りとるぱいんわーるど

ミュージカル人形劇団“リトルパイン”の脚本の数々です。

“アンソニー” ―全16場― 完結編

2012年02月04日 08時53分37秒 | 未発表脚本


  エドモン「やぁ、アンソニー君。よく来られた。」
  アンソニー「今日はお招きありがとうございます。」
  ヴィクトリア「(リーザに微笑んで。)こちらの素敵なお嬢さんは?
          」
  リーザ「(恥ずかしそうに、アンソニーを見る。)」
  アンソニー「(微笑んで、頷く。)」
  リーザ「・・・リーザ・シャンドールです。」
  エドモン「リーザ・・・シャンドール・・・?」
  リーザ「はい・・・。」
  ヴィクトリア「じゃあ亡くなられた奥様の・・・?まぁ、何て美しい娘
          さんに成長したこと!お母様がもし生きてらしたら、
          屹度お喜びですよ!」
  エドモン「だが今まで何処に?」
  リーザ「・・・あの・・・」
  アンソニー「彼女はとても体が弱かったのです。」
  ヴィクトリア「まぁ、そうだったの・・・。シャンドール家の方達は、
         何も仰らないから・・・。それじゃあ、もうすっかりお体
         の方は、よくなられたのね?だって頬も紅潮して、と
         てもお元気そう・・・。」

         アンソニー、リーザ、お互い顔を見合わせて
         微笑む。その時、曲が新しく始まる。
         アンソニー、リーザの手を取って、エドモン、
         ヴィクトリアの手を取って、中央へ進み出、踊りの
         輪に加わる。
         エドワード、ルイ、其々ボーイからシャンパングラス
         を受け取り、壁の方へ。
         娘達、目敏く2人を認め、嬉しそうに駆け寄る。
         ルイ、その中の一人の手を取って、踊りに加わる。
         エドワード、困った面持ちで、娘達に取り囲まれて
         いる。
         音楽、少し静かに。中央にアンソニーとリーザ、
         踊るのを止めて見詰め合う。回りに踊る人々、
         アンソニーとリーザを残して、何時の間にか退場
         する。

  リーザ「(嬉しそうに。)こんな風にあなたと踊れるなんて・・・。」
  アンソニー「(微笑んで。)僕は嘘は言わないんだ・・・。特に大切
         な人にはね・・・。」        ※
  リーザ「アンソニー・・・私・・・あたなに出会えてよかった・・・。あ
      なたに巡り合わせてくれた神様に、感謝しなくちゃ・・・。」
  アンソニー「・・・自分の・・・運命を恨むことなく・・・感謝を・・・?」
  リーザ「・・・何故?こう言う運命のお陰で、あなたと出会えたの
      よ・・・。神様は屹度、最初からお分かりだったのね・・・。
      こうして・・・あなたに・・・巡り会えることを・・・。」
  アンソニー「リーザ・・・(思わずリーザを胸に抱く。)僕の方こそ、
         君に出会えたことを感謝する・・・。」
  リーザ「アンソニー・・・」

         再び音楽大きくなり、アンソニー、リーザの
         手を取って踊り出す。
         アンソニーとリーザのデュエットダンス。(スモーク。)
         嬉しそうに寄り添い合うアンソニーとリーザ。
         紗幕閉まる。

