りとるぱいんわーるど

ミュージカル人形劇団“リトルパイン”の脚本の数々です。

“正義の王子エリオット” ―全7場―

2012年02月11日 21時36分14秒 | 新作(人形劇用)


   〈 主な登場人物 〉

   エリオット  ・・・  光の国の王子。

   リコ  ・・・  村の少年。

   村長  ・・・  いちの村の村長。

   王様  ・・・  エリオットの父。

   じぃ  

   ポポ  ・・・  エリオットの家臣。

   ミミ  ・・・  エリオットの家臣。

   ポーリー巡査  ・・・  いちの村の警察官。

   マーサ  ・・・  リコの妹。



 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪


         鐘の音が厳かに鳴り響き、
         幕が開く。

    ――――― 第 1 場 ――――― A

         紗幕前。
         下手より、光の国の王様、じぃ、話しながら
         登場。

  じぃ「王様・・・、悪天候による長年の不作のせいで、益々我が国
     が統治する村々は貧しさを増し、村人達の生活は貧窮を極
     めておりまする・・・。このままでは・・・」
  王様「うむ・・・。だが、今や我々でさえ、日々の暮らしがやっとと
     言う・・・。全ての村に分配する配給金を、捻出するのも儘な
     らなくなっておる・・・。何ともはや・・・如何したものか・・・。」
  じぃ「何とかしなければ、村人達の不満が溢れ出るのも時間の
     問題・・・。そうなれば村の統治も何も、あったものではない
     かと・・・。」
  王様「そうだな・・・。」
  じぃ「ただ・・・」
  王様「ただ・・・?」
  じぃ「はい・・・、その貧窮の裏で・・・何やら不穏な気配がしてお
     るのです・・・。」
  王様「不穏な気配だと・・・?」
  じぃ「はい・・・。」
  王様「分かった、じぃ。家臣達にその辺りのことを探らせるのだ
     。」
  じぃ「はい。」
  王様「但し・・・くれぐれも、目立った動きはしないように、申し伝
     えるのだ。もし、本当に何か良からぬ者が、裏で手を引い
     ているようなことがあるとするなら、探りを入れる気配に気
     付いて、動きを止めるかも知れぬ・・・。」
  じぃ「はい、分かりました王様・・・。」
  王様「だが、先ずは村人達に分け与えるだけの、食料を確保す
     ることが急務であるな。」
  じぃ「・・・はい・・・。」

         2人、話しながら下手へ去る。
         音楽流れ、紗幕開く。

    ――――― 第 1 場 ――――― B

         場面は城内の様子。
         中央、光の国の王子(エリオット)、瞳を輝かせ
         遠くを見遣り立つ。エリオット歌う。
    
         “僕は光の国のエリオット
         みんなの平和と幸せを守り
         未来への道標となる者
         自分の役割に気付いた今
         ただひたすらみんなの為に
         間違いは全て正す

         僕の力でこの世の中を
         変えて行く
         そう誓ったこの心に
         だから歩くんだ一歩ずつ”

  エリオット「(上手、下手を見て。)ポポ!!ミミ!!」

  ポポの声「はい!!エリオット王子ワン!!」
  ミミの声「はい、只今!!ニャア!!」
 
         上手、下手よりエリオットの家臣ポポ、ミミ登場。
         エリオットの横に膝を付き控える。

  ポポ「王子!!如何したんだワン!!」
  エリオット「今から“いちの村”へ行く!!」
  ミミ「え・・・今からニャア?」
  エリオット「そうだ!!いちの村で、何か困ったことがありはしな
        いか、様子を見に行く!!2人共、直ぐに仕度しろ!!
        馬の用意を!!」
  ポポ「はい、ワン!!」
  ミミ「分かりました、ニャア!!」

         ポポ、ミミ、上手下手へ其々走り去る。
         エリオット再び歌う。

         “僕は光の国のエリオット!
         いつも誰かの為になる
         そんな生き方をするんだ
         ただひたすら光を放ち
         みんなが迷うことがないように
         僕はいつでも誰もが
         目指す者でありたい”

