麻布台ヒルズに本社移転したIT企業、新オフィスの狙い

2024-02-14 17:46:59 | AI・IT・サイバーセキュリティ･メタバース・NFT・ゲーム、

日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ（日本TCS）の新本社オフィス。
空港のゲートのような「Welcome Lounge」に設置されたモニターは幅9600
ミリメートル、高さ2700ミリメートル（写真:日経クロステック、以下同）

「強制的に出社させるのではなく『出社したほうがバリューがある』と従業員に感じてもらいたい」。

東京都港区の大規模複合施設「麻布台ヒルズ」に本社を移転し業務を開始した日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ（日本TCS、東京・港）の藤井大介常務執行役員は新オフィスについてこのように語る。

自発性を尊重しつつ、空気を醸成していく姿勢だ。

2023年11月24日に開業した麻布台ヒルズ。その開発区域面積は東京ドーム約1.7個分に相当する約8.1ヘクタールの規模を誇る。

その中で約330メートルと日本一の高さの「森JPタワー」にはIT（情報技術）企業が本社を移転している。

注目の麻布台ヒルズに本社を移転し、23年中に業務を始めたエージェント・スミス（東京・港）と日本TCSにその狙いを聞いた。

社員が戻ってきたくなるようなオフィスへ

麻布台ヒルズに本社を移転し、23年11月27日に業務を開始したエージェント・スミスは、IT企画やマネジメントなどの上流から実装・運用、IT人材の育成・開発などまで様々な支援サービスを提供する。

エージェント・スミスの新本社オフィス。窓辺のソファ席から東京タワーを望む

エージェント・スミスが移転で目指したのは「社員が戻ってきたくなるようなオフィス」（山菅利彦社長）。

同社の社員は客先に常駐している場合が多い。自社オフィスで行うのは顧客への提案をつくる作業や社内打ち合わせ、マネジメント系の仕事程度だ。

山菅社長は「我々の仕事は発想がほとんど。顧客が何を待っていて、何をしたら喜んでもらえて信頼してもらえるか。

大事なのは考えることだ」と説明する。考えるための基地になるのが同社の新本社だ。

こだわったのが、快適なワーキング環境にすること。例えばオフィスデスクは快適さを重視し、幅1500ミリメートル、奥行き750ミリメートルのゆとりがあるものを選んだ。

窓辺にはソファを設置し、開けた視界の中で働ける。「仕事と遊びの境目を持たないほうが発想に良い。そういう空間にしたかった」（同社の山菅社長）。オンライン会議に集中できるブースも設けた。

エージェント・スミスの新本社オフィスのデスク

コミュニケーションの場としても、オフィスを重視する。同社の山菅社長は「社員は客先でそれぞれ違う仕事をしている。互いに何をしているか知ることが大事だ。

それによりサービスの発想の幅が広がる」と重要性を説明する。

六本木ヒルズのときに得た手応え

エージェント・スミスは13年から、本社を六本木ヒルズに置いていた。当時実感した効果を同社の山菅社長は「社会的信用が得られた。効果が絶大だった」と話す。

採用にも効果的だった。「（中途採用者が）転職の際、家族への説明で『今度の会社は六本木ヒルズにある』と話せた効果は大きかったという社員が結構いた」（山菅社長）。

「ヒルズ」のブランド力、そして六本木ヒルズを超える規模のビルになること、「街」になることから、移転先に麻布台ヒルズを選択した次第だ。

六本木ヒルズではフロア面積が100坪だったが、麻布台ヒルズでは300坪に拡大した。

移転にかけた費用は家具などを含めて約3億5000万円。5年程度で吸収できると見込んでいる。同社の山菅社長は「オフィスへの投資で、社員が会社の勢いを感じるはずだ。

それが毎年の会社の成長につながってきているし、これからもそうしたい」と意気込む。

日本TCSの麻布台ヒルズ新本社は「ショーケース」

日本TCSの新本社オフィス。顧客とコミュニケーションを取る「Customer Area」
にはシアターのような空間がある

麻布台ヒルズの開業に先立ち、森JPタワーに23年10月23日に新本社を開設したのが日本TCSだ。

インド大手財閥タタ・グループのIT大手であるタタ・コンサルタンシー・サービシズと三菱商事の合弁会社だ。企画などの上流から開発・実装、運用・保守まで、ITサービスのコンサルティング事業などを手掛ける。

日本TCSの出野圭総務統括部長は「当社はまだ、日本国内ではブランディング力が強くない。ブランド力を高めるため、ランドマークとなる象徴的な建物の中に本社を置く狙いがある」と説明する。

麻布台オフィスのコンセプトは「ショーケース」。顧客に日本TCSの提供するITサービスやテクノロジーを体感させる。その上で、顧客と共創する。

同社は1フロアを2つのエリアに分けて構成した。

顧客とコミュニケーションを取る「Customer Area」と、約370席の執務席などを設ける従業員空間の「Employee Area」だ。

アトラクションのようなCustomer Area

Customer Areaではアトラクションのように顧客へサービスを紹介する。

シアターのような空間で幅7800ミリメートル、高さ2700ミリメートルのモニターで紹介映像を見せたり、別の空間で自動運転やデジタルツインなどTCSの持つ技術を体験させたりする。

この他、顧客と共に課題発掘をする「Design Studio」やセミナーなどに使える「Engage」エリアなどを来客用会議室とは別に設けて共創を促している。

　　　Customer Areaの「Design Studio」はスケルトンの天井が特徴

従業員エリアのコンセプトは「コラボレーション×クリエイティビティ」だ。同社は移転を機に、各人が固定席を持たないフリーアドレスへと切り替えた。

以前の本社では、役員は1番上のフロアに固めていた。新オフィスでは役員の部屋も、社員が働くフロアにガラス張りで置いている。同社の藤井常務執行役員は「話したことがない人と話すことで起こる新たなアイデアに期待している」と話す。

従業員エリアはコミュニケーションの方法や働き方により、ゾーン分けをしている。

Employee Area入り口には、「Gate」と呼ぶ空間を設けている。設置したモニターに社内で開催する勉強会や子育て会といったイベントの情報や、社長からのメッセージなどを映している。

カウンターも設け、コーヒーを飲みながら談笑することもできる。部門やチームを超えた共創を生み出すことを手助けする意図がある。

入り口付近はにぎやかに

にぎやかな入り口付近では、四角形の各辺の位置で4人が座れる机を設置した。

さらにその付近に、可動式のホワイトボードで緩やかに空間を仕切った場を設けて社内での共創を促している。

この他、社内勉強会に利用できるステップ付きのステージもしつらえた。窓辺には、リラックスできるソファ席を置いている。

　　　　　社内勉強会などができる「Inspiration Forum」

一方、オンライン会議に集中したい人向けのブースは1人用を15室、4人用を18室用意した。

ブース内にはモニターも置いてある。作業に集中したい人のための空間「Quiet Garden」では、オンライン会議や会話などは禁止し、図書室のような静かな空間で働けるようにした。

1人でしたい仕事も妨げられずにできる環境をつくり、従業員がオフィスに来る動機を増やした。

日本TCSは23年10月10日、六本木ティーキューブに六本木オフィスも新設した。同オフィスは開発や運用保守を担うエンジニアが多く在籍する。本社と六本木オフィスを合わせて、移転にかかった費用は数十億円だという。

（日経クロステック/日経コンピュータ　森岡麗）

［日経クロステック　2024年1月30日付の記事を再構成］

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日経記事　2024.02.14より引用

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素晴らしいおフィスで、ため息が出ますね。

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