    ――――― 第 13 場 ―――――

         紗幕前。
         上手より村人達、話しながら登場。

  オスカー「けど、全くこの間の舞踏会の時には、驚かされたよな
        。」
  エリーズ「ええ。もう私なんかショックで・・・。」
  ミレーヌ「伯爵様の相手が、シャンドール家からは、私達はずっ
       と寝たきりで体の弱い前妻の娘がいるにはいるけど・・・
       と、聞かされていたその娘だったなんて・・・。」
  シャロン「私はシャンドール家に、もう一人娘がいることなんて、
        全然知らなかったわ。」
  シャルル「僕だって隣に住んでいながら、全く驚きだよ。」
  クラウス「僕は子どもの頃、シャンドール邸の庭を覗いた時に、
        色の白い・・・透き通るような肌を持った娘を見かけた
        ことがある・・・。エリザベート達が来る少し前の話しだ
        ・・・。今思えば、あの時あそこにいた娘が彼女だった
        んだな・・・。」
  フランツ「そういやぁ・・・僕もたった一度、シャンドール邸に忍び
       込んだことがあるんだ。皆で鬼ごっこをしている時に・・・
       。森の方へ回った時・・・シャンドール邸の裏口の方だな
       、その時、2階の端の窓から覗く天使を見た・・・。そう思
       ってたんだ、ずっと・・・。屹度彼女だ・・・。その後、執事
       のヨハンに見つかって、こっぴどく叱られたっけ。(笑う。)
       」
  エリーズ「あなたって、昔から悪戯小僧だったのね。」
  フィリップ「僕は全然知らなかったなぁ・・・。けど、綺麗な人だっ
        たよなぁ・・・。」
  ミレーヌ「・・・そうね・・・。悔しいけどお似合いだったと言うべきか
       しら・・・。」

         その時、下手よりジェラール、ミハエル、
         ルドルフ登場。

  ミハエル「先生!今夜はベットの上で眠れますよね!」
  ルドルフ「昨夜は参ったよなぁ。まさか、森の中で野宿するなん
        て・・・。」
  ミハエル「木の上で枝に寄りかかって眠るのは、流石にしんどか
        ったよな。」
  ルドルフ「俺なんか何回も落ち掛けて、その度に目が覚めちゃっ
        たよ。(笑う。)」
  ジェラール「だが眠っている間に、野獣に襲われるよりはマシだ
         ろ?」
  ルドルフ「そりゃあそうですけど・・・。できればフカフカのベットに
        埋もれて眠りたい・・・。」
  
         ジェラール、話し込んでいる村人達に気付いて
         近寄る。

  ジェラール「こんにちは、皆さん。」
  リチャード「(つられるように挨拶をしながら、ジェラール達を見る
         。)こんにちは・・・。」
  ジェラール「君達は、この村の人間かね?」
  リチャード「そうだけど・・・何か・・・?(ジェラール達をマジマジと
         見る。)」
  ジェラール「私はトランシルヴァ二アから来た医者で、ジェラール
         ・パーカー。(ミハエルとルドルフを見て。)この2人は
         私の連れで、ミハエルとルドルフ・・・。」
  ミハエル「どうも・・・。」
  シャロン「・・・トランシルヴァ二ア・・・?」
  オスカー「へぇ・・・そんな遠くから、先生がまた何でこの村へ?」
  クラウス「・・・観光・・・?(ジェラール達を見て。)にしちゃあ、軽
        装だよなぁ・・・。」
  ジェラール「いや、実は人を捜して・・・。ミハエル。」

         ミハエル、ポケットから写真を取り出す。

  ミレーヌ「トランシルヴァ二ア・・・って言うと、伯爵様達のことは
       ご存じかしら?」
  ジェラール「・・・伯爵・・・?もしかして伯爵と言うのは・・・アンソ
         ニー・ヴェルヌ・・・」
  エリーズ「ええ!お知り合いですの?」
  ミハエル「・・・先生・・・。」
  ジェラール「(ミハエルから写真を受け取り、村人達の方へ差し
         出す。)この写真の男を・・・?」
  フランツ「ああ、この人を捜してたんなら、この村に一カ月程前
       から来られてますよ。」
  シャロン「伯爵様のお友達のエドワード様よね。」
  ジェラール「(絞り出すような声で。)・・・年恰好同じにかね・・・?
         」
  シャロン「ええ。ここに写ってる通りの方ですわ。」
  ルドルフ「ずっと追い続けているけど、一体先生とどんなつなが
        りのある人なんですか?まさか、お孫さんとか・・・?」
  ミハエル「馬鹿!孫ならこんなに憎しみを持って、追い続ける訳
        ないじゃないか。」
  ジェラール「・・・この写真の男は・・・私の祖父・・・エドワードだ
         ・・・。」
  ミハエル「え・・・?また冗談ばっかり!!どう見たって、俺達と
        同じ年頃ですよ!!」
  ジェラール「その写真に写っているのは・・・100年前の私の祖
         父、エドワード・パーカー男爵だ・・・!!」
  ミハエル「・・・100年・・・前・・・?」
  フィリップ「100年・・・ったって、シャンドール家に居るのは、この
        写真通りの人物ですよ・・・。(笑う。)」
  ジェラール「(ポケットから、もう一枚写真を取り出し、村人達の
         方へ差し出す。)こいつは・・・?」
  エリーズ「アンソニー・ヴェルヌ伯爵様・・・その人ですわ・・・。」
  ジェラール「そう・・・奴の名は・・・アンソニー・ヴェルヌ・・・ドラキ
         ュラ伯爵・・・。(ミハエルとルドルフの方を見て。)おま
         え達に、この間話したトランシルヴァ二アに伝わる奇
         話は覚えているだろう・・・。あの時、消えた伯爵こそ
         アンソニー・ヴェルヌ・・・。奴がこの世に生を受けた
         のは、400年以上昔の話しだ・・・!!」
  ルドルフ「えーっ!!」
  ミハエル「まさか・・・」
  ミレーヌ「嘘・・・」
  ジェラール「奴が何故、そんなにも生き長らえて来たか・・・それ
         は奴が、夜な夜な美女の生き血を啜る、化け物だか
         らだ!!」
  ルドルフ「えーっ!?」

