キオクシアホールディングスと米ウエスタンデジタルの半導体部門
が統合する方向で最終調整している
半導体を巡る日米再編が動き出す。米ウエスタンデジタル(WD)が半導体メモリー事業を分離し、旧東芝メモリのキオクシアホールディングスと経営統合する方向で最終調整していることが13日、わかった。
メモリー市況が悪化するなか、規模を拡大して投資競争に備える。日米として半導体の安定供給を確保する。
20日までに金融機関と融資条件などを詰める。またキオクシアに間接出資する韓国のSKハイニックスは反発している。月内の基本合意を目指しているが、流動的な面も残っている。
キオクシアは半導体フラッシュメモリーで世界3位、WDは4位。統合で首位の韓国サムスン電子に並ぶ規模となる。合意後に世界各国での競争法審査に入る。中国での承認が得られるかは不透明な部分もある。
持ち株会社の下にWDのメモリー事業とキオクシアが入る形となる。企業価値ベースでの統合比率はキオクシア側が63%、WD側が37%となる。キオクシアの早坂伸夫社長が新会社の社長となり、取締役会もキオクシア側が過半を握る。
登記上の本社は米国で、本社所在地は日本となる。米ナスダック市場に上場し、東京証券取引所への上場も目指す。統合にあたり3メガ銀行と日本政策投資銀行などが1兆5000億〜1兆9000億円程度の融資を検討している。
キオクシアとWDが手がけるNAND型フラッシュメモリーは長期のデータ保存する役割を担う半導体。パソコンやスマートフォン、データセンターなどに使われている。キオクシアとWDはこれまで三重県や岩手県などにある製造拠点への巨額投資を折半してきた。
英調査会社オムディアによるとサムスンのシェアは2022年時点で34%。統合2社は単純合計で32%となる。
キオクシアは18年、米投資ファンドのベイン・キャピタルなどが約6割を出資する形で東芝から独立した。
新規株式公開(IPO)を目指し、20年には上場承認を受けたが、華為技術(ファーウェイ)への米政府の規制など米中貿易摩擦の悪化で直前で延期していた。
ハードディスク駆動装置(HDD)大手のWDは16年にサンディスクを買収してNAND型フラッシュメモリーに参入した。物言う株主として知られる米ファンドのエリオット・マネジメントなどがメモリー事業の分離を提案。WDは再編案の検討に入っていた。
足元ではスマートフォンなどの不振で半導体メモリー市況が急速に悪化している。台湾調査会社トレンドフォースによると、23年4〜6月期のNANDフラッシュの単価は1〜3月期から10〜15%低下した。採算が悪化を受けて、キオクシアとWDはともに22年10〜12月期から3四半期連続で最終赤字となっている。
一方で長期的には、人工知能(AI)や高速通信「5G」の普及などで需要拡大が見込まれる。キオクシアとWDは三重県四日市市と岩手県北上市の工場で連携している。
メモリー工場は1棟当たり1兆円規模の巨額投資が必要となる。キオクシアの純有利子負債は20年6月末時点で約1兆3000億円だった。
資金力で勝るサムスンに対抗するためには、規模拡大が必要だった。
世界に生産や開発拠点が広がる半導体は有事の際に供給が分断されるリスクがある。米国は中国抜きの供給網を確立し、有事でも経済への影響を最小限に抑える戦略をとる。
米国に同調する日本も、脱炭素やデジタル化に欠かせない半導体を経済安全保障の観点から、国内生産に向けて企業誘致を進めている。
日米の半導体連携の中でキオクシアとWDの統合は21年ごろから浮上していた。当時はWD本体との統合で交渉が進んでいたが、本社所在地や上場市場などの課題があり中断していた。
その後WDがメモリー部分を分離してキオクシアと統合する形で交渉が再開した。
統合が実現するには世界の独禁当局の審査が必要となる。米中間の対立が深まるなか、中国政府は米企業との経営統合案件について、独占禁止法を厳格に適用しており承認が得られるかは不透明な面もある。
米国が中国向けの半導体輸出規制を強化する中で、キオクシアの主要顧客である中国企業に対して製品を輸出しにくくなるといった点も懸念される。