路地猫~rojineko~

路地で出会った猫と人。気付かなければ出会う事のない風景がある。カメラで紡いだ、小さな小さな物語。

夜の記憶

2009-05-10 | 『虎千代・茶々・夜』

鼻炎なのか風邪なのか解からないまま

耳鼻科に行ったら、

「最近、ペットを飼われましたか?」と医者に聞かれた。

それはないだろうと一応、カビと杉花粉の検査をして貰う事にした。





病院の近くは『虎千代』と『茶々』と『夜』のいる場所から近い。

具合が悪いくせに、懐かしくなって行ってみる事にした。

もう半年~一年近く行っていないし、居ない可能性もある。





心配をよそに、河沿いの段ボールハウスは健在だった。

それどころか、

グレードアップ(ツツジの茂みに隠れる様に目立たない塗装)していて

快適な居住空間が出来上がっていた。

以前の様に、猫嫌いの人からのクレームの張り紙は無くなっていた。

でも、猫の姿は無い。

暫くその場でキョロキョロしていると

土手の向こうに黒い影が動いた。




あ、『夜』だ。




小柄だがモフモフした体付きの黒猫が

迷わず私の方へ向かって来るのが見えた。

自分の背丈程の草むらを掻き分け歩く姿は

さながら、黒豹に見える。




以前だって、いつも通っていた訳でもないし

会えなくなったのはもう随分前なのに、

『夜』は私を覚えていた。





人と同じように、猫も

別れの悲しみって奴は、

繰り返し悪い爪をはぐ時みたいに

いつか、ゆっくり剝がれていくものなのかも知れない。

ちょっとだけ引っ掛かって残っていた爪の記憶が

懐かしい顔になって蘇ったのだろう。




しっかりとした足取りで

『夜』はもう足元迄来ていた。
















昨日は51位
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意 識

2008-08-01 | 『虎千代・茶々・夜』

ある日、スーパーで買い物中にレジを済ませ袋に商品を入れながら

何気なく掲示板を見ていた。

少年野球のチーム募集やら、奥様サークルのお知らせと共に

子猫の里親募集のチラシがあった。

「四匹の子猫を保護しています。欲しい方は…」

可愛い子猫の同じ写真が四枚配置してある。

早く里親が見つかると良いなと思って住所を見ると

『虎千代』達の居る段ボールハウスから近い。

子猫の写真は『虎千代』にそっくりのキジトラだ。

『夜』が産んでもキジトラは産まれるはず。

もしかしたら、

『夜』の子猫達は里親を探してくれる優しい人に

拾われたのかもしれない。

勝手な想像だが、一瞬そんな考えが頭をよぎった。

その子猫が『夜』の子猫とは違ったとしても、

その掲示板を見て微笑ましい気持ちになれたのは事実だ。





人は意識レベルで繋がっているという。

最北に生息するサルが、川で食べ物を洗って食べるという行為をしたら

その日の内に、最南端のサルが食べ物を洗って食べ始めたという話を

聞いたことがあると思う。

言葉もない、距離も離れたサル同士が意識で繋がっているのなら

言葉を持つ人間だってそうだろう。

少子化に始まり、あらゆる犯罪に事件…

人も意識で繋がっているからこそ

悲しみの「不の連鎖」が広がるのかもしれない。




不安が支配するこの時代、

世の中を良くするたった一つの魔法があるとしたら

私達、一人ひとりが持つ「意識」だけなのかもしれない。






今日は何位?
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路上生活

2008-04-01 | 『虎千代・茶々・夜』

紳士風の男性が、公園で二匹の血統書付きの小型犬を散歩させていた。

何処にでもある風景なのに

何故だか心に引っ掛かっていたのは

飼い主である当の本人は綺麗な格好をしているが、

二匹の犬は何ヶ月も洗って貰っていない様子だったからだ。




川沿いには、ダンボールハウスが二つある。

一つは路上生活者のもの。

路上生活者は雑種の大きな犬を飼っていて、

毎朝、犬のブラッシングをしている。

前者の飼い犬より、遥かに身奇麗かもしれない。

犬は、冬の寒さからも寂しさからも主人を守っている。






もう一つは、猫達の為に誰かが工作したもの。

猫達のダンボールハウスには

雨も凌げるように、ビニールが掛けられ

定員は二匹迄だが、暖かい毛布が敷かれていた。

いつもの三匹、『虎千代』と『茶々』と『夜』が

折り重なる様に互いを暖めながら眠る。

その横の木には張り紙がある。





「無闇に猫に餌を与えないで下さい。野良猫が増える原因になります。」





人生には、風当たりが強い場面が必ずあるもの。

納得のいかない場面も。

誰もが、居場所を見付けるのに必死みたいだ。



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