ヒロヒコの "My Treasure Box"

宅録、DAW、ギター、プログレ、ビートルズ、映画音楽など趣味の四方山話

ジェネシスのアナログ盤 abacab「アバカブ」

2016年07月22日 | プログレ
 1981年発表、トリオになってからの3作目である。当時はパンクロック台頭でプログレ・バンドは衰退の傾向だった。私も社会人になってバンド活動を離れ、少し音楽に疎くなっていた時期である。しかし、ジェネシスだけは注目し続け、このアルバムも国内発売と同時に購入。タイトルが意味不明だったが実はabstract(抽象的)の変形造語であること、ジャケットの配色が4種類あることなどでも話題になったが、今回もポップな傾向が増大した中にプログレ的アプローチのサウンドも聞かれる作品となっている。

 とりわけタイトル曲のAbacabとDodo/Lurkerの2曲はインストルメンタル部分もあり、プログレバンドとしてのジェネシスを感じさせる曲である。シンセソロが重厚で歪んだ音色に変わっていて叙情性は薄れたが、テクノ風のリズムとノリが新鮮であった。しかし何と言っても特徴的なのがNo Reply At All でのホーンセクションの導入、Me and Sarah Janeのレゲエ・リズム、そしてニューウェイブ的なWho Dunit? やKeep It Darkなど新境地を拓いていることである。フィル・コリンズのソロ活動での成果がバンドに強くもたらされたという側面もあるだろうが、トニー・バンクスやマイク・ラザフォードの作曲への新たな一面が開花し、バンド・サウンドに化学反応を与えたと見たい。私はMe And…の中間以降の展開に彼ら特有の美しさを感じ、親しみやすいメロディとゲートリバーブのスネア音が印象的なWho…も大好きな曲である。前作同様英国1位となり、新たなジェネシス・ファンも得たのだろう、アメリカでも7位に入り、シングルカットも4曲されたそうだ。

 国内盤では解説と英語の歌詞が掲載されているが、前2作まであった和訳がなくなった。一部分エンボス加工処理がされているジャケットも、他の色違い3種を集めることにも至らず、未だその実態を把握していないのがファンとしては恥ずべき実情ではある。しかし「3人が残った」以降の3作品の中では実は一番好きなアルバムなのである。