         皆、一斉に驚きの声を上げる。

  ジェラール「奴をこのまま生かしておくことは出来ない・・・!!そ
         の胸を銀の杭で深く突き刺し、この世の塵と化すの
         だ!!我が祖父のような犠牲者を、これ以上増やさ
         ない為にも!!」

         緊迫した音楽が響き渡り、暗転。

    ――――― 第 14 場 ――――― A

         紗幕開く。と、絵紗前。リーザの部屋。
         ベットの上で、枕に凭れているリーザ。その横に
         腰を下ろしたアンソニー、楽し気に語らっている。

  アンソニー「僕の村では、昔々から春になると色とりどりの花で
         覆われ、それはそれは美しく衣替えをするんだ。冬
         の雪の白から、夏の木々の緑の間にその季節がや
         ってくる・・・。全く、自然の芸術と言うのは、何時の世
         でも本当に素晴らしいと感動させられるよ・・・。その
         後に秋の紅葉がくる・・・。僕は子どもの頃から、春の
         淡色がとても好きだったよ。そのことで、からかわれ
         たりしたこともあったけどね・・・。」
  リーザ「(微笑んで。)昔から優しかったのね・・・。」
  アンソニー「リーザ・・・(微笑んで。)君はどんなことでもプラスに
         考えられる人なんだね・・・。僕は君といると、とても
         心が和むようだ・・・。こんな気持ちになったのは、生
         まれて初めてのような気がする・・・。」
  リーザ「私の方こそ、あなたに色々なことを教わったわ・・・。あな
      たは私の知らないことばかり知っている・・・。あなたといる
      と、とても楽しいわ・・・。」

         その時、突然扉が開いて、エドワードとルイ、
         駆け込んで来る。
         アンソニーとリーザ、驚いてその方へ見る。

  アンソニー「・・・どうした・・・?」
  エドワード「ジェラールが・・・追い付いた・・・。」
  アンソニー「・・・そうか・・・」
  エドワード「早くしろ・・・時間がない・・・。」
  アンソニー「(リーザを見詰める。)」
  リーザ「(何かを悟ったように。)・・・もう・・・行ってしまうのね・・・。
      (涙が溢れる。)」
  アンソニー「リーザ・・・(暫く考えるように。リーザを見詰める。)
         一緒に・・・来ないか・・・。」
  リーザ「・・・え・・・?」
  エドワード「アンソニー!?」
  アンソニー「・・・俺達は・・・君も感ずきつつあるように・・・普通の
         人間とは違う・・・。昔から・・・人の世で疎外され続け
         て来た・・・永遠の命を持つ者・・・ヴァンパイアだ・・・。
         ・・・君を我々の仲間に加える準備をするのは簡単だ
         ・・・。ただ・・・君の意思とは別に、君の体が拒否すれ
         ば・・・君はこの世から消えて・・・なくなるんだ・・・。」
  リーザ「(ゆっくりと。)・・・いいわ・・・例え・・・塵となって消える運
      命でも・・・。私は、あなたに付いて行きたい・・・。あなたと
      共に生きられるかも知れない道を選びたい・・・。例え・・・
      あなたが人の世の運命に逆らって、生きてきた者だとして
      も・・・。誰一人あなたのことを、認めようとしなくても・・・初
      めて、あなたが私に力を与えてくれたあの時から・・・もう
      私はあなたを受け入れてた・・・。あなたは私にとって、たっ
      た一人の・・・あなたこそが、私を初めて受け入れてくれた
      人だから・・・。他の誰でもない・・・たった一人の私が・・・
      生まれて初めて・・・愛した人・・・アンソニーだもの・・・。一
      緒に連れて行って・・・!!(アンソニーに抱き縋る。)」
  アンソニー「・・・リーザ・・・!!僕こそ君を愛している・・・!!(
         暫くリーザを抱き締め、立ち上がる。)そうと決まれば
         急ごう!!(エドワードとルイを見る。)」

