路地猫~rojineko~

路地で出会った猫と人。気付かなければ出会う事のない風景がある。カメラで紡いだ、小さな小さな物語。

血の涙

2008-07-26 | 『影虎』

夜間道路工事が続き、騒音で眠れない日々が続くと

昼と夜が逆転してしまう。

こうなると一日寝ないで過ごして

早朝に散歩をしたくなる。




家から近所の『小豆』のいるケモノ道へ行ってみる。

猫が居るかと思いきや、全員パトロール中なのか

一匹も居ない事もある。

その日の朝もそうだった。

諦めてまた別の道へ…。

今度は『直人』達の居る公園を抜ける。



誰も居ない。



前日は大雨だった事もあり、近所の人が置いて行った

猫缶がひっくり返って落ちていた。

いつものカリカリも水を含んで山が三つ悲しげに残っている。

この雨続きでは、猫達もろくにご飯にありつけてはいないみたいだ。

不憫に思い、猫に会ったら

手持ちの撮影料(ほんの少しだが)を分けてやろうと思っていた。

歩けども、猫には会えず。

もう帰ろうかと思って向きを変えたその時、

物陰に猫の背中があった。



『影虎』だ。



嬉しくて駆け寄ると、『影虎』も起き上がってやって来た。

お腹が空いているのだろう。

相変わらず、ドンブリ飯を食べる武士の様な姿で食べる。

ふと気がつくと首の辺りが血だらけだ。

喧嘩が絶えないのか傷が多い。

古いものから新しいものまで。



猫も必死に生きている。



もう手持ちのご飯も無くなったので

立ち上がって帰ろうとしたら

『影虎』の目から大きな涙が流れ落ちた。




血の混じった赤褐色の涙。

私はもう少し、この侍の傍に居る事にした。










今日は何位?
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再 会

2008-01-23 | 『影虎』

家路を急いでいた。

ネット接続の為、電話会社から書留郵便が送られて来る予定だったからだ。

明日には接続工事の人が来るので、今日の内にその書類が手元に無いと困る。

いつもならゆっくり猫の居る路地を散策しながら帰る所を、家まで最短距離で行ける道を選んだ。

少し小走りになっていた。

『小鉄』が居る納骨堂エリアから少しずれた川沿いを急ぐと、平屋の空き家が見える。

小さな庭とブロック塀にチェーンが架けてある。

その玄関先に猫の影が見えた。

大きい。 『影虎』だ。

久し振りの再会に嬉しくて、急いでいるのも忘れてしゃがみ込んで『影虎』を呼んだ。

「ニャ~ッ」と可愛い声で短く鳴いて、そっと近付いて来た。

やっぱり『影虎』だ。慌てて何か食べるものを探す。

「憶えていてくれたか?元気だったか?ご飯ちゃんと食べてるか?どうしてここに居る?」

口の利けない猫に、ついつい矢継ぎ早に質問攻めにしてしまのは

『影虎』は言葉を理解しているからだ。

相変わらず、「食べて良いよ」と言われないと口を付けない。

黙々とドンブリ飯をかき込む武士の姿に惚れ惚れしながら、

「拙者は道を急ぐ、又会う日迄、達者で居てくれ。」と、

頭をポンポン撫でて立ち上がった。




『影虎』を背後にしながら、急ぎ足で帰る途中

今日私が急いでここを通る事も、

何の為に急いでいるのかも、

『影虎』は全部知っていてあそこに座っていた様に思えた。


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一匹狼

2008-01-04 | 『影虎』

二級河川の橋の横には都市ガスの太い配管がある。

その上を綱渡りの様に歩いて渡って来る姿は、威厳に満ちた虎の様。

夜にしか姿を見せない雄猫『影虎』は、余り鳴かないが、顔に似合わず声は可愛い。


川沿いで『小鉄』がいつも餌を貰っている所へ、二~三日に一度の頻度でやって来る。

野良暦の長さを物語る体の汚れ具合、その割りに人の言葉が解る様子で、

「食べて良いよ」と言われないと口を付けない。

食べ終えるとくるりと向きを変え、少し歩いた所で一度振り向き一礼し、

再び橋向こうへ帰って行く……礼儀正しさは、まさに武士だ。



橋向こうからやって来るこの先輩猫を怖がってか、

『小鉄』は気付くと道の向こうへ逃げ、こっちの様子をじっと伺っている。

『小鉄』と比べて顔の大きさが全然違う。

体も大きい。

何歳位なんだろう…野良猫の寿命は長くて三~四年、『影虎』は優に十歳は超えていそうだ。


最近は人も猫もユニセックス化が進んでいるのか、性別をぱっと見で判断するのが難しくなった。

その点、昭和の猫というか、

…昔の雄猫はやたら顔がデカイので見間違える事は余りなかった気がする。

『影虎』もきっと人間だったら、鬘の似合う時代劇のトップスターになれたかもしれない。

「座頭市」とか似合いそうだ。



残念ながら、最近では二~三日の逢瀬もままならない。

橋向こうの何処かで、どうか達者でいて欲しい。


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