りとるぱいんわーるど

ミュージカル人形劇団“リトルパイン”の脚本の数々です。

“アルベール” ―全14場―

2012年02月09日 19時46分20秒 | 未発表脚本


        

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     〈 主な登場人物 〉

   アルベール  ・・・  本編の主人公。正義感溢れる熱い青年。

   ロバート(カーク)・ジョンソン  ・・・  アルベールの相棒。

   ジュリー  ・・・  アルベールと同じ署内に勤める。

   少年カイト

   殺し屋 J(ジェイ)

   マシュー  ・・・  コーヒーショップのオーナー。

   ヘレン  ・・・  コーヒーショップの店員。

   その他



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         音楽で幕が上がる。

    ――――― 第 1 場 ―――――

         夜のニューヨークの下町の風景。
         遠くに夜を知らないビル街のネオンの輝きが、
         美しく見える。
         左右より男女、ゆっくりと歌いながら登場。
         静かに歌いながら一歩ずつ踏み締めるように、
         真っ直ぐ前を向いて。

         “朝も 昼も 夜も・・・
         絶えず生きづく町
         眠りを知らない町・・・”

         ライト・アップされ音楽盛り上がる。
         静かに歩いていた男女、正面を向いて
         力強く歌い踊る。

         “住む者は何を求め生きるのか
         たった一秒の日付の変更さえ
         感じることなく
         ただ暗闇を知ることなく
         躍動し続ける町・・・
         何の夢も持たぬふり続け
         人は生きるのか
         それが例え意味のない人生でも
         それで当たり前だと
         人は生きるのか!!”

         歌いながら、其々出た方と反対の方を向いて、
         また再び一歩一歩踏み締めるように、だが、
         歌う声は力強く去る。
         去る人々に紛れるように登場した男、ズボンの
         ポケットに両手を突っ込み、後ろ向きに立つ。
         後ろを向いたまま、人々の歌に続きながら歌う。

         “何処までも続く・・・
         この大空を見る限り・・・
         未来に何の陰りもないと
         信じる限り・・・”

         男、振り返ると、アルベール。
         前方へ歌いながらゆっくり進む。
      
         “ただ愛しいと思う気持ちが
         この町への感謝の表われと
         この澄んだ青空を
         何時までも守り抜くのが
         俺の役割・・・
         この空の彼方に
         希望をつなげ・・・
         広い世界のただ中で
         誰もが自由に
         生きれる為に・・・”

         紗幕閉まる。

    ――――― 第 2 場 ―――――

         紗幕前。
         下手より金持ち風の女性、上手よりチンピラ風
         の男登場。
         男、何かを企んでいるように、何気なく回りを
         見回しながら、ゆっくりと女性の方へ近寄り、
         擦れ違いざま、わざと女性にぶつかる。
         女性、手に持っていた買い物袋を落とし、
         驚いて悲鳴を上げ、軽く腰を付く。

  女性「何なさるの!?」
  男「おっと、ごめんよ!(女性の腕を取って、立たせてやる。)」

         男、意地悪そうに笑いながら、下手方へ。
         去る前に、チラッと女性の方を向いて、手に
         持っていた財布を高く放り投げて見せる。

  男「(ニヤリとして。)チョロイもんだな!(下手へ去る。)」

         女性、ぶつかられたことに不愉快そうに、
         服を払い、落とした買い物袋を拾い、
         ゆっくりと上手方へ。
         そこへ下手より、男の腕を締め上げるように
         掴んだアルベール登場。
         続いてロバート、愉快そうに登場。

  男「いてててて・・・何しやがるんだ!!畜生、放せ!!」
  アルベール「マダム?」
  女性「(振り返り、怪訝そうにアルベール達を見る。)・・・何かし
     ら・・・?」
  アルベール「失礼ですが、お財布はお持ちでしょうか?」
  女性「・・・ええ・・・」
  アルベール「本当に?」
  女性「(不愉快そうに。)何なの、行き成り!」
  ロバート「(自分の出番とばかりに、アルベールを止めるように
       女性の前へ進み出る。)我々はニューヨークcity警察の
       者です。(警察手帳を見せる。)」
  男「(驚いて。)刑事!?いてて・・・」
  女性「・・・警察の方・・・?」
  ロバート「今一度、鞄の中に大切なものが、本当に入っているか
       確かめて頂けないでしょうか?」
  女性「・・・ええ・・・」

