量子テレポーテーションのゆくえ(アントン・ツァイリンガー/早川書房)
量子力学の本を読んでいると、「EPR論文」や、「ベルの不等式」という言葉を見かけることがある。
「EPR論文」は、神はサイコロをふらない、と信じるアインシュタインが、局所実在論を前提とすると、波動関数によって与えられる量子力学の記述は不完全である、と問題提起したもの。これに対して、それは実験で確かめることができる、と示されたのが「ベルの不等式」。実験の結果、正しかったのは量子力学で、局所実在論ではなかった。
というのが、私のざっくりとした理解だが、ベルの不等式そのものは、難しい数学のようなので深入りしたことはなかった。
この本の著者は、量子力学ではベルの不等式が破れることを実験で示して、昨年、ノーベル物理学賞を受賞した。この本の前半は、ベルの不等式がどういうものであるか、の説明に費やされている。付録として添付されている、双子のたとえによる説明は、専門知識がなくても、十分、理解可能だと思う。
後半では、実験の精密化を通じて「量子もつれ」に関する理解が進み、量子テレポーテーションをはじめ、量子コンピュータや量子通信など、量子情報テクノロジーの発展が期待されている状況が描かれる。
問題は、我々の感覚ではほぼ自明な局所実在論が、なぜ否定されるのか、ということ。間違っているのは、局所性なのか、あるいは実在論なのか。その哲学的な帰結は、まだ明らかになっていないようだ。
いずれにしても、注目すべきは、空間と情報、ということだろうか。
量子力学の本を読んでいると、「EPR論文」や、「ベルの不等式」という言葉を見かけることがある。
「EPR論文」は、神はサイコロをふらない、と信じるアインシュタインが、局所実在論を前提とすると、波動関数によって与えられる量子力学の記述は不完全である、と問題提起したもの。これに対して、それは実験で確かめることができる、と示されたのが「ベルの不等式」。実験の結果、正しかったのは量子力学で、局所実在論ではなかった。
というのが、私のざっくりとした理解だが、ベルの不等式そのものは、難しい数学のようなので深入りしたことはなかった。
この本の著者は、量子力学ではベルの不等式が破れることを実験で示して、昨年、ノーベル物理学賞を受賞した。この本の前半は、ベルの不等式がどういうものであるか、の説明に費やされている。付録として添付されている、双子のたとえによる説明は、専門知識がなくても、十分、理解可能だと思う。
後半では、実験の精密化を通じて「量子もつれ」に関する理解が進み、量子テレポーテーションをはじめ、量子コンピュータや量子通信など、量子情報テクノロジーの発展が期待されている状況が描かれる。
問題は、我々の感覚ではほぼ自明な局所実在論が、なぜ否定されるのか、ということ。間違っているのは、局所性なのか、あるいは実在論なのか。その哲学的な帰結は、まだ明らかになっていないようだ。
いずれにしても、注目すべきは、空間と情報、ということだろうか。