~経済ニュースの森の奥~ ・・マクロな視点から。

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No45 世界的な株価下落の可能性 vs “貯蓄から投資へ”

2006年04月13日 | 投資・運用
4/12ロイター・・・グリーンスパン前米FRB議長、世界的な資産価格下落の可能性を警告・・・ 今年1月末に米連邦準備理事会(FRB)議長を退任したグリーンスパン氏はソウルで開かれた金融関連の会合向けに衛星回線を通じて講演し、世界的な流動性過剰が資産価格下落につながる、と警告した。

グリーンスパン氏は、実質長期金利が何年にもわたって低下したり、実質エクイティプレミアムの著しい低下によって、世界的に資産の市場価値が名目GDP以上に急ピッチで上昇してきた、と指摘。

資産価格高は、実質エクイティプレミアムの低下による側面が大きいとして「それがいつまでも続くわけではない」と述べた。

資産価格がいずれ下落する、としながらそれがいつ起こるかという予想は示さなかったが「今日目にしているのが異常な状況であると確信している」と述べた。

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経済用語を平たくしてこのグリーンスパン氏の論旨をやさしく言ってみると、(世界的な)昨年までの低い貸出し金利のおかげでマネーが大量に安く調達でき、そのカネで世界各国に株式投資が盛んに行われた結果、世界各国の本来の力を超えた過剰な株式投資が行われているのではないか。この状況はいつまでも続かず異常な状況である、というものです。

日本の株式市場が1年で50%近くも上昇しているほか、韓国・ブラジル・メキシコなどが40%以上高騰、フランス・ドイツなどちょっと前まで不況が伝えられていたユーロ圏でも前年比20~30%台の伸びを見せています。

世界で最も注目を浴びているインド市場では史上高値をぐんぐん更新し、この間は1ヶ月で10%も上昇したりするほどの過熱ぶりです。 
世界の投資家は、猫も杓子もBRICsといった感じです。

ところがここ最近の株式市場は調整色が強くなり、少し前までの右肩上がりではなくなって来ている新興国が少なくありません。 ・・いまのところ、これらは単なる調整にすぎないとよく言われますが。
日本市場も(これまでのところ)今年は去年のような日の出の勢いとは明らかに異なる動きです。

背景はいろいろ推測されますが、現在大きなリスク要因といわれているのが、世界的な金融引締めモードです。
米国は過熱経済をソフトランディングさせるべく政策金利を着実に上げていき、低かった長期金利も上がりつつあります。景気回復が見えてきたEUもインフレを怖がり金利上昇政策を取っていますし、日本では政策金利はゼロのままにも関わらず長期金利はじわじわ上がってきています。

現在のこの程度の金利上昇では、まだ明らかなネガティブ要因にはなりませんが、金利引き締めモードが続いていけば、特に新興国のように元々の市場規模が小さい(インド市場は日本の10分の1)国から、潮が引くようにサァーっと資産が逃げていく危険性が大きくなっていきます。

そもそも本来その国が必要としている資金需要はすでに満たされているどころか、すでにその実力以上に資金供給が過剰になっているという見方が多くあり、グリーンスパン氏の意見もそのひとつといえるでしょう。


“貯蓄から投資へ”の合唱の中、流行りのBRICs投資などを始めた、又はいま検討している方は、くれぐれも債券やヘッジファンドなど株式ロングと相関性の低いところのリスクヘッジを忘れず計画的に資金を分散しておく、もしくはイザの時すぐに現金へ戻すこと(損切り)ができるような勇気を持ち準備を万端にしておくなど、問題がそれほど表面化していない今のうちに冷静に対応しておきたいものです。

たった今までウマい話だとしても今後それが続く保証はどこにもないという事を、改めて考えるべき時が来つつあるような、そんな予感がします。 もちろん日本株については、いわずもがなですね。