りとるぱいんわーるど

ミュージカル人形劇団“リトルパイン”の脚本の数々です。

“ねこの村は大騒ぎ” ―全6場― 完結編

2012年08月29日 18時23分23秒 | 未発表脚本


    ――――― 第 6 場 ――――― A

         客席下手より。シュワッチ、ミータ、ネコ吉、
         食いしん坊話しながら登場。
         ゆっくり上手方へ。

  シュワッチ「あのさ・・・僕が皆に貰った人形・・・何処へ置いたか
         知らないかい・・・?」
  ミータ「なぁに!?シュワッチ、私達の苦労の作を無くしちゃった
      の!?」
  シュワッチ「いや・・・あの・・・確かに自分家に持って帰ろうと思っ
         て、大切に持ってたんだ!!途中・・・ちょっとノドが
         乾いたから、川へ下りて水を飲もうと思ったんだけど、
         落としちゃ不味いから、人形を橋の袂に置いておい
         たんだ・・・。それが・・・上がって来た時には・・・」
  食いしん坊「川へ落ちたのかなぁ・・・?」
  ネコ吉「それなら水音で分かるだろ?」
  シュワッチ「大切な人形を落っことしたら大変だと思って、ちゃん
         と落ちそうにない橋の横穴に入れといたから、勝手
         に落っこちないよ・・・。」
  ミータ「じゃあ可笑しいじゃない。誰かが持って行っちゃったとで
      も言うの?」
  シュワッチ「そんな!!・・・だからひょっとして、持ってたっての
         は僕の思い過ごしだったのかな・・・って。何処かに
         忘れてきてやしないかと思って聞いたんだよ・・・。」
  食いしん坊「そうだね・・・。」
  ミータ「・・・思い過ごしなんかじゃないわ・・・!きっと誰かに盗ま
      れたのよ!!」
  シュワッチ「ミータ・・・?」
  ミータ「きっとあいつよ!!」
  ネコ吉「あいつ・・・って・・・?」

         ミータ、上手へ走り去る。

  シュワッチ「あ・・・おい!!」

         他のネコ達、ミータを追い掛けるように
         上手へ去る。
   
    ――――― 第 6 場 ――――― B

         舞台、フェード・インする。
         一時置いて、上手より後方を気にするように
         ノラ、手にシュワッチの木彫りの人形を持って、
         息を切らせながら下手よりに立ち止まって、手に
         持っていた人形を見詰める。

  ノラ「・・・畜生・・・こんな人形・・・!!(投げ付けようと持ち上げ
    るが、躊躇ったように。)」

         その時、上手よりボウネコ登場。
         ノラを認めて。

  ボウネコ「ノラ!!」

         ノラ、驚いて人形を落とす。慌てて拾うが、
         人形の首が取れているのに、困ったように
         オロオロする。後ろに隠して、ボウネコの
         方へ振り返る。

  ノラ「・・・やあ・・・」
  ボウネコ「何、落っことしたの?」
  ノラ「な・・・なんでもないさ・・・!!」
  ボウネコ「何?何?」
  ノラ「なんでもないって言ってるだろ!!おまえには関係ないん
     だから、早くあっちへ行けよ!!」
  ボウネコ「・・・ふうん・・・」

         ボウネコ、下手へゆっくり行きかける。
         ノラ、背後に人形を隠し持ったまま、
         ボウネコの動きに合わせて背を変える。
         ボウネコ、行く振りをして悪戯っぽく微笑んだ
         かと思うと、ノラの不意をついてその背後に
         回る。

