~経済ニュースの森の奥~ ・・マクロな視点から。

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No57 そしてエネルギー&米住宅 2つの投機バブル崩壊  ・・世界はこれを止めるのか? 

2006年09月28日 | グローバル経済
●9/26読売ニュース・・NY原油、1バレル=59・65ドル…半年ぶりの安値

25日午前のニューヨーク商業取引所の原油先物相場は、一時1バレル=59・65ドルまで下落し、3月下旬以来、約半年ぶりの安値をつけた。

英石油大手BPが米アラスカ油田の操業を一部再開する見通しとなったため、供給不足への懸念が後退している。

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●9/26NIKKEI・・・米中古住宅価格、11年ぶり下落――8月、前年比1.7%減

米中古住宅価格が約11年ぶりに下落に転じた。全米不動産協会によると、8月の中古住宅の販売価格(中央値)は全米平均で前年比1.7%低下した。1995年4月以来のマイナスで、販売の落ち込みに加え、価格面でも住宅市場の減速が鮮明になった。

8月の中古住宅の販売件数は年換算で前年同月比12.6%減の630万戸と5カ月連続で減少。04年1月以来の低水準となった。住宅在庫は販売実績の7.5カ月分と6カ月連続で拡大、93年4月以来の最高水準に膨らんだ。 住宅市場の調整局面は、来春まで続くとの見方が多い。


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7月~8月に80ドル近辺まで付け、このまま100ドルまでいくだろうと言われていたNY原油先物ですが、そのころ当ファイル(No52/53/54)で、むしろ諸々の理由から下落する可能性のほうが高いのでは?と予見していたのを見透かすように、その後1ヶ月半で一気に50ドル台まで急降下してきました。

なにか出来すぎた話で、暴落に近い下落ですから今後は反発することも考えられますが、原油だけでなく天然ガス(・・8月頭から半値近辺!まで急落)ゴールドなどいわゆる商品先物市況が急にしぼんでいるような状況です。

天然ガスの超暴落は米の大手ヘッジファンドを実質破綻に追い込み、たった2ヶ月前まで“商品の黄金時代”が到来すると誰もが信じ公的年金機関までもが投資に手を出していた市況はいきなり修羅場を迎えた、といっても過言ではないでしょう。

そんな先物ワールドに関係の無い、一般市民にとっては原油やガスの値下がりはいいニュース。というか、5~6月の世界株安と同じで、やはりこれまでの異常な値上がりが、またまた世界カネ余りによる投機バブルであったという証明をしたに過ぎないわけです。少なくともエネルギー高による世界的インフレ懸念のニュースは今のところすっかり影をひそめました。

しかし懲りない世界の投機筋の思惑によって、消費者や経済全体に再び冷や水を浴びせる時も来ることでしょう。世界中、そのたびに一喜一憂するハメになりそうです。



エネルギーに続いて、その下の米住宅(中古)価格下落のニュースですが、こちらは家を購入したいアメリカ人以外には大きなデメリットとなり、これが進むと今後世界経済に深刻な影響が及ぶ可能性が高いというのは、もはやご認識の方も多いと思います。

米住宅ブームがピークを迎えつつあった今年1月(振り返ってみると)のファイル<No37>に詳細は譲り、繰返しを避けますが、多くの米国人による“住宅投機バブル”が、ご多分に漏れずゆっくりと足音をたてて崩壊しつつあるように見えます。

米国の大部分のエコノミストはごく最近まで大概このように言っていました。
「住宅価格の上昇は“減速”するが下落までは至らない。減速してもその分企業の設備投資の伸びがカバーするし、エネルギーも下落に転じインフレ懸念も後退したので、大きな影響は出ないはず・・」

減速ではなく「11年ぶりの下落」という上のニュースには重みがあります。
エコノミスト予想を超えた事実によって、市場のネガティブに拍車がかかるとき、バブルの崩壊は目に見えて明らかになる可能性があります。

米FRB(連邦準備制度)は政策金利の引き下げを思ったより早く迫られるかもしれません。インフレ退治を役目とするFRBが、資産デフレ⇒景気悪化を避けるためにプライドを捨て早期に大きな利下げを決断するぐらいしか、このバブル崩壊を止めるアイデアが浮かびません。・・もしくは米政府によるサプライズな経済措置、でしょうか。

本質的には、バブルという“ウミ”は出し切ってしまうしかないはずですが、今回は世界経済に与えるインパクトが大きすぎて、ソフトランディング、というより端的に言って「先延ばし」せざるを得ない暗黙の合意が図られる、そんな予感がします。

仮に、ヘンな話それが成功したとすると、ツケはまたいつか(数年以内?)にやって来るということです。応急措置で当面をしのぐのか?今ウミを出してしまうのか?
人間の体で例えるなら、応急治療で入院先延ばしした結果がどうなるかは、自明の理ですね。 

しかしアメリカ一国の国内で収まる事態ならいざ知らず、大蛇のようになってしまったグローバル世界経済は、全員一致協力でこれから出血大手術を!という決断がもはや出来なくなっているのではないかと危惧します。 ・・まさに池の中のコイが鯨になって、身動きが取れなくなるという例えが、グローバル経済全体に当てはまることがないよう、今は祈るしかないようです。