         紗幕閉まる。

    ――――― 第 2 場 ――――― A

         紗幕前。
         一人の少年(リコ)、下手より後ろを気にしながら
         走り登場。上手方に立つ一本の木の後ろに隠れ
         るように。

  声「おーい!!待ちやがれー!!この餓鬼ー!!俺の財布、返
    せー!!」

         その時、下手より誰かを捜すように、一人の
         村人、走り登場。回りを見回す。

  村人「くっそう・・・一体何処へ行きやがったんだ、あの餓鬼・・・!
     俺ン家の晩飯代を・・・!!おおーい!!何処に隠れてるん
     だー!!」

         村人、回りを見回しながら、走り去る。
         村人、走り去るのを見計らって、木の後ろ
         に隠れていたリコ、上手方を見ながら出て
         来る。

  リコ「へへーんだ!!・・・チョロイもんさ!(手に持っていた袋の
     中を覗く。)なんでぇ・・・しけてんなぁ・・・。たったこんだけか
     ・・・。こんなんじゃ、パン一切れしか買えねぇじゃないか・・・
     」

         音楽流れ、リコ歌う。

         “何てしけた
         村の奴らの懐・・・
         こんなはした金
         腹の足しにもなりゃしない
         一体いつまで
         こんな貧乏・・・
         いくら働いたって
         ちっとも楽になりゃしない
         だったら俺は働かねぇ!”

         その時、どこからかエリオットの声が聞こえる。

  エリオットの声「おい、そこの子ども・・・!見てたぞ!!」

  リコ「・・・え・・・?(回りを見回す。)誰だよ!!」

         (紗幕開く。と、村の様子。)

    ――――― 第 2 場 ――――― B

         そこへ、上手よりエリオット登場。

  エリオット「泥棒は悪いことだと、学校で習わなかったか・・・?」
  リコ「何だ、おまえ!!」
  エリオット「目上の者には敬語を使えと、学校で教えられなかっ
        たか・・・?(リコの頬を抓る。)」
  リコ「いてててて・・・何しやがんだ、てめえ!!放せ!!放せっ
     てんだろ!!」
  エリオット「放して下さい・・・だろ?」
  リコ「はな・・・放せ・・・いてててて・・・放して下さい・・・放して下
     さい!!」
  エリオット「よし!(手を放す。)」
  リコ「何が“よし”だ!!いってぇ・・・(頬を摩る。)こいつ、とんで
     もねぇ野郎だな・・・。ふん!!」
  エリオット「それより、こんな時間に村の中をフラフラ・・・子どもは
        学校に行って、勉強している時間だろ?」
  リコ「知らねぇよ!俺は学校なんて行ってねぇ!!」
  エリオット「学校に行ってないだって・・・?」
  リコ「それが、どうしたんだよ!おまえに関係ないだろ!」
  エリオット「“おまえ”?」
  リコ「あ・・・いや、あんたには関係ないってんだよ!」
  エリオット「そう言えば・・・(回りを見回す。)」

         いつの間にか、後方数人の子ども達、
         当てもなくウロウロしている。

  エリオット「この村の子ども達は、こんな時間にみんな・・・学校
        に行ってないのか・・・?」
  リコ「この村に、学校なんてないよ!兄ちゃん、知らねぇのか?」
  エリオット「学校がないって・・・如何言うことなんだ・・・?学校建
        設に掛かる費用は、城から出てる筈だろ・・・。」
  リコ「そんなこと知らないさ・・・。ただ俺達は、生まれてから一度
    も、学校なんて行ったことがないってことさ。」
  
         その時、後方にいた子ども達、リコの方へ
         近寄って来る。

  子ども1「おーい、リコ!!如何したんだ?」
  リコ「(子ども達を認め。)よお!」
  子ども2「橋向こうに金持ちそうな大人がいるんだ!今からたか
       りに行くんだけど、リコも行かないか!?」
  エリオット「・・・え?」
  リコ「おう!行く行く!」