         女性、何か腑に落ちない風だが、ロバートの
         言葉に素直に、手に持っていた買い物袋を
         ロバートに渡し、鞄の中を見る。

  女性「(驚いたように。)ない・・・ないわ!!私の財布がないわ
     !!」
  アルベール「ほうら、みろ・・・。(捕まえていた男に向かって。)
          さっさと出せよ!!」
  男「知らねぇよ!!」
  アルベール「(溜め息を吐いて、男を見る。男のシャツを捲くって
          、背中とズボンの間に挟んであった財布を取り上げ
          る。)なんだ・・・?これは・・・。」
  男「知らねぇって言ってんだろ!!」
  アルベール「往生際の悪い野郎だな。(財布で男の頭を叩く。)」
  男「いてっ!!」
  アルベール「ロバート!(財布をロバートに投げる。)」
  ロバート「(財布を受け取って。)あなたの大切な財布はこれで
        すか?」
  女性「(ロバートから財布を受け取り、嬉しそうに。)ええ!!こ
     れよ!!これは正しく私の財布!!」
  アルベール「さぁて・・・後はゆっくり署に帰って、言い訳でも聞か
          せてもらうとするかな。」
  男「畜生!!」
  女性「本当にどうもありがとうございました。(頭を下げる。)」

         アルベール、男を引き摺るように、ロバート、
         その女性をエスコートするように下手へ去る。
         車の通行音が聞こえる中、一時置いて上手
         より、ゆっくり回りを見回すように、帽子を深く
         被った一人の少年(カイト)登場。
         ぶらぶらと中央へ。
         そこへ上手より、一人のスーツ姿の紳士風の
         男登場。通りすがりにカイトの側へ。カイト、
         近寄ったその男に、ポケットから出した小さな
         包みをそっと渡す。
         お互い知らん顔のまま、男は下手へ、カイトは
         上手へ去る。

    ――――― 第 3 場 ―――――

         音楽で紗幕開く。と、ニューヨークcity警察署内。
         警官ボビー、婦人警官シンディ、デスクに着いて
         仕事をしている。奥の扉よりジュリー、一人の杖を
         ついた老婦人バーバラを連れて、登場。

  ジュリー「さぁ、お婆さん。お話しはよく分かったから、後のことは
       私達に任せて下さいな。」
  バーバラ「(ハンカチで涙を拭うように。)私はアレックスが出て
        行ってしまったら、どうやってこの先、生きていけばい
        いのか・・・。」
  ジュリー「とりあえず、捜索願は出しときましたから、見つかり次
       第、連絡しますからね。」
  バーバラ「どうか婦警さん!!アレックスを捜して下さいな!!」
  ジュリー「はい、分かりました。私も偶には顔を見せるから、あま
       りアレックスのことばかり考えて、塞ぎ込まないでね。」
  バーバラ「ええ、ええ・・・。アレックス・・・(涙声で、“アレックス”
        の名前を呟きながら、受付カウンターの横を通って、
        上手へ去る。)」
  ジュリー「(溜め息を吐いて。)参ったな・・・。」
  ボビー「家出ですか?」
  シンディ「あら、あのお婆さん、身寄りなんていたかしら・・・?」
  ジュリー「それが家出したのは、愛犬のアレックス君!」
  ボビー「犬!?」
  ジュリー「そう。何でも昼間、庭に放しておいたのを忘れたまま、
       休んじゃったらしいわ。」
  ボビー「そんな、犬なんて見つかりっこないですよ!」
  ジュリー「そうは言ってもね・・・。あのお婆さん、アレックスだけ
       が生き甲斐みたいなものだから・・・。(手に持っていた
       写真を、其々2人に手渡す。)これがアレックス君の写
       真。もしパトロール中にでも見つけたら、連れて帰って
       ね。私も気をつけてみるけど・・・。」
  ボビー「はーい!」
  シンディ「はい。」

         そこへ上手より、スリ男を捕まえたアルベール
         登場。後ろよりロバート、楽しそうに続く。

  アルベール「さっさと歩けよ、スリ野郎!」
  男「いてぇな!!」
  ジュリー「あら、アルベール。またお手柄?」
  アルベール「馬鹿!何が手柄なんだよ。スリの現行犯を見つけ
          ただけさ。おい、ボビー!こいつ、取調室!」
  ボビー「はい!」