         アンソニー、リーザの手を取る。リーザ立ち上がる。

  エドワード「・・・あ・・・アンソニー・・・先に行ってくれるか・・・?」
  アンソニー「エドワード・・・?」
  エドワード「・・・いや・・・ここらで、そろそろ奴とは一度、正面きっ
         て話し合った方がいいと思ってたんだ・・・。(チラッと
         ルイを見る。)・・・奴は・・・俺の・・・身内だからな・・・。
         」
  ルイ「エドワード・・・」
  エドワード「大丈夫、直ぐに追い付くさ・・・。」
  アンソニー「・・・だが・・・」
  エドワード「(微笑んで。)そんな顔するな・・・。奴に会ったら、直
         ぐ追い掛けるって言ってるだろ・・・?」
  アンソニー「・・・分かった・・・待ってるぞ・・・。(リーザの方を向い
         て微笑む。)おいで・・・」
  
         アンソニー、側へ来たリーザを軽々と抱き上げ、
         テラスの方へ行きかける。

  エドワード「(思わず。)アンソニー!!」
  アンソニー「(振り返る。)」
  エドワード「・・・今度は女連れなんだ・・・気を付けて行けよ・・・。」
  アンソニー「・・・分かってるさ・・・。」
  ルイ「(笑って。)・・・変な言い方するんだな。」
 
         暫くアンソニー、エドワード、お互いの心の内を
         悟ったように見詰め合う。
         その時、屋敷の中に村人達がなだれ込んで来た
         音や、アンソニー達の名を呼ぶ叫び声が、聞こえ
         てくる。

  ルイ「来た!!」
  エドワード「早く行け・・・。」
  アンソニー「(エドワードを見詰めたまま、ゆっくり頷く。)」
  ルイ「アンソニー!俺も後からエドワードと行くよ!」
  エドワード「ルイ!!駄目だ!!」
  ルイ「(エドワードの声は耳に入っていないように。)野暮なこと
     はしないよ。さ、早く行けよ、アンソニー!!エドワードのこ
     とは俺に任せな!!」
  アンソニー「ルイ・・・」