         子ども達、下手方へ行きかける。

  エリオット「たかり・・・だって?ちょ・・・ちょっと待て!!(リコの
        腕を掴む。)」
  リコ「何だよ!!」
  エリオット「たかりに行くって如何言うことだよ!?」
  リコ「え・・・?」
  エリオット「たかりが悪いことだと、学校で・・・そうか・・・行ったこ
        とがなかったんだ・・・。」
  リコ「何だよ!放せよ!食費を稼ぎに行くんだ!!」
  子ども1「早くしろよ、リコ!金持ちが行っちまうぜ!」
  エリオット「たかりなんて駄目だ!!」
  リコ「駄目って何だよ!!」
  
         子ども達、コソコソ話す。

  子ども2「行こうぜ!」
  子ども1「ああ。」
  子ども2「俺達、先に行くぜ!」

         子ども達、下手へ走り去る。

  リコ「あ・・・ちょっと待って・・・!!放せよ!!俺ン家だけ、晩飯
    抜きにしろってのかよ!!」
  エリオット「おい!!聞くんだ!!」
  リコ「何だよ!!」
  エリオット「“たかり”と言うのは、強盗と同じで犯罪なんだ!!
        そんなことをしていると、警察に捕まって牢屋に入れら
        れてしまうんだぞ!!」
  リコ「犯罪・・・って・・・大袈裟だなぁ、兄ちゃん。警察も何も・・・こ
    の村のお巡りって、交番から出てこないぜ。だからみんな悪
    いことし放題なんだ!俺もう行くぜ!晩飯、稼がないと!!
    (下手方に手を振り。)おーい、待ってくれよーっ!!」

         リコ、下手へ走り去る。
                      
  エリオット「稼ぐって・・・」

         そこへ上手よりポポ、ミミ何か解せないように
         首を傾げながら登場。

  ポポ「エリオット王子・・・ワン。」
  エリオット「(振り返りポポを認める。)ポポ。しっ!!ここでは“
        王子”はナシだ。」
  ポポ「あ・・・そうかワン。」
  ミミ「エリオット・・・ニャア。」
  エリオット「如何した?」
  ポポ「何だかこの村の様子が・・・ワン・・・」
  エリオット「様子・・・?」
  ミミ「ええニャア。」
  ポポ「村人達みんな、ボロボロの服を着てるワン。」
  ミミ「それに子ども達は平気で盗みを働くし・・・ニャア。」
  エリオット「そうか・・・。ポポ!ミミ!暫くこの村の様子を探ってく
        れ。僕は警察へ行って来る。」
  ポポ「分かったワン!」
  ミミ「OKニャア!」

         ポポ、ミミ上手へ走り去る。
         音楽流れ、エリオット歌う。

         “何かが変だ
         悪を悪とも感じず
         良心を失ったのか・・・
         いつからこんな風に変わってしまった
         誰も気付かぬ間に・・・”

  エリオット「何だか良くない気配がする・・・。どの村にも同じだけ
        、村の運営を賄う公費・・・それに村人達の生活を維持
        する為の配給金が分配されていると言うのに・・・。何
        故この村だけ、こんな風に貧しいんだ・・・。おかしい・・・
        絶対におかしいぞ!!」

         紗幕閉まる。

    ――――― 第 3 場 ―――――

         紗幕前。
         一人の警察官(ポリー巡査)上がる。
         その時、声が聞こえる。

  声(エコー)「まだ誰にも気付かれてはいないかね、ポリー巡査
         ・・・。」

  ポリー「はい、まだ大丈夫かと・・・」

  声(エコー)「万が一にも、気付かれそうな気配が見えてくれば、
         直ちに私へ連絡をよこすのだ。いいな?」

  ポリー「はい、勿論です。」

  声(エコー)「それで・・・?そろそろ次の配給金分配の時期であ
         ろう?そろそろ警察当局にも、警備の知らせが入る
         筈だ。そうすれば、直ちに私の方まで・・・(笑う。)」