         ボビー、男を連れて奥の扉へ入る。

  ジュリー「それでも凄いじゃない。ねぇ、ロバート!」
  ロバート「(ニコニコして。)そうだろ?なのにこいつときたら、目
        当ての大物の尻尾を掴み損ねたからって、機嫌が悪
        いのさ。(笑う。)」
  アルベール「人を駄々っ子の餓鬼みたいに言うんじゃねぇ!!」
  ジュリー「また何時もみたいに、回りに気を取られ過ぎるから、
       目当て以外の小物が目に入るのよ!(笑う。)」
  ロバート「そうなんだ。こいつはボウっとしてるようで、その実は
       鋭いライオンのような目で、町中の奴らを見渡してるの
       さ!(笑う。)」
  アルベール「好きなこと言ってらぁ!一日中、歩き回ってたのに、
          NYインターナショナルの専務の手掛かりはナシか
          ・・・。(椅子に腰を下ろす。)」
  ジュリー「NYインターナショナルって言うと・・・あの大手輸入メー
       カーの?」
  アルベール「ああ・・・。」
  ロバート「どうも麻薬の密輸入売買に係わっているらしいんだが、
        中々その裏を取るのがね。」
  ジュリー「ふうん・・・。大変ね、捜査課は。」

         シンディ、コーヒーを入れて其々に配る。

  シンディ「お疲れ様です。」
  アルベール「サンキュ!」
  ロバート「ありがとう、シンディ。」
  ジュリー「さぁて、じゃあ私もちょっとパトロール行ってこよっかな
       ぁ。家出犬の捜索依頼も受けたことだし。」
  アルベール「家出犬?」
  ロバート「何だい、それ?」
  シンディ「裏通りの一人暮らしのお婆さんが、我が子同然に可愛
       がってた犬が、いなくなったんですって。」
  ロバート「へぇ・・・。」
  アルベール「ミセス・バーバラだろ?あの婆さんは、何時もああ
          なんだから、いちいちそんなのに付き合ってたら、
          切りがないぜ!」
  ロバート「そこがジュリーのいいところなんだよな。」
  アルベール「へぇ・・・そうかい・・・。」
  ジュリー「・・・とか何とか言って、アルベールだって以前、あのお
       婆さんが大切にしてたカナリアを逃がした時、一晩中、
       網を持って町中彷徨ってたのを、私は知ってるわよ!カ
       ナリアより犬の方が、捜しやすいと思うけど。(微笑む。)
       」
  アルベール「知らねぇよ、そんなこと。」
  ジュリー「じゃあ行ってきます!」

         ジュリー、椅子に掛けてあった上着を取って、
         上手へ去る。

  ロバート「ああ、行ってらっしゃい!(手を上げる。)」
  アルベール「(立ち上がって。)全く・・・犬コロのことなんて、放っ
          ときゃいいのに・・・。(ボビーの机の上に置いてあっ
          た犬の写真を手に取って、そっとポケットに仕舞う。
          )」
  ロバート「(そんなアルベールの様子に気付かない振りをして、
       盗み見し微笑む。)だけど、ジュリーはどんな小さなこと
       にも一生懸命になるところが、彼女の魅力でもあるんだ
       から、俺はそんなジュリーが好きだな。」
  アルベール「・・・へ・・・ぇ・・・」
  ロバート「おまえもそうだろ?」
  アルベール「誰がだよ!くだらない・・・。」
  ロバート「じゃあ俺が彼女を口説いても構わない・・・ってことか
       な?」
  アルベール「どうぞ、ご勝手に・・・。」
  ロバート「後で泣いたって知らないぞ。」
  アルベール「俺は今、NYインターナショナルの裏を取ることで、
         頭が一杯なんだよ。(ロバートの肩に手を掛ける。)
         まぁ頑張れよ。応援してやるからさ・・・。さて、ボビー
         の手伝いでもしてやるかな。」

