路地猫~rojineko~

路地で出会った猫と人。気付かなければ出会う事のない風景がある。カメラで紡いだ、小さな小さな物語。

訪問者

2008-02-12 | 『栗』

まだ団地に住んでいた頃、

階段下の植え込みの中から栗色の猫が現れた。

もうすっかり日も暮れて暗かったので野良猫と思っていたら、

黒い皮のお洒落な首輪が見えた。

飼い猫なので付いては来ないだろうと思い階段を上ると、のこのこ付いて来る。

玄関を開けると、慣れた様子で部屋の中迄入って来た。

人以外のお客さんがやって来るとは思っていなかったので、

取り合えず飲み物をと思い、小皿に水を入れてやった。

ペロリと飲み干した後、狭い部屋の中を見学し納得したのか

カーペットの上でゴロリと横になってくつろぎ始めた。

…ここが気に入ったらしい。

「猫は七つの家を持つ」と言われる位だから、我が家を七件目にされては困る。

そうだ、私が家を出れば付いて外に出るかと思い玄関を開けて外へ出る。

しかし、玄関まで見送りに来て、まるで飼い主を見送る様に玄関マットの上で寝そべるのだ。

違う、違う。慌てて猫を抱え、階段下まで連れて行った。

仕様が無いので、家を探してやる事にした。

川沿い迄出ると、 『小鉄』が心配そうにこっちを見ている。

「お前も一緒に『栗』を家迄送る?」と聞くと、『小鉄』も付いて来た。

二匹と一人で橋を越え、川向こうの猫を飼っていそうなお宅へ行ってみた。

ある一件の家に付くと『栗』は慣れた様子ですいすいと中へ入っていった。

ここが家か。『小鉄』と顔を見合わせ、ダッシュで橋まで走った。

すると、後ろでまるで「置いてくな~!」とでも言いたげな猫の鳴き声が響いた。

息を切らせて走っている自分と、何故か付いてきた『小鉄』が妙に可笑しく思えた。



秋の夜長は、「日本昔話」のように夜が更ける。

夜の訪問者には気を付けた方が良い。


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コメント (2)
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