ままちゃんのアメリカ

結婚42年目のAZ生まれと東京生まれの空の巣夫婦の思い出/アメリカ事情と家族や社会について。

Mon Oncle 1958

2017-10-13 | わたしの好きなもの

http://cdn3.volusion.com/bxqxk.xvupj/v/vspfiles/photos/FRENCH365-2.jpg?1385838958

 Jacques Tati (ジャック・タティ;タチとも)は、すでに亡くなったが、フランスの映画監督・俳優である。7年ほど前にふとしたきっかけで、The Illusionistイリュウジョニスト(奇術師)というアニメイション映画を観た。アニメイションながら、奇術師の立ち居振る舞いが、誰かを思い起こさせる、とすぐ気になったが、見終わって、最後のクレジットを見て、ああ、なるほど、と理解した。

このアニメイションは、タティ監督没後、シルヴァン・ジョメという人がタティ監督の映画化されていない草稿を見て、アニメイション仕立てで作成した映画だったのだ。道理でタティを彷彿させるはずだ。アニメイション自体も丁寧で、動きが細かく綺麗で、とても印象に残ったが、そのあらすじも、胸に響いた。これはどちらかと言うと、心の機微を理解できる大人向けだろう。

仏題: L'Illusionniste, 英題The Illusionist

 

http://www.colesmithey.com/.a/6a00d8341c2b7953ef0147e08a38cb970b-pi

 

私が就学前のたった四歳の時、周りの大人に連れられて観にいったのが、タティ監督のMon Oncle(ぼくの伯父さん)である。この映画のフルカラー、無声、そして主題曲は、非常に強く印象に残って、映画の内容もしっかり今でも覚えているのだ。監督自身がその伯父さんを演じているが、飄々とした彼の演技がしつこくなく、無声であることも手伝って、テンポの良い曲とともに幼かった私を圧倒させたのだろう。

これが”ぼく”とその伯父さん。パイプをくわえ、のっぽで、ちいさな帽子、短いレインコート、そして寸足らずのズボンが、ユロ伯父さんのいつもの姿で、この映画の前作「ぼくの伯父さんの休暇」ですでに彼のキャラクターは確立していた。「ぼくの伯父さん」は二作目で、この5年前の1953年に「ぼくの伯父さんの休暇」は制作されている。私はまだ生まれていなかったが、数年前偶然に古い映画を流すチャンネルで、「ぼくの伯父さんの休暇」を観た。

https://www.timeout.com/london/film/mon-oncle-1958

この”ぼく”は下の写真のような超モダンな家に、物質的な両親と住んでいる。フランス的な風刺でアメリカの物質的な近代化を揶揄しているのだろう。1958年に出来た映画とは思えないほど、鮮明な色で、21世紀の今こうしたモダンな家屋が存在しても古さを感じさせないのは、やはりフランスの名だたる美意識かもしれない。映画に出てくる富裕な婦人たちの服装も綺麗だ。この家の庭には、大きな魚の噴水があり、下の写真では、丁度中央に立っている。


https://theredlist.com/media/database/films/cinema/1950/mon-oncle/008-mon-oncle-theredlist.jpg


こんなCubicleだらけのオフィスだって、現在のアメリカのオフィスのようで、甥の住む家屋もそうだが、タティのモダニスト的感覚が光る。しかしながら、伯父さん自身、タティ自身は、モダニストではない。

http://static.rogerebert.com/uploads/review/primary_image/reviews/great-movie-playtime-1967/homepage_EB20040829REVIEWS08408290301AR.jpg


これは伯父さんの住む家がパリの古い下町にあって、そこへ行く途中通るところだが、これを観ると、大戦の惨禍を思い起こさせる。フランスの戦後が残っている。こういう場面を入れたタティの意図が漠然としてくる。

https://i.pinimg.com/736x/42/a3/e3/42a3e3a7969e2ca8efe75c11f50a06e8--jacques-tati-la-france.jpg

私はたった三作、タティ監督の作品を観ただけだが、「ぼくの伯父さん」は、四歳の幼子をしても、心に末永く印象を残したのだ。一見の価値はおおいにある。

コメント
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