         アルベール、奥の扉へ入る。
         ロバート、アルベールの後ろ姿を見詰めて
         いる。音楽で暗転。紗幕閉まる。

    ――――― 第 4 場 ―――――

         車が走る音の中、一台の車の急ブレーキの
         音が響き渡る。

  男の怒鳴り声「ばっきゃろう!!何処見て歩いてんだ!!」

         車の遠ざかる音。

  カイトの声「畜生、糞親父!!」

         フェード・インする。と、紗幕前。
         カイト、座り込んでいる。

  カイト「(膝を見ながら。)いってぇ・・・。何だ、今の車!!(膝に
      息を吹きかける。)」
  
         そこへアルベール、下手より登場。
         そんなカイトの様子に気付いて近寄る。

  アルベール「如何した、坊主?」
  カイト「(チラッとアルベールを見るが、無視する。)ふん・・・。」
  アルベール「(カイトの膝に気付いて、しゃがんで見るように。)
          ・・・血が出てるじゃないか。」
  カイト「うるせぇな・・・」
  アルベール「こっちへ来い!(カイトの腕を取って、立たせる。)」
 
         紗幕開く。と、公園。

  カイト「放せよ!!放せったら!!糞親父!!」
  アルベール「誰が糞親父だ!?」

         アルベール、カイトを引っ張って、中央ベンチ
         へ連れて行き、座らせる。

  カイト「放っといてくれよ!!」
  アルベール「このまま放っといたら、破傷風になって死んじまう
          んだぞ!!」
  カイト「・・・死ん・・・?」
  アルベール「・・・って言うのは、大袈裟かな?(笑う。)」
  カイト「畜生!!脅かしやがって!!こんな傷くらいで、死んで
      たまるかよ!!」             ※

         アルベール、後ろの噴水まで行って、
         ポケットから取り出したハンカチを濡らす。
         カイト、アルベールの様子を窺って、隙を
         見て、逃げ出そうとする。

  アルベール「待て、小僧!!(ジャケットの中に持っていたピス
          トルを、素早く取り出し空に向かって一発撃つ。)」
  カイト「わあっ!!(耳を塞いで、しゃがみ込む。)」
  アルベール「小僧!!動いたらもっと酷い怪我をするぜ・・・。」
  カイト「(耳を塞いだまま、そっとアルベールの顔を見る。)あんた
      ・・・一体・・・」
  アルベール「さっさと座れ!!」
  カイト「はい・・・。(言われるまま、恐る恐るベンチに腰を下ろす。
      )」
  
         アルベール、濡らしてきたハンカチで、カイトの
         膝の傷を拭い、ポケットから取り出した絆創膏を
         貼ってやる。

  アルベール「ほれ!(膝の傷を叩く。)」
  カイト「いってぇ!!何すんだよ、おっさん!!」
  アルベール「俺って、看護師みたいだなぁ・・・。(笑う。)」
  カイト「・・・馬鹿じゃねぇの?」
  アルベール「ほぅ・・・誰に向かって、そんな口を聞くのかなぁ?」
  カイト「あ・・・(姿勢を正して。)すんません・・・。けど、あんた一
      体・・・」
  アルベール「(カイトの横に腰を下ろす。)聞いて驚くな!こう見
          えても俺は、ニューヨークCity警察の刑事だ!!」
  カイト「げっ!!お巡りかよ!!(思わず立ち上がる。)」
  アルベール「(カイトの服を掴む。)座れ!!刑務所に放り込む
          ぞ!!」
  カイト「(座って。)俺、何もしてないっすよ!!」
  アルベール「へぇ・・・。これは何かなぁ・・・?(カイトのズボンの
          後ろポケットから、小さい袋を取り出す。)」
  カイト「あ・・・それは!!(アルベールから、袋を取り返そうとす
      る。)」
  アルベール「(カイトに取られないように、高く掲げる。)こんなこ
          とやってると、碌な大人になれないぜ。何時からや
          ってるんだ・・・?」
  カイト「何時からも何も、今回が初めてだよ!!たまたま知り合
      ったおっさんに頼まれたんだ!!これ持って、この辺りで
      ブラブラしてっと買い手が現れるから、それと引き換えに
      金貰って来い!って・・・。そしたら一割報酬くれるって言
      うし・・・。こんなことでもやんないと、俺みたいな身寄りの
      ない餓鬼、雇ってくれるとこなんてないし、飢え死にしちゃ
      うよ!!」
  アルベール「(探るような目つきでカイトを見る。)・・・本当だな?
          」
  カイト「本当だよ!!」
  アルベール「(カイトを暫く見詰める。)分かった・・・。信じてやる
          よ。ところで、おまえ働き口がないって言ったな・・・
          ?」
  カイト「・・・ああ・・・。」
  アルベール「いいとこ紹介してやるよ。普通のカフェだが、面倒
          見のいいおやっさんがやってんだ。洗い場にでも置
          いてくれるだろうよ。」
  カイト「・・・え・・・?」
  アルベール「何だ?嬉しくないのか?」
  カイト「いや・・・嬉しいよ!!けど、余りに急だったから・・・」
  アルベール「だから、もう二度とこんなことするんじゃないぞ!!
          」
  カイト「うん・・・。」
  アルベール「・・・名前は?」
  カイト「カイト・・・」
  アルベール「何処に住んでる?」
  カイト「・・・エドワード孤児院・・・」
  アルベール「さっき、飢え死にするって言ったじゃないか!孤児
          院じゃ、食い物に困らないだろ!?」
  カイト「あ・・・あれは言葉の文で・・・すんません・・・。」
  アルベール「しょうがねぇな・・・。で?学校には、ちゃんと行って
          るのか?」
  カイト「あんなの行かなくたって、生きていくのに困りゃしないさ
      !!」
  アルベール「馬鹿野郎!!ただボウっと生きていくには必要な
          いかも知れないがな、人間それだけじゃ駄目なん
          だよ!!生きていくって言うのはな・・・」

