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基礎からのアメコミ映画講座:バットマン編#2

2012-06-15 | 映画
基礎からのアメコミ映画講座、前回より
8月公開の「ダークナイト・ライジング」に向けて、
アメコミヒーローの代表格・バットマンについて紹介しております。
第2回の今回は、ティム・バートン監督の時代のシリーズ作についてです。

80年代、DCコミックスは膨大になりすぎたパラレルワールドや設定を整理するために
「クライシス・オン・インフィナイト・アーシス」という
全作品のクロスオーバーイベントを実施し、一度世界をリセットすることになります。
それに合わせる形で、「スーパーマン」「バットマン」といったタイトルも
一旦「最終回」を迎えることとなりました。
(DCコミックスはこういったリセットをこれ以降時々行うようになり、
 昨年も先ごろ邦訳された「フラッシュポイント」イベントで実施いたしました)

その「バットマンの最終回」が老バットマンの復活と最後の戦いを描く
「ダークナイト・リターンズ」でした。
フランク・ミラー(後に「シン・シティ」「300」を生み出す)による
ハードボイルドでアナーキーなバットマンの物語は
記録的な売り上げをたたき出し、アメリカンコミックに変革をもたらすことになりました。

そしてこの「ダークナイト~」で一旦終わり、再開したのが
「バットマン・ビギンズ」の原作となる「イヤーワン」なのですが
それは「ビギンズ」紹介のときに置いておいて。
この「ダークナイト~」を読んで、「これを映画化したい!」と思う監督がおりました。
元ディズニーのアニメーターとして活躍していたティム・バートンです。

82年に短編映画「ヴィンセント」で監督デビュー、
初の長編監督作である「ピーウィーの大冒険」で低予算ながらもスマッシュヒットを飛ばし
続く「ビートルジュース」も低予算ながら大ヒットとなります。
この実績によってティムは「バットマン」の監督に就任することになりました。

バットマンの映画化は以前のテレビドラマシリーズ劇場版以来ということで
さすがに「最終回」である「ダークナイト~」の映画化というわけにはいかず
バットマンの誕生と宿敵ジョーカーの誕生を軸に描かれることになりました。

バットマンを演じたのは「ビートルジュース」でも主演を演じたマイケル・キートン。
ブルース・ウェインの設定の「ハンサムなプレイボーイ」というには
少し外見的には弱いですが(個人の感想です)
このシリーズにおけるバートンのバットマン像を表現するには
彼でなければならなかったのだと思います。

そして1作目の悪役であるジョーカーなのですが、
まずはこのキャラについて説明を。
1940年、「Detective Comics」に続く2冊目のバットマンコミックである「Batman」の
第1号に登場したこの悪役は、トランプのジョーカーに描かれた道化師のような
白い顔に緑の髪、常に狂気の笑顔をたたえているという外見で
他愛もないジョークにからめた犯罪から大量殺戮まで行う狂気の犯罪者であり、
バットマン最大の宿敵として知られております。

ジョーカーの過去は描かれる作品によって変わり、
狂人であるが故にどれが真実かわからない、という扱いとなっています。
この映画版ではジャック・ネイピアという悪党が
バットマンに追われて化学工場の廃液に落ちたことで肌が漂白され・・・という
過去になっており、実はこのネイピアもバットマン誕生に関わっていた過去があり
ネイピアがバットマンを生み、そのバットマンがネイピアをジョーカーに変え・・・という
因果の構造が作品の軸を形成しております。

そんなジョーカーを演じたのは狂人演技といえばこの人、のジャック・ニコルソン。
狂気とジョークがこのキャラの両輪を形成しているのですが、
どちらかといえばジョークのほうに軸足を置いた役作りを行ったためか
狂気の面ではいまひとつ・・・と感じました。
(「ダークナイト」のヒース・レジャーはその逆だったように思いますが
 それについてはノーラン版の解説の際にでも)

この作品のトピックとして、これまでタイツ素材であったバットマンのコスチュームが
ラバースーツ的なデザインで作られたことが挙げられます。
この変更によって、アメコミヒーローのデザインを現代風にアップデートする、という
方向性が定まったとともに、作品シリーズ自体にビザールな雰囲気が纏われ
次作「リターンズ」、そしてバートンからシリーズを受け継いだ
ジョエル・シュマッカー監督の2作でよりその路線が推し進められていくのです。

舞台となるゴッサムシティもバートンの美的感覚により
ゴシック調の都市として描かれ、暗くダークなデザインが
作品の空気自体を表現しているように思えます。

そして3年の時を経た92年。
バートン監督による2作目、「バットマン・リターンズ」が公開されます。
主演のマイケル・キートンは変わらず、
今回のヴィランはペンギンとキャットウーマンが登場することになりました。

原作のペンギンはユーモラスな外見であり、さまざまな仕掛け傘を武器に
金儲けを中心に考える犯罪者である「怪盗紳士」であり、
他のバットマンの悪役ほど異常者成分をもっていないキャラではあるのですが
この映画ではフリークスとして生まれ、その出自や外見すら武器に使い
ゴッサムの町を牛耳ろうとする「怪人の哀しみ」を背負ったキャラとなっています。
演じたのはダニー・デビートであり、その演技力によって
「滑稽にも見える外見の抱えた悲壮感」を表現しきったキャラとなりました。

キャットウーマンは猫のような体術と、猫科の猛獣を操ることができ
バットマンの敵でありながらも時には協力関係になったり
素顔のブルースと恋愛関係になることもしばしば。
別の時間軸ではバットマンと結婚、娘を産むという展開にもなる
敵でありヒロインという立ち位置にいるキャラです。
今作ではそのアウトラインは保ちながらも、
猫好きの気弱な秘書が街の顔役の悪事を知って殺されたところが
奇跡的に生存、強気で妖艶な人格に目覚め
自分でスーツを縫い、顔役への復讐のため動き出します。
演じたのはミシェル・ファイファーで、その猫のような美しさは
まさにキャットウーマンそのものであり、ボンテージ的デザインの
レザースーツが大変よく似合っておりました。
(「ダークナイト・ライジング」ではアン・ハサウェイが演じるのですが
 はたしてどんなキャラになっているのか・・・)

本来、ここにロビン(演じる予定だったのは黒人俳優のマーロン・ウェイアンズ)が
加わる予定もあったそうですが、ロビン登場は3作目に持ち越され
2人の哀しい悪役による悲劇的なストーリーが高い評価を受けながらも
「ダークすぎてアメコミ映画らしさに欠ける」という評価もあったりし、
3作目からはバートンが降板、世界観は引き継ぎながらも
監督はジョエル・シュマッカーに、バットマン役も交代、
街は極彩色のキッチュさを纏っていくわけですが
それはまた次回の講釈で。

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