  ポリー「はい、分かりました村長・・・(“村長”繰り返す。)」

         そこへ上手よりエリオット登場。

  エリオット「こんにちは・・・」
  ポリー「(エリオットをチラッと見る。)」
  エリオット「お巡りさん、僕はたった今、そこで引ったくりを見かけ
        たんですが・・・。」
  ポリー「・・・それで・・・?」
  エリオット「まだ犯人が、その辺をウロウロしているかも知れない
        ・・・。今ならまだ間に合うかも・・・。」
  ポリー「・・・ほう・・・」
  エリオット「捕まえに行かないんですか・・・?」
  ポリー「・・・この私が・・・かね?」
  エリオット「勿論。」
  ポリー「(笑う。)放っとけ、放っとけ。いつものことだ。」
  エリオット「いつもの・・・?」
  ポリー「ああ、そうさ。おまえはこの辺りじゃあ見ない顔だな・・・。
      知らないのなら教えてやろう。この村は、人から物を貰っ
      て皆、生計を立ててるんだ。」
  エリオット「引ったくりは泥棒ですよ?れっきとした犯罪だ。物を
        貰うこととは違う。」
  ポリー「この村で、そんな風に正義感を出してると、エライ目に
      遭うぞ。さぁ、早く行った行った・・・。悪いことは言わない、
      さっさとこの村から出て行け。そして自分の村へ帰ったら
      、決してこの村で見聞きしたことは口外せぬように・・・。」
  エリオット「如何してですか・・・?」
  ポリー「如何して・・・?おまえだって・・・命が惜しいだろ?」
  エリオット「命・・・?偉く物騒な話しだ。(笑う。)」
  ポリー「そう・・・この村は物騒なのさ・・・。見えないつもりだろう
      が・・・そんなキラキラ光るものを身に付けていると、忽ち
      子ども達から狙われるんだぜ。」
  エリオット「・・・あなた・・・本当に警察官・・・?」
  ポリー「勿論!私はこの村のポリー巡査!」
  エリオット「・・・ポリー巡査・・・か・・・」

         ポリー巡査、エリオット下がる。(紗幕開く。)

    ――――― 第 4 場 ――――― A

         場面は城内。
         下手より、光の国の王様とじぃ、話しながら
         登場。

  王様「それでどうだ・・・?何か分かったのか?」
  じぃ「いえ、それがまだ何も・・・。確かに其々の村には、村の運
     営費の配給が半年に一度、間違いなく行われておるようで
     はありますが・・・。」
  王様「そうか・・・。ならば、全ての村人が毎日の食事に事欠くこ
     とはない筈だが・・・。誰かが何処かで、私腹を肥やしてお
     るようなことがない限りは・・・。全ての村人が平等で暮らせ
     るようにと考えて、この配給制度も始めたのだ・・・。」
  じぃ「はい、王様。」
  王様「だが、ここ数年の悪天候による不作のせいで、今や、この
     国全てが危機的状況に陥っている・・・。」
  じぃ「はぁ・・・全くその通りで・・・。」

         その時、上手方よりエリオットの声が聞こえる。

  エリオットの声「父上ーっ!!父上ーっ!!」

  王様「(上手方を見て。)エリオット?」

         上手より、エリオット走り登場。

  エリオット「(王様を認め、駆け寄る。)父上!!」
  王様「エリオット・・・」
  じぃ「エリオット王子様・・・。」
  王様「如何したのだ、そんなに慌てて・・・。」
  エリオット「父上!!今、いちの村から戻ったのですが、何とか
        村人に分配する配給金を、もっと増やすことは出来ま
        せんか!?」
  王様「増やすだと・・・?」
  エリオット「はい!!何故だか分りませんが、村人達の様子は、
        今日明日をも食べる物に困るような状態・・・。このま
        までは、次の配給金の分配まで、持ちそうにないので
        す!!だから、何とか臨時の金を・・・!!」
  じぃ「王子様・・・」
  王様「エリオット・・・今までおまえには黙っていたが・・・」
  エリオット「父上・・・?」
  王様「我が国はもう、これ以上余分なお金はないのだ・・・。」
  エリオット「お金が・・・ない?」
  じぃ「王子様・・・ここ数年の農作物の不作のせいで・・・全く収入
     源がなく・・・配下の村々に配る配給金を、捻出するのがや
     っとなのです・・・。」
  エリオット「じぃ・・・そんな・・・」
  王様「それが今の我が国の・・・真実の状況なのだ・・・。」
  エリオット「父上・・・」

