠が出来上がる。

壁紙の施行作業でも、発泡塩ビ壁紙は施行が簡単であり、また下地処理が不十分でも表に下地のアラが出にくい。住宅需要の急増で、公団住宅やマンションなどの集合住宅が続々と建設され、殆ど壁面は塩ビ壁紙が貼られた。
一般の住宅でも、網代を組んで土壁を塗るという工法では時間と費用がかかるため、次第に下地合板を壁下地に多用されるようになった。
下地合板の上には塩ビ壁紙が貼られるようになった。
このような事情で、塩ビ壁紙が全く貼られていない、純和風の住宅は珍しくなっている。

塩ビ壁紙は、壁紙素材のなかでは、最も多用されている素材ながら、上記のように業界あげての取り組みで、安全な壁紙となり、さらには健康壁紙という機能性壁紙も主流となっている。壁紙を貼ることで、マイナス・イオンを発生させたり、あるいは化学物質を吸着分解するという優れた機能の光触媒壁紙なども、一般家庭で利用できる。
今や健康的な住まいに、積極的に機能性壁紙を使う時代とも言える。

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