  ノラ「(驚いて。)あ、おまえ!!」
  ボウネコ「(真顔になって。)それは・・・」
  ノラ「(観念したように、前に人形を出す。溜め息を吐いて。)バ
    レたか・・・」
  ボウネコ「・・・首が取れてる・・・」
  ノラ「仕方ないだろ・・・!!おまえが急に声をかけるから驚いて
    ・・・!!」
  ボウネコ「・・・なんでノラが、シュワッチの人形を持ってるの・・・
        ?盗んだの・・・?」
  ノラ「ちが・・・違うよ!!シュワッチが忘れてったから・・・持って
     ってやろうと・・・」
  ボウネコ「(ホッとしたように溜め息を吐いて。)なぁんだ・・・よか
       った・・・。そうだよね!!人のものを盗るのはよくないこ
       とだもの!ノラがそんなことする訳ないよね!ごめん・・・
       。」
  ノラ「・・・何、謝ってんだよ・・・」
  ボウネコ「だって、人形が壊れたの、僕のせいだもの・・・。一緒
        にシュワッチに謝りに行くよ・・・。」
  ノラ「う・・・うん・・・」

         ボウネコ、ノラ、ゆっくり下手方へ行きかける。
         と、下手より一番ネコ登場。一時、一番ネコ、
         ノラ、お互いを見据える。

  ボウネコ「あ!一番ネコ!」
  一番ネコ「2人で何処行くんだ?」
  ボウネコ「うん・・・シュワッチに謝りにね・・・。」
  一番ネコ「謝りに・・・?(ノラが手に持っている人形に気付く。)
        どうかしたのか?」
  ボウネコ「シュワッチが忘れてった人形を、ノラが届けようとして
        たのを、僕が壊しちゃったんだ・・・。ごめんよ、一番ネ
        コ・・・折角、一生懸命作ってくれたのに・・・」
  一番ネコ「そんなこと構わないさ・・・。ただ・・・本当にシュワッチ
        が忘れて行ったのかな・・・って・・・」
  ボウネコ「え・・・?」
  ノラ「・・・何が言いたいんだよ・・・」
  一番ネコ「あいつは人に貰ったものを、忘れるような奴じゃない
        ってことさ・・・」
  ノラ「俺が盗んだとでも言いたいのか、昔のおまえみたいに・・・
     ?」
  一番ネコ「なんだと・・・!?」
  ボウネコ「やめてよ、2人共!一番ネコ、ノラは人のものを盗ん
        だりしないよ!それにノラ、一番ネコはもう昔の一番
        ネコじゃないんだ!だから2人共、仲良くしてよ!」
  一番ネコ「ボウネコ・・・そうだな・・・。」
  ノラ「ふん・・・!」

         そこへ上手より、ミータ走りながら登場。
         続いてネコ吉、シュワッチ、食いしん坊、
         息を切らせて走り登場。

  ネコ吉「待って・・・!ミータ・・・」
  食いしん坊「(肩で息をしながら。)僕・・・もう、走れない・・・」
  ミータ「(ノラを認めて。)いた!!」
  一番ネコ「皆、どうしたんだよ、そんなに慌てて・・・」
  ミータ「(ノラが手に持っている人形に気付いて。)あ・・・!!やっ
      ぱり!!(人形を指差す。)」
  ノラ「やっぱり・・・って何がだよ・・・(思わず後ろに、人形を隠す。
     )」
  ミータ「やっぱり、あなたがその人形を盗んだのね!!」
  ボウネコ「違うよ!!ミータ!!この人形は、シュワッチが忘れ
       てったのを、ノラが届けてあげようとしてて・・・」
  ミータ「忘れてったですって?何処によ!!」
  ボウネコ「・・・何処に?えっと・・・何処で拾ったの?ノラ。」
  ノラ「も・・・森の中だよ・・・!!」
  ミータ「嘘よ!!シュワッチは橋の袂に置いたって言ってるのよ
      !その人形がどうして勝手に森の中へ歩いて行ったりす
      る訳!?可笑しいじゃない!!誰かが持って行ったとし
      か思えないわ!!だってシュワッチは・・・」
  ノラ「(呟くように。)煩いなぁ・・・(ミータの言葉を遮るように。)そ
     うさ!!俺が橋の袂に置いてあったこいつを盗んだのさ!
     !(人形を見せる。)」
  ボウネコ「・・・ノラ・・・」
  一番ネコ「・・・やっぱり嘘吐いてたんだな・・・」
  ノラ「“やっぱり”ってなんだよ。(鼻で笑って。)ああ、そうさ。おま
     えが初めっから疑ってたとおり、俺はおまえと一緒になって
     町でやってた盗みを、ここでも止められないんだよ!!」
  シュワッチ「・・・どうして・・・」
  ノラ「・・・どうしてもこうしても・・・これが本当の俺なんだ!!」