         王様、じぃ下がる。(場面変わる。)

    ――――― 第 4 場 ――――― B

         エリオットの部屋。(上手方に一つのベット。)
         エリオット、ベットの上へゴロンと横になる。

  エリオット「そうだったんだ・・・この国がそんな風に・・・。僕は全
        くそんなことは知らなかった・・・。駄目だな・・・。そう言
        えば・・・ずっと前に出会ったマルコは如何しているん
        だろう・・・。マルコの村も貧しくて・・・僕の剣を盗んで
        売ろうとしてたっけ・・・。(笑う。)今じゃ、この国もあの
        時のマルコの村と・・・売る・・・そうか・・・!!(ベットか
        ら起き上がる。)そうだ!!僕の持っている物を売って
        、金に変えればいいんだ!!そして、その金を皆に
        配ればいいんだ!!剣だけじゃない!!何だって売
        るぞ!!洋服だって・・・靴だって・・・(胸元を見て。)
        このペンダントだって!!この部屋にある物、全部売
        ろう!!」

         音楽流れ、ベットから飛び降りたエリオット、
         歌う。

         “金がないなら作ればいい
         金になるものはいくらでもある
         贅沢なんているものか
         全てを金に代えるんだ
         そしてそれを困ってる人
         皆に配ろう!!”

  エリオット「そうだ!!何なら城を開放して、学校に使おう!!
        こんなに広い場所があるんだ!!僕達には広過ぎる
        から!!」
 
         “金がないなら作ればいい
         金になるものはいくらでもある
         使える場所も沢山あるんだ
         だからみんなで訳合おう!!
         一人占めする必要なんかない
         みんなが一緒に幸せになる為に”

         その時、下手よりポポ、ミミ走り登場。

  ポポ「王子ー!!ワン!!」
  ミミ「エリオット王子様ーっ!!ニャア!!」
  エリオット「ポポ、ミミ!!如何だ、何か分かったか!?」
  ポポ「はいワン!!それが配給金は確かに村の銀行に届けら
     れてるワン!!」
  ミミ「でも、そこから村人達の手には渡ってないニャア!」
  ポポ「何処かで、その金を横取りする奴がいるようだワン!」
  エリオット「そうか・・・。配給金が入るのを先ず知るのは・・・」
  ポポ「城から村までの警備を担当する警官・・・ワン。」
  エリオット「警官・・・。ポポ、ミミ!!僕は今から、もう一度いちの
        村へ行って来る!!」
  ミミ「え・・・?今からニャア!?」
  エリオット「おまえ達2人は、この部屋にある僕の剣や洋服を売
        って、金に代えて来てくれ。」
  ポポ「お金に・・・?ワン・・・」
  エリオット「そうだ!!金だ!!全部売ったって構わない。出来
        るだけ沢山の金貨に代えて来るんだ。いいな!」
  ミミ「・・・え・・・ええ・・・ニャア・・・」
  エリオット「(下手方へ行きかけて。)あ・・・(首にぶら下げていた
        ペンダントを外し、ポポに手渡す。)これも、持って行っ
        てくれ。」
  ポポ「これ・・・これは亡くなったお母上の・・・ワン・・・」
  エリオット「いいんだ。」
  ミミ「でも・・・」
  エリオット「そんなものがなくても、母はここにいるよ・・・。(胸を
        押さえる。)村人達の為になる方が、母も喜ぶ筈だ。」
  ポポ「エリオット・・・」
  エリオット「頼んだぞ!!」

