りとるぱいんわーるど

ミュージカル人形劇団“リトルパイン”の脚本の数々です。

“マリア” ―全14場― 完結編

2012年07月18日 21時14分43秒 | 未発表脚本


         ジェシー、立ち止まる。背を向けたまま。

  ニック「おまえがそう言うことは、最初から分かっていたさ。・・・
      あの女がそんなに大切か?その大切な彼女が、おまえ
      が今、世間を騒がす大泥棒の一味だと知ったら、何と思
      うだろうなぁ・・・。」
  ジェシー「(振り返って。)おまえ・・・」
  ニック「それにその彼女が、そんなおまえと付き合ってると世間
      が知ったら・・・(ニヤリと笑う。)さぁて・・・彼女の将来は、
      絶望視しといた方がいいかも知れないぜ・・・。」
  ジェシー「(握り拳を握って呟くように。)・・・畜生・・・」
  ニック「まぁ、おまえの返事次第だがね・・・。俺としたら、おまえ
      が大女優と知り合いだって方が嬉しいよ。」
  ジェシー「・・・分かった・・・」
  ニック「ほう・・・」
  ジェシー「・・・おまえの言う通りにする・・・。だから・・・あいつの
        夢だけは・・・」
  ニック「初めから素直にそう言えばいいんだ・・・。なぁ、ジェシー
      ・・・一旦、大事な者を持ってしまうと、おまえも弱いもんだ
      な。(笑う。)」
  ジェシー「(下を向いて。)・・・そうかも知れない・・・(ゆっくり顔を
       上げ、ニックを見据える。)だがそれ以上に・・・」
  ニック「ん?」
  ジェシー「それを守る為には、どんなことでも出来ると言うことを
       おまえは知らなかったようだな!!(ニックに飛び掛かり、
       ジャケットの内ポケットに隠し持っていたナイフで、ニック
       の胸を刺す。)」
  ニック「・・・ジェシー・・・何を・・・」
  ジェシー「あいつを傷付けるものは許さない!!」
  ニック「・・・何故・・・」
  
         ニック、ゆっくりジェシーにしがみつきながら
         崩れるように倒れる。
         ジェシー、スポットに浮かび上がり、呆然と
         遣り切れない思いが溢れ出すかのように立ち
         尽くす。カーテン閉まる。
         遠くから人々の歓声が次第に回りを包み込む。
         交じって記者、マリアの声。

  記者の声「マリア!!今日の舞台の成功は、あなたの功績の
        お陰だと思いますが、今の気持ちは!?そしてその
        気持ちを誰に一番伝えたいですか!?」
  マリアの声「・・・今・・・私は最高に幸せです!舞台は皆で作り
         上げるもの・・・。今日の成功は皆で成し遂げたもの
         です!そして・・・この感動を今一番伝えたいのは、
         今日この舞台を客席の何処かで見ていてくれた筈
         の・・・ジェシーに・・・私の愛する、ただ一人の人で
         す・・・。」

         歓声段々遠退く。
         ジェシー、空を見上げていた視線を、捥ぎ取る
         ように上手へ走り去る。
         音楽で暗転。

    ――――― 第 13 場 ―――――

         軽快な音楽でライト・インする。と、舞台は
         楽屋裏。団員達の歌、踊り。

         “マリアは今じゃ人気者
         誰もが知ってる大スター
         舞台を成功させたのは
         たった一年前のこと
         だけど昔と変わらない
         皆に優しく声掛ける
         他のスターと違うとこ
         そこが皆の人気者”

         歌っていた団員、鏡の前へ座る。
         マリア、メアリ、舞台衣装で下手より登場。
         団員、口々に“お疲れ様でした”等。
         マリアも笑顔で答える。
         マリア、メアリ鏡の前へ。

  メアリ「まだ彼のこと待ってるの?好い加減もう諦めたら?」
  マリア「私は信じてる・・・。屹度、私の前にもう一度姿を見せて
      くれるって。」
  メアリ「けどね・・・だからって彼と出会った、毎月19日に、あの
      公園へ行くのは止した方がいいわよ。今じゃあなたは、
      この劇団の看板スターなんだもの!」
  マリア「そんなこと・・・」
  メアリ「何言ってるの。見てご覧なさい、この雑誌の今週号の記
      事!あなたが毎月19日に、あの公園に出没するって載っ
      てるわよ!(一冊の本を手渡す。)」
  マリア「(本を受け取って。)出没・・・って・・・。人をお化けみたい
      に・・・。」
  
  団員の声「マリア!!インタビューお願いしまーす!!」

  マリア「はーい!!ありがとう、心配してくれて・・・。でも今日も
      行くわ!!今日は同じ19日でも、特別な19日・・・。だっ
      て丁度一年前の今日・・・(微笑む。)」

         マリア、上手へ去る。

  メアリ「やれやれ・・・(肩を窄める。)」

         カーテン閉まる。

    ――――― 第 14 場 ―――――

         下手よりジェシー、丸めた本を片手に登場。
         歌う。(途中、カーテン開く。)

         “マリア・・・マリア・・・マリア・・・
         もう一度だけこの胸に・・・
         マリア・・・マリア・・・マリア・・・
         おまえを抱き締めることが・・・
         できたなら・・・
         この命 今尽きようとも
         思い残すことはない・・・
         マリア・・・マリア・・・マリア・・・
         たった一度のこの願い・・・
         マリア・・・マリア・・・マリア・・・
         おまえの温もりを感じ愛した・・・
         この心の片隅に何時までも木霊する
         おまえが教えてくれた
         生きる希望・・・喜び・・・
         マリア・・・”

         その時、一発の銃声が響き渡る。
         (と、同時にバックから一筋の光、ジェシーに
         向いライト・イン。)

  ジェシー「糞う・・・(腹部を押さえ。)・・・こんな所で・・・死ぬ訳に
       はいかないんだ・・・直ぐそこに・・・おまえがいる・・・直ぐ
       ・・・そこに・・・(ヨロけるように後ろを向いて、ゆっくりと、
       一歩ずつ踏み締めながら光の方へ。)」

     コーラス“何も求めたことはない
           ただ生きることだけに・・・
           ある日出会った者は
           生きる希望に変わる・・・
           初めて求めた・・・
           初めて守りたいと・・・
           なのにその願いも
           崩れ落ちると言うのか・・・”

         コーラス、盛り上がって。
         ジェシー、祈るように両手を合わせ、天を仰ぐ。

  ジェシーの叫び声「マリアーッ!!」







          ――――― 幕 ―――――










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    (どら余談^^;)

    こちらのページでも、そろそろ次回掲載作品のご紹介を
    しておきたいと思います(^.^)

    何だか段々、どの作品を紹介し終えたか分からなくなりつつ
    あるのですが・・・^^;次回は、青年と少年・・・そして少年と
    仲良しの娘の心の交流のお話し・・・私の好きな類のお話し
    ・・・なのですが・・・今までご紹介するのを渋って(?)いたの
    は、少し内容が・・・(-_-;)現在の私なら、こんな結末にはし
    ないでしょう・・・と思うお話しです(>_<)
    ま、読んでみて下さい^^;

    次回「ジェフ・カート」、お楽しみに♥








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