         アンソニー、頷いて2人から視線を捥ぎ取り、
         リーザを抱いたまま、風のようにテラスへ出て
         行く。

  エドワード「ルイ!!俺は・・・!!」
  ルイ「(笑って。)分かってるって・・・。これからは、アンソニーに
     はリーザがいるだろ?もう俺の役目も終わる時が来たって
     ことだよ。」
  エドワード「ルイ・・・」
  ルイ「俺はあいつが永遠の命を持っていながら、何ものにも満た
     されない思いを抱いていることに感ずいて、あいつの生き
     方に共に行こうと決めたんだ・・・。そのあいつが・・・今、彼
     女と出会って、やっと生きがいを見出した・・・。見ただろ?
     あいつの嬉しそうな顔・・・。」
  エドワード「(フッと笑って。)ルイ・・・おまえ・・・」
  ルイ「俺にしちゃあ、よく分かっただろ?引き時ってやつをさ。(
     笑う。)」
  エドワード「(笑って。)偉いよ。」
  ルイ「(服の内ポケットから、銀の銃を取り出して、エドワードの
     方へ差し出す。)・・・最後の我が儘だ・・・おまえの手で・・・」
  エドワード「ルイ・・・!!」
  ルイ「(笑って。)さぁ、早いとこ殺っちまってくれよ。(エドワードの
     手を取って、銃を握らせる。)」
  エドワード「(顔を伏せて。)ルイ・・・」
  ルイ「俺は幸せなんだぜ。おまえの手で終われることが・・・。も
     し・・・こんな俺達でも・・・もし・・・生まれ変わることが出来た
     なら・・・来世でも・・・おまえとアンソニー・・・3人でまた・・・
     同じ時を過ごせたらいいな・・・。(微笑む。)」
  エドワード「ルイ!!(銃をルイに向ける。)」

         ライト・アウト。一発の銃声が響き渡る。

  エドワードの声「ルイ・・・俺達に・・・来世はないんだ・・・」

    ――――― 第 14 場 ――――― B

         紗幕前。アンソニーとリーザ、フェード・イン。
         寄り添うように。

  アンソニー「(銃声で2人の死を悟り。)エド!!ルイ!!・・・」
  リーザ「・・・アンソニー・・・」
  アンソニー「・・・俺は何時も一人だった・・・。何時の時代を生き
         た時にも・・・幾度、春が巡ってこようと・・・たった一人
         で生きて来た・・・。それが当たり前かのように・・・。
         そんな時、エドワードやルイに出会ったんだ・・・。彼ら
         は何も言わず、俺を認めてくれた・・・。初めて受け入
         れてくれる奴らに出会ったんだ・・・。今まで、疎外され
         続けて生きて来た俺を・・・初めて理解し・・・共に生き
         ようと・・・!!(言葉に詰まる。)」
  リーザ「(アンソニーの肩を抱くように。)これからは・・・私がいる
      わ・・・。何時も・・・あなたの側に・・・」

         音楽で暗転。

    ――――― 第 15 場 ―――――

         紗幕開く。と、舞台はシャンドール邸の中。
         呼び鈴の音が激しく鳴らされる。
         奥より執事ヨハン、慌てて登場。扉の方へ。

  ヨハン「はい!!只今!!」

         ヨハン、扉を開けると、村人達なだれ込むように、
         家の中へ入って来る。

  ジェラール「アンソニー・ヴェルヌはいるか!!出て来い!!ア
         ンソニー!!今こそおまえを殺める時が来た!!」
  リチャード「アンソニー・ヴェルヌ!!」

         皆、口々にアンソニーの名を叫び、1階を
         捜し回る。
         ヨハン、その様子にオロオロと。
         奥よりエリザベート、クリス、その騒ぎに
         怪訝そうに登場。ミシェル、続いて登場。

  エリザベート「何ごとですの!?」
  クリス「一体如何したのです、皆さん揃って・・・」
  フィリップ「エリザベート、クリス!それが・・・!!」
  ジェラール「(エリザベート達の前へ進み出る。)あなた方が、こ
         の家の?」
  エリザベート「・・・ええ・・・」
  ジェラール「アンソニー・ヴェルヌは何処にいる・・・。」
  ミシェル「・・・彼が如何したのです・・・?」
  フランツ「落ち着いて聞けよ・・・。奴は・・・人間ではない!!」
  エリザベート「・・・何ですって・・・?」
  ミシェル「(引き攣った笑いを浮かべるように。)・・・人間じゃない
       って・・・?」

