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トランプ前米大統領の暗殺未遂、容疑者はどういう人物か

2024-07-15 16:36:03 | 米大統領選2024


トマス・マシュー・クルックス容疑者(高校の2022年の学年アルバムから)

 

ドナルド・トランプ前米大統領が13日、東部ペンシルヴェニア州バトラーで開いた支援者集会で演説中に撃たれた。

シークレットサービスはその場で射殺した容疑者の身元について14日未明、容疑者の名前をペンシルヴェニア州ベセル・パーク在住の男性、「トマス・マシュー・クルックス」と発表した。20歳だったという。

 

調べによると、クルックス容疑者は半自動式ライフル銃「AR-15」を使い、演説中の前大統領をめがけて銃撃。前大統領は右耳を負傷し、観覧席にいた男性1人が死亡し、2人が重傷を負った。

BBCヴェリファイ(検証チーム)が取材したところ、容疑者は前大統領の演台から約130メートル離れた建物の屋根の上から銃撃したと思われる。

 

シークレットサービスに銃撃され死亡した容疑者は、身分証など身元が分かるものを所持していなかった。このため連邦捜査局(FBI)はDNAや顔認識技術を使って、身元を特定した。

クルックス容疑者は事件現場から約70キロ離れたピッツバーグ近郊の閑静で裕福な住宅地ベセル・パーク在住で、地元の介護施設の厨房で働いていた。

米メディアによると、州の有権者登録記録に共和党支持者として登録していた。さらに、2021年にはリベラル派グループに15ドルを寄付したという記録があるという。また、少なくとも1年前から、地元の射撃クラブに所属していた。

 

事件現場の位置関係

事件現場の位置関係



【検証】 トランプ前大統領の暗殺未遂、事件はどのように展開したのか

 

 

 

特定のイデオロギー把握せず

FBIのクリストファー・レイ長官とメリック・ガーランド司法長官、並びに捜査幹部は14日、記者団に対して電話会見を行った。

FBIのケヴィン・ロジェク特別捜査官は、容疑者は「単独犯」の様子で、共犯による同様の犯行は特に警戒していないと話した。

 

さらに、捜査はまだ初期段階だと念押ししたうえで、「容疑者が何か特定のイデオロギーの持ち主だった様子は把握していない」とも述べた。

容疑者が使用したAR-15は、容疑者の父親が合法的に入手したものだと捜査官は確認した。父親が容疑者に銃を与えたのか、それとも容疑者が許可なく持ち出したのかは、捜査中という。

 

捜査官によると、容疑者の家族は捜査に協力している。

AP通信は匿名の捜査関係者の話として、父親はこの銃を少なくとも半年前に購入したと伝えている。

 

ロジェク捜査官はさらに会見で、容疑者の車内にあった不審な装置については捜査中だと話した。BBCがアメリカで提携するCBSニュースは、容疑者の車内に不審な装置があったと報道。一般に購入できる部品が起爆装置として使われている可能性もあるとCBSは伝えた。

別のFBI関係者によると、この事件を国内テロ事件として扱う可能性もあるという。

 

ロジェク捜査官によると、クルックス容疑者に何らかのメンタルヘルス(こころの健康)上の問題があったと示す情報はこれまでのところないという。

ソーシャルメディアなどの投稿から動機を読み取ろうとしているものの、「まだ初期段階」で「今のところ犯行をほのめかすような内容は確認できていない」と捜査官は話した。最近の通話記録からも、動機や計画などをうかがわせる内容は今のところ見当たらないという。

 

FBIは現在、ヴァージニア州クアンティコにある科学捜査研究所で容疑者の銃や前述の不審物のほか、携帯電話も捜査中。電話の「内容へのアクセスを試みている」のだという。

 

 

父親や同級生たちは

容疑者の父親マシュー・クルックス氏はCNNに対して、「いったい何が起きているのか」把握しようとしているものの、「捜査機関と話をするまで」は息子について報道陣に話すことは控えたいと述べた。

米メディアによると、容疑者が着ていた「デモリション・ランチ」と書かれたTシャツは、銃や爆発物を扱うことで人気のYouTubeチャンネルの名前をあしらったものだった。

 

複数の報道機関が容疑者の元同級生や同窓生たちに、どういう人物だったのかを尋ねているものの、一貫した人物像は浮かび上がっていない。

地元局KDKAに対して、容疑者と同じ学校に通った一部の若者は、容疑者が「いつも一人でいて」「狩り用の服で登校してくることがあった」と話している。

 

一方、元同級生のサマー・バークリーさんはBBCの取材で、容疑者は「いつもテストの成績が良く」て、「歴史が大好きだった」と話した。

バークリーさんによると、容疑者は「政府や歴史についてはなんでも知っているみたいだった」、「でも特に変わってるとかではなくて、いつも親切だった」。教師たちにも好かれていたという。

