路地猫~rojineko~

路地で出会った猫と人。気付かなければ出会う事のない風景がある。カメラで紡いだ、小さな小さな物語。

追跡者

2008-11-02 | 『逃亡者』

その日、私は急いでいた。

直人』と『チビ』に挨拶もそこそこに

公園を足早に通り抜けた。

日も暮れかかる時間帯、

後ろから視線を感じながら早足で歩いていた。




しまったな~。何処までもついてくる。

振り向くとまん丸な『逃亡者』の目がこっちを見ている。




立ち止まると後ろも止まる。まるで影みたいだ。

追い返そうと追い掛けてみても、気が付いたら

小鉄』が以前いた納骨堂の前までついて来た。

もう辺りは暗く街灯が灯り始めていて、

煙草を吸いにベンチに来ていたおばあちゃん

もう店じまいとばかりに団地の中へ帰ろうとしていた。

慌てて私は声を掛けたが、耳が遠いおばあちゃんは

なかなか止まってはくれない。




「おばあちゃん、こ・ん・ば・ん・わ!」

漸く止まってくれたので、

私の「追跡者」である『逃亡者』を紹介する事にした。




小鉄』と会えなくなっていつも淋しそうだったおばあちゃんは

暗がりに隠れた猫を見て満面の笑みで応えた。

煙草をしまってある小さなバックから煮干を取り出し

子供の様な笑顔で「食べるかな?」と私に尋ねた。




それは多分、『小鉄』の為に持っていた煮干

ずっとバックにしまって置いたのであろう、ボロボロの煮干を見て

私は何だか胸が熱くなった。







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コメント (2)
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