         と、その時、一発の銃声が響き渡る。
         村人達、一瞬顔を強張らせて、一斉に
         2階を見上げる。

  ミハエル「何だ・・・今の銃声は・・・!?」
  クリス「リーザの部屋からだ!!」
  ミシェル「・・・姉さん!?」
  エリザベート「一体何があったの!?」

         ミシェル、階段の方へ駆け寄り、上がろうと
         する。と、2階奥より、エドワードゆっくり登場。

  エドワード「・・・私を捜しているんだろう・・・?ジェラール。」
  ジェラール「・・・エドワード・・・アンソニーは・・・!?」
  エドワード「おまえの狙いは、飽く迄私の筈だ・・・。」
  ミシェル「姉さんは!?」
  エドワード「安心しろ、リーザはアンソニーに、生きる希望を見出
         したんだ・・・。(ミシェルに微笑みかける。)しかしジェ
         ラール・・・とうとう追い付いたな。(笑う。)全く・・・狙っ
         た獲物は逃さない・・・。そのしつこい性格は、私に似
         たのかな・・・?」
  ジェラール「(杭を握り締め、下を向く。)・・・お祖父さん・・・神様
         の定められた運命に逆らって生きることは罪なこと
         です・・・。父が亡くなる時に、初めてあなたのことを
         聞かされた・・・。その時、私は父は亡くなる前の幻覚
         から、そんな奇妙なことを口走っているのだと思った
         ・・・。だが・・・(絞り出すような声で。)父の葬儀の日
         ・・・人込みの間に、あなたの顔を見つけた時・・・体
         中に戦慄が走り・・・父の言ったことは正しかったと・・
         ・!!(顔を上げ、エドワードを見詰める。)あの日か
         ら、あなたの運命を正す為に、私は生きることを誓っ
         たのです!!」
  エドワード「(微笑んで。)その正義感溢れる態度は、私の妻・・・
         おまのお祖母さんにそっくりだ・・・。」

         エドワード。ゆっくり階段を下りて来る。

  エドワード「さぁ・・・もう私は何も思い残すことはない・・・。おまえ
         のその手で、この罪な体を終わらせてくれ・・・。」
  ジェラール「・・・お祖父さん・・・。」
  エドワード「だがジェラール・・・これだけは覚えておいてくれ・・・
         私は自分の運命に感謝していることを・・・。奴に巡り
         会え、同じ時を共有できたことに、心から幸せだった
         と・・・今は言い切れるんだと言うことを・・・!!」

         エドワード、ゆっくりとジェラールの前へ。
         ジェラールが手に持っている杭を、自分の
         胸へ突き立てる。

  エドワード「・・・私の為に・・・ありがとう・・・。」

         ジェラール、躊躇うように下を向いたまま、
         涙を堪え立ち尽くす。

  ジェラール「・・・お祖父さん・・・。」
  エドワード「(力強い声で。)さぁ殺れ、ジェラール!!自分の正
         しいと思った道を進んでここまで来たんだろう!!そ
         れならば、最後までその意志を貫き通せ!!そうし
         てこそ、我がパーカー家の人間だ!!」

         ジェラール、顔を上げエドワードを暫く見詰める。
         エドワード優しく微笑み頷く。ジェラール、杭を
         エドワードの胸に立て、もう一方の手に握って
         いた、きねを振り翳す。
         ライト・アウト。
         娘達の悲鳴が響き渡る。
         ミシェル、一人スポットに浮かび上がる。

  ミシェル「・・・あれは・・・決して忘れることの出来ない・・・誰にと
        っても思い出すのも躊躇されるような・・・出来事だった
        ろう・・・。エドワードは跡形もなく消え・・・駆け上がった
        2階のどの部屋にも、アンソニー達の姿はなかった・・・
        。僕にとって、そのことよりも何よりも、姉さんが・・・あ
        の時一緒にいなくなった姉さんが、如何なったのか・・・
        捜す術もなく・・・幸せで行ったことを信じ・・・願わずに
        はいられない・・・。」

         ライト・アウト。

  ミシェルの声「あの時生きた者で、今なお残っているのは私一人
          だけとなった70年たった今も・・・」

    ――――― 第 16 場 ―――――

         舞踏会の音楽が流れてくる。
         ライト・インする。と、舞台はシャンドール邸の広間。
         美しく着飾った男女、左右より手を取り合って登場。
         ワルツを踊る。途中、奥より孫娘マリーに手を引か
         れ、年老いたミシェル、ゆっくり登場。
         壁際の椅子へ腰を下ろし、微笑ましく回りを見回す。