         アルベール、立ち上がり歌う。

         “生きると言うことは・・・喜びがあり・・・
         悲しみがあり・・・怒りがあり・・・
         様々な感情が渦巻く中で
         自分を鍛え育て上げていくと言うこと・・・
         ただ漠然と時間が過ぎるのに
         流されていくだけじゃ
         何の生きる意味をも持たない・・・
         それじゃあ生きていないも同然
         生きると言うことは・・・
         様々な困難にぶつかっても
         それから逃げずに立ち向かう
         勇気を造り出し・・・
         喜びがあった時 心から幸せだと感じる
         素直な心を生み出していく・・・
         何にでも向っていく心を・・・
         持つことが・・・
         生きていくと言うこと・・・”

         カイト、立ち上がってアルベールを見詰める。
         暗転。紗幕閉まる。

    ――――― 第 5 場 ―――――

         紗幕前。
         上手よりロバート登場。続いて俯き加減の
         ジュリー登場。

  ロバート「やっぱりね・・・。やっぱりそうだと思ったよ・・・。」
  ジュリー「ごめんなさい・・・。私・・・私ね・・・自分でも気付かなか
       ったの・・・。あなたに今日好きだと言われるまで・・・。ア
       ルベールが私にとって、どんな存在の人だったのか・・・。
       ただ何時も、署内で冗談言い合うだけの、友達だと思っ
       ていたのか・・・それとも・・・。」
  ロバート「(微笑んで。)俺は何となく分かっていたなぁ・・・。ジュ
        リーの気持ちは・・・。」
  ジュリー「え・・・?」
  ロバート「君があいつと冗談言い合ってる時でも、君のあいつを
        見る目は愛しさに満ち溢れていたよ・・・。だけど、ジュ
        リーは見る目があるよな・・・。普通、あいつの内面の
        善さを分かってやれる人間って言うのは、男性にしろ
        女性にしろ、中々表われないんだぜ。同じ課で俺くら
        いじゃないかなぁ・・・。(笑う。)一見、ぶっきら棒で野
        蛮っぽいから、結構敬遠されるタイプなんだけど・・・。
        あいつは優しいよ・・・心からね・・・。外見から言えば、
        俺の方がそう見られがちなんだけど、本当に何に対し
        ても誰に対しても、一番思い遣る気持ちを持てるのは
        奴の方なんだ・・・。君も言ってたカナリア事件がいい
        例さ・・・。普通、夜勤明けで眠りたいばかりの時に、あ
        んなこと言われたって、誰も取り合っちゃくれないぜ。
        なのにあいつは・・・あの時も、散々暴言吐きながら、
        結局はたった一人で黙って網持って、捜しに出たんだ
        から・・・。まさか、本当に見つけて来るとは思わなかっ
        たがね。(笑う。)」
  ジュリー「そうね。(笑う。)」
  ロバート「・・・それにあいつは、何時も相手のことを考え過ぎる
        んだ・・・。それが分かってて、わざと先手を打ったのは
        、少し卑怯だったよな・・・。(自分に言い聞かせるよう
        に。)」
  ジュリー「・・・先手?」
  ロバート「いや・・・あいつも俺と同じ思いの筈ってことだよ・・・。」
  ジュリー「ロバート・・・。」
  ロバート「(ジュリーを見詰め、微笑む。)俺のことは気にするな
        よ!けど、あいつは俺みたいに中々素直になれない奴
        だからなぁ・・・。あいつが自分の気持ちに正直になるま
        でには、少し時間がかかるかも知れないけど・・・。だが
        、あいつのそんなとこは、ジュリーが一番よく知ってる筈
        だな。」
  ジュリー「そうね・・・。」