         エリオット、下手へ走り去る。

  エリオット「あ!!エリオット王子ワン!!」

         紗幕閉まる。

    ――――― 第 5 場 ―――――

         紗幕前。音楽流れる。
         一人の少女(リコの妹“マーサ”)上手より
         登場。歌う。

         “毎日 毎日食べる物がないの・・・
         お腹が空いても
         満たす物は何もない・・・
         一欠片のパンさえ買えない・・・
         売ってない・・・
         お金もない・・・”

         そこへ下手より、リコ登場。

  リコ「マーサ!」
  マーサ「あ、お兄ちゃん!!(駆け寄ろうとして転ぶ。)あっ!!」
  リコ「マーサ!!」
  マーサ「痛いっ!!えーん!!えーん!!・・・」
  リコ「(マーサに駆け寄り。)大丈夫かい、マーサ!」
  マーサ「お兄ちゃん!!(リコの方へ手を差し出す。)血が出て
       る・・・。えーん・・・えーん・・・」
  リコ「大丈夫・・・これくらいの傷!唾付けときゃ、直ぐに治るさ!」
  マーサ「えーん・・・えーん・・・」

         そこへ下手より、エリオット登場。(紗幕開く。)

    ――――― 第 5 場 ――――― B
  
         場面は村の様子。

  エリオット「(泣いているマーサに気付いて。)如何したんだい?」
  リコ「(エリオットに気付いて。)・・・あ・・・おまえ・・・」
  マーサ「(手を差し出して。)転んじゃったの・・・。えーん・・・えー
       ん・・・」
  エリオット「どれ・・・(マーサの手を取り見る。)ちょっと待って・・・
        いいものがある・・・(ぶら下げていた袋の中をガサゴソ
        探すように。)あ・・・あった、これだ・・・。ほら、見せてご
        覧。(マーサの手にテープを貼ってやる。)さぁ、これで
        もう大丈夫。ね?痛くないだろ?」
  マーサ「・・・うん・・・痛くない・・・。お兄さん、ありがとう!!お兄
       ちゃん見て!!全然痛くないわ!!」
  リコ「・・・よかったな・・・マーサ・・・。」
  マーサ「うん!!」
  エリオット「そうだ・・・君達知らないかな、村長さんの家。」
  リコ「村長・・・?」
  エリオット「ああ。村長さんに少し用があるんだ。」
  リコ「ふうん・・・。じゃあ俺が案内いてやるよ。マーサの傷の手
    当てしてくれた礼だ。」
  エリオット「ありがとう。」
  マーサ「お兄ちゃん・・・お腹空いたね・・・」
  リコ「・・・我慢しな。後で何とかしてやるから・・・。」
  マーサ「・・・うん・・・」   
  エリオット「(2人の話しを聞いていたように。再び袋をガサゴソ
        探す。)君・・・よかったらこれあげるよ。(袋からパンを
        取り出し、マーサへ差し出す。)」
  マーサ「本当!?」
  リコ「え・・・?」
  マーサ「お兄ちゃん!!貰っていい?」
  リコ「え・・・あ・・・うん・・・。ありがとう・・・。」
  エリオット「いいさ、そんなこと。」

