シャープのテレビ向け液晶パネル工場(堺市)
ソフトバンクは7日、シャープが堺市に保有するテレビ向け液晶パネル工場の土地や施設の一部を買い取る独占交渉権を得た。
人工知能(AI)データセンターを構築する方向で協議する。高性能半導体を搭載した計算基盤を整え、生成AIを開発・運用する外部企業などにも貸し出す大型拠点にする方針だ。
堺工場を巡ってはシャープが3日、KDDIなどと組んでAIデータセンターの構築に向けた協議を始めると発表していた。KDDIに対してはソフトバンクとは別の堺工場内の敷地を提案し、今後も協議を続けるという。
ソフトバンクは敷地面積全体の約6割にあたる土地と、そこに建つパネル工場や電源・冷却設備などを取得する考え。取得額は今後詰める。データセンターは2025年の稼働開始を目指し、ソフトバンクが単独で運営する。
米エヌビディアから最先端の画像処理半導体(GPU)を購入し、生成AI開発に必要な計算基盤を整える。
近年のデータセンターは規模を示す電力容量で数十メガ(メガは100万)ワットが一般的だ。ソフトバンクは150メガワット程度で稼働を始める予定。将来は400メガワット超に引き上げ、国内最大級のデータセンターにする。
ソフトバンクは25年までに総額1700億円を投じ、生成AI向けの計算基盤を増強する計画を持つ。
それを搭載するデータセンターを各地の主要都市に順次整備している。堺工場は関西エリアの大型拠点という位置づけになる。
シャープとは24年1月からデータセンター構築の協議を進めてきた。今回は法的拘束力を持つ独占交渉権を含んだ基本合意書を締結した。
シャープは07年に新日本製鉄(現・日本製鉄)から土地を取得し、09年に約4300億円を投じて堺工場を稼働させた。一部の未利用地をクボタなどに売却し、現在の敷地面積はシャープ本社などを含めて80万平方メートル弱となる。
中韓勢とのパネル価格競争を背景に工場稼働率は安定せず、米調査会社DSCCによると、直近2年間の月間稼働率は一時1割程度まで下がっていた。
投資家などから事業の見直しを求める声が強まり、シャープは24年9月の生産停止を決めた。