         ロバート、ジュリー会話するように歌う。

     ロバート“一見明るく悩みがなく
          傷付くことすら知らず
          自由に生きる・・・”

     ジュリー“口が悪くてぶっきら棒
          少し照れ屋で好い加減”

     ロバート“だけど本当は誰よりも
          一番相手を思い遣り
          相手の為を考える”

         曲の流れ優しく。ロバート、微笑ましくジュリーを
         見詰める。

     ジュリー“何時も・・・誰にも・・・
          心からの優しさを・・・
          持って接する
          あの人を見た日から・・・
          多分私の心は・・・
          あの人の・・・
          傍へ飛んで・・・行ったみたい・・・”

         ジュリー、遠くに思いを馳せるように
         見詰める。

    ――――― 第 6 場 ―――――

         紗幕開く。と、舞台は明るい日差し一杯に
         浴びた、お洒落な感じのカフェ。
         店の外に置かれたパラソル付きのテーブル
         に、若い男女、腰を下ろして楽し気に会話
         している。店の中よりウエイトレス姿のヘレン、
         グラスの乗ったお盆を片手に歌う。

         “ここはみんなの集まり場
         ここはみんなの憩いの場
         コーヒー豆のいい香り
         ふっくらマフィンの焼き立て如何
         ここはみんなのカフェレスト
         誰もが集まるいいお店”

         ヘレン、客の男女のテーブルへグラスを置く。

  ヘレン「お待たせしました!」

         その時、下手よりアルベール登場。続いて
         カイト、何となくふてぶてしい態度で登場。

  アルベール「よお、ヘレン!」
  ヘレン「あら、アルベールいらっしゃい!仕事中?」
  アルベール「まぁな。」
  ヘレン「何にする?」
  アルベール「(空いているテーブルに着いて。)コーヒー2つ・・・
          いや・・・(チラッとカイトを見る。)コーヒー1つと(カ
          イトの頭に手を置いて。)こいつにはミルク!」
  カイト「誰がミルクなんか!!餓鬼じゃあるまいし!!」
  アルベール「へぇ?俺には如何見たって“餓鬼”に見えるけどな
          ぁ。(笑う。)」
  ヘレン「そうねぇ・・・。」
  カイト「俺もコーヒー!!」
  アルベール「馬鹿!こいつにコーク!」
  ヘレン「はーい!」
  アルベール「それと、ちょっと親父呼んでくれよ。」
  ヘレン「OK!」

         ヘレン、奥へ去る。

  アルベール「如何だ?いい感じの店だろ?」
  カイト「そんなこと、外見だけじゃ分かんねぇよ!」
  アルベール「おまえ、その口の聞き方、何とかならないのかよ!
          」
  カイト「仕方ねぇだろ!今までずっとこう言う話し方してきたんだ
      からよ!!あんたとも、あんまり変わんねぇと思うけどな
      !!」
  アルベール「糞餓鬼だなぁ!」
  カイト「ほうら見ろ!俺のこと言えた柄かよ!!糞親父!!」
  アルベール「それ止めろ・・・。言っとくがな!おまえより確かに
          年は食ってるが、俺はまだ若いんだ!!“親父”な
          んて呼ばれる年じゃないんだよ!!分かったか!
          ?」
  カイト「はいはい!」
  アルベール「“はい”は一度だ!!」

