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トーマス・グラバー 第二章 グラバー長崎へ出立   清潔で平和な町長崎

2024-07-12 20:27:06 | 秘密結社 フリーメーソン、イルミナティ、秘密結社など、

トーマス・グラバー 第二章 グラバー長崎へ出立  朝廷に内緒で通商条約にサイン
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清潔で平和な町長崎

さて、グラバーのことである。 米国を始めとする安政五か国条約により、日本が長い鎖国から、本格的な開国へと踏み切った事は既に述べた。

その翌、安政六年(一八五九)九月、グラバーは先輩マッケンジーの誘いに乗り、開国したばかりの夢の国、日本の長崎へと渡って来た。弱冠二十一歳のときである。

 

グラバーの故郷、スコットランドから香港、上海間での約六ケ月にも渡る長旅には地球の広さ、海の大きさに、ただただ驚かされた。

しかし、上海から日本の長崎までは、同じ清国内の香港から上海へ航海するよりもはるかに近く、わずか四日間のあっけないほどの船旅で長崎へ着いた。

 

しかし、実はそのわずか四日間の船旅で、グラバーは船旅がたちまち嫌いになってしまった。というのは、五島列島遙か沖の東シナ海で船が大揺れに揺れ、それまでは一度も体験したことのない「船酔い」を体験したからである。

グラバーはこれ以来、東シナ海を通らねばならないJM商会の上海店出張を極力避け、日本国内での船旅を楽しむことにした。

 

五島列島を過ぎ、しばらく進むと、後にグラバーが大きくかかわる事になる高島炭鉱の一島、端島(通称「軍艦島」)が見えて来た。 もうここまで来ると終点の出島岸壁までは目と鼻の先である。

波も静まり船酔いも収まったグラバーは、ベッドから甲板へ出て、今から自分が勤めることになる長崎湾内を子細に見渡した。

 

「何と静かで美しく、上品な町だろう」

 

陸にはまだ上がっていなかったが、それが甲板から眺めたグラバーの第一印象、直観だった。

船着き場にはJM商会の先輩マッケンジーが迎えに来ていて、二人はJM商会長崎店のある大浦まで一緒に歩いた。

 

そして、決して豪華な屋敷こそ目にしなかったものの、上海の街に比べると全く悪臭がないことに好感を持った。 個人の家、商店などは小さいながらもきれいに清掃されており、船から眺めた自分の直感が間違っていなかったことに、グラバーは満足した。

 

「マッケンジーさん、上海と違って長崎はとても良い町ですね。これなら私も長くつとまりそうですよ」と自分を誘ってくれたマッケンジーに感謝の笑顔を見せた。 しかし、ちょっと不快な思いもさせられた。

上海ではイギリス人を始め、アメリカ、フランス人などの外国人は珍しい存在ではなかった。

 

しかし長崎では出島のオランダ商館が長年存続しているとはいえ、館員たちはわずかに十数人。 しかも彼らは自由気ままに長崎の町を歩きまわることは禁止されていた。

安政六年のこの当時、背が高く天狗のように鼻が高く、堀の深い顔をしたヨーロッパ人を見ることは長崎でも稀であった。

このため出島から大浦までのわずか十数分歩く間に、十歳から十五歳と思われる男女の子供たちがゾロゾロと後を就いてくるではないか。

 

「鼻の高っとね」「背も高ばい」「あそこも太うて長かやろか」、それぞれに好奇心の目を向け、時々大声を発し何かしゃべりながらついてくる。 
マッケンジーは少々日本語を理解できたが、グラバーは上海で少しは日本語を学んだが、強い訛りのある長崎弁は全く分からない。

子供たちの大声を気にして、グラバーが度々たちどまり、三、四歩後へと下がる。二人が歩き出すと、またゾロゾロとついてくる。 若いグラバーは、彼らの事がとても気になり不愉快な気分を顔に表した。

 

マッケンジーが「子供達のことは気にするなよ。 逆のことを考えてごらん。 もしスコットランドに、ちょんまげ姿の日本人が来たとする。 子供たちだけでなく、大人までゾロゾロ後をついて行くだろう」。

マッケンジーの一言で納得したグラバーは、それからは子供達の存在を気にすることもなく、JM商会の長崎店(大浦)事務所へ長身の身体を入れた。

 

 

 

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この本には、歴史的に貴重な写真、図、文献なども数多く掲載されている秀逸な作品ですが、それらをPDF化して皆さんに紹介することもできますが、著者と発行所の『長崎文献社』に敬意を払って、全てを紹介するのは、控えたいと考えております。

 

 

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