 

ほかの元同級生はただ、「物静かだった」と容疑者を振り返る。

「そこにいたけど、彼と仲が良かった人がだれかいたのかどうか、思いつかない」と、匿名を希望した元同級生はBBCに話した。「特に彼を気にしたことはないけれども、普通だった」。

 

べセル・パーク高校の射撃部に所属し、容疑者と一緒に2022年に卒業したジェイムソン・マイヤーズさんはCBSに対して、容疑者は選手になれなかったのだと話した。

「トライアウトで二軍チームにも入れなくて、そのあと在学中、一度も選抜テストを受けにこなかった」

 

マイヤーズさんによると、クルックス容疑者は「普通の男の子」で、「特に人気があるというわけではなかったけれども、別にいじめられていたわけでもない」という。

「誰かの悪口を言うとかそういうことはしない、いいやつで、こんなことができるなんて思いもしなかった」

 

 

 


バイデン・トランプ両氏、批判封印 銃撃で選挙戦に変化

2024-07-15 15:43:37 | 米大統領選2024


バイデン氏は14日の演説で、トランプ氏を糾弾する発言を封印した=AP

 

【ワシントン=坂口幸裕】

米民主党のバイデン大統領は14日の演説で、銃撃された共和党のトランプ前大統領を糾弾する発言を封印した。

トランプ氏も18日の党候補者指名の受諾演説で「団結」に焦点をあてる構えだ。互いを「脅威」だとあおってきた大統領選は事件後に変化の兆しが出ている。

 

「この国の政治的レトリックは非常に加熱している。そろそろ冷静になるべきだ。我々は皆そうする責任がある」。バイデン氏は14日夜、大統領執務室で臨んだ国民向けの演説で訴えた。

バイデン氏は、2020年大統領選で敗北した結果を受け入れず21年1月に起きた米連邦議会議事堂の襲撃を扇動した罪で起訴されたトランプ氏を「民主主義の脅威」などと批判してきた。

 

4年前の大統領選もトランプ氏の再選阻止という一点で党内の支持を固め、勝利した。現在81歳という年齢に起因する認知力への懸念から民主党内から撤退要求が強まっても「1度トランプを打ち負かし、また打ち負かす」と拒否し続けてきた。

トランプ氏への銃撃事件後に実施した13日と14日の計3回の演説で以前のように厳しく糾弾する言葉は控えた。民主はトランプ氏を攻撃するテレビや看板の広告を一時的に停止した。

 

もっとも選挙戦への効果は見えにくい。民主支持層やトランプ氏の政治姿勢を好まない無党派層などを束ねる旗印となってきた「反トランプ」を前面に出せなくなれば「バイデン氏のレゾンデートル(存在意義)に関わる」(民主党政権の元高官)。

民主内からの撤退論の行方も読みづらくなった。

 

トランプ氏は事件後初となる米メディア「ワシントン・エグザミナー」のインタビューで、18日の共和党大会の演説で「歴史的瞬間を利用し、国をひとつにまとめたい」と話した。当初は「バイデン氏の政策に焦点をあてていた」演説内容を、事件後に全面的に書き換えていると明かした。

インタビューでは「国をひとつにするチャンスだ。私はそのチャンスを与えられた」などとも語った。

 

ただ対立を助長してきたトランプ氏の政治手法が変わるかは見通せない。トランプ氏側近からは「バイデン氏の発言がトランプ氏の暗殺未遂に直結した」(J.D.バンス上院議員)などの声もあがる。

銃撃事件が選挙戦にどう影響するか。米メディアや専門家の間で意見は定まらない。米マサチューセッツ大のアレキサンダー・セオドリディス教授は「従来の常識ではトランプ氏に有利に働くとされ、今回も同じように予測する十分な理由がある」と言う。

 

トランプ氏について「被害者であると同時に銃弾に屈しない力強さを見せた。共和党支持層を結集させた」と分析。

一方「民主党がトランプ氏に対峙するメッセージを弱くさせることにもなる」と話す。

 

米アメリカン大のジョセフ・キャンベル名誉教授は「暗殺未遂が政治的にどのような影響を及ぼすか予想するのは難しい。

大統領選までまだ時間があり、一部の識者のようにトランプ氏が勝利に大きく近づいたと主張するのは時期尚早だ」とみる。

 

11月5日の投開票まで残り4カ月。トランプ氏が18日に臨む受諾演説は今後の選挙戦を占う試金石にもなる。

 

 

 
 
米大統領選2024

2024年に実施されるアメリカ大統領選挙に向け、現職のバイデン大統領やトランプ氏などの候補者、各政党がどのような動きをしているかについてのニュースを一覧できます。データや分析に基づいて米国の政治、経済、社会などに走る分断の実相に迫りつつ、大統領選の行方を追いかけます。

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日経記事2024.07.15より引用

 

 


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