         マーサ、パンを嬉しそうに頬張る。

  マーサ「美味しい!!お兄ちゃんもはい!!(パンを半分千切
       って、リコへ差し出す。)」
  リコ「(パンを受け取る。)」
  エリオット「そうだ・・・(服のボタンを一つ取り、リコの手に握らせ
        る。)」
  リコ「何だよ、これ・・・」
  エリオット「売れば、結構な値が付く筈だ。村長の家までの案内
        代だ。受け取っておくれ。」
  リコ「(ボタンを見て。)・・・こんな高そうなの・・・。俺・・・貰えない
     !!(ボタンをエリオットの手に無理矢理持たす。)村長ん
     家は川向こうだ!!この道を真っ直ぐ行きゃ着くよ!!マ
     ーサ!!行くぞ!!」
  マーサ「え・・・うん・・・」
  エリオット「ちょっと待てよ!!これだけあれば一カ月は食べて
        暮らせるだろ?」
  リコ「兄ちゃん!!貧乏人の俺達に金品を恵んでいい気になっ
     て、何様のつもりだい!?」
  エリオット「・・・恵む・・・?」
  リコ「俺達は盗みはしても、物乞いはしない!!恵んでもらって
     も、ちっとも嬉しくないんだ!!」
  エリオット「(笑う。)馬鹿・・・!何、偉そうに言ってるんだ。盗み
        は泥棒・・・れっきとした犯罪だ。そんなことをやってい
        ると、警察に捕まって、牢屋に放り込まれるんだぞ。」
  リコ「・・・牢屋・・・」
  マーサ「お兄ちゃん・・・」
  エリオット「だが物乞いは罪じゃない。持ってる人に恵みを乞う
        ことは罪なことか?そうじゃない。おまえにはおまえの
        生きる権利がある。生きる為に必要な物・・・空気や水
        ・・・家・・・服・・・寒ければ暖を取るものもいる。それら
        は全ての人に、平等に与えられるべき物なんだ。生き
        る為に・・・。だが・・・悲しい話しだが、それらが人々に
        平等に行き渡らない事実があるのが現実だ。だったら
        人の手を介して平等にしていけばいいじゃないか!!
        “恵んで貰う”なんて考えは止めるんだ。今は親切だと
        、黙って受け取ればいい。そして、いつか自分の力で
        生きる権利を全う出来るようになった時、また今のおま
        えのように、権利の不平等に苦しむ者に、今度はおま
        えが平等を与えてやればいいんだ。」
       




      





   ――――― “正義の王子エリオット”2へつづく ―――――














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    (どら余談^^;)

    今日書き上がったばかりの新作です(^^)v
    今回のテーマを、「エリオットくんの世直し」と掲げたので、
    そう言った方向性で書いて行ったところ・・・
    何となく・・・最後の方が、人気の時代劇で、先だってその
    シリーズの最終章を迎えた・・・「ははぁ・・・」と言っ
    たテレビ番組に、何となく似てきたように感じたのですが・・・
    皆様には如何な感想をお持ち頂くことになるのやら・・・^^;
    



    (おまけフォト1^^;)  
    

    “楽しい森の仲間たち”チュンコちゃんが出来上がり
    ました♥頭の上に、黄色いリボンが付いています(^^)v

    子ども曰く・・・“ひよこ”に見えるそうです^_^;
    ま、いっか・・・(^_^;)

  

    (おまけフォト2^^;)
    

    羽根に針金を付けました(^^)v
    普通のお人形では“手”に付けている針金と
    同じ役割です(^^)


    (昨日の練習で、このチュンコちゃんを団員に披露した
    ところ、私に「似てるね~」と・・・^^;丸いイメージが
    そう見えたのかも知れません(^_^;)見た目云々より、
    チュンちゃんの“チュンチュン”煩い部分は・・・確かに
    似てるかも・・・^^;余談でした^_^;)





    (どら余談2^^;)

    録音したての新作を、とりあえず選んだテイクで一本
    につなげてもらい、物語の流れを聞いてみました(^^♪
    ・・・ら、「面白いです~♥」とっても(^.^)
    クリフくん作品の2本目になるのですが、少し落ち着いた
    感のあるクリフ作品に、明るい感じのジュリーちゃん作品
    で、組み合わせ具合も丁度良く・・・^^;
    自分で言うのも変ですが・・・とっても公演が楽しみです
    (^.^)
    



    
    (どら余談3^^;)

    今日は、グーグル版“ワールド”にティンクルちゃんシリーズ
    の第2段、“音の妖精・・・”のラスト動画を投稿いたします♥
    以前、お話ししたことがあると思いますが、真っ黒からキラ
    キラに変わる背景、是非ご覧ください^_^;












http://milky.geocities.jp/little_pine2012/performance.html

         http://ritorupain.blogspot.com/

     http://blogs.yahoo.co.jp/dorapontaaponta