         その時、奥からマシュー登場。アルベールを
         認め近寄る。

  マシュー「やぁ、アルベール!今日はまた何だい?(空いていた
        椅子に、腰を下ろす。)」
  アルベール「うん・・・。ちょっと頼みがあって・・・。」
  マシュー「金ならないぜ。(笑う。)」
  アルベール「分かってるさ、そんなこと!」
  マシュー「悪かったな。(カイトを見て。)おまえ、弟なんていたっ
        け?」
  アルベール「こんな柄の悪い弟なんていらねぇよ!」
  カイト「(アルベールを睨んで。)それはこっちの台詞だ!!」
  アルベール「違うんだ。今日は(カイトを見て。)こいつのことで
          ちょっと・・・。実はこいつ、そこの公園通りで拾った
          んだけど・・・」
  カイト「俺は犬じゃねぇ!!」
  アルベール「煩い!見ての通り、ちょっと癖のある奴で、孤児っ
          て言うこともあって働き口がないらしいんだ・・・。さ
          っきもヤバい仕事に片足突っ込みかけてたようだ
          し・・・。」
  マシュー「何だ、そんなことか・・・。それくらいのことなら、他なら
        ぬおまえの頼みだ、内で面倒見てやるよ。」
  アルベール「有り難い!(カイトに向かって。)ほら、おまえからも
          よく頼んどけ!!(カイトの頭を押さえる。)」
  カイト「宜しく・・・お願いします・・・。」
  
         奥からヘレン、盆に飲み物を乗せて、
         運んで来る。

  ヘレン「お待ちどう様!(其々の前に、飲み物を置く。)」
  アルベール「サンキュー。」

         カイト、慌てて飲む。

  アルベール「(そんなカイトの様子を見て。)もっとゆっくり飲めよ
          !」
  マシュー「(微笑んで。)相変わらずおまえは、犬にしろ人間にし
        ろ、独りぼっちの奴を見ると、放っとけなくなるようだな
        。」
  ヘレン「ねぇ、この間拾って帰った子犬、如何した?」
  アルベール「ああ、あいつならロバートのところで、幸せに暮らし
          てるよ。本当は俺ん家で飼ってやりゃあいいんだけ
          ど、あのボロアパートじゃ俺まで追い出されちまうか
          ら仕方ないよな。」

         ヘレン、客に呼ばれてその方へ。
         何か注文を受けて、奥へ去る。

  マシュー「おまえも子どもの頃から、随分苦労してきたからな。」
  アルベール「よせよ。別に苦労なんて思っちゃいねぇよ・・・。ど
          んなに碌でもない親でも、俺を生んでくれた親には
          変わりないんだ・・・。その親のことで、俺が受ける
          ものは苦労でなくて、勉強だったんだよ。何にして
          も・・・。」
  
         カイト、飲み物を飲む振りをしながら、黙って
         話しに聞き入っている。

  マシュー「そうか・・・そうだな。」
  アルベール「ジュニア・ハイ・スクールの頃に親に捨てられて、
          途方に暮れたけど、ホッとしたのも事実なんだ・・・。
          とんでもない餓鬼だったよな。こいつのこと、よく知
          らねぇけど、何か俺の餓鬼の頃を思い出してさ・・・。
          まぁ、大変かも知れないけど、ちょっとばかり宜しく
          頼むよ。」
  マシュー「任せとけ。二度と悪の道に、片足突っ込むような真似
        はさせないから。」
  アルベール「そうだな・・・。あんたに任せとけば安心だ。」
  マシュー「ところで、NYインターナショナルの方は如何なんだ?
        何か掴んだのか?」

         カイト、一瞬驚いた表情をして、2人を
         盗み見する。


          







      ――――― “アルベール”2へつづく ―――――











   ※ たまたまですけど、違うページで掲載中のエリオットくん
     作品の”リコ少年”と、似たような設定です^_^;
     今まで紹介した作品の中でも、このお兄さん的な主人公
     と、やんちゃな少年の組み合わせが、時々登場します^^;
     きっと、私がこの設定を好きなんでしょうね~・・・気付いて
     なかったですけど・・・(>_<)




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     (どら余談^^;)

     昨日、お知らせし忘れていましたが、グーグル版“ワールド”
    に、来週保育園のボランティア公演での作品、“ピンクのもも
    ちゃん”のラストの動画をアップしています(^^)v
    この、ももちゃん、手も足もないお魚さんなので、見て頂いて
    お分かりのように、ただひたすら揺すっております^^;
    その内、あの持ち手の棒が、きっと抜けるか折れるか・・・
    公演途中に、そんな大変なことにならないように、注意しな
    ければ・・・と思っています^_^;













http://milky.geocities.jp/little_pine2012/performance.html

         http://ritorupain.blogspot.com/

     http://blogs.yahoo.co.jp/dorapontaaponta
 







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