         一番ネコ、ノラ、睨み合う。
         音楽流れる。     ※
         ノラと一番ネコの喧嘩の踊りになる。
         囃し立てるミータと食いしん坊。
         慌てるシュワッチとネコ吉。
         オロオロするボウネコ。
         (全員の踊り。)

      一番ネコ“俺が倒す悪い心
            おまえの中 生まれて育った悪”

      ノラ“たとえ誰が何をしても
         俺の中に根付いてしまった悪”

      ネコ吉“誰もが一度は闘う”

      ネコ達“行け!!”

      ノラ“さあ!!”

      ネコ達“やれ!!”

      ノラ“こい!!”

      ネコ達“やっちまえ!!”

      一番ネコ“誰もが持つ誰にも見せない悪”

      ノラ“誰もが必ず闘う”

      ネコ達“誰もが一度は闘う
           やれ!!やれ!!やれ!!やれ!!
           やれ!!やれ!!やれ!!やれ!!”
           (段々、掛け声をかける人数が増えていくように。)

         曲の終わりと同時に、ノラの振り下ろした手が
         間に入って止めようとしたボウネコの頬を、
         強く叩く。

  ボウネコ「あっ!!(頬を押さえる。)」
  ネコ吉「ボウネコ!!」

         全員、驚いて呆然とする。
         その時、上手より老ネコ登場。

  老ネコ「好い加減にするんじゃ!!」 
  
         全員の間に、一瞬気まずい雰囲気が漂う。
         其々、視線が定まらないようす。

  老ネコ「大丈夫かの?ボウネコ。」
  ボウネコ「・・・打たれた頬より・・・(胸を押さえて。)ここが痛い・・
        ・。喧嘩している2人を見てると、胸が痛いよ・・・!!
        (泣く。)」
  一番ネコ「・・・ボウネコ・・・」
  老ネコ「その通りじゃ・・・。喧嘩などと言うものは、体だけでない
      ・・・心までも傷付け合う、つまらないことなんじゃ。よく分
      かったじゃろう?喧嘩が解決の方法なら、仲間など持た
      ずに自分一人で生きていけばいいんじゃ。そうすれば、
      心も体も傷付け合うことはない・・・。皆分かっていながら、
      どうして友達が欲しいと思う?何故、仲良くしたいと考え
      るんじゃろう・・・?いきがって、たった一人で生きて行け
      ると思っても、心の何処かで満たされない部分があるか
      らじゃよ・・・。偶に喧嘩をするのもいい・・・。じゃが、後の
      フォローもお互いにきちんとしなくてはな・・・。(微笑む。
      一番ネコとノラの手を取り、握手させる。)」
  一番ネコ「・・・老ネコ・・・」
  ノラ「・・・俺・・・シュワッチやおまえが羨ましかったんだ・・・。」
  シュワッチ「・・・ノラ・・・」
  ノラ「俺・・・町で何時もシュワッチからこの村のことを聞いてた
    んだ・・・。本当に毎日・・・ここがどんなに緑溢れる、素晴らし
    いところで・・・優しい仲間が沢山いること・・・。一番ネコも知
    ってる通り・・・俺は生まれた時から独りぼっちだったからさ!
    !シュワッチが村に帰るって言うのを聞いて、無理矢理付い
    て来たんだ・・・。」
  シュワッチ「違うよ!僕が一緒に来ないかって誘ったんだよ!」
  ノラ「そして・・・ここで一年前、突然いなくなった一番ネコが、楽
    しそうに暮らしてるのに出会った時・・・何故だか無性にイラ
    イラして・・・。この間まで一緒に町で悪いことばっかりして暮
    らしてた一番ネコが、今はこの村でヌクヌクと生活してるなん
    て、許せなかったんだ・・・!ごめんよ・・・ボウネコ・・・思いっ
    切りひっぱたいて・・・痛かったろ・・・?」
  ボウネコ「(嬉しそうに微笑んで首を振る。)ううん!!」
  老ネコ「優しい気持ちは、傷付いた心も体も癒してくれるんじゃ
      よ・・・。」
  ノラ「(恥ずかしそうに周りの皆を見回して。)皆にも・・・ごめん・・
    ・」
  一番ネコ「俺達の方も・・・ごめん・・・」
  ネコ吉「少し調子に乗り過ぎたね・・・ごめん・・・。」
  ミータ「ごめんなさい・・・」
  食いしん坊「ごめんよ・・・。」       ※2
  老ネコ「さぁ、これでまた新しい仲間が増えたの!」
  ノラ「・・・え・・・?」

