トーマス・グラバー 第五章 グラバー商会の稼働開始 長崎一の茶葉工場稼働開始https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/db7bcc48925088ee0cd4228ac7403553
からの続き
一大茶葉工場を建設
さて、茶葉工場建設のことである。 グラバーはすでに茶を集荷してくる茶葉商人を五、六人確保しているので、後は茶葉を十分に乾燥させる工場を急いで建設する必要がある。
ところが当時、外国人が直接大きな土地を買収して、日本人を多数雇うには大変手間がかかった。
このためグラバーはおけいや、小山商会小山秀之進という人物と入念に打ち合わせをし、おけいの実家に近い油屋町の商家の跡地を借りた。 この際、借地名義人を外国人のグラバーにするとまずいというので、小山秀之進名義とした。
小山は家造りは誰もが認める一流の大工。 しかし茶葉工場は木造ではなく石造りでなければならない。
ようやく小山の紹介で石造り職人を見つけたが、家ではなく工場の建設の経験はないため時間がかかった。
それでも八月半ば、我が国としては最初の茶葉再生工場が完成、操業を開始した。
敷地三百坪、外見は石造り平屋の建物と木造小屋が続く。 早朝、この茶葉工場の前には十代から四十代と思われる女性たちが八十人くらい勢ぞろいしていた。 いうまでもなく、この新工場で働く女工たちである。
茶の再製とは前述したように、輸出に当たり、途中でのカビの発生を防ぐこと。再び火を入れて十分に乾燥させるのだが、日本人(長崎)では再生茶の鑑定ができる人がいない。 このため、中国から鑑定のプロを二人雇用した。
工場内には火種を手に持ち、炉の焚口に火種を入れる。 薪が燃え始め鉄鍋が湯気を立て始めると女工たちが手づかみで茶葉を鉄鍋の中へ場下入れる。ももうと湯気が立ち始め、やがて工場内はまるで蒸し風呂のような熱さになる。 しかも季節は八月である。
お茶の工場というので楽な仕事で給金をもらえると思っていた女工達はこの蒸し風呂の熱さにはすっかり参ってしまった。 はじめは大きな手ぬぐいで汗を拭いていた女工達も湯気と暑さにふらつき、その場で座り込んでしまう人が続出した。
中国人の現場監督は座り込んでしまう女工達を怒鳴りつけ、無理にも立たせて仕事をさせようと頭を叩いたりする。 それを見てグラバーは「少し休ませてやれ。そのうち慣れてくるだろう」というと、監督の中国人が「グラバーさん、それは甘い」と全く無視する。
やがて暑さに負けて卒倒する女性もでてきた。 中国人はその女性を庭の井戸端に連れて行き、頭から水をぶっかける。 女が気が付くと再び工場へと連れ戻す。 当時は茶葉工場だけが厳しい作業環境ではない。 紡績工場に働く女工達の長時間の過酷な労働は余りにも有名だ。
が心優しいグラバーは勤務時間は十時間とし、昼食時間を一時間とした。 このため女工達も暑さに慣れてくると、卒倒、井戸端組は激減した。
間もなく、長崎在住のデント商会と、アーノルド商会の方から茶葉の再生加工を依頼してきた。
次の投稿は、いよいよ『岩崎弥太郎、坂本竜馬に会う』です。
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47.トーマス・グラバー 第五章 グラバー商会の稼働開始 一大茶葉工場を建設https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/36fe6c04bfdc033f7e99de382bd1d6cd
この本には、歴史的に貴重な写真、図、文献なども数多く掲載されている秀逸な作品ですが、それらをPDF化して皆さんに紹介することもできますが、著者と発行所の『長崎文献社』に敬意を払って、全てを紹介するのは、控えたいと考えております。
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