
カレーライスと餃子ライス(片岡義男/晶文社)
この人の作品は、2023年5月に『僕は珈琲』を紹介したが、その後、また面白いエッセイを見つけた。
二部構成になっていて、第一部のタイトルは「カレーライスは漂流する」。カレーライスを主題にした短いエッセイが46話収録されている。
カレーライスだけを主題とするエッセイ集は、作家やエッセイストよりはフリーライターという言葉が似合うこの人にしか書けないと思う。そして、この人らしく、カレーライスと珈琲は切り離せず、喫茶店のカレーライスが多く取り上げられている。
いずれにしても、自身の好みのカレーライスを思い出し、食べたくなること請け合いの文章。
第二部のタイトルは「餃子ライスはひとりで食べる夕食の幸せ」。
あとがきを見ると、第二部は一冊の本として出版するだけの分量を確保するために書き下ろしたもの。エッセイではなく短編連作。
主人公は27歳のライターで、神保町のほか、小田急線沿線を主な舞台に、小さな物語が進んでいくが、それを語ることが本筋ではなく、タイトルのとおり餃子ライスを各所で食べたり、テイクアウトしたりする。エッセイのような物語、といえばよいか。
この人の文章は、特定の時代の空気をまといつつ、今でも色あせることなくカッコよく乾いている。
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