         皆、嬉しそうに頷く。

  ネコ吉「改めて・・・ようこそ、ねこの村へ!!」

         ネコ達、明るく歌う。

         “歓迎しよう新しい仲間
         招き入れよう喜んで
         共に手を取り楽しもう
         明日の暮らし夢見て笑おう
         済んだことは水に流し
         微笑み歩こう今日から未来へ”

  ミータ「シュワッチは都会へ戻るの?」
  シュワッチ「うん・・・僕も気付いたんだ・・・。ここがどんなに素晴
         らしいところなのか・・・。町へ戻ってレンジャー戦士
         になるより、僕はこの村で皆と楽しく暮らしたい・・・っ
         て・・・。」
  ボウネコ「本当!?」
  シュワッチ「うん!!」
  ネコ吉「おかえり、シュワッチ!!」

         “歓迎しようねこの村へ
         優しい気持ちがあるのなら
         誰でもおいで僕らの村
         偶に喧嘩もするけれど
         済んだことは水に流し
         微笑み歩こう今日から未来へ!”

         微笑んで手を取り合い、未来に瞳を
         輝かせ、彼方を見遣る猫達。







          ――――― 幕 ―――――









    ※ この場面も、決まった曲が付いていたようで、曲名が
      書いてありました^_^;割りと有名な曲なので、歌詞を
      見て、どんな曲に合いそうか考えて頂くと、ひょっとする
      と曲名が分かるかも知れないですね(^.^)

   ※2、台詞の後ろに、句読点のある部分とない部分があるの、
      お気づきでしたでしょうか?この作品に限らず、どの作品
      にも今の台詞には「・・・。」と句読点が付いているのに、
      次の台詞には「・・・」と、なっていることが多々あると思い
      ます(^.^)
      これは決して書き忘れなどではなく、台詞を話す人物が、
      句読点の“あるない”の表現をして話しているんだ・・・と
      ご理解頂き、皆さんもご覧になった時に、句読点を意識
      して読んでみて下さい"^_^"
      


 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪


   (どら余談^^;)

    まだ“ネコの村・・・”が書き終わっていませんが、先に次回
   掲載作品について、少しお話しておきたいと思います(^_^)
 
    一つ、今の私の原点にあるような作品で、下書き状態で
   ほったらかしにしてあった作品を見つけました^_^;
   (本書きしていない作品・・・と言うことは、今まで、誰にも
   お見せしたことがない、本当の“未発表”作品であります。)

   下書き状態のまま・・・と言うことで、以前、皆さんにも写真を
   見て頂いたことがあると思いますが、ぐちゃぐちゃに近い・・・
   あっち飛び、こっち飛びして書きなぐっているものなので、
   読むのに随分時間がかかってしまったような作品なのですが、
   読み終わってみて、とても面白く・・・人形劇以前の作品では
   ありますが、今現在の私作品にとても近い・・・ファンタジーな
   お話なので、次回はそちらを皆さんにご覧頂こうかなと思い
   ます(^^)v    
 
   で・・・タイトルですが・・・
   いつものように主人公の名前を・・・と思ったのですが、この
   主人公の名前が“スティーブ”なのです^^;
   スティーブと言う名前が度々、他の作品でも登場するので、
   この作品でキーワードとなる「風になる・・・」と言ったことば
   を、今作品のタイトルとして使用したいと思います(^.^)

   それでは次回、“風になる・・・”お楽しみに♪
   











 
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