  マリー「ミシェルお祖父様、シャンペンでも如何?」
  ミシェル「ああ・・・いや、今はいいよ。」
  マリー「こんなに盛大な舞踏会は初めてよ。何だかワクワクしち
      ゃうわ。(嬉しそうに。)」
  ミシェル「(マリーの顔を見上げて微笑む。)私のことはいいから
       、おまえも踊っておいで。」
  マリー「でも・・・」
  ミシェル「(横からマリーの方を見ていた青年を、チラッと見て。)
       ほら、おまえに相手を願っている青年が待ってるよ・・・。
       」
  マリー「(その方を見て。)まぁ・・・」
  ミシェル「さぁ、あまり待たせると可哀相だ。」
  マリー「はい、お祖父様!(嬉しそうに、その青年の方へ駆け寄
      り、踊りの輪に加わる。)」

         ミシェル、再び人々の踊りを見ている。
         と、曲に紛れるように微かにミシェルの
         名を呼ぶ懐かしく愛しい声が聞こえる。

  ミシェル「(少し不思議そうに、ゆっくり辺りを見回す。)・・・今・・・
       誰かに呼ばれたような気がしたが・・・。もう私も年だな
       ・・・。(フッと笑う。)だが・・・あの声は何処かで・・・。」

         ミシェル、あまり気にも止めない風に、
         再び踊りを見ている。と、その踊りの輪の
         中から、立ち止まり自分の方を見ている
         2人の男女に気付き、息を飲み思わず
         立ち上がる。

  ミシェル「・・・姉さん・・・!?」

         それは正しく、70年前に消えたその時の姿の
         ままのアンソニーとリーザであり、寄り添うよう
         に立った2人は優しく微笑んで、ミシェルを見詰
         める。音楽少し小さくなり、薄暗くなった舞台上
         スポットにアンソニーとリーザ浮かび上がる。
         回りには何も気にせず踊る人々。
         ミシェル、2人に駆け寄りたい思いに駆られ
         ながらも、足が進まないように一歩だけ踏み
         出し、2人を見詰める。
         その時、今度はハッキリとリーザの声が響き
         渡る。

  リーザの声「・・・サヨナラ・・・」
  ミシェル「姉さん!!」

         再び明るくなり、音楽大きくなる。アンソニーと
         リーザ、踊る人々の波に掻き消える。
         ミシェル、慌てて2人を捜すように中央へ。

  ミシェル「アンソニー!!姉さん!!(何故か安心したような微
       笑みを洩らす。)あれは・・・正しく姉さんだ・・・。それも
       あの頃のまま・・・屹度・・・幸せに暮らしていたに違いな
       い・・・。そしてこれからも・・・永遠に・・・」











            ――――― 幕 ―――――
         

 

 

 

 



    

    さて、ではここで次回掲載作品のご紹介をしておきたいと
   思います(^^)v
   次回は刑事もので、熱い青年が主人公の“アルベール”
   をご覧頂こうと思っています(^.^)お楽しみに♥
   

                                  どら。





    ※ よく“微笑む”青年です^_^;



― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪



    (どら余談^^;)

   今日は、グーグル版“ワールド”に「蝶の国の仲間たち」の
   一部動画を投稿致しました(^^)v
   またよかったら、見に行ってみて下さい♥
   とってもぎこちない動きをしているコロンちゃんです・・・^^;




       (おまけフォト^^;)
       

    来週行く、保育園のボランティア公演作品の登場人物の
   うち、この“黄色い小鳥のチュンコちゃん”だけ、見つけること
   出来ず、仕方なく作り直すことにしました^_^;
   初代のチュンコちゃんは、もっと平面な感じがあったのですが、
   今回はより球体に近い作りにしてみました(^^)v
    
   一週間も切ろうかと言う今頃・・・
   慌てて作り始めた私って一体・・・(>_<)



          (も一つおまけ^^;)
          

         “柿”でしょうか?“ミカン”でしょうか?
         正解は・・・“木の実”でした~(^.^)

      “楽しい森の仲間たち”で出てくる小道具なのですが、
     来週公演はでは“ピンクのももちゃん”との2本立てに
     なったので、この場面はカットした方のバージョンで行
     ことになり、必要なくなったので、その辺に転がしてあ
     ったのをパチリと撮ってみました^_^;
      



 









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